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235  聖なる種火 / ジンの新技開発記

 

ジン:

「残り日数ねーぞ! ラスボスまでにある程度使えるように、間に合わせろ!」

レオン:

「順調に行けば、残り10日前後だな」

葵:

『いけるいける!』


 残りダンジョンは3つ。僅か10日で踏破しようと思えば、掛けられるのは3日、3日、4日といった形になってくる。……その計画、無理がございませんでしょうか?(涙)


 強めにネバらせながら、まったく同時にゆるませていく。力を入れる部分と、ゆるませる部分、または脱力部分と、ゆるませる部分とが、それぞれ別になっていくような気がする。


ジン:

「脱力時もゆるませろ! 常に、ゆるませろ!」


 筋出力時も、脱力時もゆるませられるのなら、常にゆるませることができることになる。それはつまりトレーニングする前からゆるむことができるという意味なのだ。動いても、動かなくても、力を入れても、抜いても、あらゆる時点でゆるむことが可能ということである。


リコ:

「余力論の意味が分かったかも」

タクト:

「どういうこと?」

リコ:

「『脱力』と『ゆるみ度』を同じだと思っている場合、変な表現になっちゃうけど『脱力筋トレ』だって誤解するんだと思う」

タクト:

「そうか、脱力と余力は同じものってことか」

リコ:

「そう。ゆるんで筋力が強まるとしたら、脱力を、つまり余力を増やせばいいんだろう?って勘違いになっちゃう」


 脱力筋トレだと変な呼び名だから、敢えて余力論と呼ぶことにしたのだろう。誤解するポイントを理解した上でのネーミングらしい。


 足ネバをそれなりの時間行ったことで、ゆるみ度が増した気がする。トレーニングはここで終了となり、続けてダンジョンの攻略に取りかかる。移動は前日に魔法陣を設置済みだとかで、転移するだけになっている。アイテム類の確認を行って、出発した。



 なだらかな丘陵の中に、朽ちかけた神殿がポツンと立っていた。ギリシアにありそうな神殿の中には、地下へと向かうスロープが。脳内ステータスから、〈パテル大墳墓〉の名前を確認する。


ジン:

「中は暗い、か。……明かりを頼む」

葵:

『秘密兵器だしてー!』

ジン:

「またか(苦笑) 何があるんだよ?」

ニキータ:

「これです」


 〈聖なる種火〉というランタン形状のアイテムだった。マジックバッグから取り出すと、青い光が静かに揺らめく。スロープをゆっくりと降りていくと、光量はさほどでもないのに、広範囲の視認性を確保できる優れものなのがわかった。レギオンレイド用のランタンってことなのかも知れない。


シュウト:

「それってどうしたんですか?」

葵:

『今回、幻想級だのを貰う数が少ないからね。強引にゲットしといた』

ジン:

「ちょっと待て。それ俺が選んだヤツなんだから、俺のじゃね?」

リディア:

「誰かにプレゼントするってルール……」

葵:

『つーことで、ギルドで有効活用してやることにした!』

ジン:

「おい、勝手に決めてんじゃねーよ!」

葵:

装飾品(アクセ)ですらないから、アイテムロックとかないんだけどな。取りあえず、片手が空いてるニナちゃんにお願いしといたから』

ニキータ:

「お預かりします」


 ニキータが預かるって話になったらしい。しかし、問題は別のところにあるような気が?


ジン:

「ところで、俺の動きが鈍ったりする可能性は考慮せんのか?」

葵:

『もう平気だべ? 〈古来種〉が邪悪な訳ないんだから』

ジン:

「チッ」


 ジンが力を解放したのが分かった。竜亜人覚醒状態だろう。殺気のような攻撃的な感覚とは異なり、温和というのか、守ってくれそうな頼もしさを感じる。


ユフィリア:

「…………」じーっ

ジン:

「どうした?」

ユフィリア:

「今のジンさんって、凄くいいかも」

ジン:

「これがいいのか?」

ユフィリア:

「うん。ずっとそのままでいて欲しいなって」

ジン:

「そうかそうか、惚れ直したんだな? あとでエッチなことしような?」

ユフィリア:

「もぅ~、そういうこと言わない方が、女の子にモテると思う!」

ジン:

「そりゃ残念。女にモテたい訳じゃないんだよなぁ~」

ユフィリア:

「ウソだー。絶対ウソですぅー」

ジン:

「本当さ。何度も言ってるだろ?俺がモテたいのは『お前だけ』だって」

ユフィリア:

「……ウソだー(笑)」

ジン:

「おっと。意外にも好感触」


 そんないつものやりとりを聞き流しつつ、大墳墓の奥へと進んでいく。墓場というぐらいなので、きっとアンデッドが出るのだろうと思っていたら、やっぱり出た。ゾンビとスケルトンなのだが、サイズが大きい。いわゆる人間のゾンビは混ざっていない。モンスターのゾンビとスケルトンだった。


葵:

『おいおい、モンスターにお墓があるわけないっちゅーの!』

シュウト:

「アハハハ、確かに(苦笑)」


 ご都合主義的なモンスターの登場で楽しくなってしまう。手応えはありそうなので油断はできないが、ゆる筋トレの実戦訓練になるのだ。正直、早く戦闘がしたかった。アンデッドが相手なら、戦いから感じられる愉悦を否定する必要がない。好都合だ。


ジン:

「ちょっと動きが鈍いか?」


 真っ先に突撃したので、「しゃらくせぇ!」とか言いながら敵のただ中で戦うのかと思いきや、タウンティングして後退するジン。基本通りに一部の敵をPULLし、その陣形を崩していた。どうみても毒とか痺れとかを使ってきそうなアンデッドばかり。吐き出された毒霧ブレスを回避しつつ、立て続けに矢を射てダメージを稼いでいく。

 数だけ多くても、あまり苦戦しなくなってきている。そのまま時間を掛けずに殲滅完了。


ネイサン:

「ステータス異常は厄介だけど、動きが鈍くて戦いやすいかもね」

スタナ:

「そうね。……でも、おかしいと思わない?」

ネイサン:

「なにか、おかしなところがあったかな?」

葵:

『それ、ステ異常を中心に据えたフロアかもってことだよね』

スタナ:

「そうなの。でもその場合、最後にまた?ってことになってしまうんじゃないかしら」

ユフィリア:

「……んーと、なんのお話?」

英命:

「〈ペルセスの地下迷宮〉はギミックをテーマとしたダンジョンでした。レイドボスの〈機械仕掛けの死神〉もギミックを主体としたレイドボスでしたね」

スタナ:

「機械で作られているレイドボスなのに〈ケイオス・グロウブ〉みたいな魔法的な攻撃をしてくるのに違和感があったでしょう?」

ジン:

「確かにな。あれだけ種別が違ってて面倒だったからな」

スタナ:

「〈ケイオス・グロウブ〉は、〈パテル大墳墓〉のレイドボスにこそ、相応しいような気がして……」


 そう言われてみると、なるほど納得感はあったが、スタナまで葵みたいなことを言い出したのでそこはビックリだ。


ウヅキ:

「まだ初戦だろ? ここがステ異常メインかどうか、判断するのは早くねぇか?」

スタナ:

「それは、そうなのだけど……」


 ほぼ間違いないと考えているようだ。確かに手応えからすると、僕もその意見には賛同する。だとしたら、どうなるのだろう。


ケイトリン:

「どちらにせよ、やることは変わらない。たとえ、ここのレイドボスが『死神の鎌』を持っていたとしても、な」


 底意地の悪いケイトリンが、薄く笑う。どこか決定的なことを突きつけられた感触があったが、やることは変わらないのはその通り。ダンジョンを踏破し、レイドボスを倒すだけである。もっとも、『死神の鎌』が来るとわかっているのであれば、その対策ができれば間違いないのだけれど。

 

ジン:

「どういうことだ」

葵:

『さぁ? ギミック最強のレイドボスの、最後のギミック「武器交換」かもしれないし、単にどこぞの管理者が交換しただけかもしれないし』

シュウト:

「なる、ほど……」

葵:

『問題はそれでレイドボスが強化されてんのかってことだからねぇ~』

ジン:

「……だな」

リコ:

「そっか。それで強くなってるとは限らないものね」


 ギミックだとしたら途中でこれ見よがしに交換しそうなものだ。そうなると犯人は決まったようなものだ。もしレイドボスが無上に強化されてたりしたら、……恨むぞサンクロフト。


 その後、何回か戦ったのだが、順調だった。あまりにも順調だったからか、唐突にジンが怒り始めたぐらいだった。


ジン:

「おい、お前フザケんなよ!」

葵:

『ジンぷー、激おこプンプン丸?』

ジン:

「うっせーよ! なに考えてんだクソロリ!」

葵:

『いや、行けるところまでいっちゃおうかなって?』

ラトリ:

「ちょいちょい、何の話?」


 仲裁か状況確認なのか、ラトリがとりあえず見にくる。


リコ:

「ジンさん、いきなり怒ってたら変な人ですよ?」

ジン:

「面倒くせぇ~。ここの敵が弱いのは、そのランタンのせいだろ?」

ニキータ:

「……これ、ですか?」


 〈聖なる種火〉が原因だとジンは考えているらしい。


葵:

『そんなのジンぷーの思いこみだべ?』しれっと

ジン:

「そうだな。じゃあ次の戦闘、途中でランタンしまってみっか」

葵:

『まぁ、そうなんだけどねー(笑)』くるっと

ラトリ:

「あー、だいたいわかったかなぁ~」

シュウト:

「そうなんですか?」

葵:

『ゲッヘッヘ』


 意味ありげに笑った?ので、すべて葵の計算通りってことらしい。


ユフィリア:

「敵が弱いのは良いことでしょ? どうしてジンさん、おこなの?」

ジン:

「レギオンレイド攻略にここまで有効なアイテムなんだぞ? なんのデメリットもないとか、楽観し過ぎだ」

シュウト:

「えっ?」


 そう言われてみると、ちょっと怖くなってきたかも。葵の場合、デメリットを分かった上で、それでも使うと判断していることになる。


ユフィリア:

「んー、と?」

石丸:

「もの凄く、危険かもしれないってことっスね」

ユフィリア:

「えええっ!? ニナっ」

ニキータ:

「まだ大丈夫。……ですよね?」

葵:

『どかなー? ちょっちわかんない』

シュウト:

「えっと、どういう種類の危険がありそうなんですか?」


 こういう場合は質問を変えて、情報を引き出して行くしかない。まさか放射能とか、そういうダイレクトな話だとは思えないし、思いたくもない。聖なる炎で放射能とかって矛盾としか思えないけれど(苦笑)


葵:

『そうだねぇ、あっこの水中神殿はこの種火を封じるためのものかもってぐらいのヤバさかなぁ』

ウヅキ:

「ハァ?」

タクト:

「どうしてそんなものが?」

スタナ:

「……吸血鬼の起源を完全に消滅させるためのアイテム、なのね?」

葵:

『たぶんね』

シュウト:

「じゃあ、それがあれば……!」

ジン:

「待てよ。クリア条件を、あんな詰みそうな場所に隠すか?」

葵:

『だよねー。だから、「設定だけの存在」ってのがあたしの説』

ラトリ:

「無くてもクリアはできるってこと?」

葵:

『大丈夫のはず。レギオンレイドとしての攻略はね』

シュウト:

「……武器に使えば、威力とか出そうな気がするんですが?」

葵:

『それは絶対ダメ! この炎はもしかすると消す方法が存在しないかもしれないの』

シュウト:

「えっ?」

英命:

「なるほど……」


 すべて理解した風に英命先生は微笑んだ。謎めいていて素敵だとは思うけれど、そんなことより分かったのなら説明して欲しい。


 とりあえず、甘えないで一度自分で考えてみる。

 水中神殿にも似たような炎があったが、燃え移らなかったから危険性は無かった。ただし、あの時もまるで消せなかったのだ。ギミックとしての青色の炎は、殴ると一時的に消えていただけで、一定時間後にまた炎が復活してきた。……そういう意味では、『種火』というネーミングが恐ろしい。種火というのは、燃え移ることが前提の名前なのだ。炎を分けたり、移動させたりできるものだろう。ゲームであれば別にどうってことはないのかもしれないけど、ゲームを元に異世界化したらしき現状においては、警戒が必要かもしれない。


ジン:

「消えない炎だぁ~? それ『世界の危機』ってことじゃねぇか?」

ユフィリア:

「消えなかったら、どうなっちゃうの?」

葵:

『わっかんない(笑) 燃えるものは全部、燃やし尽くすのかも? この星ごと燃やしちゃったりとかしちゃったりして』

ラトリ:

「一度、火がついたら、二度と消せないってこと?」

葵:

『たぶん。逆にあたし達に使われたら全滅するだろうね。それどころか、二度と復活できない可能性が高い』

リコ:

「それ、死んじゃうってことじゃ……」

リディア:

「こわっ!?」


 リディアがニキータの隣からジャンプして逃げた。ランタンの中に入ってる間は大丈夫だとは思うけど(苦笑) それにしたって『世界の危機』とは。そこまでの大事の可能性には、流石に思い至らなかった。


ジン:

「それって……」

ユフィリア:

「ダメだよ? 絶対」

ジン:

「わかってるって」

シュウト:

「?」


 2人の雰囲気が怪しかったが、その意味までは読みとれなかった。まるでジンにとって目的を達成する手段であるかのような?


葵:

『万一の話だけしとく。手足に燃え移ったら根本からチョンパして。頭とか胴体の場合は首を()ねて即殺推奨。それでも間に合うかどうかは神のみぞ知る世界。それに燃え散った炎は種火に戻して処理しないとマズいからね。あー、ちっちゃいスコップとか必要かも?』

ジン:

「おいおい。スコップに燃え移るだけじゃねーのかよ。なんか燃えない物質でもなきゃ無理だぞ」

葵:

『用意してる。今回ばかりは実験する気にならないんだけど』

レイシン:

「『灰』をもってきたよ」

リコ:

「凄いセンス!」

英命:

「燃えない物質ではなく、『燃え終わった物質』ですね」にっこり


 燃え切ったところで灰と共にランタンの中に戻すような手順を想定しているらしい。とにもかくにも火事みたいなことにならないように気をつけよう!とのこと。


 〈聖なる種火〉の影響か、順調にフロアを攻略していった。夕食までに5層フロアボスぐらいまで到達できるかもしれない。2層の途中で皮算用していると何か失敗しそうな気がしてくるけれど(苦笑)







ユフィリア:

「ねーねー、ジンさん?」

ジン:

「なんだ?」

ユフィリア:

「さっきから何やってるの?」

ジン:

「新技作ってるだけだ」


 ジンが妙におとなしいので気になったようだ。しかし、聞き捨てならないコメントである。


シュウト:

「また新しいのですか!?」

ジン:

「作ったの見てから言えよ(苦笑)」

葵:

『ほーん。ならば、このあたしが監修してしんぜよう。ひとつの技につき、金貨……』

ジン:

「いるかっ、ダーボ、ハーゼ!」

葵:

『あぁん! ちゅまんないだろ! あたしも混ぜ込みワカメぇ!』

ジン:

「意味はわかるけど、もうちょい正しい日本語をだな」

ネイサン:

「それはそれとして、ジンってどうやって新技を作るのさ?」

スタナ:

「興味深い話よね」

ロッセラ:

「できれば、いろいろ教えて欲しい」


 言われてみたらそうだ。気が付くと新技を披露されている。なのに開発姿はほとんど見たことがない。もしくは見てても気が付いていないってことだろう。今も普通にしてただけに見えたし。


ジン:

「どうって、できるかな?って感じで思いついたのをテキトーに」

スタナ:

「そんな感じでいいの?」

ジン:

「知らねーよ。普通かどうかとか、どうでもいいし(苦笑)」

ネイサン:

「失敗作とかってあるの?」

ジン:

「ある。完成しなかったヤツが大半だけど、中には完成したけど役に立たないのとかもあるね」

ネイサン:

「じゃあ、作りまくって、役に立ちそうなのを残すタイプだ」ニヤリ

ジン:

「結果的にそうなるな」ニヤリ


 ニヤリと笑い合う男たちの図。ちょっと意味がわからなかった。


シュウト:

「……今はどんなヤツを?」

ジン:

「ふたつあって、片方はホレ」


 空気が焼け焦げる凄まじい音と共に、全身から雷が溢れ出た。水中神殿でも漏れ出ていた『呪いの雷』である。竜の因子を〈冒険者〉の体に縛り付ける鎖の役割をしている。


ネイサン:

「それ、痛くないの?」

ジン:

「『竜魂呪』の一部だからな。もう体の一部みたいなもんだし、痛みとかはないんだけど」

シュウト:

「でもそれがあると、〈竜破斬〉の非属性ブーストが……?」

ジン:

「そうそう。〈聖なる種火〉の影響で『これ』が出やすくなっててな。右手の方に行かないように、もう必死だよ」

ニキータ:

「なんか、スミマセン(苦笑)」


 〈聖なる種火〉はニキータ預かりだが、持っているというより持たされているという側面が強い。実力的に持たせて大丈夫そうな片手剣士的な意味合いがほぼ大半だろう。


ジン:

「俺の魔力操作能はお粗末と言っていいレベルだが、竜亜人に覚醒……、『竜覚』してると、多少はマシなんだよな」


 竜亜人覚醒状態だと長いので、竜覚と省略したようだ。

 ビリビリが左腕の側に集まっていく。要するに右腕に行かないようにしてたら、左腕でなんか使えそうかも?って話らしい。……すごく、テキトー、です。


ジン:

「もうちょい頑張れば、盾にまとわりつかせてダメージアップできそうかなって感じだろ。なんかもうひと工夫あれば……」うむむ

リコ:

「魔力操作力を高めるために、左手に指輪か、腕輪するとか?」

タクト:

「左手に聖水を振りかけてみるとか?」

葵:

『いっそ、呪われた盾を装備すりゃいいんじゃね?』

シュウト:

「えっ? それって逆では?」


 なんとなく聖なる盾を持つ方が良さそうな気がするのだけど??


葵:

『いやいや。だって種火の聖なるパワーで封じられそーなのを防ぐために、ビリビリが活発になってるんだべ? それはイレギュラー状態じゃん。そもそもモルヅァートの目的ってば、呪いによって呪いを防ぐことなはずだから……』

ジン:

「あー、呪われた盾なら、デメリットを打ち消して装備できる可能性が高いのか。……そりゃ、考えて無かったな」


 武器は雷撃を纏ってしまってダメだろうけれど、盾と鎧は呪われた装備品でも良いらしい。候補としてはやはり盾だろうか。……考えてみると、『呪われてなければ、絶対装備したんだけどなぁ』という品があればいいことになる。だが呪われた武具で強力な装備というのはあまり耳にしない。レイドボスのドロップ品にそんなのが混じっていたら大事だろう。そうなると、トラップに使われるイベント系アイテムなんかにありそうな気がする。

 それ以外だと、ランダムドロップ品で、鑑定に失敗すると呪われたアイテムになるって話があったような。とはいえ、ランダムドロップだと秘宝級が限界だし、魔法級ばっかりになりそうな気がする。


葵:

『な? あたしってば、役に立つだろ。ちょー重要戦力だべ』えっへん

ジン:

「まだ何も解決してないんだけどな!」

シュウト:

「ですよねー(苦笑)」


 〈スイス衛兵隊〉メンバーに確認したところ、さすがに誰も持ってきていなかった。呪われていたらまともに売れない。ゴミみたいな値段で売ったり、部屋のどこかに放置してたりするのだとか。そりゃあ、そうなるだろう。僕も似たり寄ったりだ。

 ルーマニアのプレイヤー・タウン〈アルバ・ユリア〉まで戻れれば、捨て値で入手可能だろうけど、それはそれで往復に何日か必要になってしまう。

 

葵:

『しょうがない、サンクロフトに作ってもらおう!』

シュウト:

「困ったら全部、サンクロフトさんに頼むつもりですよね?」

葵:

『協力関係なんだから、ギブアンドテイクだよ』

ジン:

「テイクアンドテイクじゃねーか。ギブをしろ、ギブを」

葵:

『考えとく。んじゃー、なんか適当な指輪を呪ってもらうのでいいな?』

ジン:

「え~? 装備枠足りなくなるんですけどー」


 なんとゴネはじめた。たしかに、アクセサリーの装備枠はふたつだから、どっちかを外さないと指輪が付けられない。


ジン:

「ユフィにもらったペンダントは毒耐性だから外せないし、〈スコルピオネの挑発ベルト〉ってば、〈アンカー・ハウル〉の効果範囲を1mも広げる貴重品なんだぜ?」

葵:

『何年前のアクセ使ってんだよ!』

ジン:

「えーっと、あれって、いつだっけ?」

レイシン:

「上限80レベルの頃だから、4~5年前かな?」

石丸:

「思い出の品っスね」


 一瞬、ショボイと思ってしまった。店売りの製作級でも、同様の効果のアクセサリーを見つけることができるだろう。しかし、4~5年前だとすると本当に貴重品だったかも。


葵:

『だからあきらメロン!』

ジン:

「い~や~! ズボンずり落ちちゃう~!」

葵:

『嘘つけ、おなかポンポコリンだろ!』

ジン:

「リアルはそうでも、こっちじゃナイスバディだっつの」

葵:

『ちっ、しゃあねぇな。だったらその盾を呪ってもらうんでもいいよ』

ジン:

「ひぃ~っ!だっ、ダメだダメだ。俺の大事なおニューの盾を、どうしてそんなことしなきゃいけないんだよ!」

葵:

『テメェ、駄々こねてんじゃねーっ!』


 言えることがあるとすれば、ただ一言だけだろう。ヒドい(確信)


リディア:

「でも、そこまでしないと巧くいかないってことは、〈竜破斬〉も大丈夫ってことなんじゃ?」

葵:

『……ん?』

ジン:

「いやいやいや、ホレ、みてみろ」


 カインの翼で出来た黒翼剣の、刀身の途中まで雷が届いていた。たしかにこれは『あかんやつ』だ。


葵:

『これっておっかしくね?』

ジン:

「だな。おっかしーなー?」

リコ:

「剣と盾を持ち替えてみたらどうなるんです?」


 そうしてみると、呪われた雷が盾を覆っていた。一応、この状態を目指していたハズだから完成と言えなくもない。装備する腕が反対だけど。


ジン:

「どーなってんだ???」

葵:

『もうこれでいいじゃん。左で剣をもって戦えって』

ジン:

「いやいやいやいや(笑) そういう話じゃないから! えっと、何が違うんだ? こうか? いや、こうか?」


 試行錯誤することしばし。2回の戦闘を挟んでジンの挑戦は続いた。


葵:

『もっと、こう、ホース的な? ストロー的な? 魔力をびゅーっと』

ジン:

「うぎぎぎ! これでどうだ?……できたっ!!」てってれー


 盾+雷状態の完成だった。とりあえず、ジンの口伝は超グダグダやった末に完成してたらしい。てっきりもの凄い緻密な計算の結果なんだとばかり。これは、あんまり知りたくなかった、カモ……。


ジン:

「リディア!」

リディア:

「ごめんなさい!(涙)」

ジン:

「でかした。褒めてつかわす。……チューしてやろうか?」

リディア:

「結構です」


 なぜかビビりまくるリディアだったが、チューは即座に却下した。


ジン:

「やっりぃ! 新技でけたー! 名前どーしよっかなーっ」うきうき

葵:

『……これ、未完成じゃね?』

ジン:

「何が? どこが?」ピタっ

葵:

『ここまで来たんなら、もっと便利な風に改良しようぜ。鞭みたいにビューンって伸ばすとか!』


英命:

「イメージを膨らませに行きましたね」

スタナ:

「かなり強引だけど、こういう部分は参考になりそう」


葵:

『呪いの雷で縛り付けられているんだから、鎖ってことだろ。ライトニング・チェーン!的な』

ジン:

「それ、ネビュラ・チェーン!って言いたいだけだろ?」

葵:

『そうだけど! 中距離で振り回して使えたら便利くね?』


 近距離は無敵の白兵戦。遠距離には槍投げがあるが、中距離は特に武器がない。ここで中距離に雷の鎖を振り回す攻撃が追加されると、ちょっと便利そうだ。……便利っていうか、メチャクチャ強いかも。攻略する側の立場としては絶対にナシなのだが、後のことは、後で考えよう、うん、そうしよう。


ジン:

「一理あるか。……あー、もう、カースド・ライトニングにしようと思ったのにぃ。カースド・ライトニング・チェーンじゃ長すぎるだろ!えーっとぉ、じゅ、らい、べん。じゅ、らい、さ? おん、らい、べん。おんらい、さ。……じゅ、じゅ、じゅらい? おん、らい? らい、さ、じゅ?」

