216 恋慕 / マーダーセンス
ヴィオラート:
「好きですー」
ジン:
「俺も好きだぞ」
ヴィオラート:
「大好きですー」
ジン:
「ああ、大好きだよ」
ヴィオラート:
「大・大・大好きですー」
ジン:
「ちょっと待とうか。……それ続けるつもり? だんだん恥ずかしくなって来たんですけど?」
ヴィオラート:
「ウフフフフ」
ヴィオラート:
(なんだか、たーのしー♪)
嫌われていないのが分かってとても安心しました。それどころか好きだと言ってもらえます。でも今のところ付き合う気はなさそう。残念。でもそれだって時間の問題です。いえ、本当のところはどうなのでしょう?
ヴィオラート:
「ところで、ジン様?」
ジン:
「なんだ?」
思い切って耳元でヒソヒソとしてみましょう。うんと近づいて、それだけでドキドキします。た・の・し・い。
ヴィオラート:
「本当のところ、ユフィと付き合う予定はあるのですか?」ヒソヒソ
ジン:
「わからん。……アイツには事情があってなー。今んトコ解決のメドが立っていないんだ。繊細な話で、手を貸すこともできない。そっちが上手く行ったとしても、どうするつもりだか、さっぱりだ」
ヴィオラート:
「ジン様にも分からないのですか……?」
ジン:
「なんも考えてないから、読みようがない。シンプルなんだよ。『日々を楽しく、一生懸命』って」
ヴィオラート:
「そうですか……」
最大の懸念は、最大の懸念のまま残ってしまいました。この分だとタイミングの勝負になるかもしれません。でも、嫌われていないのならば戦いようはあります。そう、幾らでも。
ジン:
「この話はナイショで頼むな。下手に手を出すと、アイツと友達でいられなくなっちまうぞ」
ヴィオラート:
「わかりました」
手を出してもしも問題が解決してしまうと、ジン様との関係が進展してしまうかもしれません。触らぬ神に祟りなし(Let sleeping dogs lie.)です。
ヴィオラート:
「……ところで、17歳の魅力の虜になるご予定は?」きゅるるん
ジン:
「そっちは無いね。完全に、完っ璧に脈なしだ。諦めろ(笑)」
ヴィオラート:
「わーん(涙) もうちょっと優しくしてください!」
ジン:
「おい、あんまりひっつくなって。ロリコンの嫌疑が掛かるだろう?」
去り際、手を振ってみました。すると軽く手を挙げてにこやかな反応が返ってきます。その『ちょっと』がたまらなくうれしい。好きな人が、自分を好きでいてくれる幸せ。付き合うのは無理って言われてますけど! でも、好きって言ってくれるだけで、全然 違うのです。
我が世の春が来たのかも知れないと、そう思いました。
……この時までは。 でも、ぜんぜん違っていたのです。
◆
ヴィオラート:
(ジン様~☆)
ジン様は打ち合わせ中で忙しそう。じっと見つめていると、私に気が付いてくれました。笑顔で合図を送ってみます。目だけでしたがちゃんと反応が返ってきます。忙しいのに、こうして気遣ってもらえる。……たーのーしー!
会話に参加しようと思い、聖女らしくキリッとしてみました。
たいていの男性は、おっぱいが大きくて、頭わるそーな『やれそうな女』にしか興味がありません。デキる女性なんてもっての他です。その点、ジン様はまともな感性をお持ちです。仕事がデキた方がたぶん好まれます。大丈夫、私はデキる女!と頭を切り替えます。
議題は攻略速度についてでした。
これまでは1日に5~7層ほど突破できていたのですが、水中神殿は昨日の時点で3層までしか攻略できていません。だいたい2日ほどでダンジョンを踏破して、レイドボスの戦力を確認し、翌日に倒す、を繰り返していたのですが、今回はもっと時間が必要になりそうです。その対策をどうするか?というお話でした。
ラトリ:
「削るとしたら訓練時間ぐらいしかないと思うんだけど?」
ジン:
「却下だ。訓練を減らすぐらいなら、睡眠時間削った方がまだましだ」
ラトリ:
「でももう、足ネバはみんな出来るようになったんじゃないの?」
ジン:
「……誰が、何を、出来ているって?(ニッコリ)」ゴゴゴゴゴゴ
ヴィルヘルム:
「そこまでだラトリ。我々はジン君の要求水準を満たしていない」
オスカー:
「だったらボス戦向けの、水中訓練の時間を削る?」
葵:
『論外だね。カトレヤ組だけ生き残って、撤退を何日か繰り返したいなら、そうすればいい。ボスが出てきた後じゃ、あの場所で訓練できないんだよ。今やるしかないんだってばさ』
ギヴァ:
「葵に賛成だ。ここはチャンスだと考えよう。最初は水の中に入ると、どこにいるか分からなくなりそうだった。それが今ではかなり自在になって来ている。万全の準備をし、自信をもってレイドボスに挑もう」
しっかりと頷く仲間たち。水中訓練の重要性はここのメンバーが一番分かっているようでした。
ヴィオラート:
「そうですね。最終的に解決することが大切です。ここで訓練を疎かにして、レイドに失敗しては元も子もありません。全体で判断すべきでしょう」
ジン様の援護になるように、聖女然とした態度で頭良さげなことを言ってみました。褒めてもらえたらうれしーなー?
