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70  軽いよりはマシ

 

さつき嬢:

『聞けば聞くほど、凄まじい』

シュウト:

「そうなんです。でも念話だけじゃ信じられないかも」

さつき嬢:

『いや、たぶん私も一度、その攻撃をジン殿から受けていると思う。反射速度には自信があったんだが、あの時はまるで反応できなかった。速過ぎると思っていたけど、違うんだな』

シュウト:

「ちょっと信じられないぐらいに速い、っていうのもあるんですけどね」


 早朝、目が覚めると共にさつき嬢に連絡を入れる。教わった内容を自慢したいのもあって、昨晩からこの会話を楽しみにしていた。さつき嬢との会話は戦闘メインなこともあって、気が楽なのだ。


 最近は互いの近況が話題に登ることも増えている。ゴブリン討伐のその後や、新しいスタイルの事なども話した。さつき嬢の方は、ギルドマスターのアギラと試合をしていて、今は負け無しだと言っていた。


さつき嬢:

『そ、それはそうと、ジン殿は近頃どうされている? ユフィさんと仲良くやっているのか?』

シュウト:

「ええ。いつも楽しそうにしてますよ」

さつき嬢:

『そうか』

シュウト:

「なんで付き合ってしまわないのか、僕にも良くわからないんですが」

さつき嬢:

『そうか』


 段々と、さつき嬢の人柄への理解が深まり『そういうことか』と理解できるようになっていた。分かり易い人なので、少しからかう気分がないでもない。『そうか』のニュアンスが微妙に下がったり上がったりしているのが楽しい。


さつき嬢:

『ん? ああ。……ところで君の方はどうなのだ? 付き合っている彼女が居たとかいう話らしいが』

シュウト:

「えっ? えっと、その……あまり上手くいってま、せん」


 唐突な話題にギクリとする。


さつき嬢:

『別れたのか? うむ、別れたらしいぞ』

シュウト:

「いや、別れたってわけじゃ……」


 なんだか相手の会話がおかしい。その理由はすぐに判明する。


さつき嬢:

『うおっ。シュウトくーん、聞こえるー? 睦実、ちかい! 静かにしててね。ちょっ。元気ー?』


 睦実の声が混じって聞こえていた。これで大体の事情は分かった。強引に念話に割り込んだのだろう。口のすぐ近くにマイクのようなものがあるらしく、キスする寸前ぐらいの距離まで顔を近づけて話せば、声を届けることができるらしい。

 一応、「睦実さんもお元気そうで~」と言っておいたが、冷静になって考えると、こちらの声が聞こえるのはさつき嬢だけなので、意味はなかったかもしれない。


 向こうもドタバタしているようなので、静かに念話を切って終わりにしておいた。





 本日の予定は2回目のドラゴン狩りになっている。狩りと呼べるほど倒したことはないのだが、朝の気怠い時間帯からジン達がフロアにたむろしているのは活気があって、なんだかやる気が出てくる。


ジン:

「んで、今日はこれからドラゴンと戦いに行くんだけど、お前はどうするんだ?」

シュウト:

「えっ? もちろん、一緒に行くつもりですが」

葵:

「今日あたり、本当に動いとかないと不味くない?」


 これはもうユミカのことだろう。どうすればいいのか頭が痛い。時間が経つほどに動くのが面倒になってくる。


レイシン:

「出かけるまで、まだ時間あるのかな? 朝ご飯の準備する?」

ジン:

「する!」

石丸:

「出発まで1時間あるっスが、30分ぐらいオーバーしても平気っス」

シュウト:

「あの……、僕はどうすれば?」


 チラりとジンの様子を窺ってみる。ただでさえ6人パーティーでの戦闘なのに、更にここで自分がいなくてもいいのかどうか?という気分もあったからだ。しかし、相手はただのハラペコの人だった。


ジン:

「はらへり・へりはら。メシ喰ってねぇ!」

シュウト:

(ダメだ、これは……)


 がっくりと肩を落とす。しかし、ジンに一体全体なにを期待していたのか?という話ではある。代わりにユミカと話してきてもらう訳にいくはずもないし、何か有益なアドバイスがもらえるか?というと、それは『訊くな』と何度も言われている。目先の不安を誤魔化したいだけの気もするが、ドラゴン戦に行きたいのも本当なのだ。まだ一勝しかできていない。もっと勝ちたいし、これから連勝するようになっていく予定なので、今は一番大事な時期だった。そんなことを考えていると、ユミカのことはどんどん後回しにしたくなってくる。


シュウト:

「あのさ、どうしたらいいと思う?」

ユフィリア:

「ごめん、今回はシュウトが一番いいと思うようにして、ね?」


 いつもはうるさいぐらいに「ユミカ」「ユミカ」と言ってくるユフィリアも、今度ばかりは大人しかった。正直、調子が狂ってしまう部分がある。もっとしつこく、「ユミのことをちゃんとして!」と言われるものとばかり思っていた。大人しくされると『もう別れても仕方ない』と思われているんじゃないか?などと勘ぐりたくなってしまう。


