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82  絶対 と 矛盾


 お試しサンプル作戦の進行状況を確かめるべく、今日はアキバへと出向いて来ていた。アクアの力は借りず、歩いてアキバへ。ここまでは特に問題なし。レイシンは、今夜の中華のために豆板醤を探す旅に出てしまい、石丸もそれに同行してしまった。このため、自動的にユフィリア・ニキータの護衛をすることになっていた。(ジンさんは昼寝してしまった)


 アキバの中央通りから北上し、生産ギルド街へ。待ち合わせ場所でニキータが先に相手を発見した。


ニキータ:

「花乃音!」

ユフィリア:

「きたよ~」

花乃音:

「いらっしゃー……、って、らっき! シュウト君もいるんだ」

シュウト:

「こ、こんにちは」


 素早く脳内アイコンから相手の情報を確認する。〈ロデリック商会〉の花乃音(かのん)という人らしい。前にアキバに買い物に来たときに顔を見たことがある。かなり可愛らしい、花のようなお嬢さんだった。


花乃音:

「相変わらず真っ黒さんだけど、前よりもグッと良くなってるね」

シュウト:

「えっと、ありがとう」

ユフィリア:

「シュウトの防具って、凄いマジックアイテムみたいで、イメチェンするのが難しいの。もうちょっと色とか選べたらいいんだけど」

花乃音:

「そればっかりは、難しいよね」

ニキータ:

「話は後にして、とりあえず移動しましょう」

花乃音:

「そだね。こっちだよ」


 〈ロデリック商会〉略してロデ研は、アキバの誇る3大生産ギルドの一つであり、研究部門が秀でていると言われている。そこの被服部門の下っ端女子という花乃音のツテを頼み、宝飾などに携わる職人の力を借りることになっていた。これはアクセサリーが洋服と深い関係にあるから、らしい。自分もいくつかのアクセサリーを所持してはいるが、まるっきりゲーム感覚だったため、見栄えは完璧に無視している。いわゆる戦闘の効率を高めるかどうかにしか興味がなかった。それでも最近は少しだけ違う使い方をするようになっている。火耐性のアクセサリーは真夏の夜の寝苦しさを快適にしてくれる、と言った具合である(あまり変化していない気もするが)。


 先頭を歩く花乃音の説明によれば、ロデ研は思われているよりもずっとフランクなのだという。研究といいつつ、大半が作りたいものを作っている場所とのこと。

 確かに『研究』などと聞くと、白衣を着た男性が、眉間にシワを寄せた難しい顔をしていて、昼夜に関係なく作業しており、数式なんかが書かれた紙が散乱している部屋で、フラスコやビーカーが所狭しと置かれていて、不気味に光る緑や紫の液体がブクブクと泡を立てている……といったイメージが浮かんでしまう。そんな自分の貧相なイメージなど、役に立たないということだろう。


花乃音:

「分かるよ。ギルマスなんかはそんな感じだしね」

シュウト:

「そうなんだ……」


 本来の作業場所に余所者は入りにくいので、客人でも入れる会議室のような場所に案内される。完成品が数点と、デザイン案が準備されていた。ロデ研からは花乃音と製作担当の男性が一人。その緑色の髪をしている細工師からも挨拶された。


花乃音:

「これ、試作品だけど、どう?」

ユフィリア:

「可愛い! すっごくいいよっ!」

花乃音:

「でしょでしょ!」


 デザイン案の確認も済ませ、残りの作業を続けてもらうことになる。明明後日(しあさって)の女子会までには一通り揃いそうだ。 

 脇から聞こえた範囲だと、私服に合わせる控えめなものから、ドレスに合わせる派手なものまで、一通り作る話のようだ。そんな女子のアクセサリー談義に興味があるハズもなく、ボーっとしている事になる。逆に『会話に参加しろ』などと言われても無理なので、それはそれでありがたい。


 会話が盛り上がっている最中、製作担当の男性がそっと抜け出してこっちにやってきた。その気持ちは痛いほどよく分かる。ユフィリア・ニキータ・花乃音と華やかな女子が3人も揃ってしまうと、もはやアソコは華やか地獄と言っても言い過ぎではない。少なくとも自分から近づいて会話に参加する蛮勇の持ち合わせはない。


緑髪の細工師:

「はははは」

シュウト:

「たいへんそうですね」

緑髪の細工師:

「場違いになっちゃったよ。でも、君だってそうじゃないの?」

シュウト:

「まぁ、そうなんですけどね」


 なぜか初めて会った男性と苦労を分かちあってしまった。男同士の会話万歳!と心の底から思う。この気楽さは他のものには代え難い。


緑髪の細工師:

「でもやっぱり噂の“半妖精”は違うねー。花乃音さんもかなりキテると思ってたけど、もう威力がダンチ。至近距離で喋ったって、早くダチに自慢したいぐらいさ」

シュウト:

「そうですか」


 何の威力か分からなかったが、相づちを打っておく。興奮気味だが、きちんと声を落としているので、向こうには聞こえていないだろう。(ニキータ以外には)


緑髪の細工師:

「でも、ああいう子に似合う作品を作りたいなぁ……」


 その横顔から職人の静かな闘志を感じて、軽い尊敬の念を覚える。前線で戦うだけが全てではない、という当たり前のことを思い出して、身が引き締まる感覚である。

 脳天気に生きてるだけに見えるユフィリアなのに、こうした機会に人の意欲を引き出してしまう。モテるぐらいにしか使い道が無さそうな美人という特性にも、また別の意味や価値ががあるのかもしれない。


緑髪の細工師:

「そうだ、あの預かってる石なんだけど……」

シュウト:

「なんでしょう?」


 光をため込むか何かしていて、周囲が暗くなると光を放つ性質があるのだという。説明を受けて、ユフィリアが試作品の一つを手の中に閉じこめるようにして、隙間から覗き見ていた。


ユフィリア:

「ホントだ、光ってる! キレ~イ」

ニキータ:

「なんだか、ロマッチックよね」

シュウト:

「……だけど暗いところでこんなに光るんだとすると、敵に居場所がバレるかもしれない。クエストには持っていかないようにって、注意しないと」

ユフィリア:

「…………」

ニキータ:

「…………」

花乃音:

「…………」

シュウト:

「……何か変なこと、言った?」

ユフィリア:

「それで正しいかもしれないけど、ホメて欲しい時もあるんだよ?」

ニキータ:

「ちょっと空気を読めてなかったわね」

シュウト:

「だっ、だけど、知らないで身につけてたら、レイドとかで迷惑になっちゃうかもしれないし」

花乃音:

「わぁ~、本当に天然なんだ~」

ニキータ:

「ふぅ(ため息)……そういう風に説明はしておくから」

ユフィリア:

「しょうがないなー、シュウトは」


 間違ったことは言ってないハズなのに、どうしてこんなに責められなければならないのだろうか。理不尽ではないか? 少し無粋なことを言ったのかもしれないけど、これではずっと黙っていろって言われているのと大差ない。


緑髪の細工師:

「面白いでしょ? ……でさ、後でちょっと調べたりしたいから、残った端材(はざい)を譲って欲しいんだけど」

ユフィリア:

「どうする?」

シュウト:

「えーっと」


 端材と言うと作った後に残るゴミのような残りクズやカスのことなので、普通はこうして断りを入れてくることはないだろう。ゴミ箱にサッと捨ててお終いになるはずだった。これは同時にまだ何も知らないという意味でもある。ギルドの規模が大きいので、製作と研究とが分離しているだろうというジンの読み通りだった。


 こちらの問題点は、素材の素性がバレるかもしれないという点にある。極端な話として、サンプル作戦をする前に〈ロデリック商会〉から素材購入の依頼が入るかもしれなかった。しかし、それはアクセサリーの製作依頼をしている時点で覚悟していることでしかない。どちらにしてもアクセサリーを次の女子会に間に合わせることが出来るのは生産ギルドしかない。〈海洋機構〉にするか〈ロデリック商会〉にするかは、ユフィリアが適当に決めていた。


シュウト:

(ジンさんなら、……あっさりオーケーしそうだなぁ)


 端材の処理を断れば、変に疑われることにもなりかねない。しかし、念のために念話して確認することにした。これは念話するポーズに意味がある。幸い、ジンはすぐに念話に出てくれた。


シュウト:

「了解です。…………えっと、端材だけじゃなくて、残った石も全てどうぞ、とのことです。ただ、少し制作費をおまけして欲しいんですが」にっこり

緑髪の細工師:

「そりゃ、ありがたい。半額でどう?」

シュウト:

「もう一声、ダメですか?」


 甘えるようにもう一押し。さりげなくユフィリア・ニキータの援護もある。期待の眼差しでじーっと見られて、細工師の彼は根を上げた。


緑髪の細工師:

「勝てないなぁ。オッケ、経費分だけでいいよ。作業代はオマケしてあげる」

ユフィリア:

「ありがとう!」


 笑顔のユフィリアに手を握られ、彼は目を白黒させていた。……これは本当に天然なのだろうか? 計算づくじゃなくて? 汚くない?