ラトリ:
「やっぱり焦るべきじゃないってことかねぇ~」
ネイサン:
「ねぇ、ジン? ちょちょっとパワーアップする方法とかないの?」
ラトリ:
「それは詳しく聞いておかないと」
ジン:
「おいおい。お前らトップチームのエリート様じゃねーのかよ。バカ丸出しのウチのクソ餓鬼どもと変わらねーじゃねーか」
ラトリ:
「それはともかく、あるの? ないの?」
ジン:
「はーん。そんなキミ達に日本の格言を贈ろう。『ゴミは、ゴミ箱へ』」
ラトリ&ネイサン:
「「!?」」
アクア:
「味わい深いわね」
葵:
『それ格言じゃなくて、標語だっつー(笑)』
ジン:
「そうともいう」しれっと
ヴィルヘルム:
「すまない。非礼を詫びよう」
ベアトリクス:
「いい時間だ。そろそろまとめないか?」
レオン:
「出発から11日、レイド開始から今日で10日目だ。途中で1日訓練に充てたが、それでもここまで最速で攻略してきたと断言できる。これは、このチームにしか成し得ないことだろう」
元・皇帝の人はまとめるような発言もお得意なご様子。見た目カッコ良くて、能力も極めつけに高いのですが、印象は最悪です。なにしろ私に面倒な聖女役を押しつけた張本人ですので。笑顔で接するぐらいのことはわけないんですけども、内心では半ギレ状態だったりします。うふふふふふー。聖女役とかやってなければ、日本にくっついていくのに。うふふふふふー。
ヴィルヘルム:
「自信と誇りをもって〈大規模戦闘〉に挑もう」
スターク:
「攻略速度に関しては、とりあえず現状のまま様子見でいいね?」
ジン:
「ま、やれることはやってみるさ。……お前はどうなんだよ?」
葵:
『何もないといえば、嘘になるかもしれなくもない』
ジン:
「どっちだよ(苦笑)」
葵:
『我に秘策アリ!』ギラン
ジン:
「今、考え中だってさ。……よし、訓練すっか」
解散になったので、そそくさとジン様の近くへ
ヴィオラート:
「ジン様~」
ジン:
「おう、お疲れちゃん」
葵:
『聖女ちゃん、さっきは味方してくれてありがとねん』
ジン:
「そういえばそうだったな。サンキュ」
ヴィオラート:
「当然のことをしたまでです!」
お役に立ててうれしいですアピールをしておきます。ジン様の茶色の瞳は、穏やかで深い色をしています。優しい視線にハートまで鷲掴みにされちゃいました。ご褒美感すごい!
葵:
『んで、パワーアップ案とかねーの?』
ジン:
「無い袖は振れねぇって。成長には少なからず時間が必要なんだよ」
葵:
『口伝は閃き待ちだし、装備品とかでどうにかってことか』
ジン:
「シュウトならポンと強化できそうなんだがなー」
葵:
『……ああ、気が付いてやがったか』
ジン:
「あの組み合わせでどうして気付かないのか不思議でしょうがねぇよ。なんぞ、育て方を間違えたかって。悩むわぁ~」
葵:
『もう気付いてて、失敗したとか?』
ジン:
「シュウトだぞ? ないない」ひらひら
葵:
『無いかー(笑) ハングリーさが足りねーんだべ。飢餓感を煽ったら?』
ジン:
「……タクトの方をもうちょっと鍛えてみるか」
葵:
『今はレオンくんの方が効果あるべ』
ジン:
「なるほど、さすがいじめっ子」
葵:
『誰がいじめっ子だっつー』
2人の会話に一区切りついたタイミングで、タイムリーな話題を振ってみます。内容にはあまり興味ありませんが、こっちを見て欲しかったので。
ヴィオラート:
「ところで、攻略速度のお話なんですが、何が問題なんでしょう?」
葵:
『敵の数が単純に多くて、時間が掛かるんだよね』
ジン:
「強いは強いんだけどな、リザードマン。でも対処できないほどでもないから、気持ちの問題だなー」
ヴィオラート:
「気持ちの問題、ですか?」
ジン:
「強いし、数が多いから、どうしたって気持ちに余裕がなくなっちまうんだよ。実力差はちょっとだとしても、数がいるからなんだかんだ積み重なって時間が掛かっちまう。そして時間が掛かってくると、やっぱり強いからだなって評価が決定する。だから慎重になる」
葵:
『慎重になると余計に時間がかかる』
ヴィオラート:
「悪循環ですね」
葵:
『ジンぷーの見立てじゃ、そこまでの戦力差はないんだな?』
ジン:
「ない。素でやるならともかく、アクアがいて連携してるからな、そうそう負けやしない。たぶん1つレベルが上がれば、互角ぐらいに感じるようになるかも」
葵:
『圧勝するには2レベルあげないとってトコか……』
ヴィオラート:
「気持ちの問題となると……。何かきっかけがあれば良いのですが」
他者の認知を変えることの難しさは身近な話でもあって共感します。一般的な話として考えても、嫌いなものを好きになるのは難しいのです。オレンジを葡萄だと思え、なんて言われても困ってしまいます。
しかも、私は〈大規模戦闘〉は初めてです。途方もない話に感じていました。
葵:
『ひらめいた。……あたしに考えがある』
ジン:
「どうせロクでもないんだろうけど、言ってみ?」
葵:
『フッ。ジンぷーが、陸奥を名乗ればいい』
ジン:
「何っ……?」
ムツ? 聞き慣れない単語です。自動翻訳が上手く機能してないのか、意味が分かりません。何かを意味する『名前』のようですが……?
