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28  アフタートーク 

 

荒くれ武闘家:

「今日のお嬢はちょっとどころじゃなくヘンだな」

傷顔守護戦士:

「隊長な。まぁ、可愛かったが」

高貞守護戦士:

「うむ。いつも可愛い」

変態武士:

「否!怒られたかった俺、大悲哀」

傷顔守護戦士:

「なんだそりゃ」

変態武士:

「できれば怒鳴られたところでケツに蹴りが欲しいのだが、『そういう日もある、次はがんばろう』なんて言われたら萎え萎えじゃないか。だろう?」

草生守護戦士:

「変態だ」

相槌暗殺者:

「本物だ」

変態武士:

「日にちを計算して、ギリギリのところでさつきちゃんの神経を逆撫でしていくのが醍醐味なのだが……」

荒くれ武闘家:

「誰か、こいつの口にモンスターの糞を詰めて縫い付けとけ」

傷顔守護戦士:

「それをご褒美だと思うヤツだぞ?手が汚れるぶんだけ損だ」

相槌暗殺者:

「ああ、徒労に終わるな」


 本日のさつき嬢は機嫌が良いのが外から丸分かりで、普通に歩いててもスキップしているような感じだった。いつもなら下手を打った仲間は年上だろうとガンガン叱り飛ばすのに、今日に限っては妙に優しい。なにやら違和感があって落ち着かない。


 さつき嬢は根っからの体育会系女子である。剣道の実力から部活動をすれば必ず部長を押し付けられるほどだ。普段から人を叱り飛ばしていたため、怒ったり怒鳴ったりに嫌味がない。ハタチそこそこの背の低い美少女に叱り飛ばされていると妙な性癖を自覚してしまいそうでもあるのだが、かといって猫なで声で優しくされるというのも確実に何かが物足りない。……まさしくこれぞ〈ハーティ・ロード〉の精鋭部隊。やはり、いずれ劣らぬ猛者揃いであった。(主に変態的な意味で)


さつき:

「これで今日の狩りは終了とする。十分な成果が得られた。みんな良くがんばってくれたな。……私はとても嬉しい」


 解散を宣言するさつき嬢。最後のつけたしの台詞では少し照れるような、はにかんだ笑顔がキュートだった。


荒くれ武闘家:

(おい、嬉しいとかいったぞ?)

傷顔守護戦士:

(マジで何があった?)

高貞守護戦士:

(男か?男なのか?)

変態武士:

(ついに俺を踏みつける快感に目覚めてしまったに違いない。高いヒールの靴を用意せねば……)

 

さつき:

「それと、すまないがクラスが〈守護戦士〉の者は少し残って欲しい。では、解散!」


草生守護戦士:

(やばい、俺ら何かやったっけ? 怒られるんだよな?)

高貞守護戦士:

(やはり説教タイムか……)

変態武士:

(クソッ、どうして俺は〈守護戦士〉じゃないんだ!)

相槌暗殺者:

(助かっ……た?)

傷顔守護戦士:

(いいからお前等は帰れ!)

変態武士:

(う、うらやま)


さつき:

「残ってもらったのは他でもない。…………その、できれば私に盾の使い方を教えて欲しいんだ」


 ざわっ


草生守護戦士:

(さ、さつき隊長が俺達に教えてほしいってよ?) ひそひそ

坊や守護戦士:

(転変地異か?この世の終わりが来たのか?)

傷顔守護戦士:

(いままでそんなこと一度も無かったのになぁ)

高貞守護戦士:

(でもイイ。凄くイイよ)

坊や守護戦士:

(……ユフィリアちゃんが来て焦ってるとか?)

傷顔守護戦士

(あー、あの子はヤバいな。ゲキマブとか久しぶりに思ったわ)

草生守護戦士:

(ゲキマブwww 死語にもほどがあるwww)

高貞守護戦士:

(それがどうした。俺は隊長に操を捧げると誓ったんだ)

草生守護戦士:

(一生童貞www 魔法使い、乙www)

坊や守護戦士:

(ユフィちゃんとさつきちゃんの絡み希望)

高貞守護戦士:

(おふっ、それ凄くイイ)


さつき:

「……ダメ、かな?」

傷顔守護戦士:

「いやいや、別にいいけど。その前に、何かあったのかい?」

さつき:

「その、“再戦”してもらったんだ」

傷顔守護戦士:

「〈カトレヤ〉の何とかっていうヤツか。それで結果は?」

さつき:

「私の負けだ。ソロの1対1で戦ったけど、完敗だった」


 爽やかさに10%の寂しさをブレンドしたかのような、潔く負けを認める笑顔だった。


傷顔守護戦士:

「……わかった。特訓だな?」

草生守護戦士:

「しやーねーな。俺の裏テクを公開する日が来ちまったか」

某や守護戦士:

「僕もオリジナルがありますから」

さつき:

「…………みんな、ありがとう。いま、準備してくる」


傷顔守護戦士:

(しかし、凄いな)

高貞守護戦士:

(ああ。ギルマスも持て余すさつき隊長を倒すなんて)

某や守護戦士:

(うん。名前を覚えておこう。〈カトレヤ〉の……)

