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30  対立と対話

 

弥生:

「そういえば、水梨が帰ってくるってね?」

睦実:

「うげっ、帰ってこなくっていいのに」

ニキータ:

「弥生さん、水梨って?」

ふーみん:

「そっか、入れ違いだったかも」

弥生:

「潜入班の子なんだけど、そうねぇ、一言でいうと……」

長瀬友:

「ヤンキーの人です。怖いです」


 ニキータは〈ハーティ・ロード〉女子組の井戸端会議くだらないおしゃべりに参加していた。目的は情報集めといったところである。この中で言えば、弥生と親しくなっておくのがもっとも効果が高そうに思える。彼女は霜村や葉月の近くで仕事をしているのだ。事務ならなんでもござれな秘書の立場にいる。


ふーみん:

「だけどさぁ、水梨って怪しいよね~」

睦実:

「何が」

ふーみん:

「ムフフフ」


 元気娘のふーみんが思わせぶりなことを言い始める。早くも重要な情報か?と思ったが、単に恋バナらしい。ちなみに彼女はあだ名ではなく、登録したキャラ名称がそのまま「ふーみん」だった。


 もともとエルダー・テイルが人気ゲームだったこともあるが、面白いキャラ名をつけてしまう人も少なくない。ニキータの知っている範囲では「第17代にゃん太夫☆髭虎」みたいな人(猫人族)もいたのだが、〈大災害〉によってゲームが現実化してしまうと、やはりと言うべきか、笑えないことになってしまった。仲間内では本名で呼べばいいのかもしれないが、ギルド間交流ではステータスで相手の名前が見られるため、「やっちゃったな」という雰囲気が漂うのは避けられない。

 上には上がいるため、ふーみんぐらいの名前ならばまだまだ可愛らしい程度だが、それでもシリアスな話をしている時に(霜村や葉月が)「ふーみん」と呼ぶとコミカルなことになってしまう。

 同年代の同性向けの名前なので仕方ない部分はあるのだが、本人が気にしているかどうかはちょっとした問題になる。開き直れる子はいいのかもしれないが、彼女は気にしているらしく、呼びにくかったら「ふみ」と呼んで欲しいと言っていた。


ふーみん:

「睦実ちゃんにちょっかい出してくるよね?ラブな予感じゃない?」

睦実:

「またその話? 今はシュウト君の時代だよ!」

弥生:

「ちょっと前までは葉月くんがカッコイイって言ってなかった?」

睦実:

「もう忘れました。シュウト君サイコーだよ? この間なんか組み敷かれちゃって、もうどうしようかと思っちゃった」くねくね

ふーみん・長瀬友:

「「きゃー!」」

ふーみん:

「エロ!」

長瀬友:

「えっちです」

弥生:

「どうせボーっとしてて、かばってもらったとかの話なんでしょ?」

睦実:

「そうとも言う。けど、ドキドキもんでしょ」


ニキータ:

(あ、弥生さんと仲良くなりたいかも……?)


長瀬友:

「シュウトさん、かっこいいです」

ふーみん:

「カッチョいいんだけどさー、ちょっと話し掛けにくいんだよね」

睦実:

「話しちゃうと優しいんだよぅ。ちょっと困った感じの笑顔とかされると、いじめるのは正義だと思っちゃう」

長瀬友:

「話してみたいけど、ちょっと怖いです」

睦実:

「ナガトモ、頑張ろ? 大丈夫だよ、やさしーから。今度一緒に……」


 長瀬友は大人しめの少女だった。短く略されてナガトモと呼ばれたりしている。シュウトに話しかけるのが怖いというのは彼女に限らず、一般的な反応らしい。

 シュウトは用事でも無ければ女の子と話すことなんてないと思っているフシがあり、話し掛けるのはそこそこ難しいタイプだった。あまり笑顔も見せないため、つまらない話をするのは怖くなり易い。そんな部分もクールだということになってしまうので得していると言えなくもないが、本人は自分がモテるとまでは思ってそうにない。まともに相手してくれる女性は母親と妹だけと言うぐらいなので、女の子を拒否するオーラが出まくっていたのだろう。

 一応、ユミカと付き合っているような形になっているハズだったが、シュウト自身が押しに弱いためか、強引な人が勝つパターンに入ってしまっているようだ。



ニキータ:

「霜村さんとか、葉月くんはどう?」

弥生:

「私は無理」きっぱり

ふーみん:

「そっかなぁ? 霜村さんって男らしいし、優しいトコあるよ?」

長瀬友:

「頼もしいです」

睦実:

「おっさん系に興味なし」

ふーみん:

「葉月くんは美形だよね。言葉遣いが丁寧なのも好感度高いなー」

長瀬友:

「でも、いつもヤンキーと一緒にいます」

ふーみん:

「そうなんだけど、キサラギさんは真面目だし、良い人っぽいよ?」

睦実:

「おっと、ふーみんはキサラギ推しかぁ?」

長瀬友:

「キサラギさんはヤンキーじゃないですよね?」

ふーみん:

「勝手な方向にもっていくなっての!」

弥生:

「葉月くんは笑顔で何か企みそうだからね。キサラギくんは実直というか、職責以外のことには手をだそうとしないタイプだよね。慎重っていうか」


ニキータ:

(これじゃ単なる恋バナ……というか品評会?)


 弥生は予想通りの反応だったが、ふーみんと長瀬友には霜村は好意的に評価されていた。クラブ活動でいう部長や、会社でも出世頭のような権力者タイプは意外と人気がある。本人そのものよりもイメージに反応しているのだろう。近くで見ている弥生は冷静に人物の観察が出来ているはずだ。

 雑談から情報を引っぱるのには長い時間と分析力が必要になる。女性としてはかなり論理的と言われるニキータだったが、自分程度ならば幾らでもいるだろうぐらいにしか思っていない。なんにしても意図的に情報収集をしたことはなく、上手くやれる自信はない。そもそも情報の重要性に目覚めたのは〈大災害〉があってからの話で、今から思えば傭兵として必死に営業していた気もするので、周囲のギルドには迷惑を掛けてしまったかもしれない。こうしていると久しぶりに自分から動く感覚があって、やましいことをしている訳でもないのに落ち着かなかった。

 油断していたためか、話題が変わっていた。


ふーみん:

「ところで、ユフィリアさんって、どうなの?」

ニキータ:

「どうって、何が?」

ふーみん、

「だから、その、シュウトくんと良い感じなんじゃないの?」

長瀬友:

「ショックです」

ニキータ:

「うーん、仲は悪くないけど、友達っぽいわね」

睦実:

「そうだよ、シュウト君はみんなの共有財産なんだから!」

弥生:

「財産て……」

長瀬友:

「ニキータさんはどうですか?」

睦実:

「ニキータは誰が好みなの?さぁ、さぁ!」にやにや

ニキータ:

「そうね、レイシンさんかな? 既婚者なのが残念だけど」

ふーみん:

「料理のできる年上のダンディ……、そっちがあったか」

睦実:

「不倫願望キタコレ!」

弥生:

「自重しろ、オタ娘」(チョップ)

睦実:

「いたひ。そう言う こんばんやよやよ だって、ねらーのくせに!」





弥生:

「やめなってば!」

水梨:

「テメェがジンってのか、オイ」

ジン:

「あ?」

水梨:

「立てよ、オラ」


 夕食前の僅かな時間だった。ジンだけが座ってくつろいで場所取りをしていた。レイシンはまだ厨房、シュウト達は配膳に協力して離れていた。見たことの無い男がジンに詰め寄る。針金のようなイメージの尖っているタイプ。


ジン:

「めんどくせぇな、なんなんだ」

水梨:

「ナメてんのか、あ?」

ジン:

「…………」イラッ

水梨:

「テメェだろ、ウチにイチャモンつけてんのはよ、金、金ってセコいこと言ってンじゃねぇぞオい!おい!!」

ジン:

「やかましいぞ、キャンキャン吠えてんじゃねぇよ、チンピラ」

水梨:

「喧嘩売ってんのか、喧嘩売ってんだよなぁ!」


さつき:

「やめんか水梨! 客人への無礼は私が許さないぞ!」

水梨:

「おい、さつき! おまえ、この金の亡者に味方すんのか!?」

睦実:

「ゴラァ、さっちん呼び捨てんな、チワワぁ!!」

水梨:

「ち、チワワじゃねーよ!」


 睦実のチワワ呼ばわりで緊迫した空気に笑いの成分が混じる。

 料理の皿を持っていたニキータの手が笑いを堪えて震えるのをみて、心配したシュウトが受け取って近くにサッと置いてしまう。


ユフィリア:

「ジンさん……」

ジン:

「離れてろ。その料理にコイツのツバでも飛んだら食べられなくなっちまうだろ?」

水梨:

「んだと?」


ジン:

「ハッキリさせておこうか、俺達は仕事しに来てんだ。ボランティアじゃない。タダで働いて欲しけりゃ土下座でもして頼むのが筋だろうがよ。金も払わない癖に、タダ働きしなきゃ悪人だってか? ハンパすんのもいい加減にしろや」

水梨:

「このヤロウ」 ビキビキ

ジン:

「ウチのレイの料理を残さず食べといて、その礼がこれなのか? ビタ一文払いもしないで、大したタマゲタだな。大体、自分の所のギルドメンバーの管理はそっちの責任だろ。だらしないったらないね」

水梨:

「表出ろよ、クソが……」

霜村:

「ハッハッハ、水梨 止めろ。すまん、ウチの仲間が失礼した」

ジン:

「まったくだな、ちゃんとして欲しいもんだね」



 料理が並べられ、全員が席に着いたが、〈ハーティ・ロード〉のメンバーは食べ始めることが出来ずにいた。ジンの言うことは正論でも、感情的には水梨の言うことも否定できない。ここで料理を食べては恥知らずになってしまう……そんな空気になっていた。


睦実:

「みんな!ちゅうもーく!ちょっと聞いてよ!」

ラヴィアン:

「……今日の料理は、その」


 睦実がラヴィアン少年の腕を取り、みんなの前に引っ張り出して来る。その脇にレイシンも立ち、勇気付けるようにその肩に手を置いた。


ラヴィアン:

「僕も一品作りました。ぜひ、食べてみてください!」



「それじゃあ、……しかたないか」「ドレが不味い料理だ?見た目じゃ分からないぞ」

 しぶしぶといった様子で食べ始める〈ハーティ・ロード〉の仲間達。睦実はしてやったりといった表情で「にかっ」と笑っていた。


ジン:

「ったく、これじゃ誰がリーダーなんだか……」


 そう呟くジンも軽く微笑んで見えた。





(ダメだ、真っ直ぐ飛ばなくなった……)


 夕食後、ジンとさつき嬢の会話からヒントを得たシュウトは、矢に気をこめる練習をしていた。気の量を増やしてみることを優先して練習してみるのだが、力み過ぎているのか、矢が真っ直ぐに飛ばない。どうしたものかと考え、ジンに相談してようと思ってテントに戻る途中であった。


(あれは…………?)


 真夏の夜に暗色のマントを身にまとい、戦闘準備を終えた数人が慣れた動きでどこかに向かっていく。嫌な予感がしたシュウトは気配を消してその後を追いかけることにする。


(5人。まだ隠れているのか?…………あれは、ジンさん!?)


 私服に剣を一本持った切りのジンがぶらぶらと歩いてくる。怪しい5人組は暗闇に乗じてジンを襲う構えだった。


(闇討ちする気か……)ギリッ


 ――シュウトの中で何かが途切れる音がした。





ジン:

「いるんだろ? さっさと出て来いよ」

キサラギ:

「気付かれていたのなら、仕方ない」

水梨:

「…………」

ジン:

「チワワも一緒か。何だ、逆ギレで人を襲おうって?」

キサラギ:

「大人しくしてもらおうか」

ジン:

「バカ言え、襲う気マンマンだろ? とっととかかって来い」

水梨:

「…………」

キサラギ:

「話が早いな。遠慮はしないぞ?」

ジン:

「話が遅いな。俺を殺ったらアイツ等はシブヤに帰っちまうが、それでいいのかい?」

キサラギ:

「それは困るのでね、しばらく石化していて貰おうかと思っている」

ジン:

「そう来たか。なるほどね。んで、誰の指示だ? 霜村か?」

水梨:

「…………」

ジン:

「なら葉月か」

水梨:

「…………」

ジン:

「なるほど、葉月なわけね」

キサラギ:

「葉月は何も指示していない。少し困った顔をして(、、、、、、、)いたのでね」

ジン:

「くっだらねぇ、お前等の大人ゴッコになんぞ付き合って居られるかよ!」

キサラギ:

「鎧も無し、盾も無し、更に1対4で勝負になるとでも?」

ジン:

「初歩的なのをありがとう。そっちは5人だろ? もっとも、急がないと2対3(、、、)になっちまうがね」

キサラギ:

「なに?」


 水梨の背後から現れたシュウトが音も無く一閃する。水梨はまるで反応できないまま音を失っていた。


 〈キリング・サイレントリィ〉。

 〈暗殺者〉の特殊攻撃特技で、背後攻撃に成功すると相手の声だけではなく、あらゆる音を数秒ほど奪うことが出来る。


 慌てて振り向こうとする水梨だったが、シュウトはその肩に手をおくことで簡単に阻止し、そのまま背後からの攻撃を続けた。今度は体を振り回して引き剥がそうと暴れるものの、シュウトは素早くタックルしながら足を掛けて押し倒してしまう。『ぬっ』と伸びた腕が水梨の後頭部を捕まえ、倒れる勢いのまま、顔を地面に叩き付けた。がっちりと押さえつけると、短刀を何度も何度も突き立てる。


 キサラギはまるで動けずにいた。気付けば潜ませていた仲間は2人も殺されていた。ひとつにはジンという〈守護戦士〉が会話を引き伸ばしたためなのだろう。同時にシュウトの無駄のない動きに〈暗殺者〉としての格の違いを見せ付けられていた。真っ直ぐに相手を殺すことだけを突き詰めた無駄の削ぎ落とされた動き。水梨が残り数秒で死ぬと分かっていても、助けに入れない。死の恐怖から必死にもがく水梨だったが、シュウトはその抵抗をものともしない。あまりにも一方的だった。


シュウト:

「がっ……!?」


 シュウトという〈暗殺者〉が蹴られて吹き飛ぶ。彼の殺戮を止めたのは、意外にもターゲットの〈守護戦士〉、ジンであった。





シュウト:

「どうして、ですか……(ハァ、ハァ)……そいつらは……(ハァ、ハァ)……ジンさんを……」

ジン:

「いい動きだった、が、お前は怒りをコントロール出来ていない。少し落ち着け」

シュウト:

「今はそんなことどうだっていいじゃないですか! あいつ等は汚い!死んでいい連中です!」

ジン:

「そんなことは関係ない。お前が怒りに支配されていることの方が、よっぽど大きな問題なんだよ」

シュウト:

「許さない、殺す、有無を言わさずに殺す。ブチノメス、八つ裂きに、うぉぉぉおおおお!!」


 熱がシュウトを突き上げていた。人間としては膨大な熱量がシュウトを怒りと殺人欲求へと駆り立てていた。


ジン:

「しょうがねぇヤツだな」

シュウト:

「フーッ、フーッ、フーッ」

ジン:

「わかった。少し、シブヤで頭をひやしてこい。後は俺がやっといてやる」



 サッと冷たい風が吹いた。

 いつか聞いたのと同じ優しい口調。ジンが宥めるよう言葉を掛けると、突如、シュウトを突き上げていた熱気が冷気へと変わっていた。すべての血が下がってゆく。


(死ぬ……動いたら死ぬ、逃げたら死ぬ、下がったら死ぬ、呼吸したら、死ぬ!?)


 今まで相手を殺そうと思っていたのと同じ強さで、今度は死の恐怖に押しやられていた。どうして今まで怒り狂っていたのか、まとめて皆殺しにしようとしていたのか、もう思い出せなくなっていた。

 逃げようにも逃げられない。ジリジリと下がりながら様子を伺う他にない。ジンが動いた瞬間に逆方向へ逃げられれば、もしかしたら1秒か2秒、生きながらえることができるかもしれない。自分は死ぬという絶対的な確信。ジンがこれまで自分と戦おうとしなかった理由を身を持って知った。その前に立つことすら出来やしない。


 しかし、シュウトにとっての救いは意外なところから現れた。


ガギン!


 金属が打ち鳴らされる耳障りな音。……霜村による背後攻撃。完全な不意打ちだったが、ジンは振り向きもせずに受け流していた。


霜村:

「今のを止めるか……」

ジン:

「お前も死にたいのなら、相手してやるぞ?」


 いつの間にか霜村と葉月がそこに立っていたが、ジンの態度は変わらなかった。シュウトもふらつきながら立ち上がると、武器を構える。


霜村:

「フ、喧嘩両成敗というだろう?」

ジン:

「ぬかせ、両成敗だ? ふざけるな。無関係 気取りやがって、部下が勝手にやった事だろうと責任者が責任とるのが筋だろうが」

葉月:

「我々が来た時には、そちらが仲間割れしていたように見えましたが?」

ジン:

「関係ない。口出ししないで貰おうか」

葉月:

「見たところ、そちらには目立った被害もない。一方で我々の仲間には被害が出ているようですが?」

シュウト:

「ジンさんを先に襲ったのは貴方達だ。戦闘開始後の損害は実力の問題でしょう」

葉月:

「寸前まで仲間割れしていたのに、麗しい師弟愛ですね? 貴方を救ったのはこちらの霜村ですよ?」

シュウト:

「それを恩に着て、襲撃を無かったことにしろと言うつもりですか? 馬鹿にしすぎです」

ジン:

「こういう時にゃ、誠実さの示し方ってものがあるんじゃないのかい? 葉月くぅん?」

葉月:

「たいへん勉強させていただいています」



霜村:

「フム、ここはひとつ、腹を割って話さんか? ……お前達の目的は何だ?」

ジン:

「……当面の目的は金だ。今はシブヤにギルドを構えているんだが、人がいなくなっちまった。今度はアキバにそこそこマトモなギルドスペースを購入したい。それと最終的には『現実世界への帰還』が俺達の……いや、俺の(、、)目的だな」


 ジンが語る目的はごくシンプルなものだった。特に隠す処もない。考えてみれば自分達が東日本からの密偵かもしれないといったシナリオを想定していた可能性もあるのだろう。ジンの台詞には率直な分だけ、説得力があるように思えた。


ジン:

「そっちはどうなんだ?濡羽を倒しても、何も変わらないのに、何故、戦ってる?」


霜村:

「人を纏めるのには、分かり易い目標が必要だ。濡羽を倒す。ミナミを奪還する。それ以上のことは必要ないだろう。仲間にはその都度、指示を与えていくだけだ」

葉月:

「付け加えますと、タイミングやシチュエーション次第では『濡羽を倒す』というのは高いアピール効果を持ちえると考えています。最後の決定打になる状況はありえるかと」


ジン:

「なるほど……落とし処の問題か。濡羽を倒せばお前等は顔が立つ。撤退もできるようになるってわけか」

霜村:

「いいや、俺は(、、)本気でミナミを奪還するつもりでいるのさ」


 ジンと霜村はしばらく睨み合っていたが、さっと身を翻すと、「いくぞ」とシュウトに声を掛けてその場を堂々と歩いて立ち去ることになった。





 キサラギは生き残っていた回復職(ヒーラー)に蘇生を指示したため、なんとか殺された2人を消滅させずに済んでいた。


 チラりと見やると、水梨は地面に倒れたまま嗚咽を漏らしていた。〈キリング・サイレントリィ〉の効果が切れたのに気付いていないのかもしれない。見ないフリをしてやるのが男の情けというものだろう。


キサラギ:

(涙が出るだけマシさ……)


 ファンタジックな世界に突然に放り出されて、こんな状況だからこそ『最強』でいたかった。そう思うのはある意味で当然なのだ。だが、やはり自分達はこちら側の世界でも凡人でしかなかった。キサラギも水梨も、平均を上回る優秀な戦士なのだろうが、優秀止まりでしかない。とてもではないが、さつき嬢には敵わないし、あのシュウトという〈暗殺者〉にも勝てそうにない。……キサラギは、もはや諦めてしまっていた。だから涙など出ない。今までも、これからも、出来ることをキチンとこなすだけだ。


キサラギ:

「すみません、失敗しました」

霜村:

「勝手なことをするなと言っておいたハズだが?」

葉月:

「申し訳ありません」

霜村:

「それで、どうだった?」

キサラギ:

「強いです。あの〈暗殺者〉のカレだけでも途轍もない実力でした」

葉月:

「ふぅ、もしかするとマトモに相手できるのは、さつきさんだけかもしれませんね。我々の手に余るのであれば、いっそ帰らせてしまうのも手かとは思うのですが?」

霜村:

「いや、面白いじゃないか、しばらくほっておけばいい」

葉月:

「ですが、それでは……」

霜村:

「アイツは、たぶんただの善人だ」

葉月:

「善人、ですか……?」

霜村:

「ああ、恐ろしく強い(、、、、、、)がな。善人というヤツは疑って掛かると我慢できないほどに恐ろしくなってしまうものだ。だが、味方だと思ってほっておけば、こちらの利益になることもしてくれるものさ」

葉月・キサラギ:

「…………」

 


今回は書き方を変更してみました。

期間限定の「まおゆう×ログホラ ここだけのお話」をコピペすると改行して表示されるので、なんとなく「なるほど!」と思ってやってみたものです。

文体というかルールを統一するのは初歩中の初歩なのですが、初心者なので色々とやってもいいかな?とかの甘ったれた根性でお届けしております。


次回はどうしよう?(笑)


よろしくお願いいたします<(_ _)>



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