ジン:
「俺に、陸奥をやれっていうのか?」
葵:
『そうだ』
ジン:
「だがそれは、……諸刃の剣だぞ?」
真剣勝負のような話し合いになってしまい、居場所がありません。えーん、無視されるのはいやですー。そしてギラギラしたまま、訓練タイムです。
ジン:
「じゃあ足ネバをやるように。なんだかもう、出来るようになったと勘違いしている者もいるようだが、もっとクオリティを上げろ。上達を目指せ。水のクオリティを追求するのだ」
シュウト:
「わかりました!」
ジン:
「やり方は各自に任せる。……レオンとベアトリクスは別メニューだ。こっちに来い」
シュウト:
「……あの、別メニューってなんですか?」
ジン:
「攻略に時間が掛かってるから、ちゃっちゃっと強くなりたいって言われちまってなー。凡人はどうしたって成長に時間がかかるだろ? だもんで、天才を鍛えてちゃっちゃっとパワーアップさせようかなって」にっこり
シュウト:
「そんな、そんなのって……!」
鬼畜で非道なジン様もステキです。こうやって教え、育てているのですね。キャンプでの訓練を終えて、水中神殿へワープ。続けて水中訓練を行います。
ヴィオラート:
「アハー♪」
ジン:
「ん」
ちょっと離れてても、じっと見ていれば気が付いて反応が返ってきます。それだけで、温かな感覚に包まれるのです。とても気持ちが良くて、嬉しいものです。2人の気持ちがつながっているのが分かります。(これはもう両想いなのでは!?)逸る気持ちを抑えるのにたいへん苦労します。
そんな風に何度かやり取りを重ね、本番のレイド攻略へ。事件はこの日、最初の戦闘で起こりました。
◆
またまたマッチョなリザードマンたちが目一杯出てきてしまいました。まったく、ここの生態系どうなってるの? 整合性とれてないですよね? 辻褄ぐらい合わせてください!とゲームを問題視して、すべての責任をサーバー管理者に押しつけて現実逃避しようとした時でした。
ヴィオラート:
「ジン様……?」
第3レイドからでしたが、1人突出したジン様だけはよく見えました。
手元を切りつけられ、武器を取り落とすリザードマン。ある者は目を、ある者はノドを掻き切られました。戦力の半減したリザードマンを後に残して相手を変え、次々と切り捨てて行くジン様。
ヴィオラート:
「これが、ムツ……?」
後では味方の皆様がトドメを刺そうと奮闘なさっていましたが、まるで追いつきません。恐ろしく素早く、正確な攻撃にはまるで容赦がありません。その姿の冷たさに、私は怯えてしまいました。まるで知らない国の知らない街で迷子になったかのよう。ひとりぼっちでおいていかれてしまった気分です。
レイド初心者ですが、そんな私でも『諸刃の剣』という言葉の意味は理解できました。きっと士気が下がってしまう戦い方なのでしょう。それでも、ムツというのをやらなければならなかった理由があるはずです。
ヴィオラート:
(もしかして、認知を変えるため……?)