花乃音:

「ねぇ、ユフィ。これイイと思わない?」

ユフィリア:

「うん、いい感じだよね」

花乃音:

「コレがね、私のことを呼んでる気がするの。……お願い! 私に売ってくれない? 倍までなら払うから!」

ユフィリア:

「えーっ、ダメだよー、売り物じゃないもん」

シュウト:

(確かに『売り物』じゃないよなぁ)

花乃音:

「そうなの?……数を作るって言うから、てっきり売るもんだと思ってた」

ニキータ:

「ちょっとだけ使わなくちゃいけないのよ」

花乃音:

「そっかー……」


 案外、本気でがっかりしている花乃音が少し可哀想になる。


ユフィリア:

「その用事が終わった後だったら、考えてあげる」

花乃音:

「ホント?! 絶対だよ、お願いだよ!!」


 欲しがっていた物は彼女のための良いサプライズ・プレゼントになりそうだった。

 しかし、サプライズのためとはいえ、秘密を守る『嘘にならない嘘』を平然とこなしている二人が怖ろしい。女性はみんな嘘吐きに違いない。なんて殺伐とした世の中なのだろう。誰も信じられそうにない。


シュウト:

「この後はどうしようか、シブヤに戻るのでいい?」


 礼をいってロデ研を後にする。外に出たところで解放的な気持ちになっていた。広く大きな建物であったため、やはり他のギルドということで緊張していたらしい。


ユフィリア:

「ダメだよ、せっかくアキバに来たんだから、いろいろお店巡りしなきゃ!」


 スキップしそうな勢いでユフィリアが歩き始めてしまう。ここで自分に選択権はないので、番犬をする以外にない。首輪もリードもつけてはいないはずなのに、見えない鎖でがっちりと首根っこを押さえられている。


ニキータ:

「いきましょ?」

シュウト:

「……うん」


 瞬間的に何かを感じたが、しばらく待っても言葉にはならなかった。振り返ってこちらを気遣ったニキータに、腕を引っぱられたような気持ちというのだろうか。彼女の横に並んで、一緒に早歩きで追いかける。前を行くユフィリアを見失わないように。





 夕食の中華パーティの準備時間中にジンの講義を受けることになり、倉庫へ。レイシンは嬉々として料理に没頭しているため不参加だった。


ジン:

「今回は『絶対的な強さ』について話そうと思う」

葵:

「んなもん、あるわけないじゃん」ぴしゃり

シュウト:

「……話し始める前から完全否定って」

ジン:

「いいんだ、ある意味ではその通りだからな。絶対的な強さというものは、矛盾を作ってしまう。あらゆるものを貫いてしまう絶対の矛と、全ての攻撃を防ぐ絶対の盾、といった具合にな」

アクア:

「面白いわね。それでどうするわけ?」

ジン:

「これは逆に考えればいいんだ。矛盾した状況を生み出せれば、それが絶対的な強さになる、という風にな。人間の主観認識上で発生するマジックなのさ。絶対論では矛盾が起こっても、相対論的には矛盾は起こりえない。ならば、矛盾があれば、そこに絶対性を感じてしまい易い、ってな」

ユフィリア:

「ふぅーん」

シュウト:

「でも、どうやって?」

ジン:

「簡単なのだと、チビだけど力が強いとか、太ってるのに素早いとか、そういうヤツだな」

葵:

「別に、よくある話っぽくなったじゃん」

ジン:

「まーな(苦笑)。そんな感じで、矛盾していればいるほど、絶対性を帯びることになる。得意を伸ばすのは大事なことだが、苦手を伸ばせば強みになる可能性もあるってことだ。もっと言えば、あり得ないことができるようになれば、絶対性を帯びる、という意味にもなる」

シュウト:

「敵の予測を外したりできそうですね」

ジン:

「そういうこと。戦闘を有利にするには、この手の演出力も必要になってくるからな。矛盾の使い方や、その価値に気が付いている人間はそう多くない。矛盾こそが武術の神秘性の原理であり、秘密だったりするんだ。筋骨隆々のマッチョメンがほそっこいオジサンを投げ飛ばしても、誰も何とも思わない。けど、逆なら一大事ってことだな。

 ……じゃあ、次。これも関連する話題な。最強と最高という二つの評価軸について。どっちか選べるならどっちがいい?」

シュウト:

「最強と、最高ですか?……それはやっぱり、最強ですかね」

アクア:

「最強の歌い手よりは、最高の歌い手と呼ばれたいわね」

ユフィリア:

「んーと、どう違うの?」

ニキータ:

「力と、技とか?」

ジン:

「激・簡単に説明するとだ。最強と最高は、実戦性と演舞性とに対応関係がある。しかし、競技性が高まると短期的教育に流されるため……」

ユフィリア:

「わー、かー、らー、なー、いーっ!」

ジン:

「すまん、わーざーとーだ~っ(にやり)

 ……えっと、パフォーマンスというヤツを考えていくと、より実戦的な方向のものと、技を観客に見せる方向のものとがあるんだ。つまりそれが、実戦性と、演舞性だな。武道・武術とは、戦いの練習をするもので、だから実戦性の追求ばっかりしていると思われがちなんだが、一応、演舞っぽいのもやるんだよ。天皇陛下の御前で剣術のお披露目大会をしたりとかな。

 逆に、音楽や絵画みたいなものには実戦性がほとんど無いから、演舞性100%なわけだ」

アクア:

「フムン」

ジン:

「アクアの歌は実戦性がそれなりに高いが、まぁ、それはここでは置いといてくれ。……で、俳優が剣を持って、敵をバッタバッタと切り倒す演技でやってる殺陣(たて)なんかは、実戦じゃなんの役にも立たないんだけど、実戦性が0%ではないだろ? 5%や10%、上手い人なら15%ぐらいはあるかもしれない」

シュウト:

「曖昧な領域があるわけですね……」

ジン:

「そう。他にも、ボディービルダーが鍛え上げた肉体とか、ダンサーや体操選手の運動能力、サーカスの演技……って具合に色々と考えていくと、格闘技の選手が無条件に勝っているとは言い難い部分もたくさん出てくる。中国雑伎団の柔軟性やバランスなんかは凄まじいレベルで有名だな」

シュウト:

「ですが、『だから強い』って訳ではないですよね?」

ジン:

「そうだけど、まぁ、待て。……これが陸上競技だと、『最速』を競うようになってくる。これは最強にかなり近い概念だ。演舞性の対概念を、実戦性の代わりに競技性にした方がいいかもしれない、と思うぐらいにな。バスケットボールの選手のクイックネスだとかもあるし、運動能力としてみた時、実戦に寄与するであろう要素は、他の競技でも散見される」

アクア:

「つまり、最強という指標は、最高レベルのパフォーマンスが必ずしも必要とはならない、ということよね」

ジン:

「その通り」

ユフィリア:

「えっと、どういうこと?」

ジン:

「最強の剣士は最高の剣士とは限らない。逆に最高の剣士も最強の剣士とは限らない。この二つは同じにもなり得るが、論理的にイコールで固定されていないんだ」

ニキータ:

「勝てれば、別に上手くなくてもいい。逆に、最高に上手くても、勝てるとは限らない」

ユフィリア:

「上手い人って、勝てないの?」

ジン:

「いや、勝ち易くはなるんだけどな。ただ、難しい技が得意でも、それが実戦で有効とは限らない。見栄えが良くても、技に必殺の気合いが足りないかも知れない。勝つためには、試合勘なんて言われるものとか、勝ち筋を見つける能力やセンス、冷徹な実行力……みたいなものが必要になってくる」

ユフィリア:

「うーん。むずかしいんだね」

ジン:

「実戦ってのは、最終的に勝てば何でもいいってところがあるからな。本当には、汚い技なんてのもあんまり無いんだよ。ノールールの何でもアリってのは、人質あり、毒あり、集団リンチあり、闇討ちあり、ハニートラップあり、銃あり、戦闘機あり、核兵器あり、何でもありって意味だ。負けた方は死ねば文句も言えないのが当たり前だからな。……この世界だと復活はできるけど」

葵:

「んで、それがどうって話なの?」

ジン:

「おう。技術的に多少の差があっても、ひっくり返せる場合も多々あるわけだ。だからテクニックを過信することは出来ない。

 だが、だからってヘタッピでも良いってのは勘違いなんだ。技術的に圧倒的な差があると、ちょっと強い程度ではどうにも出来なくなる。というか、そういう風にできちまうんだな」

葵:

「ハメみたいなもんか。確かに、技術に差があったら、ひっくり返すなんてとてもじゃないけど無理だよね」

アクア:

「つまり、それが絶対的な強さってことね。……でも、ヘタクソだけど強い、って矛盾の方が神秘的かもしれないわよ?」

ジン:

「むぐ。……まぁ、それで本当に強いのならば、ヘタクソじゃないってことだろう。ルールを変えたか何かしているかもしれない。『現象には必ず理由がある』んだからな」

シュウト:

「なる、ほど……」


 分かったような、まだ分からないような。


ジン:

「一方では、より激しく競い合う結果として、実戦性に重きをおきやすくなってしまう傾向がある。より短期的な、効率的な、意味のある練習を求める風潮だな。……いわゆる試合とか、大会のような目標がある場合、そこで勝てるようになるための練習をしたがってしまうんだ」

ニキータ:

「競争に勝ちたがるのは、でも、普通のことですよね?」

ジン:

「そうだな。その代表的なものが、受験勉強での『塾』だな。学校での勉強は意味がないから、塾での効率的で意味のある勉強をしたい、という風潮が生まれ易くなっている。これも短期的・効率的な努力を求める姿勢だ」

シュウト:

「それは、ダメなことなんですか?」

ジン:

「いいや、メリット・デメリットがあるだけだよ。短期的な努力の結果は、短期的な能力の形成だ。テスト前の一夜漬けを考えてみれば分かるように、暗記を中心とした勉強では、テストの間だけ思い出せれば、その後の人生では忘れてしまっても問題ないという暗黙の前提がある。

 受験勉強も、つらい努力をしたはずなのに、気が付いたら勉強した内容をみーんな忘れちまっている場合も少なくない。ま、学歴が残ればそれでいいのかもしれないけど」

葵:

「学校の勉強はともかくとして、これがどう繋がってくるわけ?」

ジン:

「うむ。武道とは『道』、つまり長期的な鍛錬を方向付けるための概念なんだ。もともとは武術と呼ばれていて、より短期的な『術』を乗り越えたという意味を、『道』という言葉を使うことで、与えたんだ」

ニキータ:

「武術から、武道になったんですね」

ジン:

「そ。単なる殺人術から、より高尚なものへ進化させるべく、イメージアップで社名変更、みたいなもんだ。活人拳みたいなものも、最近作られた戦略的な語句だったりするしな。そうした武道・武術の暴力性や、殺人術への忌避感もあってか、現代は大きくスポーツ化していく流れだな。その結果は、より短期的な鍛錬、『術』への回帰だ。競争性が高まることで、長期的な鍛錬や視点が失われて、まるで塾のような、効率の良いトレーニング方法が望まれているんだな。実戦で有効な技を集中的に教えて貰えるから、数年で一通り完成できる。

 でもその結果、『絶対的な強さ』は失われてしまった」

アクア:

「なるほどね。強さを求め、パフォーマンスを疎かにした結果か。短期間の訓練では、矛盾を獲得するレベルまで能力を高め得ないわけね」

ジン:

「芸術の方が、長期間の訓練を可能にする土台があるし、ハイパフォーマンス自体を目的にしている点が大きく違う。肉体性能への依存度が高いスポーツ競技は30代半ばで引退しちまうからな。奥の深い技術ったって、そんなんじゃたかが知れてるんだよ」


シュウト:

「でも、それじゃどうしたらいいんですか? 長期的な訓練が必要、みたいに聞こえるんですが」

ジン:

「必要なのは、ハイ・パフォーマンスだ。長期の訓練は必須事項じゃねーよ。人間が成長するのにはどうしても時間が掛かるものだが、それは思われているよりも、少しばかり短いものなんだ。

 ……話は飛ぶが、何をもって高度な技術か?を定義するのは難しい。先鋭化させようとする場合、特殊な状況向けのドマイナーな技術になったりし易い。たとえば、敵が剣術の奥義を使って来た時に、こちらが対処するために使う『返し技』とかだな。そんなの奥義を使ってくるヤツ以外には何の役にも立たないわけだろ? 下手すると一生、使わない技術をえんえんと練習し続ける可能性すらある」

シュウト:

「なんというか、イヤですよね?」

ジン:

「ところがどっこい。偉い人にしたり顔で『それが武道だ』とか言われるかもしれないんだぜ? そもそも武道・武術ってヤツ自体が、使わないで済めばそれに越したことのない、人を殺すためのテクニックの研鑽なんだからな」

ニキータ:

「それは、そうかも。……この世界にいるから、戦うことに意味があるわけだし」

ユフィリア:

「うん」

葵:

「だけどさぁ、もうちょい、その人殺しとかって部分を否定しなくてもいいわけ?」

ジン:

「つまりこうか?……僕ちゃんがやってるのは、モンスターを倒すための訓練なので、人を殺したりなんてしません!」

葵:

「……すまんかった。胡散臭いだけだわ」

ジン:

「ま、大衆向けには、表面を繕う必要も意味もあるが、身内にそんなことしたってダメだろ。偽悪趣味を気取るつもりはないけど、繕えばボロがでるもんさ。それに、人殺しの技だって自覚が無いだなんて、どうしたって許されないって。

 強くなれば内面にも影響がある。ある程度、変化することは避けられない。実際にゃあ、弱い心のまま、強い技だけ使えるようになったりしたら危険だしな。技に溺れれば、主従が逆転してしまう。せめて、たずなは握っておかなきゃならん」


 最後のは特に耳の痛い話だった。〈大災害〉に巻き込まれ、気が付けば強大な力を持つ〈冒険者〉の体を得ていた。周囲も同様の力を持っていたことや、外敵としてのモンスターの存在、元の世界に帰れないというショックなどが重なってウヤムヤになっていたが、まさしく、弱い心のまま、強い力を振るっている。

 ただ強くなりたいと思う自分の幼稚さを見抜かれていたようで、情けない気持ちになる。求める強さに見合う『人間性の獲得』こそ、むしろ急務なのかもしれない。


ジン:

「って訳だ。それじゃそろそろ、『絶対的な強さ』を伝授しますかね」

ユフィリア:

「やったね!」

シュウト:

「……今の話の後だと、素直に喜べないんですが」

葵:

「にひひ。いい傾向じゃん」

シュウト:

「そうなんですか?」

ジン:

「そらそうだよ。自分より弱いヤツを一方的にボコれるようになりたいだなんて、まともな神経の人間のするこっちゃねーわ」

アクア:

「あら、私は大好きだけど? 『自分は歌が上手い』だなんて思い上がってる子のプライドを、復活できなくなるギリギリまでズタズタに引き裂くのが親切じゃなきゃ、なに?」

ジン:

「やっさしー。そんな面倒臭いことすんのかよ。おまえ、親切だなぁ」

アクア:

「貴方とは違うもの」


 人間性の大切さを痛感した次の瞬間にコレだからたまらない。単に面倒がっているだけなのだろうか? それとも、こういう矛盾もアリという事なのだろうか?