葵:

『CLCで良くね?』


 『呪 or 怨』、『雷』、『鞭 or 鎖』の組み合わせをいろいろ試した結果、呪雷鎖(じゅらいさ)に決まりそうだった。


葵:

『それってアレだろ? 盾を鎖でつないでブン投げて武器にするっつー』

ジン:

「ソーサー言いたいだけちゃうんか!って、そんなピンポイントにアルゴス的なの知ってんの? お前、生まれてたっけ?」

葵:

『何年か前に、リメイクだかの話はあっただろ』


 話にまったく付いていけない。とりあえずアメリカのキャプテンの話ではなさそうだった。


葵:

『それと近距離で馬鹿デカい手みたいな形にして、呪雷爪(じゅらいそう)、とかどうよ? ガード不能・雷撃攻撃!』

ジン:

「そうは言っても、これ以上はなんかないと無理だぞ?」

葵:

『呪いの盾か、指輪だなぁ~。剣を両手持ちする状況を考えたら、指輪だけど、どうしよっかな~?』

ジン:

「ちょっと待て。なんでお前が俺の装備決めようとしてんだよ!?」


 ジンの抗議もむなしく、スルーされて戦闘へ。よく考えてみると、凄まじく厄介な能力の気がする。攻撃を盾で防がれるとそのまま雷撃ダメージを喰らうのではなかろうか? それに雷撃耐性が極まってそうな能力でもある。〈パラライジング・ブロウ〉のような、麻痺付与の攻撃も、電撃ベースのものは無効化されそうな気がしてきた。ここにいるアンデッドは神経毒系の麻痺らしく、無効化まではできないみたいだけど、そもそもジンは〈妖精石のペンダント〉で毒への耐性は高い。


ネイサン:

「それで? もうひとつの新技っていうのはどういうの?」

ジン:

「この話って、まだ続くの?」

ネイサン:

「当然じゃないか。ボクとはコラボした間柄だろう?」


 『ネイサン・ブレード』こと『轟天雷』でコラボした2人である。何気に便利で強い技だ。


ジン:

「まぁ、いいか。気で防壁っぽいの作れないかな?って思っててさぁ」

葵:

『DBっぽいやつ?』

ジン:

「そうだけど、そもそも気の力で物理的な防御とか無理だから(苦笑)」

シュウト:

「そうなんですか?」

タクト:

「こっちの世界でなら行けそうな気がしたんですが……」

ジン:

「いや、〈オーラセイバー〉でなら防壁ぐらい……イケんのか?」

レイシン:

「さぁ?(笑)」

葵:

『一線!とかって引けばイケんじゃね?』

ジン:

「それ、相殺じゃダメなの?」

葵:

『そかも(笑)』てへっ


 マンガやアニメ、ゲームのイメージから、一瞬で口伝の元ネタを作ってこられるのが強みになっている気が……。


ジン:

「順に話していくと、竜覚してる時、圧縮生命力が強めに使えんだよ。オーバーライドの半分ぐらい、かな?」

スタナ:

「圧縮魔力の、HP版ね?」

ジン:

「そ。この圧縮生命力から派生してる技は、超再生、エナジーシールド、エナジーバーストと3つあって……」

シュウト:

「後ろのふたつ、初耳なんですけど!」

ジン:

「そりゃそうだ。失敗作だから言ってないヤツだし」

ネイサン:

「どうしてダメだったの?」ワクワク

ジン:

「えっと、エナジーシールドは、圧縮生命力でガードするんだけど、HPが減るからあんまり意味がないっていうか。傷を負わないだけでダメージがあるのと変わらないヤツなんだ」

葵:

『すんげー無意味なヤツ来たな!(笑)』

ユフィリア:

「んー、お洋服に傷をつけたくない時に使うとか?」

ジン:

「そういう方向になるな(苦笑) しかも鎧の防御力が利用できないからダメージが更に大きいっていう……」


 本格的にダメっぽいヤツで、コメントがしずらい。


ジン:

「もうひとつのエナジーバーストは、密着状態からHPを炸裂させて、ダメージを与えたりするのに使える発勁みたいな技なんだけど、減らしたHPの1/4~1/2ぐらいのダメージしか行かなくってな(苦笑)」

ネイサン:

「それ、自分の方がダメージが大きいってことだよね?」

ジン:

「まぁ、失敗作なんてそんなもんだろ。……でも、バーストの方は、クラップスタナーみたいな形で応用したりしてんだよ。ブーストでやっちゃってるから、系統外だけども」

葵:

『なるほどねー。そんで?』

ジン:

「今回はリベンジで、お布団的な柔らかい方向で行こうかなって」

ユフィリア:

「おふとん?」

スタナ:

「クッションみたいに柔らかく、ダメージを吸収するエナジーシールドってことね?」

リディア:

「エナジークッションとか?」

リコ:

「エナジーマットレスとか?」

ジン:

「人の技名で遊ぶな!」

葵:

『だが、そうは問屋がおろすかっ!!』

ジン:

「んだよっ、遊び倒す気かキサマ!?」

葵:

『ちっちっちっ。それは圧縮生命力を放出して、ダメージを緩和しようって技だべ?』

ジン:

「そうだけど?」

葵:

『もっと障壁っぽくできんじゃねーかってことだよ。ダメージ遮断障壁も、言ってみりゃHPの壁だべ? てことは……』

マリー:

「超再生の仕組みを利用できる。余剰分の生命力を身体外部にプールして防壁とする。つまり情報生命因子理論の応用形!」ひょっこりはん

ジン:

「マジか……」

シュウト:

「マジですか……」


 どこからともなくマリーが現れたことで混迷の度はいや増すばかり。葵×マリーのコラボは危険だ。


シュウト:

「つまり、できるってことですか?」

ジン:

「待て、どうやって生命因子とやらを外部にプールさせんだよ?」

マリー:

「マナ呼吸の要領で。マナでできるなら、生命力でもできる!」

葵:

『アーハァン。ブラクロのマナゾーンの逆、ライフゾーンってことだな』

ジン:

「……仮にそのライフゾーンで生命因子を身体外部に留めおくことができたとして、なんでそれが防壁になるんだよ?」

リコ:

「エナジーシールドは一応シールドになってるんですよね?」

ジン:

「圧縮が掛かってるからだ。そもそも傷がないだけでダメージは喰らってるから、システム的にはイーブンなんだよ。身体外部にプールするとなると、圧縮するのは無理だから……」

ユフィリア:

「?」

ニキータ:

「圧力鍋には蓋がちゃんとしてないと」

ユフィリア:

「そっかー」


 料理と同列に語るのはいかがなものか?と思わないでもないけど、もの凄い説得力ではあった。


マリー:

竜の魔力(ドラゴンフォース)と呼んでいるものが〈共感子〉(エンパシオム)だとしたら、『その程度の融通』はきくはず。スキルなどに分類されるより前の、より生命体に近い状態になると予想される」

葵:

『譬えるなら、幽霊を身に纏う感じかな。妖気でも可』

ジン:

「言いたい放題言いやがって、……出来たぞ」

ネイサン:

「はやっ!?」

ジン:

「意識や気の操作は専門だからな。どれ、実験を……」

ユフィリア:

「ジンさん!」

ジン:

「お?」


 唐突にダッシュして、飛びついた。柔らかく抱き止めるジン。


ジン:

「いきなり、どうした?」

ユフィリア:

「……んー、ぜんぜんダメ。『ふっかり感』がなかった」

シュウト:

「えっ……?」

ユフィリア:

「おふとんみたいにするんでしょ? やさしさが足りてない!もっとちゃんとして?」

ジン:

「はい、すいません。……どうしよう。2ちゃんにスレ、立てるべき?」

葵:

『「ウチのデバッカー姫の要求が酷な件について」ってか? 男気ジャンケンするっきゃねーんじゃね?』

ジン:

「だよなー」がっくし


 つまり、『ふっかふかのおふとん』を期待して飛びついてみたらしい。そしてご期待に添えてなかったので作り直しになった、と(苦笑) 相変わらず、わかりやすいような、わかりにくいようなお姫様だ。


ジン:

「しかし、言ってることは正しいからなぁ。えっと、厚みがいるなぁ。層にした方がいいのか? 流動性を高めてみるとか? もうちょっと密度を高めて……」


 ふっかふか感を追求することしばし。今度こそライフゾーン、気の防壁が完成した。


ジン:

「よーし、リベンジだ。『オーバーライド!』」ズゴゴゴゴ

ユフィリア:

「じゃあ、いくよっ!」

ジン:

「助走つけて、かかってこい!」

シュウト:

「なんの戦いですか!(苦笑)」


 飛びかかるユフィリア。うっとりとした声が漏れ出た。結果は明白だろう。


ユフィリア:

「やーん☆」

ジン:

「どうだ?」

ユフィリア:

「……えっとね、よくわかんなかったから、もう1回なの♪」えへっ

ジン:

「ふざけんなよ? 成功なら成功と言えっ!」

ユフィリア:

「もう1回、もう1回なのぉ~」

ネイサン:

「うぉ~っ、なにこの心地よさ。超フッカフカだよ!」

マリー:

「じっけん!」だきっ


 当然のようにお試しするネイサンと、科学的精神の発露らしき飛びつき実験を敢行したマリーだった。


マリー:

「なるほど。厚みをもった生命因子の層に包み込まれる感覚。命のふかふか感!すばらしいっ」


 わかったようなわかんないような錯乱したコメントを繰り出している。ともかく心地よいらしい。


リコ:

「なんか、汗くさそうな気が……」

ジン:

「人聞きの悪いことをいうなっ!」


 的確なコメントを繰り出すリコだった。いやぁ、怖いもの知らずだ(笑)


ヴィオラート:

「ジン様、わたくしも参ります!」

ロッセラ:

「ダメですってば!」

ヴィオラート:

「後生です! 後生ですから~(涙)」

ジン:

「あー、可哀想だから許してやってくんねーか? ……てか、戦闘中にやられると困るから、今の内にってことなんだけど」

スタナ:

「それもそうね(苦笑)」


 数年ぶりに再会する恋人たちの勢いでもって抱きつきにいったヴィオラート様だったが、気の防壁に阻まれて接触には至らなかった(笑)


ヴィオラート:

「ジン様のやさしさに包まれました!」

ロッセラ:

「ほんと、すっごい、柔らかかった」

ヴィオラート:

「けれど、どうして抱きしめてくださらないのです?」

ジン:

「それは信者のみなさんに言ってね?」

ロッセラ:

「さ、戻りますよ」

ヴィオラート:

「ああああ~、ジンさま~(涙)」


 そしていよいよ、僕らの出番となった。


ベアトリクス:

「うむ」

タクト:

「では……」

シュウト:

「いきますっ!」

ジン:

「やめろ! お前らの突撃を受け止められるほど、ガード硬くねーんだよ!」

ユフィリア:

「そう、フワフワなんだよ!」


 タクトは掴みにいった腕を受け流され、僕は頭を押さえつけるようにして回避された。まるでラグビーか、アメフトのタックルみたいだった。最後にベアトリクスの神速のタックルが突き刺さる。僕らは抱きつくことができなかったが、フカフカ・フィールドの存在は充分に味わうことが出来た。


ベアトリクス:

「うむ、これはなかなか厄介な能力だな」

ジン:

「……離れてから言え」

ベアトリクス:

「おっと、これは失礼」

ヴィオラート:

「ジン様、気を付けてください! その人怪しいです。絶対わざとですぅ~」

ジン:

「なんのこっちゃ?」

ベアトリクス:

「さてな……。『柔らかな防御』というのか。攻撃で突破できない程ではないものの、ダメージが緩和されるだけでなく、動きを鈍らせて避けやすくするものになっているのか」


 フェイスガードを上げてオーバーライドを解除するジン。


ジン:

「ふぅ、まぁまぁか。フカフカにできるのはオーバーライドの時だけだが、こんなもんだろ」

ネイサン:

「もう出来ちゃったってこと?」

葵:

『死神の鎌が怖かったから、とりあえず防御力上げてみましたってスキルだからね。こんなもんじゃん?』

ジン:

「そうだけど! 言い方! デリカシー!」


 なるほど、それで慌てて作ったって話なのだ。


マリー:

「これって、ダメージ処理はどうなる?」

ジン:

「どうって?」

葵:

『殴ってみりゃ早いんだけど、判定が2回になるんじゃない?』

ベアトリクス:

「それは、連続攻撃扱いになるってことか?」

ジン:

「おろ、ゲロビ?」

葵:

『もし多段攻撃化するなら、累計補正が掛かるんじゃね?』

マリー:

「それは積層装甲(ラミネートアーマー)に至る可能性!」くわっ


 さっそく実験してみる流れに(笑)


シュウト:

「いきまーす」

ジン:

「なんでアサシネイトでやるんだよ、これマジで死ぬんじゃないの?」


 竜亜人覚醒状態のジンにアサシネイトを放つ。ちなみに超再生が常時化しているので、直ぐに回復が始まる。このためダメージ量の読みとりは石丸にお願いしていた。


葵:

『いしくん?』

石丸:

「ダメージ7800点っス」

シュウト:

「ちょっ、全然いかないじゃないですか!?」

ジン:

「だよな? 最新版の基本値は?」

葵:

『12000点前後』

マリー:

「素で65% ……なぜ?」

ジン:

〈竜血の加護〉(アイアンスキン)がパッシブ化したから何もしなくてもこのぐらいってことか? ああ、竜覚もしてるし」


 再使用規制短縮の呪文を貰ったりして、待つこと4分ばかり。


シュウト:

「じゃ、いきまーす」

ジン:

「まてまて。竜覚はそのままで、気の防壁だけ追加だよな?」

葵:

『そうそう』


 同じ場所を同じように攻撃。手応えが変わったのが自分でもわかる。


石丸:

「約6800点っス」

葵:

『ちょっ、防御力1000点アップだと!?』

ジン:

「そんなに無い、絶対、そんなに無い!」

マリー:

「おもしろい!」

葵:

『次、威力の低いので試してみようぜーっ』

ウヅキ:

「やるなら一定ダメージ技だろ」

ジン:

「俺をオモチャにするなぁ!!」


 その後の実験で気の防壁が400点、累計補正値が-10%だと割り出していた。正直、マリーがいなければ無理だったと思う。


マリー:

「もう1段階、累計補正を発生させたい。セルデシア式積層装甲を開発しなければ」

葵:

『4000点越えの大ダメージだと、累計補正の方がメインになるんだなぁ、おもしれー』

マリー:

「これを分割防御機構(セパレート ディフェンス システム)と呼称しよう!」

ヴィルヘルム:

「すばらしい発見なのはわかるが、そろそろ攻略にいかないか?」

ジン:

「そうしてくれると、助かりまふ」

 

 一番強い人が、一番努力しているというのは、やはりモヤモヤくるものがある。僕らも新しい技を見い出して、もっと強くなりたいと思った出来事だった。

 

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