あれだけマッチョで強そうだったリザードマンですが、もはや倒すのはただの作業になっていました。
まるで峻厳。極寒の雪山の、肌が切れてしまいそうな冷たさ。ジン様の活躍で、戦闘はあっという間に終了してしまいました。
ヴィルヘルム:
「これは殺人剣と呼ばれる戦い方なのでしょう」
ヴィオラート:
「殺人剣?」
ヴィルヘルム:
「日本の武術には、正しい剣と、悪の剣とがあるそうです」
ヴィオラート:
「ジン様は、あえて悪の剣を振るったのですね? 士気を下げてでも、皆様の認知を変えるために」
ヴィルヘルム:
「ご存じでしたか。失礼いたしました」
ヴィオラート:
「いいえ。ご配慮、傷み入ります」
ヴィルヘルム様は紳士なお方。ジン様がムツという殺人剣?を振るったことで、私がショックを受けたり、誤解しないように事情を説明なさろうとしたようです。もちろん、私の愛情はこんなことではこゆるぎもしませんが、紳士すぎて恐縮の嵐です。
それはそれとして、ジン様を探します。
静謐。
そうとしか呼べないような雰囲気を纏っていました。ジン様の周りにだけ、聖なるエネルギーが集まっているかのよう。ひとり佇む姿に見惚れてしまいました。彼の仲間たちは、まるで打ち合わせ済みであるかのように、気遣ってあの静けさを邪魔しないようにしています。
ジン様の内面で荒れ狂っていた水面が、穏やかに、厳かに、静けさを取り戻していきます。そうした静けさには次の戦闘のためのエネルギーが蓄えられているのでしょう。
確かに神秘的で、恐ろしげな戦い様ではありましたが、その受け取り方はそれぞれに異なっているものではないでしょうか。私のように、魅力的として受け取る方もいらっしゃるかもしれません。いえ、これ以上ライバルはいらないんですけども。
ヴィオラート:
(ジン様~♪)
ジン:
「……ん」
やっぱり反応してくれましたが、返ってきたのは気まずいような微笑みでした。まるで見られたくないところを見られてしまったかのよう。そんなこと全く気にしていませんのに。そして、そう伝えにいこうとして、止めました。よく分からない感情が邪魔をしたのです。
ヴィオラート:
「これは……?」
気恥ずかしさのようなものだろうと思い、後でアタックしに行こうと決めたのでした。この時はまだ、自分で何もかもコントロールできると思い込んでいたのです。どうにもならない感情の働きを知るのは、もう少し先のことになります。
◆
リコ:
「タクト、お疲れさま!」
タクト:
「ああ、どうにか無事に終わったな」
リコ:
「そうだね」
ウヅキ:
「あの赤茶のはヤベーな」
シュウト:
「……ですね」
本日は7層攻略まで攻略して終了。昨日が3層だったので、4層に増えたことになる。モンスターはだんだんと強力になっていくのだが、今は赤いリザードマンが要注意だった。
それは緑色のリザードマンの上位種だった。赤いといっても、そんなに綺麗な色はしていない。傷だらけになって、その跡が残って茶色くなっているようなデザインだ。ノーマルランクであれば1人で1体相手にできるものが、パーティーランク3~6(=3人から6人で相手しないといけない)になるとそうも行かない。レギオンレイドをやっているだけあって、そうしたパーティーランクの敵が束になって出てくる。特殊攻撃もあって厄介な相手だった。
シュウト:
(大変は大変だけど……(苦笑))
ジンが普段やらないような戦い方をしたことで、良くも悪くも影響が大きかった。最初は無能すぎて見捨てられたのかと思った。正確で、精確で、的確で、無駄がなくて、無慈悲で、効率的な戦闘スタイル。相手を殺すためだけの動き。手首を切り落としているのならまだ分かる。でも親指を切り落として、武器をちゃんと握れないようにしてあったのを見つけた時は、言葉もなかった。
でもトドメをささないで次々とターゲットを変更していくので、直ぐに大慌てになった。ちょっと速すぎですよ!と何回叫んだか分からない。無視してそのまま特攻されてしまい、ジンが範囲外になる形でヘイトが何回も跳ねた。申し訳ないと思ってたところから、激怒の方向に一気に感情が振り切れた。いや、僕らがブチ切れたからってどうにもならないんだけど(苦笑) 「クッソ! やってやらぁ!!!」はウヅキのセリフで、それが全てを表していたと思う。
弱った敵にトドメを刺すお仕事は単調なようで、案外そうでもなかった。ジンが与えたダメージからどうトドメを刺すのかを素早く構築する新たなゲームになったからだ。目が見えないならどう動くのか、足が斬られていたらどう動くのかを判断して仕留めていく。しかも1人じゃ間に合わないので、自然、仲間と連携することになった。たとえば、親指がなくなっていると分かったら、武器を叩いてまず弾き飛ばしてしまう。その間にもう1人が間合いを詰め、がら空きの敵にダメージを与える、などだ。
もう強敵とか言ってる場合じゃなく、必死にやるしかなかった。
ジンに対する批判もあったけれど「それができるなら最初からやればいいだろ!」とかであって、それはそれで困ってしまうというか。ともかくイチャモンを付けて、文句を言いたくて堪らなかっただけだ。
最終的に悪いのは、実力の足りない僕らの側なのだ。たびたび殺人剣を駆使し、振り回されつつも、今日の結果は4層攻略。ジンはキチンと成果を示したことになる。そうなってしまえば、文句をいいたくても言えるわけもない。
ジン:
「なんだよ?」
ジンの前にオディアが立った。無言だったので、ジンから問いかける。そっけない態度だ。ちょっとかわいそうかも。
オディア:
「今日の戦闘、みました。感動です! 私の理想そのものでした!」
ジン:
「お、おう……」
オディア:
「あんな〈暗殺者〉に、私はなりたい!」
ジン:
「そうか、がんばれ」
オディア:
「はい!」
ぶきっちょ〈暗殺者〉さんの中身は激熱だった。そしてそれを事も無げにスルーするジン。なんというか、背の低い子には興味なさそうだ。1200% ロリコン疑惑を怖れている。
しかし、殺人剣が理想とか言われると、確かにアリの気がしてきた。ドラゴンなら普通に目だって狙ってるし。いやでも、仲間がどう反応するかって問題であって、やっぱり盛り下がるんじゃなかろうか?