シュウト:

「おはよう」

ニキータ:

「おはよう」


 お手洗いに立った途中で、部屋から下りてきたニキータに、朝の挨拶をしておく。通り過ぎようかと思ったが、一瞬迷って、立ち止まることにした。


シュウト:

「……ちょっといいかな?」

ニキータ:

「なぁに? 私に答えられることかしら」


 笑顔で威嚇してくる。ジョークの類いだろう。朝から機嫌良さげで何より。


シュウト:

「その……」

ニキータ:

「ユミカのことなんでしょ?」


 言い淀むことすら許されず、ツッコミ・ストレートでワンストライク。話が早くて助かるのだが、プレッシャーも増える。といっても、別段フォアボールでの出塁を狙っているつもりはない。


シュウト:

「それなんだけど、なんかユフィリアが静かなんだ。どうしてだろう? 全然、何も言ってこないんだけど。……もう別れることになるって思ってるのかな? 何か、向こうから聞いてるとか?」


 もしも平気なら、もっと尻を叩いて「ちゃんとしろ」と言われるのではないか?と気になってしまう。


 本来、こういう質問を女子にするのはNGなケースが大半なのだが、この時のシュウトはテンパっていたため、そこまで気が回っていない。ニキータはため息をひとつ吐いてから答えることにした。


ニキータ:

「あの子は双方の友人だし、紹介した本人だものね……。でも、ユミカから相談されてはないと思う。裏でのやり取りはないから、心配しなくていいわ」

シュウト:

「そうなんだ……」


 ホッとしたような、逆に不安になったような。『もう結果は決まっている』という可能性は消えたらしいが、問題自体はそのままの大きさで残っている。


ニキータ:

「ねぇ、シュウト」

シュウト:

「うん……?」


 みつめられているのに気が付き、視線を上げてニキータの顔を見る。そのことで彼女の顔を見て話してはいなかった事に気付いた。『やましさ』に似た感情をわずかながらに自覚する。


ニキータ:

「言えてなかったけど、……助けに来てくれて、ありがとう。すごく、嬉しかった」


シュウト:

(…………ああ、これなんだ)


 息が詰まった。でも胸は逆に広がる感覚があった。はにかむような『嬉しかった』の一言で、あの時の行為がすべて報われたのだと知った。

 同時に自分がどこかズレていたことにも気が付く。ユミカに感謝してほしい訳ではない。逆だ。事件に巻き込み、危ない目に遭わせたことを謝らなければならなかったと気が付く。


シュウト:

「無事で良かったって、思ってる」


 本心からの言葉だった。ユミカのことで気付かせて貰ったこともあって、逆に感謝したくなるほどに。ニキータの微笑みを見ていると、穏やかで暖かい感覚に包まれる。


ニキータ:

「…………でもね」

シュウト:

「うん」

ニキータ:

「もし次があったら、その時はちゃーんと『最後まで』助けてね?」

シュウト:

「いいけど、どうして? 助かったんだから同じじゃ?」


 少しだけ間があって、そっぽを向きながら彼女は答える。


ニキータ:

「……けっこう痛かったんだから、オシリ」

シュウト:

「それは……」


 その辺りは、さすがに自分の担当ではないような気がする。(ジンさんに言うべきじゃ?)とは思ったが、口には出さずにおいた。


ニキータ:

「シュウトが助けてくれていたら、叩かれなくても済んだでしょう?」

シュウト:

「そうかな?」

ニキータ:

「そうよ」


 結局ひっぱたかれてしまう気もしたのだが(何せジンさんだし)、ニキータが言うのなら、そうなのかもしれない、とも思う。自分の実力はあの時点では足りていなかった。だから結局はジンが助けることになったのだろう。


シュウト:

「それなら、…………がんばります」


 なにか変な顔で言ってしまったのだろうか、笑い上戸のニキータが堪えきれずにクスクスと笑っていた。それにつられて、自分も笑う。からかわれたのかと思ったが、もうどっちでも良かった。しばらく二人で話していたからか、様子を見に来たユフィリアに「どうしたの?」と尋ねられてしまった。

 「なんでもない」と応えたニキータと別れて、自分はお手洗いへ。それが済んだら、ユミカに念話しようと決めた。できれば今晩にでも会って、話をしてこなければならない。





 シブヤの街中の〈妖精の輪〉から跳び、更にもう一度の転移を終える。耳鳴りが治まるのを待って、本日のドラゴン狩りを始めようとしていた。

 ユフィリアが緊張してなさそうな様子で、誰にともなく質問する。


ユフィリア:

「今日は何匹倒せるかな?」

ニキータ:

「何頭、じゃない?」

ジン:

「少し間が空いちまったからな。まーたゼロだったりして」

シュウト:

「夜までに10回から15回ぐらい戦える感じですかね」

レイシン:

「3頭ぐらいなら、どうにかいけるんじゃない?」

ユフィリア:

「目標は大きく!」

石丸:

「戦闘回数の50%ぐらいっスか?」

ジン:

「おいおい、タヌキじゃあるめーし、皮算用はやめとけって。こういう時は、目の前の一戦一戦を大事にこなして行くだけさ。結果は自ずと付いてくるであろう。うむ」


 重々しさを表現しようとしたジンがゆっくりと頷くものの、ユフィリアが混ぜっ返した。


ユフィリア:

「そっかー。ジンさんにしてはイイコト言ってるよね!」

ジン:

「だろう? ……じゃねーよ。てめ、ケンカ売ってんのか!」

ユフィリア:

「きゃー、ニナ、助けて~(笑)」

ジン:

「ニキータが盾になると思うてか!二人まとめて畳んでくれるわ!」


 リラックスしているなぁ~と、ほのぼのしてみてしまう。気負いは無いつもりだが、今回は新しいスタイルを試してみようと思っている。気持ちはそちらに向いていた。ドラゴンを相手にして通用するかどうか分からないが、挑戦する気持ちに高揚している。


ニキータ:

「シュウト、スイッチ!」

シュウト:

「えっ?」


 ぼんやりとしていると、ニキータが胸元をガードしながら自分の背後に飛び込んでくる。続けてジンが正面に立った。その背中にはしがみついたユフィリアがいて、ジンの首を腕でスリーパーホールドのようにガッチリと腕で締めつけていたが、鎧を着ているためか、あまり効果はなさそうだった。


ジン:

「ええい、邪魔だシュウト、そこをのけぃ!」

シュウト:

「何を、やってんですか……」

ジン:

「そりゃ、アレだろ。ニキータの緊張感を揉みほぐそうかと」


 手をワキワキとさせながら、そんなことを平気で言う。こういう人なのだ。ドコを揉みほぐすつもりなのか考えて、自分でも分かるぐらいに視線の温度が下がってゆく。氷点下は下回ったと思う。


ユフィリア:

「ニナはダメなの!」

ジン:

「だって、お前ってば揉むところねーんだもん」

ユフィリア:

「あるよ!」

ジン:

「ホゥ、どこよ? 言ってみ?」

ユフィリア:

「んーと、肩とか腰とか、足の裏とか。……あとは、首までなら触っても、いいけど」

ジン:

「今、首のトコで恥じらい入んなかった? 首に何かあんの?」

ユフィリア:

「別に何もないけど」

ジン:

「あ、もしかしてェ、首筋で感じちゃう人? いわゆる性感帯? うっは、エッロエロやね、エッロエロ」

ユフィリア:

「ちーがーう! そんなんじゃないってば!」


 片腕を放して頭をボコスカと殴るユフィリアだった。頭部を守るヘルメットに阻まれてはいるものの、「凹むからヤメロ!」と言いながら抵抗しているジンだった。

 これではしばらく終わりそうにないと思い、急激に怒りがこみ上げて来る。爆発まで3秒、2、1……


シュウト:

「いい加減にしてください!! そんなことやってたらドラゴン倒しに行く前に、日がくれちゃいますよ!」


 怒鳴り声に動きを停止させる二人。ぴょんとジンの背中から降りるユフィリア。


ジン:

「……すいませんでした」

ユフィリア:

「ごめんね、シュウト。でも怒っちゃイヤだよ?」

シュウト:

「まぁ、分かってもらえれば、それでいいんだけど……」


ジン:

「みろ、シュウトに怒られちったじゃんか」

ユフィリア:

「ジンさんのせいでしょ」つん

ジン:

「何で俺のせいなんだよ」

ユフィリア:

「だって、イヤラしいんだもん」

ジン:

「あららん、あんまホメるなよ、照れるぜ」

ユフィリア:

「ホメてないよ!」

ジン:

「フッ、女がイヤラしいって思うのは、セックスアピールを感じちゃったって意味なのだ。セクスィービーム!」

ユフィリア:

「……それじゃただの変態さんだよ?」

ジン:

「誰が変態だ、誰が。てめ、ケンカ売ってんのか!」

ユフィリア:

「きゃー、ニナ、助けて~(笑)」

ジン:

「クックック。ニキータが盾になると思うてか!二人まとめて揉んでくれるわ!」

シュウト:

「ちょっと! ループさせる気、満々じゃないですか!!」


 結局もう一度、怒鳴り声を出すハメになる。


ジン:

「イヤだなぁ、ちょっとしたジョークじゃないか……」

ユフィリア:

「そうだよ。おこりんぼは良くないよ? 眉間にシワができちゃうよ」


 ユフィリアは人差し指を伸ばしてくると、眉間をこりこりとマッサージしてきた。どうにもならないので大人しく受け入れる他にない。


ジン:

「そう硬くなるなよ、男が硬くしていいのは股間のマグナムだけだっていうぜ?」

ニキータ:

「下品」

ユフィリア:

「……それって、女の子は?」

ジン:

「女の子は全身、柔らかくてトロトロのゆるっゆるであるべき」


 ゆるゆるかどうかしらないが、単にズルズルと怠けているだけにしか見えない。


ジン:

「おっと、そろそろレイドゾーンだし、一発、『アレ』をやっておこうか」

ユフィリア:

「アレでしょ?」

ニキータ:

「まだやるんですか?」

石丸:

「了解っス」

レイシン:

「あっはっは」

シュウト:

「…………」


 武器を引き抜いて両手を上げると、例の呪文を唱えるジンだった。


ジン:

「うんにゃ~ら、ぐんにゃ~ら、ばんらばらん」

ジン&ユフィリア:

「ウーハッハー!!」

ジン:

「もう一回!」


 立て続けに3回の不思議な踊り。体幹部を左右に波立たせるように揺すり動かしている。それが終わると、なぜか爆笑するユフィリア。もはや恥ずかしいとかいう気持ちはないのかもしれない。


ジン:

「あんれまぁ。シュウト先生はおやりにならない?」


 変なおじさんがどこかの田舎の人みたいな口調で話しかけてくる。


シュウト:

「べつに、ドラゴン倒すのに必要ありませんし……」

ジン:

「ふぅ~ん、あっそう。別にやんなくてもいいけどね。単に『強くなれない』ってだけだし」

シュウト:

「うぐっ」

ジン:

「いやぁ、お兄さん安心したよ。最初は気を高めるのも『無理~、できましぇ~ん』とか泣いてたもんな?」

シュウト:

「泣いてませんよ!」


 立て続けに別角度から、刺客に襲われる。


ユフィリア:

「シュウトも一緒にやった方がいいと思うよ。一緒にやろっ!」

シュウト:

「あのさ、何で恥ずかしくないの?」

ユフィリア:

「んー、だって、女の子だけでカラオケとか行くと、もっとスゴ……」

ニキータ:

「ユフィ…………それ以上はダメ」


 にっこりと笑顔で禁止するニキータ。


ユフィリア:

「ご、ごめんなさい、お姉様……」


 電気が走ったかのように背筋をのばすユフィリア。同時に演技スイッチが入ったらしく、恐ろしさに震えはじめる。一体どんな設定なのやら……?


ユフィリア:

「お姉様、お姉様に嫌われたら、わたしく……」

ニキータ:

「大丈夫よ、アナタの事を嫌いになれるハズがないわ。こんなに愛らしいのですもの。でしょう? ……だけど、それ以上、女の子の秘密を口にしてはダメ。分かるわね?」

ユフィリア:

「はい! 必ず、必ず秘密にします……!」

ニキータ:

「そう、いい子ね」


 おびえていたユフィリアのアゴをそっと撫でるニキータ。うっとりと熱い眼差しでお姉様とやらを近距離で見つめるユフィリア。『何か』を期待している様子だった…………って、そうじゃなくて。

 演技による切り返しをするあたり、ニキータのノリの良さも滅茶苦茶だった。ジンが感動(もしくは笑いすぎ)で目に涙をためて拍手している。面白ければいいのだろうか?


ジン:

「うーん、深仙脈波紋疾走(ディーパスオーバードラ~イヴ)!」

シュウト:

「……もういいから早く行きましょうよ、ジンさん!」

ジン:

「へいへい。よーし、ゆるっと行くぞぉ~」

ユフィリア:

「ふわぁ~い」



 ゆるゆるだったのはここまでだった。


 はじめの内は矢を射ることなく、攪乱だけするように言い渡される。もし死んだ場合、蘇生させる時間が作れるとは限らないとも脅されていた。弓での攻撃はその都度、停止しなければならない。このタイミングを掴むという明確な目的を立ててドラゴンに挑むことにする。ジンがフォロー可能な範囲から外に出てしまうのだから、注意深くなければならない。


 まもなくジンがミニマップでドラゴンを発見。〈フローティング・スタンス〉と〈ウォークライ〉を使い終えたところで突撃。たっぷりとヘイトを集め、味方から意識を逸らす作業だ。

 ここで難しいのはジンのヘイトコントロール領域に進入する際に、ドラゴンの攻撃を受けないようにする部分だろう。これは移動しながら戦っているジンの動きに合わせる必要があるのだが、レイシンが毎回あっさりとやってのけているので、さほど問題にはなっていない。遅れて味方が参戦する場合、ジンやレイシンは見ていない様でいて、ちゃんとフォローを入れてくれる。


 戦闘への『入り』に成功すると、後は大体の流れを掴むことができる。大枠では普段通りだからだ。ドラゴンとジンの移動に合わせて、ポジションを変更する。近過ぎず、遠過ぎず。


