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196  必要な寄り道

 

 朝食を終え、ミリス火山洞に向けて出発。今日でエレメンタルゴーレムは撃破したいところだが、先行きは不透明と言わざるを得ない。葵が提案した作戦はあるものの、実行してみるまでどうなるかは分からない。もっというと、『作戦を実行するための作戦』が必要な気がする。

 

ジン:

「んで? 同時撃破作戦をやりに行けばいいのか?」

葵:

『ミリス作戦と言えや!』

ジン:

「それヤシマ作戦のノリだろ? だったらポジトロンライフルのヤツじゃねぇか」

葵:

『だからどうした。 日本中の電力を、あなたに託すわ、シンジくん!』

ジン:

「それ押し切んのかよ(苦笑) 火山行くんだったらマグマダイバーだろ」

葵:

『でんっ、でんっ、でんっ、でんっ、デンデン! でんっ、でんっ、でんっ、でんっ、ぱぁ~! フパパ、フパパ、フパパ、フパパ……』

ジン:

「ダメだ、こりゃ」

ヴィオラート:

「ジン様……!」


 さらにヴィオラート登場で、歪んだノリは加速するのだった。


ジン:

「お、どうした聖女ちゃん?」

ヴィオラート:

「はい。今日のところはアスカとお呼びください。加持さーん!」


 とりあえず抱きつきに来たらしい。理由はなんでも良さそうだ。なんてことなさそうに抱きとめるジン。


ジン:

「俺が加持さんの役なのか? 個人的にはゲンドウ一択なんだが?」

ヴィオラート:

「そうなのですか?」

ジン:

「俺が言いたいセリフは決まっているからな」チラリ


 視線の先にいたレイシンが、仕方なさそうに手を後ろに回して、目を細めた。付き合いがいい。


レイシン:

「……勝ったな」

ジン:

「ああ」←ご満悦


 僕にコメントはない。というか、元ネタのことがよく分かっていない。エヴァンゲリオンぐらい聞いたことはあるが、見た記憶まではない。

 いつの間にか寄ってきていたスタークがツッコミを入れる。


スターク:

「アスカと加持さんだったら、やっぱりフラレる関係じゃないさ」

ヴィオラート:

「ウルサいわね、バカシンジ! あーん、加持さーん」すりすり

ジン:

「抱きつかれて役得だろうとは思うんだが。……なぁ、アクア?」

アクア:

「無様ね」

ジン:

「くぅ~っ、完璧! ぐっじょぶ」

リディア:

「単に罵られたいだけなんじゃ?」

シュウト:

「ぁはははは(苦笑)」


 そんなくだらない会話をしている間に入り口に到着。装備の最終確認をしていると今度はヴィルヘルムの番だった。


ヴィルヘルム:

「済まない。今日の予定だが、まず第1層の様子を確認したい」

ジン:

「近場だけ? それとも1周回るのか? 距離あるし、けっこう時間かかるけど?」

葵:

『100レベルの吸血鬼シリーズがリポップしてる可能性があるんよ。目的はそれを倒してのレベルアップ!』

ジン:

「ああ、そういうことね」


 会議で言っていた、試してみたいことというのがコレだ。

 90レベルと91レベルだと実力的に大差はないのだが、雰囲気は変わる可能性がある。やる気は『成果が出た時』にしか得られない。今はやる気の前借りを続けている状態だ。91に上がれば、前借りの状態から抜け出せるだろう。


リコ:

「でも、何度でもリポップするなら、それを倒してたらレベル100になれるんじゃないですか?」

葵:

『利用できる時は利用してもいいけど、それやってると永遠に先に進めないからねぇ~』

ヴィルヘルム:

「装備の補修に食料の確保。外の状況という時間制限。……あまり考えたくはないが、クエストのタイムアップも考慮すべきだろう。残念だが、リソースは有限といわざるを得ない」

シュウト:

「じゃあ、レイドボスを倒しつつ、戻ってきて吸血鬼を倒してレベルアップ、ですか?」

葵:

『それも無理ポ。封印解除を目的に襲って来てるんだろうから、エレメンタルゴーレムを倒しちゃったら、リポップしなくなるはずだよ』

シュウト:

「そうでした」

タクト:

「ままならないな」

リコ:

「そうだね」


 準備を終え、〈ミリス火山洞〉に進入。ショートカットではなく、第一層の方に向かう。

 最初の遭遇ポイントでは吸血鬼たちがバラケて出現したため、前回は囲まれることになった。戦闘地点を決め、今度はカイティングを行ってモンスターを誘導することにする。本当に出ればの話だが。


ジン:

「ん? お前らも戦うの?」

ヴィルヘルム:

「そのつもりだ。レベルが上がっても、実力が伴わなければ意味はない」

ジン:

「そりゃそうだろうし、別にいいんだけど。……死にまくるとレベルアップできなくなるぞ?」

ラトリ:

「気を付けるつもりではいるんだけどねぇ~(苦笑) こればっかりは」

ギヴァ:

「やらんことには始まらない。慣れるまでの辛抱と考えよう」

ジン:

「そういう問題じゃないんだがなぁ……」


 カイティング役は神速の女性騎士ベアトリクスに頼んである。彼女であれば、万一にも追いつかれることはないからだ。引き離しすぎて付いてこないとかの方が心配要素だろう。広範囲に出現するように、ぐるっと回ってから、戻って来てもらう予定になっていた。


葵:

『うしっ、始めよっか!』


 ベアトリクスに合図を送る。予定通りのお出ましだった。出現した吸血鬼達の間を縫うように動き回り、攻撃性が活性化(アグロ)したのを確認してから、ゆっくりとこちら側に誘導してきてもらう。速度的に大人と子供以上の差があるので、100レベルモンスター相手でも安心して見ていられる。


ミゲル:

「くるぞぉ、油断するな!!」


 恐怖や緊張を打ち消すように怒号が飛ぶ。気合いを入れて、気合いを入れて、さらに気合いを入れている。『緊張性の集中』を高めているのだ。そうやって、ようやく相手ができるようになるからだ。僕も少し前まではああだったと複雑な気分になる。


 なんだか色々なことが『当たり前』になっているのを知った。

 ドラゴンにはじまり、だんだん格上のモンスターと戦ってきた。多少のレベル差があっても、ジンさえいればなんとかなると自分に言い聞かせ、いつしかそれが経験に基づく事実になった。


 〈スイス衛兵隊〉は90レベルなのに、100レベルのモンスターと戦おうとしている。日本でも同レベル帯のモンスターと戦える〈冒険者〉は数える程度だというのに、彼らは10レベルも上のモンスターと戦おうとしているのだ。それは実際のところかなり凄いことだろう。

 残り数秒。範囲系魔法攻撃が戦闘開始の合図だった。カイティングで直列にした敵をまとめて叩いていく。カイティングを終えたベアトリクスは、速度を上げて既に合流を終えていた。


ジン:

「よーし、後続を断ち切りに行くぞ~。ゆるゆるにゆるめろ~」

葵:

『ジャイアントストロークエントリー!』


 戦闘開始から1秒でのんびりと参戦を決める。特に急ぐでもなく、するすると側面へ回り込みながら近づいていった。一方の〈スイス衛兵隊〉はというと、死者が少しずつ増えていくところだった。畳みかけるような吸血鬼の強襲に、戦列は崩れつつある。


シュウト:

「……急がないとマズくないですか?」

葵:

『レイドは死に覚えが基本っしょ。死ぬのぐらい許してあげようゼ。60点じゃ死ぬ。70点でも死ぬ。だったら80点は? 85点でどうだ。まさか90点以上必要? ってやらないとね~』

英命:

「蘇生・復活が可能なのは、明らかにゲームのメリットですね」

ジン:

「ホントにそうかぁ? あいつらに死に覚えとか、まだ覚えることなんかあんのかよ?」

葵:

『まぁ、プレイヤースキル的には最高ランクかもだけど』

ジン:

「必要なのは1発でこなせる本番力だろ。つまり本質力だろーが」

葵:

『レールガンの食蜂みたいなこといいやがって。どっちにしろ、痛い目みなきゃ(、、、、、、、)ダメだべ?』

ジン:

「それは俺のポリシーに反するのだが……。しょうがねぇなぁ、聖女ちゃんが死ぬ前に行くぞ~」


 嫌そうな顔で〈スイス衛兵隊〉の死を受け入れるジン。失敗すれば死ぬ。それが当たり前になり、死の恐怖が麻痺し始めるころ、ようやく萎縮せずに死に物狂いの全力が出せるようになる。