そんなことを考えていると、振り返ったジンがどうでも良さそうに、どうでも良くない発言をしていた。
ジン:
「そうだ、もしシュウトにタイマンで勝てたら相手をしてやろう。1分ぐらいで良けりゃな」
シュウト:
「……えっ?」
オディア:
「それは……」
ジン:
「誰にも負けなかったら、お前の相手をしてやろう。どうだ、いい修行になりそうだろ?」
思わず『何か嫌われるようなことしたっけ?』と過去を振り返ってみた。水中戦闘の下克上だろうか? いや直近のだと、洗練を選べって言われて不満タラタラで怒られたヤツかも。待てよ、矢筒の時も怒られたんだっけ。……いろいろありすぎて、どれがどれやら??? というか、とっくに見切り付けてるのが普通の気がしてきて、お腹と胸と頭が痛い。
レオン:
「ほう、面白そうな話をしているじゃないか」
シュウト:
「って! なに参加しようとしてるんですかっ!?」
レオン:
「おや、なにかマズかっただろうか?」しれっと
シュウト:
「くっ……」
冷静に考えて、レオンにはまだ勝てる見込みはない。でも、相手の強さを経験することも大事かもしれない。ここはチャンスと捉えるべきではないのか。どうしよう。ジンにヘルプ要求と、どうすればいいのかのお伺いがこんがらがって絡まった視線を送る。
ジン:
「はぁ? 生意気にガンたれやがって。好きにしろこの野郎」
ニュアンスがまるで通じてない!(ガーン)
レオン:
「では……」
オディア:
「待った。これは私がもらった話。1番手は譲らないぞ」
レオン:
「わかった。なら2番手でいい。……ところで、何十人も相手にしたら集中が続かないだろう。5人か、10人か、決めておいた方がいいのではないか?」
シュウト:
「ですね。じゃあ今日は5人までで。希望者がいれば、ですけど」
ジン:
「いいだろう。それと同レベルに調整するのは無しだ。そのままでやれ。いいな?」
コクリとうなずくオディア。さっそく口元を隠すべくスカーフに手をかけていた。
レベル調整はなし。バフは自前のもの以外なし。戦闘開始距離は20mから。HPゲージが先に赤くなったら負け。殺してしまうのはアリ。時間はそんなに掛からないけど、最長10分で引き分け。それと追加で周りの人間が協力したら反則負けにしてもらった。レイシンと戦って学んだ教訓を忘れてはいない。
オディア相手には近接戦だけで戦うことにした。レオンに全て見せるわけにはいかない。手の内を柔らかくし、膝のロックを解除。肩の力を意識して抜いておく。この辺りは戦闘開始前のルーティーンだ。
ギヴァ:
「では、はじめぃ!」
巻き舌っぽい感じのはじめ!のかけ声でに苦笑いしつつも、ちょっと気合いが入った。
シュウト:
(やっぱり、小さいな……)
奇を衒うことなく、真っ直ぐに距離を詰めてくるオディア。影にとけ込み、消えることが前提の黒い戦闘装束は、僕のものと良く似ていた。レベル93とはいえ、西欧サーバーのトップランカー相手では油断できるハズもない。あまり様子見していられる状況ではないだろう。決められる時に決めてしまわないと、ダラダラ・ズルズルすることになりかねない。正直、5レベルの差は勝って当然で、ここで負けると
シュウト:
「低い……っ!」
まるで地面にへばりついているかのよう。下からの攻撃に対処が遅れ気味になってしまう。普段の戦闘訓練では、自分より背の低い相手とはロクに戦っていない。逆にオディアは普段通りだろう。リーチの短さを理解した上で、工夫を重ねて来ている。
シュウト:
(リーチの差で有利に立とう、とか考えてると負けちゃうんだろうな)
コンパクトなモーションから、不意を衝く蹴り技。どうにか腕で防いだが、ちょっと痺れた。体の小ささを補うような、大きな動作が混じってきていた。
ウヅキ:
「おいおい、巧ぇな」
ジン:
「体を振り回す戦闘法か。ちょい韓国っぽいイメージだが、なかなか様になってるな」
地面にへばりついているかのような低い姿勢のまま、攻撃がなかなか途切れない。巧いし、強い。格上気取りの余裕が吹き飛んで、本気のスイッチが入る。
シュウト:
(巧くできるかな?)