 ここで戦線を外れて、ドラゴンの背後側への移動を開始する。気配消しはまだ使わない。まずはドラゴンの注意を二手に分散させる事が目標だった。ジンのヘイト獲得能力は異常なレベルにあるので、ほとんど攻撃されたりはしない。今までよりも格段に安全な気がするほどだが、油断せずに更に近づいて様子をみる。


 前方でジンと戦っているモーションの『オマケ』みたいに振り回される尻尾を回避する。オマケといえど、間違って喰らってしまうと20%程度のHPを削られる攻撃だった。どうにか尻尾を表現しようにも『野太い』としか思いつかず、ムチのような振り回し攻撃だが、とてもじゃないが太すぎてムチとは思えない。威力、スピード、迫力の三拍子が揃っていた。

 こうして攻撃を誘っては、回避を繰り返す。ドラゴンが苛立つかどうかは分からないが、少しでもイライラさせられれば味方が勝ち易くなるだろうと考えてみる。


 次に下がって弓を構える真似(、、)をする。イメージでは命中。近距離なので、実際に射ても外しはしないだろう。移動して停止、また弓を構えて射るイメージ。命中。

 ほぼ問題ない。もう一度、今度は気を高めながら弓を射るイメージ。……と攻撃が来たので慌てて回避をした。


シュウト:

(危ない。今の、特技使用中だったら喰らってたかも)


 恥ずかしくて、とても人には言えないようなミスなのだが、誰も見ていないので、無かったことにしておく。


 いろいろと試しつつ、弓の狙い処を求めて側面に移動すると、切り抜けたジンが自分の方に来た。しかし、何も言われない。ドラゴンとの戦闘中はかなり無口なのだ。集中していると言うよりも、会話などを避けている感じだった。


 ドラゴンの攻撃を読み切って、完璧なカウンターを入れるジン。あまりの美しさに目を奪われる。結果から逆算しないと実現できないレベルの攻撃だった。


 遅れて仲間達が集まってくる。これはジンの移動先を追いかけているためだ。外から見ると、かなり狭い範囲を追いかけて動き回っているような気がしてくる。パーティーが成立するのは20メートルほどの空間なのだが、相対的にドラゴンのサイズが大きいせいで狭く感じるのだ。これでは攻撃が届かない位置を確保するのは大変な作業だと思う。これで敵の体が2倍のサイズにでもなったら、20メートルの範囲、その全てが危険なポジションになってしまうのかもしれない。


ニキータ:

「シュウト、あまり無茶はしないで!」

シュウト:

「分かってる!」


 近くに来たタイミングで、ニキータが声を掛けて来た。余裕を装うために、歯を見せて笑っておく。


 ドラゴンの目などの弱点部位に矢を当てるのはやはり難しい。動いている相手を狙わなければならないためだ。(1秒ぐらい停止してくれるといいんだけど……)などと考えつつ、ポジションを変更。


 そのまま戦いは続行され、一度目の戦闘としてはずいぶんと長くなってきた。ドラゴンの強靭すぎる生命力が状況を引き延ばしているのだろう。逃げられないように、と祈る気持ちで更に一歩、踏み込んで注意を引くようにしてみる。


ジン:

「これで、終わりだ!」


 それでも最後にはジンの突きが深々と刺さり、ドラゴンを倒し切ってしまった。感覚的には『あっさり』という気分で、楽をし過ぎたと思っているのだが、気がゆるむと安堵のため息が漏れていた。


ジン:

「だーっ! また俺の剣が~!」


 突き刺さったままの剣が、沈んだドラゴンの体の下敷きになる場所に入ってしまうらしく、どうにかしようともがいているジンだったが、どうみてもドラゴンが消滅するまで待った方が早そうである。これは前回ドラゴンを倒した時と、ほぼ同じシーンの再現だった。


シュウト:

「ジンさん、なんか……倒せちゃいましたね」

ジン:

「おう。まぁ、こんなもんじゃねーの?」


 ドラゴンの体を動かそうと踏ん張っているので、気のない返事しか返ってこない。結局、消滅までに剣は戻ってくることはなかった。しばらく休憩してから次の獲物を探してウロウロすることになる。


 その後、夕方まで戦い続け、どうにか4頭まで倒すことが出来た。倒し切るとなると戦闘が長引くこともあって、10戦が限界。最後に惜しいところで1頭を逃し、勝率5割には届かなかった。それでも獲得した素材アイテムでみると、戦果は凄いことになっている。

 2戦目からは実際に弓を射て戦いに参加した。何度か危ない場面もあったものの、結果的には大過なくこなすことができた。


ジン:

「今日のMVPは、ユフィリアだな。シュウトが外で注意を逸らしていた部分も大きいが、ユフィが『地味な作業』をちゃんとこなしていたから、この数を倒すことが出来た訳だし」

シュウト:

「そうですね。そうだと思います」

ユフィリア:

「本当? からかってない?」

ジン:

「こんな事でイチイチからかうかっての」

レイシン:

「うん。ホントに良かったと思うよ」

ニキータ:

「凄いわ、ユフィ」

ユフィリア:

「ふふふ、ホメられると伸びる子です!」


 葵に師事していることも理由として考えられるのだが、のらりくらりとした掴み所のない動きで、ドラゴンの攻撃が当たらないように動いていた。ユフィリアの行動に引っぱられる形で、仲間達の被弾率(=ジンのフォロー率)が下がっているのが、外からだとよく分かる。

 こうなってくると、ジンと一緒になって冗談を言ってリラックスしていたことも、活躍できた一因としてあるのだろうか?などと考えたくなってしまう。しかし、それは恐ろしい想像だった。(あの踊りをやっている自分……? 無い無い)


ジン:

「しかし、俺らはともかく、レベルキャップでも外れたんじゃねーかってぐらい、おまえのレベルって上がらないな? アレはちゃんと飲んでたんだろうな?」

シュウト:

「EXPポッドを飲んだとしても、7レベル下までしか経験値が入らないので」

ジン:

「83レベル以上の敵が必要ってことだよな。おーい、石丸?」

石丸:

「そうっスね。今日の戦いで83レベル以上だったのは2体っス。倒せたのはその内の1頭っスが」

ジン:

「逃がしてんのかぁ。まぁ、逃がしてなくても全体の2割か……」


 セリフから考えると、ドラゴンのレベルやらは戦う時にいちいち確認していないらしい。本当は非常識なのだが、それもジンらしさだと思うようになってきた。なんでもアリなのだ。


シュウト:

「もっと深いゾーンまで行きますか? ……いえ、イヤなんですけど」

ジン:

「いや、今はココぐらいの負荷が丁度いいはずだ。この先へ進むのはまだ早い。自殺行為だろう。……もちろん俺は平気だが」

シュウト:

「今でも十分に過負荷な気がします」

ジン:

「それは無いな(きっぱり)。しかし、そうなると、俺たちの方がお前にレベルで追い付く方が早くなりそうだな」

シュウト:

「そうなりますね」


 ジンは83レベルのままだが、ユフィリアとニキータがそれぞれ1つレベルを上げていた。

 EXPポッドは効果が2時間持続する。経験点の増幅以外にも、初心者向けに幾つかの効果が得られるため、ドラゴンと戦う直前から飲む方が有効なのだ。

 しかし、6人で使うとなると消費も早い。葵の貸金庫に1日1本が支給されているものなので、大事に使わなければならない。


 今日はそこそこ満足な戦果を得て、帰還呪文を使ってシブヤに戻ることになった。





 夜遅くアキバから戻ったシュウトは、ギルドホームの屋上から月を眺めていた。半月よりも少し大きいお月様だった。


 自然と思い出すのは、小学校6年の時に経験した初恋のことだった。ミジメな思いをしたので、あまり思い出したくない記憶。


 いいなぁと思ったのは、クラスでも大人しい、あまり目立たない子だった。なぜ好きになったのかなんて、わからない。告白するつもりも、勇気もなかった。なのに、ちょっとした事でバレてしまった。

 すると彼女は、クラスの人気者になってしまう。今でこそ『大学デビュー』の様なことだったと分かるのだが、当時は自分を利用して、クラスの人気者になろうとした様にしか、見えなかった。会話したのも何回かだけ。「人前で話しかけないで」と最初に言い渡された。二人きりで話した内容は、翌日、みんなの前での話題にされた。そんなことをされて、二度と話なんてできるはずもなかった。

 その後、彼女は親の都合で転校してしまうのだが、自分はそのまま小学校を卒業するまでからかわれ続けた。それも中学に上がって自然と収まったのだが、その頃には初恋の思い出は、ミジメな記憶しか残っていなかったし、全般的に女の子に対する興味も薄まっていた。


 あの子が感じていたであろう照れくささは、この歳になれば理解できるし、相手にどこまで配慮を求めることができたのかは疑わしい。それに比べれば、ユミカとの思い出は、楽しかった。優しくされて嬉しかったのだ。しかし、楽しかった分だけ、嬉しかった分だけ、心が重い。


 何をどう話したのか、よく覚えていない。特に、ユミカに最後に言われたセリフが何か分からなくて、ぽっかりと思い出せずにいる。

 気が付くと血まみれでギルドホームまで戻って来ていたのだ。アキバからの帰りにゴブリンか何かと戦闘になったはずだが、ほとんど記憶に残っていない。


 一人で居て、涙が出るわけでもないのだが、ユミカを泣かせてしまったのはジクジクと痛む。正式にフラレてみて、案外、精神的にダメージが大きいのは意外だったというべきか。ちゃんと好きだったのかもしれない、と再確認しても、もう後の祭りなのだ。行き場のない気持ちがぐるぐると渦を巻く。どうすればよかったのだろう。