 しかし、大事なのは死ぬことではなく、力を出し切ることだ。そんな当たり前なことにたどり着くのに、みんな無駄な遠回りをし続けている。


 ……などと考えている間に戦闘が始まろうとしていた。意識を切り替える。『殺すように』と龍奏弓を握る。とたんに手の内の硬さに気が付き、ゆるめるようにしておく。ゆるめることだけ考えて、恐怖をどこかにわざと置き忘れてくる。

 もう人の心配をしている場合ではなかった。さっさとゆるめないと怒られる。いや、怒られるぐらいならまだいい。『情けない』と言わんばかりの表情でため息でも吐かれたら死にたくなるだろう。


 結局のところ、ゆるめるのが経験的にも一番良い方法だった。戦闘では咄嗟の状況で動けるかどうかが重要な問題になる。咄嗟に固まってしまえば、どうしたって動けない。緊張していれば視野も狭まってしまう。そうなれば対処が遅れて、焦ることになり、緊張でさらに身体が固まってしまう。

 一方、ゆるみ度が高ければ逆のことが起こる。視野は広がり、気付きが増え、動きの自由度が増し、精神的にも物理的にも余裕が生まれる。咄嗟の状況でも身体は固まりにくくなる。

 いいこと尽くめというか、もうそれがベースになってしまっていた。ゆる集中に慣れてしまったら、緊張性集中は気持ちの悪い『不具合のサイン』でしかない。


ジン:

「石丸っ」

石丸:

「いつでもいけるっス」


 火炎がウヅキ、冷気はニキータ、電撃をタクト、邪毒をケイトリンが担当している。光輝はユフィリア、精神はリディアの担当だが、この2人に関してはいつでもサポートできるようにしておかなければならない。

 ジンは非属性攻撃での削り役に徹し、石丸が弱点属性を読み上げる。フォロー・サポート・アシストはレイシンの得意分野、おまかせだ。僕は物理属性と、トドメ側のサポートを買って出ている。英命とリコには動きたいように動いてもらえばオーケーである。もともと大して指示だしなどはしていないし、するとしても葵の方が的確だ。


ジン:

「そらよ、っと」

石丸:

「邪毒っス」


 吸血鬼に襲いかかるジン。『何かのついで』みたいにあっけなく斬り倒し、ケイトリンが素早く動いてトドメを刺した。

 技も何もない。(あるのかもしれないけど、わからない)ただひたすらにゆるんでいるだけ。もしかすると技を使いまくっている時より強いかもしれないという困った話だ。

 そうしている間にも移動していて、ブーストのクールタイム中に襲ってきた吸血鬼に通常攻撃でダメージを与えたり、捌いたりしていた。一呼吸おいて、さらに別の1体をブースト〈竜破斬〉で削り倒す。今度は火炎が弱点。ウヅキが気合いの雄叫びをあげる。

 後はこれの繰り返し。わずかな時間に10体まで倒すと、〈スイス衛兵隊〉の側も息を吹き返してきた。モンスターの圧力が減ったのが要因だろう。レベルが上のモンスターだとしても、1体ずつであれば対処可能と分かったのだろう。勝てるとわかったら勢いにのってしまう辺り、図々しいというか、したたかというか。


誰かの声A:

「レベルがあがった!」

誰かの声B:

「私も!」


 死亡回数が少ないであろうヒーラーやスペルキャスターからレベルアップの報告が相次ぐ。西欧ではスターク・クリスティーヌという例外はあったものの、実質的に初めてのレベルアップのはずだ。


ラトリ:

「これでようやく、一息付けますねぇ」

ヴィルヘルム:

「いや、まだだ。この勢いに乗って先に進もう」


 第1層を巡るにはそれなりに時間が掛かる。テンポよく進みたい。この層が終わるころには、残りのメンバーもレベルアップを済ませていることだろう。







ユフィリア:

「ジーンさん。何してるの?」


 黙々と歩いているジンに、ユフィリアが突っかかる。そういえば、しばらく前から大人しかった。それが気になったか何かだろう。


ジン:

「個人練の時間があんま取れないので、ゆるウォーキングをしています」

ユフィリア:

「そうなの? ……それはどーゆーのですか?」

ジン:

「うーん。ゆるウォーキングの基本形は『ほどゆる歩き』といって、歩けば、歩くほど、ゆるむ!と念仏を唱えながら、歩くのだ」

ユフィリア:

「うん。聞いたことある」

ジン:

「しかしながら、俺ってばそれがちょい苦手だったのよね」

シュウト:

「え、ジンさんにゆるで苦手とかあるんですか?(驚)」

ジン:

「俺にだって、苦手なものぐらいあるっつーの。やってる間に、何やっていいのか分かんなくなっていったというか。ほどほどにしかゆるまなかったというか。……なので、趣向を変えてみたんだよ。これのお陰で苦手を克服することができた」

葵:

『もう苦手じゃねーってことやん』

ジン:

「そうともいう。『ほどゆる』はその時々でやることが変わっていくんだ。偉大な先人の足跡を辿る、冒険の旅というかね。そういうのの切っ掛けになったヤツだな」

シュウト:

「それは、一体?」


 先人の足跡とかはよく分からない話だったけれど、大事そうなのは伝わってくる。


ジン:

「それなんだが、別にオリジナルって訳でもないと思うんだけど、名前がわかんなくて困ってたりはするっていう(悩)」うーむむむ

ユフィリア:

「どんな感じなの?」


 なんとなく悩んでいる様子のジン。それを断ち切るような調子でユフィリアが尋ねていた。


ジン:

「『内スリ』もしくは『もみスリ』かなぁ。フトモモをスリスリとすり合わせる感じで、右半身・左半身を、やわらかーくこすり合わせる。あー、これだと『内スリ()』になるのか?」

ユフィリア:

「それから?」

ジン:

「終わりだ。……だからー、タオルをジャボーンと水に浸して、やわらかーくもみ洗いする感じ? 身体の内っかわを、すりすりゆるゆる、もみもみと、ゆるめるんだよ」

シュウト:

「普段のゆるでも使えそうですね」

ジン:

「当然、そうなる。てか、無意識にやってはいるはずだ。パーツのズレを利用してスリスリするというか。上下ズレ、前後ズレ、回転があるな」

葵:

『回転って?』

ジン:

「モデル歩きみたいに、ちょっと足をクロスさせる感じで歩くんだよ。そうすると回転成分が入ってきて、もみ合わせる感じになるだろ?」

ユフィリア:

「こんな感じ?」

ジン:

「おっ、巧いじゃん」


 気取った歩き方で、足を軽くクロスさせている。足につられて腰が回転することで、『回転成分が入って』きていた。なるほど、分かりやすい。


ジン:

「こういうのが、ゆるの無かった時代に天才達がやってた歩き方じゃないかと思ってな」

葵:

『そりゃ、昔の人もなんかの方法でゆるめてたハズだもんなぁ』

ユフィリア:

「そっかー。昔の人ってたいへんだよね」

ジン:

「そうだぞ、今はいい時代になったんだ。もう考えられないほどの進歩だね。

 内スリはバラバラにバラけさせる方向じゃないから、固めやすい気もするけど、その代わり刺激は強めだ。歩くたんびに身体をすり合わせ、もみ合わせして、なんだかんだゆるめてたんじゃないか、ってな」


 歩きながらだと、上下ズレのスリスリは難しいので、前後ズレのスリスリと、回転ズレのスリスリをさせながら歩くことになりそうだ。


ジン:

「そして、これはクネクネと表裏一体の関係にあるわけだ。クネクネだと体幹や背骨をダイレクトにゆすってゆるめる運動で、能動性が高い。一方、内スリのさすってゆるめる運動は間接的で、中心軸に対して補完的な位置づけになっている」

シュウト:

「クネクネとスリスリを交互にやればいいんですか?」

ジン:

「得意をのばすか、ブレーキ成分を下げるか。これは難しいところだな。苦手の克服よりも得意をのばすのが先だ。しかし、アクセルを踏み込むよりも、ブレーキ成分の除去を優先するべきではある」

葵:

『「得意」が「アクセル」とは限らないんじゃね?』

ジン:

「……だな。とりあえず、軽装甲はフトモモまでスリスリしながら歩いておけ」


 装備のデザインにも左右されるが、ジンやユフィリアのような鎧装備だとフトモモまではスリスリできない。

 戦いの合間のちょっとした話が大事だったりする。ありがたく内スリを始めることにした。







スタナ:

「みんな、アクアが切り札を出すそうよ」

ネイサン:

「アクアの切り札だって? それって凄いの?」

スタナ:

「大したことなかったら、逆に驚きでしょ」

ネイサン:

「ハハハッ! 違いない」


 底抜けに明るいネイサンに、劣等感のようなものが刺激される。

 連絡を受けた内容を仲間に伝達したものの、説明を受けても意味はよく分からなかった。キャラクターの経験がプレイヤーに反映されるというが、どうなるのだろう。まるで想像も付かない。


 オーバーライド以外にも『口伝』と呼ばれるテクニックが存在するのだという。西欧でもそうしたスキルを発見したプレイヤーの噂は耳にしている。今度のもそうしたゲームを逸脱したスキルのひとつだろう。


 和気藹々と語り合うジン達が前を歩いていく。ワールドワイド・レギオンレイドだというのに、緊張感の欠片もなかった。その背中を見ても、憎しみのような燃える感情を覚えている訳ではない。はっきりと悲しみの方に近いからだ。……私はどうして『ああ』ではないのだろう。


 優秀とかエリートと呼ばれることはあっても、決して天才ではなかった。自分でも分かっている。努力を積み重ねて、どうしてだか、今は異世界にいた。

 しかし、私はどうやらこの世界にさほど愛されてはいないらしい。年を経てそうしたことが理解できるようになった。いや、素直に認められるようになった、というべきか。


葵:

『よーし、始めるよ~。アクアちゃん、よろしく!』


 レベルが上がったとしてもまだ9レベルも上のモンスターだ。歯を食いしばって戦いに望む。ジン達の後ろにいる限り、襲われる見込みは小さいのだが、どんな状況になるかは分からない。仲間のためにも油断することはできない。


ネイサン:

「よっしゃ! どんどんこーい!」


 安全に攻撃参加できると思っている脳天気なネイサンだった。彼が羨ましいと思う。しかし、そんな気持ちは打ち消しておくべきなのだ。



 ――♪



 聞き覚えのあるハミング。それも当然で〈エルダー・テイル〉の戦闘曲で間違いなかった。アクアが口遊(くちずさ)んでいるのだろう。しかし、とても軽かった。悪くいえば安っぽいとも取れる。アクアならば、もっと重厚で、煌びやかなサウンドだろうと想像していた。でも、軽やかで、楽しげで、素朴で……。


スタナ:

(私、笑っているの……?)


 自分の口元がほほえんでいるのに気が付く。光の波が戦場全体を優しく包み込む。一緒に口ずさみたいような、踊り出したいような、ムズムズする感覚。


ネイサン:

「これは!?」

ロッセラ:

「凄いよ、スタナ! ……スタナ?」


スタナ:

(そういえば、そうだったわね)


 久しく忘れていた、自分自身の不満やイライラの原因。それを思い出していた。モニター越しに出来ていたことが、どうしても出来なかった。たぶん、客観性が保てなかったのだと思う。

 異世界に来てしまったという意味で条件はみんな同じ。あとは訓練で解消していく他にない。頭では分かっている。私も訓練を積み重ねた。誰よりも厳しく訓練を続けてきた自負もある。しかし、何かがポッカリと足りなかった。


 そもそも、まったく同じことができるようにはならないのだろう。それもわかっていた。視点の違いはどうしたって残る。インターフェイスもかなり異なっていて操作感覚は別物。マクロだって使えない。実際に異世界にいるのだから当然だ。痛覚は緩和されるものの、痛いものは痛い。


 もちろん、マイナスばかりではないのも分かっている。命中・回避は数値的な確率を部分的に無視できるし、指先だけの操作と全身を使った操作では、訓練した上での最終的な精度はまるで異なる。動かしたいように動かせるのだから、それは大きくプラスだろう。ゲームだった時と比べて、私たちは明らかに強くなった部分もあった。それで難易度が下がらないのは、敵も同じように強くなっているからだろう。


 本当のところ、厳しい訓練は苦痛ではなかった。しかし、それで優秀と褒められても不安は消えてくれなかった。不安が自分をトレーニングに駆り立てていたのだ。何かに没頭していれば、その内に消えてくれると思いたかった。でも、ただ逃げて、忘れていただけだった。


 〈冒険者〉の身体は、チェスで言えば駒、もしくは単なるゲームトークンでしかないはずだ。それが経験を蓄積した肉体として存在していたという事実。数多(あまた)の戦闘、数多のクエスト、数多のレイド、そして数多の死を越えてきたという鈍い記憶が、リアリティを伴って迫ってくる。息苦しいとすら感じる熱が、脈付いている。自分のものとは違う明晰な思考と、拡大した知覚が戦場に広がっていた。