閃きのまま、体を跳ね上げる。
オディア:
「!?」
オディアの頭に左手を着いた状態での、片腕逆立ち状態。振り向き阻害を兼ねた奇襲だ。直後に左肘を抜いて落下。首の裏にアサシネイトを放つと、綺麗に決まった。難しいのはここからで、全身を丸めるようにして回転力を高める。すとん、と両足での着地に成功。実際、アサシネイトを決めるより、着地の方がずっと難しかった。失敗すると背中からどすんと落下して、せき込んだりして酷い目にあいそうだ。
振り向くと、オディアがライトエフェクトに包まれていた。
シュウト:
(あー、殺しちゃったか……)
これはアサシネイトで倒した時のエフェクトだ。こちらの最新版アサシネイトに対して、単純に総HPが足りなかったのだろう。シルエットに亀裂のような断線が走る。
――斬――
ユフィリア:
「〈ソウルリバイブ〉!」
死亡直後に蘇生呪文を投射していた。いつもながら、タイミングが神がかっている。
ギャン:
「なんだ、今の……?」
シグムント:
「オディアが一撃で?」
だんだんとざわめきが大きくなっていった。アサシネイトが入るかどうかは実力よりも運の問題のような気がする。博打でしかない。今回は奇襲がたまたま巧くいったものの、次はどうなるかなんて分からない。とはいえ普通に戦ったとしても、負けるつもりはない。
レイシン:
「前から気になってたんだけど、シュウトくんのアレってどういうの?」
ジン:
「んー。戦闘センスの一種ではあるんだけど、特化型というか、暗殺者バージョンだろうなー。不意打ち、奇襲、奇策に向いてて、勝ち筋を積み上げなくても、ショートカットしてポンと命だけ奪ったりするっていう。シュウトの場合は呼吸関連、嗅覚系かもなー」
レイシン:
「死のニオイを嗅ぎ取ってる感じ?」
ジン:
「じゃねーの? おおまかな特徴は下手殺しだな。奇襲の効かない格上は得意じゃないんだけど、下手や格下の相手には大差をつけて大勝ちしやすいとか、そんなようなの」
レイシン:
「確かにそんな感じだね。名前とかって?」
ジン:
「さぁ? あんまネーミングされてないかもなー? よくわからんね。名付けるとしたら、マーダーセンスか、マーダラスセンスか、そんな感じじゃねーの? 英語苦手だし、わかんねーけど」
シュウト:
「……あのー、下手殺しって、使えない能力なんじゃ?」
ジン:
「おいおい、わかってねーなー。俺のビルドは上手殺しだけど、俺より格上って、もうレイドボスぐらいしかいねーぞ?」
レイシン:
「そっかー、使う相手がいないんだ?」
ジン:
「そうそう。強いと上手殺しは使いどころがない。弱いと下手殺ししたくても下の奴がいない。……実際、便利だぞ、下手殺し」
シュウト:
「それ、最強になれればですよね?」
ジン:
「まぁな(笑)」
レイシン:
「冗談抜きで、アタッカー向きの気がするけどね~」
ジンが下手殺しが苦手なのは実のところ分かっていた。敵が弱いとがんばれないし、〈竜破斬〉はオーバーキルなので訓練では使いにくい。一方的に叩き潰して圧勝するのは得意、というかそれしかできないっぽい。たとえば戦力を均衡させて、辛勝に持ち込んだりはかなり苦手なはず。手を抜きすぎて、慌てて力を出し直したりすることが時々ある。
オディア:
「はッ!?」
蘇生後、気絶したままだったオディアが跳ね起き、武器を構えようとして、持っていないことに気付いて、……をやっていた。
シュウト:
「ええっと、その……」
オディア:
「私は、負けたのだな?」
周囲の態度から戦闘が終わっていることを悟っていた。相手のことながら、やっぱり辛い時間だろうと思う。しかし、殺してしまったからといって、ここで謝るのは絶対に違う。勝った側は、勝った側の態度が必要なのだ。
ジン:
「見事な負けっぷりだったぞ。お前はまだまだだ。もっと鍛えような?」
オディア:
「……はい」
ジン:
「よし、いい子だ」ナデナデ
しょんぼりしたオディアを撫でて慰めるジン。女の子には優しい。僕はあんな風に慰められたことはあったかどうか。いや、慰められる以前に、負けたくないんだけども。
レオン:
「次は私の番だな。5分後でいいな?」
シュウト:
「はい。それでお願いします……」
アサシネイトを使ってしまったので、5分のインターバルを取って、レオンと対戦することになった。そこでまず僕が考えるべきこととは!