 月を眺めて、これまでの楽しかった記憶を思い出す。でも、未来にはこの続きはないのだと落胆する。



 どれだけそうして月を眺めていただろうか。足音に振り返ると、ジンが屋上に上がって来ていた。


ジン:

「よっ」


 ジンは一言いつもの挨拶をすると、歩いてきて隣に立ち、月を見上げた。平気そうな演技をするべきなのか、辛そうな演技をするべきなのかを考えながら、ジンの顔色を伺うっていると、目があってしまう。


シュウト:

「あの、どうも」


 なぜか挨拶していた。なんというか、自分のバカさを自覚する。


ジン:

「ああ。…………つまりだ。ちょっと普段と違うことをあると、アタフタしか出来ないダメな大人がいるわけだよ。俺は『しばらくほっとけ』と言ったんだ。本当だぞ?」

シュウト:

「だから、様子を見に来たんですね?」

ジン:

「無理矢理にな」


 自分の事情も忘れて、(ジンさんも大変なんだな)と少しばかり同情する。泣いている他人の様子を見に来るような真似を、自分でしたいとは思わない。泣いていた訳じゃないけれど、他人から『そう見える』ことぐらいは、分かる。

 既に落ち着いているし、周囲が見えなくなって『放っておいてほしい』という感覚はなかった。どちらかと言うと、周囲の反応が気になってしまう『過敏な状態』というべきか。


シュウト:

「ご心配を、おかけしました」

ジン:

「フン、フラレた割に冷静だな。部屋に戻って、枕に顔を埋めて、ワンワン泣くぐらいしたらどうだ」

シュウト:

「その方が、いいですかね…………」


 あからさまに狼狽えて『フラレました』というてい(、、)で戻って来てしまったので、思い出すのも恥ずかしかった。これで明日の朝あたりには、腫れ物にさわるかのような『丁寧な会話』が待っているのかと思うと、今から胃が痛い。

 ジンが黙っているので、沈黙が長く続いた。沈黙は嫌いではないが、今は努めて明るく振る舞ってみたい気がする。



シュウト:

「あの、訊いてもいいですか?」

ジン:

「なんだよ? 変なこと訊くんじゃないぞ」

シュウト:

「彼女に『謝って欲しくなかった』って言われたんですが、どうしてなんでしょう?」

ジン:

「なんだ、お前、謝ってきたのか?」

シュウト:

「何か不味かったでしょうか」


 アリガチな失敗をしたかのような反応を示すジンだった。どうしてなのか分からない。


ジン:

「非モテであるところの俺に、どうしてそういう質問が答えられると思うんだ、お前は」

シュウト:

「いいじゃないですか。こういう時ぐらいサービスで教えてください。なんで、謝ったらダメだったんですか?」

ジン:

「……いいか、あくまでも『俺の考え』だからな? メッセージというのは厄介な性質をしているもので、お前が『ゴメン』と謝ったら、相手は『お前が悪かったのか』と思ってしまうのだよ」

シュウト:

「はぁ……」

ジン:

「この場合、悪かったのは黒くて丸い連中だろ?」


 どうやら〈黒曜鳥〉(ブラックスワン)の丸王のことを言いたいらしい。

 

ジン:

「黒くて丸いのが悪いヤツで、お前は助けに行った正義の側。なのに、『ゴメン、僕が悪かった』と言った。……まさかグルだった訳じゃないよな?」

シュウト:

「もちろん、違います!」

ジン:

「なら、相手の女の子は、お前は悪くないハズなのに、『僕が悪かった』もしくは『僕が悪かった、けど、許してね』というメッセージを受け取ることになる。女の子側からすれば『大好きだよ』だけあればいい。『僕が悪かった、けど、大好きだよ』のメッセージは、面倒くさい。迷惑なだけだ」


 自分が発するメッセージと、相手が受け取るメッセージの違いだろう。段々と意味が分かってくるのだが、納得が行かないことだらけだった。


シュウト:

「でも、道義的というか、道徳的・倫理的に考えて、謝っておくべきだと思うんですが……?」

ジン:

「それは俺も男だからよく分かるけど。人間の全てが同じ知的水準にある訳じゃない。別れ話をしようだなんてテンションやらコンディションやらで、通常の思考力が期待できるか? 賢いヤツは個別にみれば幾らでもいる。しかし、人類はそこまで賢くはないよ。些細なことで簡単に誤解するからオールドタイプなわけだし、だから分かり合おうと努力もする」

シュウト:

「でも、」

ジン:

「『でも、自分は誠実でありたい』ってか? 彼女の事情がどうあれ、自分の誠実さは失いたくない。当然、相手もそれぐらいは理解できる人であって欲しい。……そうやって、謝りに行ってたハズが、相手を断罪してたりしないか? 『僕の誠実さを分かってくれない人に用はない』ってさ」