ジン:

「いなかったヤツのために復習も兼ねるんだが、拘束世界的に考えると、立つ→歩く→走るの順に難しくなっていく。逆にフリーの世界だと、歩く→走る→立つの順で難しいんだ」

アクア:

「立つのが一番、簡単なようで、一番、難しいわけね」

ユフィリア:

「そんな話はしてなかったよね? んと、どうして?」

ジン:

「面倒だったから省いた」

ユフィリア:

「じゃなくって」

ジン:

「拘束世界では、単なる物理運動だからだ。物体としての体が、物体として移動する。

 対して、フリーの世界では『自由軸運動』をさせてるから、軸が移動した結果として、体が動くことになる」

アクア:

「なるほどね」スッキリ

シュウト:

「いやいやいや、理解が早すぎませんか?」

アクア:

「そう?」

ジン:

「拘束世界だと、五体満足なら誰でも立てると思ってるからな。立つのは誰にでもできると思いこんでる。その後は運動速度に応じて難易度が増していくわけだな。だから走るのはとても難しいことになってしまう。

 フリーの世界だと、停止状態からダッシュに移行するのが自然なんだ。ゲーム機のコントローラーについてるアナログスティックみたいなもんで、移動させようとすると深く押しこんで、走りに移行させてしまう」

シュウト:

「その喩えは、僕としてはとても分かり易いです」


 ゲームではむしろ歩かせる時間の方が稀だと言って良い。ダッシュにスタミナ・ゲージがあるとか、歩かないと突破できないイベントでも無い限り、なるべく走らせるのが基本状態になる。


ジン:

「ここから、『歩き』というのは、拘束世界側では停止に近い運動になり、フリーの世界では走りに近いものになるんだ」

葵:

「それって、何が違うわけ?」

ジン:

「全くの大違いだろ。運動音痴ってのは、一歩ずつ止まって、再加速してを繰り返すのが歩行運動の実態なのさ。止まるためにわざわざブレーキを掛けて踏ん張り、質量の移動を前側の足で受け止める。そうやって停止慣性を発生させても、次の瞬間にはそれを突破するべく、後側の足は体重を動かす分のキック力が必要になる。

 そんな面倒くさいことしてたら、誰だって歩きたくなくなるに決まってるんだよ。もはや、歩くのは悪だと言っていい」

アクア:

「フム。なら、フリーの世界は軸線移動をなるべく保存させる形で歩くわけね。つまり、よりスムーズに、楽に歩けることになる」

ジン:

「簡単な実験をしてみよう」


 ジンはまず、ニキータを呼び、みんなの前で歩かせた。直ぐ後ろをジンも歩き、指一本で彼女の背中を押し、押し続けて、加速させようとした。ニキータは加速に耐えられない様子で、ぎこちなく一歩ごとにブレーキを掛けてしまった。


ジン:

「じゃあ、次。ユフィリア行ってみようか」

ユフィリア:

「うん。ただ歩けばいいんだよね?」


 同じように、歩いているユフィリアの背中を指で押し続ける。今度は、背中を風に押されているかのように、気持ちよく、早く歩いていた。颯爽としていて、格好良い。


ジン:

「うまいぞ」

ユフィリア:

「やったねっ」

ジン:

「……シュウト、次はお前だ」


 自分の番になり、同じように歩いてみる。かるく指で背中を支えられている感覚なのだが、一歩ごとにかなり伸びがあり、これはブレーキを掛けたくなるのも分かる気がした。


ジン:

「抵抗しないで、流れに乗ればいい」


 真下を踏むようにして、押される力を自分の味方に変える。上手くいくと、なんだか画期的なことをしているような、不思議な高揚感があった。スイスイと楽に前に進む。ただそれだけだが、楽しい。


ジン:

「よし、もういいぞ。……ニキータは後で出来るようにしてやるからな」

ニキータ:

「はい」

ジン:

「ちょい難しく言えば、慣性を最大限に利用し、歩行運動時の地面とのロスを可能な限り小さくしてやればいい。ブレーキを取っ払ってやるんだ。結果、足で地面を蹴る力を最小化させることになり、楽に歩けるという寸法だな。内在する論理はもう少し高度だが、今はいいだろう。

 どちらにしても、こんなものは『ちゃんと立つこと』ができれば、何も難しくはない。とりあえず歩行運動での問題点は、『踏み換え』と『居つき』だ。踏み換えの方は、もう練習はやらせてる」

ユフィリア:

「そうなの?」

ジン:

「ああ。歩くときの左右ブレが、踏み換えのヤツだ」

ユフィリア:

「それならやってるよっ」


 見て見て、と歩いてみせるユフィリアだった。誉められて、頭を撫でられるところまでがワンセット。この話の時はアクアもいて、モデル歩きをしていたのが思い出される。


ジン:

「中心軸があれば、単に足を交互に上げるだけだ。拘束世界での物理運動では、軸足に体重を移動させて、持ち上げて、下ろして、体重を移動させて、の運動が必要になってしまう」


 ――フリーの世界であれば、踏み換えをインナーマッスルで処理するため、内部的には複雑な動作を行うことになる。倒れないように中心軸に交互に『引き付け』を行うのである。結果的に外からは左右にブレていないように見える状態になるものの、内部処理的には忙しい。それを中心軸による制御に一括で委ねてしまうのである。


ジン:

「ちなみに踏み換えは、日本舞踊やダンス系の人の方が徹底的に訓練していたりする。最近の格闘系はダメダメだな」

シュウト:

「何か理由みたいなものはあるんですか?」

ジン:

「モロに低パフォーマンス化が原因だけどな。最強を目指す人にはあんまり必要ないっちゅーか、指導者が理解してないのか、高度過ぎるのか、あんまりやらせてないような感じだな。

 ダンスとかは、見た目の美しさを競う必要から、踏み換えのバタバタ感を嫌うんだよ。格闘技の場合、動作の起こりをバレにくくする必要から、踏み換えは高度に必要だったんだけど……」

ユフィリア:

「……?」


 なぜか言い澱んだジンに、ユフィリアが首を傾げる。


ジン:

「まぁ、いいか。極論すれば、格闘技は『一撃必殺』じゃなくなったんだよ。競技化が進むことによって、安全に配慮がされ、秒殺は少なくなり、連続技の需要が増えたんだ。だから、一撃で殺すための技、一撃で殺されないようにするための技の需要が減った。ヘタクソでも勝てるように、ルールを整備したわけだ」

シュウト:

「それって、〈エルダー・テイル〉も……」

ジン:

「ゲームは現実を誇張して再現するものだからな。当然、影響下にある。毎回、一撃で死んでたら面白くないだろ? 格闘技の試合だって同じだ」


 ――たとえば柔道の『一本』と呼ばれる勝利条件のルールなどに、一撃必殺の名残りを見ることができる。日本人には馴染み深いものだが、技あり二つで一本などは、日本独特のルールでもあるだろう。


 武器無しの格闘技ではボクシングのK.O.(ノックアウト)が有名だが、拳を覆うグローブの保護のため、ワンパンチで勝敗が決まることは稀である。このグローブは顔、特に目を保護する意味合いが強い。実力のあるボクサーは、軽いジャブで敵の目を潰し、二度と見えなくすることなどは簡単なのだ。一方でグローブの存在により試合は長引き、連打を浴びせられてしまうという側面もある。軽くて網膜剥離、重傷であれば脳に障害を残したり、死に至るケースもあった。


 武器攻撃である剣道でこそ、一撃必殺のルールが成立し易いのだが、

命中しただけでは有効として認められず、美しいかどうか、威力や気合いのかけ声などの要素が必要になっている。


ジン:

「話を元に戻そう。踏み換えは、姿勢を低くすると難易度が上がる。だから、逆に姿勢を高くすると簡単になるんだ。走りが専門の陸上競技なんかだと、腰を高くして処理している」


 言われるまま、つま先立ちになり、腰を高くしてモモ上げをしてみる。腰を高くすると、意識しなくても左右ブレを起こしにくくなる。


ジン:

「高速運動が基本になっている運動種目の場合、高い腰の位置をキープできていなければならない。この概念を『運動基準線』と呼ぶんだが、ここまでは覚えなくてもいい。馬みたいな四つ足動物は、運動基準線をかなり高い位置でキープしてるんだ。二足走行の人間は、運動基準線が低く成り易く、従って速度も落ち易い」

シュウト:

「〈暗殺者〉みたいな速度重視のクラスは、運動基準線が高い方が良いってことですか?」

ジン:

「そうなるかな。……とりあえず、ここにも複数の矛盾が絡んでくるんだけどな。まず、とっさに高速運動に移行する場合に備えて、普段の生活レベルから腰を高くしておかなきゃならない。『腰を高くする』→『走る』という手順になるから、『腰を高くする』という無駄を省く必要があるんだ」

シュウト:

「普段から良い姿勢でいるべき、なんですね」

ジン:

「そうだな。……だが、キックする場合、足を一度曲げなければならない。腰が高いということは、キックするまでに時間が掛かるという意味なんだ。始めっから姿勢を低くして、足を曲げていればキックはしやすくなる。

 もっと言うと、『運動基準線が高い』ということは、走っている時に足をピンとのばした状態で、地面と足の裏が接触するということを意味している。だから、膝のキック力を利用することは出来ない」

シュウト:

「そういえば……」


 ジンの始動は腰高で始まっていた。崩れ落ちながら瞬間的に加速していくという話だった。何度も見ているのだが、その『崩れ落ちていく部分』が分かり難く、反応しずらい。

 また自分で高速走行する場合、一歩ごとに強く蹴っている訳ではなかった。


ジン:

「走法の基本的な足の動かし方を『ワイプ運動』と呼ぶ。車の雨よけのワイパーみたいな動きのことだな」


 立ち上がり、ジン自らが実演して見せた。「足下にあるゴミを、ホウキで掃くみたいに……」と良いながら、足を伸ばしたまま、床を撫でるように後ろに蹴る。


ジン:

「キックは、足を曲げといて、伸ばす運動。ワイプは、足は伸ばしたまま、振り回すように大きく動かす運動だ。

 100m走では、スタートでしゃがんでいるところから、キック成分の強いダッシュを掛けてから、高速走行状態でワイプ運動に滑らかに移行する必要がある。回転が上がってくると、足首のクッション問題で、キック動作は間に合わなくなるんだ」

葵:

「ほいほい。ただ走るって言っても、2種類の足の使い方をしている訳だーねぇ」

ジン:

「んー、まー、今のは極端なケースの話なんだよ。陸上競技ほどの高速走行が必要な競技って、あんまり無いんだよな。サッカーでのボールを持たない状況でのオーバーラップとか、アメフトやラグビーで、完全に一人旅している状態とか、って具合で限定状況でしか発生しない。テニスやバスケ、野球の盗塁では距離が短すぎる。戦闘を含めて考えても、ショートダッシュの方が使用頻度が高い。

 ショートダッシュだと、停止・方向転換・再加速といった部分の重要性が高くて、ダッシュ自体の最高速度はそこまで必要じゃ無かったりする。あればラッキー、なくても、判断力の問題にすり替えて対処、とかだな」


アクア:

「つまり、ショートダッシュだと、運動基準線はそれほど高くなくてもいい、ということなのかしら?」

ジン:

「いいや。ここからが真の問題。これは、戦略的意志決定を必要とする話なんだ」

ユフィリア:

「せんりゃくてきいしけってい?」←パンク寸前

ジン:

「あー、論理的な順序を追いかけるためだったが、難しすぎたかな。まー、要するに『自分は何にも知らない』ってことだけ分かってりゃいい」

シュウト:

「思いません、そんなこと」

ユフィリア:

「こういうのって、何かの本に書いてあるの?」

ジン:

「書いてあるけど、複数の本に跨がってるのを、俺が纏めて話してる」

ユフィリア:

「何冊ぐらい?」

ジン:

「さぁ? お前は今まで食べたパンの枚数を覚えているのか? ……って、今回の内容ぐらいだったら4~5冊かなぁ」

シュウト:

「4~5冊……」


 多いのか少ないのかもよく分からなかったが、ありがたいことだけは理解できた。結論から考えれば、こうして時間を短縮して貰っているのだろう。


ジン:

「あんまり簡単に理解して欲しくないんだけども、残念ながら簡単に。

 腰を高くすると、重心も高くなり、足が比較的自由に動かせるようになる。高速移動が可能になるけども、踏ん張りは利かなくなる。……蹴り技が得意なレイ、ついでに移動速度にものを言わせたいであろうシュウトは、こっち寄りのビルドになるだろう」

シュウト:

「そうだと思います」

ジン:

「逆に腰を低くすると、重心が下がり、足の自由度が下がって踏み換えも難しくなる。踏ん張りが利くために転んだりしにくいけども、移動速度にはちょっと自信がなくなる。……盾役の〈守護戦士〉とか、同じく鎧を着てるユフィリアはこっち系のビルドになりやすい」

シュウト:

「なるほど……」

ユフィリア:

「私って、腰を低くしてればいいの?」

ジン:

「いいや、自分で決めなきゃだな。これに正解は存在していない。基本的にスタイルと同じものだからなー。クラスとステータス値によって決まる身体特性とか、持っている装備、得意な戦術、特技使用のアイコンリストの選び方、仲間の人数とクラス構成、ギルドの行動指針、何よりも自分はどうなりたいのか? そういうのを吟味して、自分で決めるべきものだね」

アクア:

「つまり、真に戦略的意志決定の問題、というわけね」

ジン:

「んで、ユフィはどうする?」

ユフィリア:

「んーとね、ジンさんのオススメでお願いします!」


 メニューを見ても分からない時は、シェフのオススメに限ると言わんばかりの態度だ。


ジン:

「よし。何でもいいってんなら、ホテルに行ってエッチしよう!」

ユフィリア:

「今はそういうのナシ」ぴしゃり

ジン:

「ちぇっ」

シュウト:

「あの、ジンさんって、どっちのタイプなんですか?」

ジン:

「鈍いねぇ。……両立させるのに決まってんだろ。本日のテーマは?」

石丸:

「『絶対的な強さについて』っス」

 


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