シュウト:
「ジンさん、アドバイスお願いします!」ぺこー
ジン:
「えーっ? めんどくせーなー。んー、と。(小考)……お客様、金貨500枚コースと、5000枚コースとがございますが?」
シュウト:
「え、お金 取るんですか?」
ジン:
「バーロー、当たり前じゃねぇか! 俺が命令した訳じゃないぞ。お前が勝手に、好きで戦うんだろうがよ!」
シュウト:
「あれ? そうでしたっけ?」
ジン:
「は?」ギロヌ
シュウト:
「で、ですよねー。……ちょ、ちょーっと待っててください」
プラン2に移行。ドラえもんに頼るのび太になった気分で、ローマの葵に念話。我らがギルマスは、攻略を終えたためMP切れでログアウト中である。
葵:
『おう、シュウくん。どったの?』
シュウト:
「あのあのあの、実は今からレオンと戦うことになりまして。で、ジンさんにアドバイスをお願いしたら、お金を要求されたんです!」(早口)
葵:
『まぁ、落ち着きなよ(苦笑) んで?』
シュウト:
「僕は、どうすれば? 金貨500枚と5000枚のコースがあるんですけども。アドバイスを聞いた方がいいんでしょうか?」(早口)
葵:
『なんじゃそりゃ(苦笑) んー、好きにすればいいんじゃね? レオンくんでしょ? どーせ負けんだし、聞かないのもアリっちゃアリだよね』
シュウト:
「な、なるほど……(汗)」
葵:
『んだけどまー、ジンぷーは金の亡者だが、セコくはないかんね。金を要求するんなら、その分の価値はあるんじゃないかなー』
シュウト:
「あ、……なるほど」ポン
取引には誠実な人かもしれない。となると、金貨5000枚分の価値のある情報ってことになる。それは聞いてみたい気がしてきた。いや、自分の性格だと聞かずにはいられないと思う。
シュウト:
「ちなみに葵さんならどうしますか?」
葵:
『決まってんじゃん。両方を買う。安い方は気合い入れるヤツだろうから、後にしてもらいなね?』
シュウト:
「わかりました。……ありがとうございます!」
振り返ると一直線にジンの元へと向かう。
ジン:
「んで? どうすんだ、お客様」
シュウト:
「買います。両方、お願いします」
ジン:
「……お前、必死か?」
シュウト:
「必死ですよ! それと高い方を先でお願いします」
ジン:
「はいはい、お買い上げどーも。時間ないからパッパッとな?」
シュウト:
「はい」
一呼吸おいて、解説モードに切り替わるジン。
ジン:
「仮称・マーダーセンスの話は聞いていたな? 下手殺しが特徴とは言ったが、格上の相手だってできない訳じゃない。相手の不意を衝くことが出来れば、金星を狙うことも十分に可能だ。しかし、奇襲が通用しないとボロボロに負けやすいのも事実」
シュウト:
「そうなんですか?」
ジン:
「案外、身に覚えがあるんじゃないか? 格下や条件不利な相手には一方的に勝ちやすい。だから、攻めが奇襲一辺倒になりやすい。そして奇襲の効果が高い分、自分の実力を過大に評価する傾向がある。結果、コツコツと努力して実力を伸ばすのがバカらしくなる。勝てる相手に勝てればいいやーとなるのがパターンだな」
シュウト:
「な、なるほど……(ゴクリ)」
さらっと致命傷になりそうな話が出てきてドキドキする。僕は大丈夫なんだろうか?と思ったところで、ようやく気付くことができた。
シュウト:
(てことは、『普通に戦って、普通に負けろ』って、そういう意味だったのか……!)