高貞守護戦士:

(〈暗殺者〉だな。たしかシュウトだったと思う)





 狩りから戻ったカトレヤのテントではジンがぐったりとしていた。心配したレイシンが声を掛けている。


ジン:

「ぐえー、ねっむ」

レイシン:

「大丈夫?……そういえば朝、さつきさんと戦ったんだって?」

ジン:

「まぁな。おかげで限界ぐらいに眠い。ふわわわ~(アクビ)」

レイシン:

「それで、どうだったの?」

ジン:

「ん? もちろん勝ったさ。シュウトの手前、簡単に負けらんないし」

レイシン:

「内容は?」

ジン:

「予想より強かったなぁ。全力でこそないけど、本気は出したぞ。〈竜破斬〉とレベルブースト、極撃も無しだったけど、後は殆ど使ったかな?……シュウトにちょっと見せ過ぎたかも」

レイシン:

「はっはっは」


 聞くともなしに聞いていたニキータだったが、近い年代のさつき嬢の強さがなんとなく伝わってくる内容だった。たとえ同じ職業(クラス)だったとしても、自分にはとてもじゃないが真似できそうにない。


レイシン:

「それじゃあ、けっこう苦戦だね」

ジン:

「まぁな。それに、あの子の〈ショルダー・アタック〉がどうにも避けられなくってさ」

レイシン:

「そんなに巧いんだ?」

ジン:

「それもあるんだけど、避けられないというか、避けちゃダメっていうか?」

レイシン:

「どういうこと?」

ジン:

「こう、顔がグワッと近付いてくるからドキッとするんだよ。お陰で負けそうになって焦ったぜ。……しかし、アレを盾で防いじまうようなヤツは男としてはダメだね」

レイシン:

「余裕あるんじゃん」

ジン:

「いやいや、なかなかどうして。あれがまたコンビネーションの色気になってたりで良い感じなんだ」 うんうん


ニキータ:

(く、くだらない……)


 どっと疲れに襲われるニキータだった。雑処理を置いてでもユフィリアを探しに外へ行こうかと本気で考え始める。


ジン:

「明日はこっちの朝錬くるか?」

レイシン:

「朝ごはん無しでもいいならね」

ジン:

「それはダメだな。うん、来なくていい」

レイシン:

「でしょ?」

ジン:

「つーか、なんか訓練用の技でも作ろうかなぁ~。ほどほどの攻撃力があるヤツ。弱くなるからイヤなんだけど」


睦実:

「へい、おまち!」

シュウト:

「戻りました」

ユフィリア:

「はやくはやく~♪」


 睦実、シュウト、ユフィリアが仲良さそうに戻ってきた。


ジン:

「どうした?」

睦実:

「たこ焼き一丁お持ちいたしました~」

ユフィリア:

「早くたべよ~♪」

ジン:

「おっ、いいねぇ。大阪のは冷めてても美味いんだけど、やはりアツアツがいいよな」

ユフィリア:

「うんうん♪」

睦実:

「3舟あるから1人2~3個食べられるよ!」

ジン:

「そうか、ご苦労。…………どうした小娘はもう帰っていいぞ?」

睦実:

「何を言ってるの? あたしも食べるよ!」

ジン:

「馬鹿言え、おまえの分なぞあるわけがなかろう」

睦実:

「ちょっと!買ってきて貰っといてそれはないんじゃない?」

ジン:

「どうせ自分の分は別に1舟か2舟確保してあんだろ?」

睦実:

「な、なんの話かなぁ~」

ユフィリア:

「ねぇ、はやくたべよ?」

ジン:

「お前の次の台詞は、『さっちんと後で食べるんだから当然だし!』だ」

睦実:

「さっちんと後で……ハッ! って、そのネタは流石に古くない!?」

ジン:

「その歳で反応できるお前の方が異常だろ」

石丸:

「第2部っスね」


睦実:

「ちっ、バレていたか。じゃあお代だけでいいや」

ジン:

「つけといてくれ」

睦実:

「はぁ? 馬鹿言わないでよ!」

ジン:

「いやぁ、葉月が約束のお金くれないから困ってんだよ。それが入ったら払うから」

睦実:

「それ、あたしには関係ないじゃん」

ジン:

「どうせ、自分の分の代金も俺達に請求しようってハラだろ?」

ユフィリア:

「そうなの? 睦実ちゃん……」(←『信じてたのに……』の表情)

睦実:

「あぐっ、うぐぐっ…………まぁ、ここはあたし持ちでいいわ。おごりよ!」

ユフィリア:

「ホントに? ありがと~。ずっと友達でいようね? フレに登録しよ?」

睦実:

「う、うん」


ニキータ:

(ケチョンケチョンね…………)


 憐れ睦実はジン&ユフィリア連合軍の前に全滅の憂き目にあっていた。流石にニキータも(たこ焼きひとつでここまでやっつけなくても)と思う。


レイシン:

「じゃあ、温めてこようか。そろそろ厨房が使えるかな?」

睦実:

「あっ、じゃあ、あたしの分も一緒に温めてもらおっと」


 流れで全員が厨房に移動する。厨房に入ると既にラヴィアン少年がひとりで働いていた。


ラヴィアン:

「レイシン先生!」

レイシン:

「もう始めてたんだ?」

ラヴィアン:

「はい!下ごしらえです」

ジン:

「ほほぅ、レイシン先生(、、)ってか」

ニキータ:

「可愛いお弟子さんね」

レイシン:

「少し待ってて、いま温めてしまうから」


 手際よく準備しているのを見ていたが、たこ焼きの舟を開いたところでレイシンの動きが止まる。


レイシン:

「これ、ソースが入って無いんだけど?」

睦実:

「えっ!?……ホントだ。忘れちゃったのかな?ごめんね~」

ジン:

「マヨネーズは仕方ないが、ソースは欲しいな。……レイ、作れるか?」

レイシン:

「んー、作ったことないし、たとえ作れても時間かかると思うよ」


 ふと見ると、ユフィリアが自分の荷物をゴソゴソと探っていた。


ユフィリア:

「あれー、こんなところに茶色の小瓶があるよ!?」

シュウト:

「買ってたのか……」

睦実:

「なになに?」

レイシン:

「どれ?……(ペロ)……うん、美味しいね。合うと思うよ」

ジン:

「偉いぞ、ユフィリア」 ナデナデ


 たこ焼きをアツアツに温め、上からトロリとソースをたらせば完成だ。睦実は慌てた様子で「さっちんの処に行ってくる!」と出て行ってしまった。楊枝の代わりに箸でつまんで口へと運ぶ。



((ああ、ミナミに来たんだなぁ~))



 ミナミまでやって来たといっても、実際にミナミの街中には入れないし、『別にちょっと遠出しただけ』と大きな違いがなかった。それなのにたこ焼き一つで遠くまでやって来たという実感を得ていた。ミナミのたこ焼きはやはり美味しい。日本でも東西の文化的な違いを強く感じさせてくれる。


ユフィリア:

「ラビくんも一緒にたべようよ~?」

ラヴィアン:

「ありがとうございます。後で頂きますので……」


 ユフィリアが声を掛けていたが、一生懸命に作業していた。


ジン:

「ふぅ~ん、野菜切ってるのか」

 たこ焼きを食べながらジンがラヴィアン少年の作業を見ていた。


ジン:

「刃物の使い方にもいろいろ話があるんだが………………」

シュウト:

「……どうしたんです?」


 言いかけて停止したジンにシュウトが声をかける。


ジン:

「いや、無粋だな。やめとこう」

シュウト:

「やめるんですか?」

レイシン:

「別にいいのに (苦笑) 」

ジン:

「いや、せっかくだ。レイも苦労すりゃいい」

レイシン:

「別に苦労ならいろいろしているよ」


 ラヴィアン少年がコン、コンとまな板を包丁で叩くリズムが段々と良くなっていく。


シュウト:

「その話って、戦闘でも使えるんですよね?」

ジン:

「そりゃーな。むしろ戦闘向きかもしれない」

シュウト:

「なら、僕が聞きますよ。後で聞かせてください」

ユフィリア:

「んっ、シュウトばっかりズルくない? お料理の話なら私も聞きたいな~」

ジン:

「へいへい、お優しいこって。涙が出そうだぜ」

レイシン:

「はっはっは」



ジン:

「おい少年、手は切るなよ?……指入り野菜サラダは食べたくないからな」

ラヴィアン:

「大丈夫でーす!」


 レイシンはそのまま夕食の準備を始めるというので、シュウト達は厨房を後にした。





葉月:

「…… 報酬の前払いの件なのですが、生憎と一番近い銀行施設は『相手方』に押さえられていまして、直ちにお支払いがお約束できない状況なのです。ですが、作戦が成功すれば直ぐにでもお支払いできるようになるでしょう。折りをみてその都度お支払いしていく、ということでいかがでしょうか?」

ジン:

「つまり、金は出さないけど、とりあえず働けってことかい? そりゃあなかなか図々しいお願いだね」

葉月:

「……でしたら別案もあるのですが、そちらも少々お手伝いいただきたいのです」

ジン:

「言うだけ言ってみな? 聞くだけなら聞くから」

葉月:

「ありがとうございます」



 夕食後、葉月がシュウト達のテントに交渉をしたいと言ってきていた。人払いを頼まれたジンは、石丸だけを残してシュウト達には外に出ているように命じる。すこし距離の離れたところでシュウトは特殊な聴覚強化アイテム『順風耳の煉香』を取り出すと、仲間達にその魔法の香炉を嗅がせていた。

 このアイテムは日本サーバーでは入手の難しい中国・韓国サーバーといった大陸産のアイテムである。シュウトが〈シルバー・ソード〉時代に韓国サーバー遠征に参加した時に入手していた品だった。「千里眼」と対になる「順風耳」という神の名を頂いている。

 使ってみると、始めに一瞬だけツンとする刺激臭があり、直ぐに指向性の聴覚強化効果が現れる。その力を使って残りのメンバーと一緒にテントの中の会話を盗み聞きしていた。


葉月:

「〈Plant hwyaden〉の強大な力。その源は何だとお考えでしょうか?」

ジン:

「何なんだい?」

葉月:

「ご説明させていただきます。まず今、ミナミの街は幾つかの重要施設を〈Plant hwyaden〉に乗っ取られています」

ジン:

「ふむ」

葉月:

「我々も濡羽の詳しい出自などは把握できておりませんが、それこそが彼女がどこのギルドにも所属していなかった証拠だと考えられます。……となれば、施設を買い取った金の出所が不明ということになるでしょう」

ジン:

「それで?」

葉月:

「〈Plant hwyaden〉に資金を供給しているのは〈大地人〉の貴族達としか考えられません。どういう方法を使ったのかは見当も付きませんが、〈Plant hwyaden〉の強大さの理由、それは〈大地人〉貴族との繋がりにあります。なればこそ、その繋がりが弱点にもなりえます。つまり貴族共を叩いてしまえばいい。……そうすればお望みのものも手に入るのでは?」

ジン:

「なるほど、筋は悪くなさそうだ」



シュウト:

「そうか。汚い『裏の仕事』をやれということなんだ」


 思わずシュウトは呟いてしまっていた。ユフィリアが唾を飲んだ音がはっきりと聞こえてくる。高額の報酬を支払われたら、ジンはもしかしたら引き受けるのかもしれない。金のためなら人殺しも厭わない……そう思わせるような声色を出していた。

 しかし、冷静になって考えて見れば、そんなことをするのが嫌だから、今回の仕事に対して否定的な態度を取り続けているハズなのだ。ジンは一体『何から』自分達を守ろうとしていたのだろうか。その答えを耳にしていると思って良いだろう。



石丸:

「つまり〈大地人〉の貴族を襲って、金品を巻き上げろということっスね? それが結果的に〈Plant hwyaden〉の力を削ぐことに繋がる、と」

葉月:

「そうです」

ジン:

「それは結果的に上手くいかないだろうなぁ」

葉月:

「どうしてでしょう?」

ジン:

「第一に、その方法では大した被害を与えられないからだ。基本的に金持ちってのは、現ナマを持っているわけじゃない。たいていどこでも資金の大半を資産という形で管理しているんだ。現ナマ、この世界だと金貨のことだが、それを倉庫とか金庫だかに(総資産の)1~2割も持ってりゃ上等だし、それだって持ち過ぎだろう。普通は有形・無形の資産の形を取ってて、たぶん農地だとか商売に回しているはずだ。この世界の社会システムがどうなってるか詳しいところは知らんけども、貴族だってんなら管理地域の農民に税金を納めさせてんのかもしれない。それなら金じゃなくて、米とか小麦の形をしているかもしれないだろ?」

石丸:

「穀物は持ち運ぶのが不便っスね」

葉月:

「宝石や美術品なんかもあるんじゃないでしょうか?」

ジン:

「んー、宝石にしろ、美術品にしろ、あんまりこの辺じゃ金に換えられんだろう。高価な宝石ほど足がつきやすくなる。……それに美術品なんかの場合は、自分で買うんじゃなくて、贈り物として受け取っているケースもあったりするんだよなぁ」

石丸:

「権力に取り入ろうとする場合に使われる様々なテクニックっスね」


葉月:

「ならば……貴族本人を殺してしまう、というのはいかがでしょう?」

ジン:

「それもNG。家という既得権益にかかる権力の継承には強固なバックアップが用意されているのが普通だ。1人2人殺したところで、影響力の強いところなんか代わりなんぞ幾らでもいるもんだよ」

石丸:

「何人か殺したところでイタチゴッコになるだけっスね」

ジン:

「この話に関連する第二のダメな点でもあるな。敵対者が現れたと判断されて人数を動員されたら30人程度のレジスタンス活動なんてすーぐにお終いだろうさ。こんなトコじゃ隠れおおせることは出来ないね」

葉月:

「いえ、そう簡単に見付かるとは思えません。いくら〈Plant hwyaden〉といっても、1万人のプレイヤーの1割も動員できないでしょう」

ジン:

「仮に正体不明のレジスタンス相手に5%もの人数動員が掛けられたにしても、たかだか500人だからな。そのぐらいならたしかに逃げ切ることも出来るだろう。しかし、やはり無理だ。問題は〈冒険者〉じゃない。〈大地人〉の方だろ?」

葉月:

「そう……か」

ジン:

「何万人いるか知らないが、〈大地人〉からの目撃情報を集めるようにされた場合、ちょっとやそっとのことじゃ隠れるのは無理になる。 それ以前に、現在の優位性である『存在を知られていない』という点を捨ててしまうことになるぞ」

葉月:

「たしかに〈ハーティ・ロード〉がやったとバレるような真似をするのは厳禁ですね……」

ジン:

「ま、〈Plant hwyaden〉に入っちまって、ミナミで生活しながら獅子身中の虫をやる方がマシなんだろうが」

葉月:

「それは、できません……」

ジン:

「だよな~。レジスタンス活動は仲間のモラル管理が最優先事項。裏切り者を出さないのが最大の鉄則だからな」

葉月:

「仲間を信じていないわけではないのですが……」

石丸:

「元〈ハーティ・ロード〉のメンバーもいる街中で、反政府活動を長期に渡って行うのはリスクが高すぎるっス」


葉月:

「……そうです! いっそ〈大地人〉貴族同士のいざこざという形に出来ればいいのでは?」

ジン:

「それをやるには、綿密な下調べが必要だろうな。 ま、がんばってみな? 金の工面が付いたら呼んでくれ」

葉月:

「いえ、とても参考になりました。今日のところはこれで失礼します」


 葉月はそそくさと帰っていった。


ジン:

「ふむ。……もういいぞ、シュウト?」


 どうやらジンは端からシュウト達が話を聞いていると思っていたらしい。素直にテントに戻ることにした。



ジン:

「意外とあの葉月ってのは悪くなかったな」

石丸:

「そうっスね」

ジン:

「騙して連れて来といて、丸め込んで働かせればいいや~なんてやりやがるから、正直、学生の合コンの仕切りやるぐらいの能力だろうと思ってたんだが」

シュウト:

「ああ……(苦笑)」

ジン:

「喋りながら思考をまとめて行くタイプみたいな。周囲の人間がマトモなら能力を発揮するんじゃねーの? まぁ、過剰な現実主義みたいな部分は残ってるっぽいが」

シュウト:

「現実主義ですか?」

ジン:

「強盗や殺人みたいな悪いことをするのが真剣に生きることだ、みたいに思い込む歪んだ現実主義な」

石丸:

「偽悪的っスね」

ユフィリア:

「んー、ちょっとシュウトに似てる所があるよね?」

シュウト:

「えっ?」

ニキータ:

「そうね、世渡りが上手くなったような感じ?」

ジン:

「上位版シュウトか……そんな気もするな」

シュウト:

「僕はピンとこないんですが……」

ニキータ:

「でも、それを言うなら霜村さんとジンさんだって似てるでしょう?」

ユフィリア:

「えーっ、似てるかなぁ?」

ジン:

「ぐえっ、あんな雑なのと一緒にするとか、勘弁してくれよ!」

シュウト:

「ジンさんも雑なところはトコトン雑ですよ?」

ニキータ:

「向こうは劣化ジンさんと上位版シュウトのコンビね」

ジン:

「あ、傷付いた。 ふかーく傷付いた。やる気なくなって、キター!!」(サ●テFX) がっくり

ユフィリア:

「じゃあ、なぐさめ なぐさめ♪」 ナデナデ

ジン:

「ううっ、追加ダメージをありがとう……」


 精神ダメージにくずおれたジンだったが、ここぞとばかりにユフィリアが頭をナデナデする。これで慰められるかというと、大人の男性的には逆に追い討ちに近い追加ダメージが発生する(ことが割とある)のだが、気がつかないのか全くのお構いなしであった。


ジン:

「…………燃え尽きたよ。真っ白に」

ユフィリア:

「大丈夫?」 ナデナデ

ニキータ:

「……そろそろやめてあげたら?」

シュウト:

「それで、今後の見通しとしてはどうなるんですか?」

石丸:

「厳しいっスね。結論から言えば役者が足りていないっス」

シュウト:

「役者、ですか?」

石丸:

「『打倒、濡羽』を掲げるにしても、倒した後に代わりになる人材がいないっス」

ジン:

「なんだよなぁ。霜村みたいな司馬史観というか『龍馬主義』みたいなもんを勘違いして使うと、なにかデッカイことをやりたい、けど、責任を取らない、取りたくない、取らなくていいって意味で日本人にゃドンピシャの主義・思想になるっつーかね。今はどうしたって責任を取る人物が必要なわけで……」

シュウト:

「ジンさんはどうですか?」

ジン:

「アホか、俺みたいな無名なのがどうやって偉くなんだよ。ムリムリ」

レイシン:

「んー、10年ぐらい前ならなんとかなったかもしれないんだけどねぇ」

ジン:

「無茶いうなよ、レイ。その頃は今よりも更に馬鹿だったんだぞ。王様役なんて完璧に無理だって」

シュウト:

「……10年前に何があったんです?」

ジン:

「大したことは何もない」

石丸:

「人生いろいろっスから」

ジン:

「んー? ……石丸先生、どこまで知ってんの?」

石丸:

あの(、、)現場にもたまたまいたっス」

ジン:

「マジかよ……てかどっち(、、、)の話? いや待った!言わなくていい。ひ、秘密でお願いします」

石丸:

「了解っス」

ユフィリア:

「…… いしくん、後で仲良くしようね?」

石丸:

「りょ、了解……っス?」

ジン:

「ユフィさん? 人の嫌がることをするのは良くないと思うんですが?」

ユフィリア:

「ジンさんのこと、もっと良く知りたいなって思うのはダメ?」

ジン:

「…………」

ユフィリア:

「…………」 にこにこ

ジン:

「いやぁ、今夜もとってもチャーミングだね。その魅力的な瞳に吸い込まれそうだよ?」

ユフィリア:

「ウフフ、ありがと。 でも、そんなのじゃ誤魔化されないよ?」

ジン:

「…………」

ユフィリア:

「…………」 にこにこ


ジン:

「えっと話を戻そう。何の話だったっけ?」

ユフィリア:

「えーっ! 昔のお話じゃないの?」

ジン:

「無しだ無し!ありえないから。……あんなの面白くないし」

ユフィリア:

「つまんなーい!」

ジン:

「わーった!じゃあ、シブヤに戻ったらな」

ユフィリア:

「ほんと?」

ジン:

「おう。俺の部屋にご招待。ピロートークの時にたっぷりと聞かせてあげよう」 キラッ

ユフィリア:

「うん、わかっ

ニキータ:

「お・こ・と・わ・り!しますっ!!」 ビキビキ

ユフィリア:

「ニナ?……えっと、もしかしてピロートークってダメなこと?」

ジン:

「いんや、これぞまさに紳士と淑女のたしなみ。気だるげな雰囲気でまったりと会話することですよ?」

ユフィリア:

「……いしくん、ピロートークって何?」

石丸:

「主にセックスが終わった後にベッドでおこなうアフタートークのことっス」

ユフィリア:

「あー、そっか!聞いたことあるかも?」 うんうん

シュウト:

「……石丸さんも意外と強烈ですね」

石丸:

「そうっスか?」

ニキータ:

「やり口が汚いでしょう。サイテーね」

ジン:

「なんだよ、別に話さないとはいってないじゃ~ん」

シュウト:

「そこまで嫌がる話だと、ちょっと興味ありますけどね」

レイシン:

「そんな秘密にするような話でもないんだけどねぇ」

ユフィリア:

「ふぅ~ん…………それじゃ、あとでお部屋に聞きにいくね?」 さらり

ジン:

「なっ!?」

シュウト:

「えっ?」

ニキータ:

「ちょっと、ユフィ?」

ユフィリア:

「…………」 にこにこ

ジン:

「いや、だから……」

ユフィリア:

「…………」 にこにこ


シュウト:

(ジンさん、オンナノヒトコワイデス) ガクガクブルブル

ジン:

(ぬぅ、俺の絶対防御陣がこうもやすやすと突破されるとか。やはり相手は食物連鎖の頂点に君臨する天然自然の獣。所詮、我々は食われる運命の養殖モノに過ぎんということなのか。 クッ、神よ……っ!)

ユフィリア:

「…………」 にこにこ



ジン:

「あーあったく、なんの話だったか忘れちまったじゃねーか」

ニキータ:

「全部、自分のせいでしょう?」

ジン:

「どこまで話したっけ?」

石丸:

「……役者がいないの話から、霜村さんの龍馬主義に行って、10年前ならジンさんが統治できるかも?ってところまでっス」

ジン:

「えーっと、じゃあ次は〈Plant hwyaden〉を倒すのは難しいって話だな。いわゆる現状の支配構造を打ち倒すのが難しい理由はだな、簡単に喩えると、ビルの中に人が沢山いるのに、そのビルを崩そうとしているからなんだ」

シュウト:

「9.11の世界貿易センターの話ですか?」

ジン:

「そっちとは違うけど、人が居るのにそのビルを崩そうとしたら大惨事ってのは一緒だな」

石丸:

「ビルを崩そうとしても、そのビルの中にいる人達が自然と邪魔することになるんス」

ジン:

「壊されたら困るからな」

シュウト:

「じゃあ、どうすれば?」

ジン:

「別のビルに人を移動させてから、元のビルを壊せばいい」

ユフィリア:

「そっか。普通はそうするよね」

ジン:

「ビルに喩えればそういう風にも考えられるんだけど、国家とか政府、組織を相手にすると、しばしば中に人がいるのを忘れて、ビルを壊そうとしてしまう。つーか壊そうとしている連中が、自分達も建物の中に居るのに気付いてなかったりするんだよな」

ユフィリア:

「ふむふむ」

ニキータ:

「要約すると、別の受け皿を作ってから、〈Plant hwyaden〉を倒せばよくて、別の受け皿のためには濡羽の代わりになる第二の人物が必要ってことね」

ジン:

「そうだな。……少なくとも、第二の人物だと(もく)されるようなヤツが欲しい」

ユフィリア:

「やっぱり、ジンさんがガンバっちゃう?」

ジン:

「それならお前が歌って踊ってアイドルにでもなった方がマシだろ」

ユフィリア:

「んー、歌っちゃう? 踊っちゃう?」

ジン:

「その後でミナミ運営のお仕事もやるんだぞ?」

ユフィリア:

「ごめんなさいでした。私、普通の女の子に戻りますっ (嘘涙)」

ジン:

「デビュー前に引退を決意かよ」


シュウト:

「それなら、葉月さんのしていた話はどうなんでしょう? ……僕らに汚れ仕事をさせようってことですよね?」

ジン:

「まぁ、な。汚れ仕事って、言うのは簡単だが、いざやろうとすると結構むずかしいハズなんだ。金で雇った外部の人間にやらせた方が都合の良い場合もあるが、自分達でやらなきゃダメってケースが大半だ。仲間内のモラルを下げたくない場合に限っては外部の人間を使うってケースもありうるんだがな。〈ハーティ・ロード〉は一度ギルドが崩壊しているみたいだから、これ以上仲間に負担を掛けたくないのかもしれない」