シュウト:

「それは……」

ジン:

「うむ。曲げられないこと、曲げちゃいけないこともあるだろうけど、本当に、女の子の前でも曲げられないようなことなのか?ってな。こういう場合は、黒丸が悪いんだし、そのまま悪人にしちゃって、ちゃっかり慰める側に回るべきなんだ。こう隣に立って、肩に手を回して『怖かっただろう?』みたいな。向かい合って話すとケンカ腰になったりするから、同じ方向をみる感じでだな……」


 隣に立っているジンが肩に手を回してくる。女の子役には少々納得いかないものがあったが、同じ方向を見て話すという雰囲気は良く伝わってくる。


ジン:

「と、この手の会話の細かい組立てだのはともかく、俺は心理戦のプロじゃないからアレだぞ? こういうのは俺の考えであって、女の子が本当はどういう風に考えているのかなんて、わかりゃしないんだからな?」

シュウト:

「難しいです。ジンさんだったらフラレなくて済んだのかも」

ジン:

「それは違うだろ。俺だったら付き合うところまで行ってねーよ。

 それにな、戦術で戦略をひっくり返すような真似を、人間関係でしようとするなよ。口先で誤魔化して、別れないで済ましたら全部が上手く行くって訳じゃねぇだろ」


 正しいことを言っているのは、分かる。けれど、胸に染み込むまでにはまだ時間が掛かりそうだった。

 張りつめていたものがなくなったのか、心が重くて、シナシナと草臥れる。


シュウト:

「やっぱり、重たい、です」

ジン:

「軽いよりはいいだろ」

 

 素っ気ない言葉だったが、確かにそうかもしれない。


ジン:

「いいか、『女は星の数ほどいる、次ガンバレ』的な慰めのセリフを言って貰えると思うなよ? 非モテの俺的に言えば、こういう時は『ざまぁみろ』が正解だ!」キリッ

シュウト:

「……前から思ってたんですけど、ジンさんってどうして『非モテ』なんですか? モテますよね」

ジン:

「フッ…………マジで傷付くだろ、殺す気か?

 特別に教えてやろう。いくらチヤホヤされてもモテることにはならないのだよ! キャキャッウフフが日常茶飯事だとしても、ズッコンバッコンまで行かなきゃ意味ないんだよう!!」


 血の叫びが人気のないシブヤの夜に轟いた。本気で人が少なくなっていてよかった。


葵らしき声:

「叫ぶなバカやろう!」

ジン:

「引っ込んでろロリチビ!!」


 下の階の窓から、葵のものらしき怒鳴り声が聞こえ、ジンが下に向けて怒鳴り返していた。いろいろとダメ過ぎる。


ジン:

「ともかくだ。過去は変えられないか、過去の解釈は変わる時がくる。今はキツくても、後でよかったと思える日もくるだろう」

シュウト:

「そう、ですかね」

ジン:

「いや、テキトーに言っただけだ」


 漫画っぽくズッコケたかったが、ぐっと堪えた。自分の美的感覚が許さなかった。


ジン:

「だいたい、ドラゴンと戦ってないで一緒にいりゃ良かったんじゃねーの?」

シュウト:

「そんな自分勝手が、許されるわけないじゃないですか……」

ジン:

「誰が許さないんだ、誰が。そんな堅物じゃ、ずっとそばにいた間男に寝取られちまうぞ。勢いとか、流れとか、情にほだされたとか言ってな。女は怖いぞ~? 裏でやることやっといて、バレなきゃいいや~でそのまましれっとキープとかザラだと聞くね。素直に別れるだなんて、誠実な方だと感謝すべきだ」

シュウト:

「…………まさか」

ジン:

「まさか思い至る事が…… いや、待て! 今のはアレだぞ、冗談だぞ!そんな深刻そうな顔をするな!」



 しばらくジンと話して気が紛れた部分はあった(逆に重くなった部分もあったけれど)。屋上から立ち去る前に、もう一度、振り返って月を見る。

 ユミカに最後に言われたセリフが分からなかった。聞こえなかったのだと思ったが、単に自分の心が拒んでいたのだろう。すんなりと思い出すことができた。


回想のユミカ:

「嘘でもいいから、選んで欲しかった……」



シュウト:

(意識が、あったんだな……)


 怪しい魔力を秘めた月の光に、ガツンと頭を殴られた気がした。




サブタイ適当すぎて自分でもドン引きです。

えっと、かなりシラけて「お寒い」とは思うのですが、バランスシート的な問題でおちゃらけがたくさん必要とかの都合です。どうぞご容赦を願います<(_ _)>


「バレなきゃそのまましれっと~」のくだりは、動物行動学が出典であり、決して作者の個人的な感情・思惑・経験・思考・主義主張・哲学・宗教および政治的思想・その他は入っておりません。あしからず。


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