マーダーセンスのことを理解してみると、実力を伸ばすために必要な処置や対処は既になされていることが分かってきた。組み手では奇襲を禁じることで、実力を伸ばすように方向付けしていたのだろう。ありがたくて、どうしていいのか分からない。感謝とかではまるで足りない。
でも、今はレオン戦のことを相談しないといけない。
シュウト:
「あの、レオンに勝つには奇襲しかなさそうなんですが、奇襲を成功させるにはどうすればいいんでしょうか?」
ジン:
「ふむ。奇襲というか、フェイントを成功させるコツって何かわかるか?」
シュウト:
「えっ、と。話の流れ的に、高度なフェイント技とかじゃなさそうですけど……?」
ジン:
「そうだ。違う。フェイントを成功させる最大のコツは『スンゴい実力』だな(笑) フェイントの仕掛けなんて、シンプルなんでいいのさ。実力さえあれば、もうバシバシ決まりまくる(笑)」
シュウト:
「いや、そうかもしれませんけど、今から実力って……」
葵:
『違う。シュウくん、そこ勘違いしちゃダメ』
シュウト:
「葵さん? 勘違いって……?」
ジン:
「フッ。これがフェイントって言葉や概念が引き起こす罠なんだよ。フェイントを武術でいえば『虚実』だ。『虚かと思えば、実』『実かと思えば、虚』……これがフェイントの全てだ」
なにを勘違いしているのかを考え直す。実力があれば何だって成功するに違いない。でも、そういう話をしているのではなさそうだ。条件的には、フェイントを成功させるために、フェイントをがんばっても意味がないって事らしい。これを野球でいえば、変化球を活かすには剛速球があるといいって話になりそうだった。これをさらに奇襲の話に、そして自分の話として考え直してみると、どうなるのだろう……?
シュウト:
「ある程度、真っ向から勝負しないと、奇襲は決まらないんですね?」
ジン:
「そうだ」
葵:
『いいぞ、シュウくん。その調子!』
ジン:
「過保護は引っ込んでろ。……だが、それだとまだ半分だ。もう半分は、フェイントが来ないと、それ自体がフェイントになるってこと。実が虚を高め、虚が実を高める。演出もまた、戦闘の実力だ」
シュウト:
「分かりました」
さすが金貨5000枚。魂に刻まなきゃいけないような話だった。本当の本当には、知っていることを『知っている』とは限らない。アサシネイトをブラフに使って戦うことは知っていたけれど、虚実を理解していたとはとても言えない。
ジン:
「金額的にちょい足りてなさそうだし、パワーアッププランも試してみっか」
シュウト:
「え、今からですか?」
ジン:
「〈四天の霊核〉に質問だ。矢筒の『矢を作る能力』を利用して、火や水、風、土属性の矢を作る事はできるか? シュウトのMPは少し多めに使って構わない」
――可能……
シュウト:
「って、できるんだ!? ……可能だそうです」
葵:
『火の矢は、ダメージアップさせたいんだよね。んで風の矢は、空気抵抗を下げるとかして、矢のスピードを高めたいんだけど、できそう?』
シュウト:
「……どっちも大丈夫みたいです(驚愕)」
葵:
『水と土の矢もアイデアはあるんだけど、今は時間ないから後回しにしよっか』
シュウト:
「わかりました」
これで金貨5500枚程度は軽くペイしてしまった。収支は明らかにプラスだろう。新技なのか、新装備なのかわからないが、ともかくパワーアップだ。
葵:
『んじゃ、あたしからも一言。レオンくんは頭がいい。聡くて、君の狙いにも気付いてるだろうから、それを逆に利用すること。あとはアレだ、ジンぷーから秘密の作戦を伝授されたフリとかしてみればー? レオンくんもジンぷーだけは無視できないっしょ』ニマニマ
ジン:
「ウゼー。マジうぜー。やめてくれよ? 秘密の作戦だのを俺に期待すんなよ? あんなの雑魚の発想だぞ」
葵:
『いいんだよ、そこはフリだけで!』
こうすれば勝てる、なんてことはもともと言わない人なのだ。ジンはキャッチャーではないので、配球は自分で考えて決めなければならない。
葵:
『んで? まだ言うことあるんだろ?』
ジン:
「あー、安い方か。……実際、お前が勝てるかどうかは分からん。だが確実に言えることがひとつだけある。それは、レオンより俺の方が強いってことだ」ドヤっ
くすっ、と笑ってしまった。まったくその通りだと思う。
ジン:
「いいか? 戦う前からビビってんじゃねぇ。いつも訓練してやってんのは誰だ? 俺だろ。いつも通りでいいんだ。堂々と戦ってこい。お前の実力を、見せつけてやれ!」
シュウト:
「はいっ!!」
ジンよりレオンを怖れるのは、確かに不遜だ。レオンはそこまで絶望的な相手とは言えない。だからこそ、もしかしたらポロッと勝てるかも?という気持ちや、新たにレオンに負けるのが嫌だという気持ちがプレッシャーになっているのだろう。それはその分、ジン相手に負けても平気なってしまっていることの証左なのだ。
それと『実力を見せろ』と締めくくっていた事。金貨500枚のアドバイスでも、戦うためのアドバイスを盛り込むつもりでいたのだろう。神は細部に宿るというが、金貨5000枚を払うことで、そうした細部に宿った優しさに気付くことができた。そうして受け取ることのできた思いやりは、きっと僕に宿る。
アサシネイトの再使用規制が解除された。
石丸:
「そろそろ時間っス」
振り返ると、レオンがそこに待っている。来るべきものが来たと思った。少しばかり準備不足だが、どちらにせよ彼との戦いは避けられない。