ユフィリア:

「仲間想いだね」

石丸:

「しかし、隠密作戦で外部の人間を使うのは信用できないことが多いっス。秘密を漏らさないという保証が得られないっスから、信用できる自分達の仲間で行うしかないというのが現実っスね」

ジン:

「外部の人間に秘密を知られちまうってのもあるから扱いが難しくなるんだ。後で強請(ゆす)られたりするからな」

シュウト:

「なるほど、弱みを握られてしまうわけですね……」

ジン:

「さっきも話したが、どっちにしても貴族を襲うってのはNGだ。部分的にはアリだとしても、細心の注意が必要になる。誰にも見られないように犯罪を繰り返すのは、たとえこの世界であっても難しい。バレれば一巻の終わりだ」

シュウト:

「防犯カメラみたいなものが無い代わりに、何かの魔法的な手段でバレるかもしれませんし。やはり〈Plant hwyaden〉に所属しておいて内部の犯罪者がやっているって形を取るしかなさそうですね」


ジン:

「まぁ、金の流れを追いかけるのは正しい考え方なんだけどさ。……ノドが乾いたな」

ユフィリア:

「飲み物とるね」

ジン:

「サンキュ」

石丸:

「この場合は実害を与えることで対立を煽るのが常套手段っスね」

シュウト:

「というと?」

ジン:

「ああ、基本的に日本人はお宝にはあまり飛びつかないんだ。でも損はしたくないから、藁にはすがり付く。アクションを取らせるには、まず損をしたくないと思わせるように誘導するのがセオリーだな」 ごくごく

石丸:

「東日本の震災の時にも、直接の被災地ではない関東地域で買占めが問題になっているっス。これも(自分だけは)損をしたくないという気持ちによるものっスね」

ユフィリア:

「愛と不安なら、不安が先ってことだね?」

ジン:

「なんのこっちゃ?」

石丸:

「どこかに何らしかの対立を発見して双方に損したくないと思わせることが出来れば、ミナミの内部での抗争を誘導することができるはずっス」

シュウト:

「難しそうですね」

ジン:

「だな。とりあえず〈冒険者〉側に対立を作るのは難しいだろう。ゲーム時代に他所のギルドと対立してたりがあったかもしれないが、それは所詮ゲームの中での対立に過ぎない。その手の不満は〈大災害〉で一度リセットされてるだろう。それと〈Plant hwyaden〉の統治によってもリセットされるだろうから、ミナミの〈冒険者〉は2回のリセットが掛かっている。そこから〈Plant hwyaden〉の支配が始まってまだ一ヶ月程度。これじゃ不満を爆発させるには弱いだろう。〈ハーティ・ロード〉みたいなハネっかえりは少数派に決まってんだから、仮に失政が続いたとしても何ヶ月か先まで待たなきゃならん」

シュウト:

「じゃあ、どうすれば?」

石丸:

「〈大地人〉の貴族達は〈大災害〉によるリセットはかかっていないハズっス。ゲーム時代の設定の通りに、もしくはゲームには設定されていなかったような設定までもが反映されて、そのままのはずっス」

ジン:

「となるから、〈大地人〉の側で分裂策を展開することになるわな」

石丸:

「そうっスね。〈大地人〉貴族の関係に亀裂を入れ、ミナミを2つかそれ以上に割ってしまうんス。そうなれば第二の人物も現れるはずっス。これは彼らが勝手に自分達の代表を選ぶことになるはずだからっス。たとえば強い側の勢力は傀儡を、弱い側の勢力は英雄を立て易くなるっス」

ユフィリア:

「どうして?」

ジン:

「勢力が強ければ、自分達の言う事を聞く人物を表に立たせようとするからだな。逆に勢力が弱い場合は英雄的な人物自身の力で状況を覆そうと考えるから、だろうな」

石丸:

「そうっス」

ジン:

「まぁ、片方は濡羽のままだろうな。それと仮に上手くいったとしても俺達に都合の良い英雄が立つとは限らない。悪魔みたいなヤツが第二の人物だったりしたら余計に面倒なことになるだろうな」

シュウト:

「確かにそうですね。自分達が望む人物をねじ込む必要がありそうですね」

ジン:

「まずはどんな勢力があるのか、そこではどんな利害関係があるのか、少人数でも突くことのできる利害はどこかって情報を集めるところからだな。事前情報の質や精度によって作戦の成否が大きく変わって来ちまう」

シュウト:

「関西方面のゲーム設定に詳しくないとダメってことですよね」

ジン:

「貴族の名前だなんて、いちいち覚えてないからな」

ニキータ:

「それよりも、そもそも濡羽って人からして、まるで謎なんじゃないかしら? 本来、対立していたかもしれない貴族達をどうにかして纏め上げたのでしょう?」

シュウト:

「確かにそうだね」

ジン:

「案外、ユフィリア並みか、それ以上の美人だったりしてな」 にへら~

ユフィリア:

「怖そうだけど、ちょっと会ってみたいかも?」

ニキータ:

「美人かもってだけで鼻の下が伸びるのはどうなのかしら……」

石丸:

「強制的に言う事をきかせる、といった能力を持っている可能性はあるっス。その場合は作戦の前提が狂うっスね」

ジン:

「そんな能力を持ってたとしたら、目的は何かってことも出てくるだろうな。…………そういえば、〈Plant hwyaden〉がアキバと協力しない方針ってのも気になるところだな」

シュウト:

「今のって、どこからの情報ですか?」

ジン:

「葵」

シュウト:

「葵さん、ちゃんと仕事してるんですね!」

ジン:

「9部9厘までは遊んでんだろうけどなー」

レイシン:

「わっはっは」

ジン:

「まぁ、本気で遊ばなきゃ出てこない話だってあんだろうけどさ」

石丸:

「……しかし、対外的な排他主義は、内部の結束や統一感を高める時にも使われる手段っス」

ジン:

「ふむ、共通する敵の前に敵味方が協力しあうって論理だな」

石丸:

「〈大地人〉の貴族達をまとめるにも、東ヤマトを敵扱いするのは名目が立て易いのかもしれないっス」

ニキータ:

「それなら確かに……」

ジン:

「筋は通りそうだな。なんにしても、厄介極まりない」

石丸:

「まだまだ情報が足りていないっスね」



ユフィリア:

「ねぇ、結局、ジンさんはどうしたいの?」

ジン:

「んー、俺というか、俺達には戦う必然がないんだよな」

ユフィリア:

「戦いたくないってこと?」

ジン:

「そ。別に勝ち目があるから戦うってわけじゃない。勝ち筋なんてのは戦いながら見つけていけばいいもんだ。だけど、戦う理由がないのに戦うのはさすがに不毛だろうと思ってる」

シュウト:

「……じゃあ何でこんなことを考えているんですか?」

ジン:

「そりゃ、何が理想かを考えるついでだよ。一番いい状態は何かってな」

ユフィリア:

「んー、睦実ちゃん達がちょっと可哀想かも?」

ジン:

「それは〈ハーティ・ロード〉の連中と『先に会っただけ』だろ? ミナミに入っちまえば、今の体制でもちゃんと生活している連中が大半だろ。余計なことをすりゃ、大勢に迷惑が掛かるだろうさ。……それでもやるべきだと思えるような理由が、俺達にはない」

石丸:

「そうっスね」

ジン:

「ま、美味いメシ食ってりゃ〈ハーティ・ロード〉の連中も戦う気なんざなくなるかもしれない、ってのはあるけどな」

レイシン:

「はっはっは。それなら、がんばっちゃおうかな」

ユフィリア:

「うん。睦実ちゃんってゴハン大好きそうだもんね?」

ジン:

「小娘か……いや、アイツは食い物じゃダメだろうな。快楽主義に近いから『目の前のモノに強く反応しているだけ』だろう。まぁ、しばらくはシュウトでもあてがっておけばいいんじゃねーの?」

シュウト:

「どうしてそうなるんです!?」

ユフィリア:

「……ダメだよ、ユミが可哀想でしょ?」

ジン:

「ですよねー?」

ユフィリア:

「シュウトもだよ?」

シュウト:

「僕はどちらかと言えば被害……」

ユフィリア:

「…………」 にこっ

シュウト:

「……気を付けさせていただきたいと思います!」


ニキータ:

「目的がないなら、今までの話って意味あるのかしら?」

石丸:

「現状を変えられないのならば、単に現状のままで居るしかないっスから」

ユフィリア:

「えっと、どういうこと?」

ジン:

「だから、変えることが出来るなら最善を求めることも出来るが、変えられないなら最善もへったくれもない。かといって変えてみて現状よりも悪くなるんなら変える意味なんて無い。どう変化すべきかってビジョンも実の所みえてこないんだけどな。だから、ないない尽くしだな」

ユフィリア:

「じゃあ、シブヤに帰るの?」

ジン:

「いや、まだだ。……ここで出来ることだけでもしておかないと」

シュウト:

「何か考えがあるんですか?」

ジン:

「うんにゃ、無い」

シュウト:

「ダメダメじゃないですか……」

ジン:

「そう言うなよ。 経験的に言えば、よく分かってない内はやるべきことがまだ残ってるものサ」

シュウト:

「じゃあ、情報収集からですね」

ユフィリア:

「うん」

ジン:

「まぁ、そうなるか。……なんか最近、頭がちゃんと回ってない気がするんだよなぁ。 なんか気付いてないことがあると思うんだが……。なんかないか、石丸?」

石丸:

「それだけだと流石に漠然としすぎっスから(苦笑)」

ジン:

「うーむ……」 ナデナデ

ユフィリア:

「なんで撫でるの?」

ジン:

「んー、手が気持ちいいから?」 撫で撫で

ユフィリア:

「そっか」

シュウト:

(えっ、そんなのでいいの?)

ジン:

「うーむ………………段々アタマがよくな~る~」 さわさわ

ユフィリア:

「もう、私、バカじゃないよ!?」



 その後は〈Plant hwyaden〉に関わる話題は出なくなり、夜が更けるまでバカ話が続くことになった。

 

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