スタナ:

(ああ、『いつも通り』なのね……)


 〈エルダー・テイル〉のために用意したデスクとチェアーに座り、お茶で口を湿らせながら、穏やかにモニターを眺めていた時の気分だった。忘れていたのは『優しい気持ち』なのかもしれない。


 唐突に現実ではない方の現実に引き戻される。戦闘は終了していた。いや、知っている。今の今まで戦っていたのだから。しかし、なんだったのだろう。……なんだって言うのだろう。手応えというには手に余るものだった。巨大すぎた。


ラトリ:

「う~わぁ~。なんなの、今の?」

ミゲル:

「これがアクアの切り札か……」

アクア:

「そうね。『スウィング』よ」

ネイサン:

「確かにノリノリだったなぁ」

オスカー:

「ノリノリなんてレベルじゃなかったよ」

ギャン:

「いやスッゲーって。これならレイドボスにだって勝てるだろ!」

バリー:

「そっか。だからだ。これを使うのは、難しい問題なんだね?」

シグムント:

「そうなのか?」

ロッセラ:

「って、ダメなの? どういうこと?」

スタナ:

「……プレイヤーの成長を先喰いしているのよ。たぶんだけど」


 その一言で大勢の注目を集めてしまっていた。


スタナ:

「自分でたどり着くべき場所に、口伝(Kuden)の作用で到達してしまっている。これを続けていると、私たち自身のためにならないんじゃないかしら?」

オスカー:

「そうかも。だからこれまで使わなかった、ってことでいいのかな?」

ヴィルヘルム:

「その通りだ」


 ヴィルヘルムが説明のために前へ。


ヴィルヘルム:

「この後のレイドボス戦でいきなり使用するべきではないと判断して、今、試してもらった。独特な感覚に私も驚いている」

ヒルティー:

「ヴィルヘルム、副作用は?」

ヴィルヘルム:

「分からない。ジン君たちは日本で既に幾度か体験済みだそうだが、特にデメリットはなかったと聞いている。……もう皆も実感していると思うが、普段の実力にガッカリする効果は高いだろう」ニヤリ


 シニカルなジョークに、全員の苦笑いがこぼれる。


ギヴァ:

「ガッカリできるだけいい。まだまだ成長できるということだからな」

ネイサン:

「そう言われても、参っちゃうよ(苦笑)」


 ひとしきり笑い終わったタイミングで進言しておく。それが自分の立ち位置であり、役割でもあると思ったから。


スタナ:

「理想論を言うようですが、使うべきではないように思います」

オリヴァー:

「それは現実には使わざるをえん、という事だ。他に我々が勝つ方法があるか?」

スタナ:

「それは……」


 つまりジン達は、作戦と手段の双方を用意したということだ。反論や反証しようにも、これ以上のものを直ぐにどうこうできる訳もない。


ネイサン:

「こだわるべき部分にはこだわるべきだけど、ともかく先に進んでみるべきじゃないかな?」

ミゲル:

「ああ。グダグダ言うよりも、勝つ方が先だ。負けるのが分かっていてコダワリを優先するのは馬鹿げている。コダワリたければ、強くなってからにしろ」


 ネイサンの楽観主義とミゲルの現実主義が不思議な一致をみていた。どちらも正しいのだろう。楽観的な発言だから、それが即、無責任な反応になるわけでもないのだろうし、現実主義の発言だから、それが即、ネガティブな反応とも限らないのだろう。


スターク:

「スタナ、ごめん。今はこのやり方を受け入れて欲しい。でも、いつか君の望んでいるようにするよ。……強くなろう、ボクら全員で」

スタナ:

「申し訳ありません。ギルマスの仰せに従います」


 ギルマスにまで心配を掛けてしまい、恐縮する。それでも、気にかけてもらえたことが嬉しかった。


ジン:

「へぇ。生意気に、決めるトコロは決めるじゃんかよ」

スターク:

「そうだよ。これでもギルドマスターだからねっ」


 ジンとの親密さを感じるやりとりはともかくとして、ギヴァの涙腺がめっきり弱くなっていることの方は問題かもしれない。


ギヴァ:

「見事なご采配でした、ギルマス」うるうる

ネイサン:

「あっ、あっ、おじいちゃん泣いちゃう? 泣いちゃうの?」

ミゲル:

「バカモノ! 年寄りをからかうんじゃない」


 ミゲル・ギヴァは仲の良いご高齢コンビでもある。一喝されてネイサンが首を竦めている。


スタナ:

「ホントにバカなんだから!」

ネイサン:

「いや、なんか、なんとなく」


 困惑しているのか、からかっているのか知らないが、ネイサンは後で殴ろうと思った。


ギヴァ:

「スターク様はご立派に成長なされました。もう思い残すことはございません」

スターク:

「あんまり恥ずかしくなること言わないでよ。っていうか、なに死のうとしてんの? 〈冒険者〉なんだから、死にたくたって死ねないよ? むしろ死んだって復活するじゃないさ!」

ギヴァ:

「いえ、これは覚悟を述べたまで。老体にムチを入れ、これまで同様、これまで以上に、最期のその瞬間まで、誠心誠意、お仕えしたく思います」

ミゲル:

「右に同じく」

スターク:

「ダメダメ! 90レベルの〈冒険者〉なんて超健康体じゃないさ! どうしてヨボヨボのフリをしようとするの!?」

ギヴァ&ミゲル

「「わははははは」」


 見抜かれたというてい(、、)で破顔する2人。まるで子供のように輝くいい笑顔だった。実際、こちらの世界にくる前から、誰よりも精力的なのだ。まったく頭が下がる。


ギヴァ:

「実は、絶好調です」

ミゲル:

「ああ。若いときよりも遙かに調子がいい」

スターク:

「そりゃそうでしょ。知ってたよ!」

ギヴァ:

「おかげで話題には困っております」

ミゲル:

「なんの病気になった、どこの具合が悪い、というのが無くなると、どうにも調子が狂うといいますか」

スターク:

「だから、それを健康っていうんだよ」

ミゲル:

「なるほど」

ギヴァ:

「ごもっとも」


 曇りのない笑顔にどこか不安を感じていた。たぶん、2人ともとっくに死ぬ覚悟が出来ているのだろう。


スターク:

「まだまだボクのために働いてもらうんだから、勝手に居なくなったりしないでよ。……みんなもだからね!」


ヴィルヘルム:

「お心のままに」


 ギルマスも私と同じものを感じていたようだ。子供の図々しさをそれと分かって言ってしまう計算された態度だった。ちゃんと優しい子に育っていることを嬉しく思う。次世代に希望を感じるのが、こんなに嬉しいこととは思わなかった。図らずも、自分の中にも覚悟の芽生えを感じることになっていた。







シュウト:

「さて、と」


 第1層を回り終え、ショートカット・ポイントに到着。ここからエレメンタルゴーレムのいる第13層まではそう時間も掛からないはずだ。

 〈スイス衛兵隊〉やレオン達も含め、全員がレベルアップしている。もう90レベルのプレイヤーはいなくなった。当面、やり残したことはなくなったはずだ。戦闘後のクールダウンが終われば突入になるだろう。


シュウト:

「……なのに、なんでジンさんだけ95のままなんですか?」

ジン:

「えっ、と(汗) なんていうの? だからこれはだな……」


 汗をかき、目が泳いでいる。明らかに言い訳を考えている態度だった。


シュウト:

「僕に隠していることがありますよね?」ズバリ

ジン:

「へぅ!? あー、いや」


 まさかとは思ったが、可能性はひとつしかない。


シュウト:

「僕の知らないところで何度も死にまくったんですか? もしかして秘密の特訓、とか?」

ジン:

「なぬ?」

葵:

『ブーーッ、ブワハハハはっはっハァー!!!』


 葵の大爆笑で不正解なのは分かったけれど、他に一体どんな可能性が?


ジン:

「くっそー、まさかこんな罠があったとは」

葵:

『だから言ったじゃん、案外すぐバレるよって』

シュウト:

「もう葵さんでもいいです。……なにがあったんですか?」

葵:

『んー、パワーアップの反動っていうか、デメリット、かな?』

シュウト:

「パワーアップって、『また(、、)』ですか~っ?」

ジン:

「『また(、、)』ってなんだ『また(、、)』って!? めっちゃ強調しやがって!」

ウヅキ:

「逆ギレで誤魔化すなよ、おっさん」

ジン:

「……チィッ」


 ウヅキの指摘に怯み、一歩、二歩と後退するジン。僕はタクトに目配せして背後に回り込ませておく。ここで逃がしてなるものか。高まる緊張感。ジリジリと接近し、包囲を縮めていく。


ジン:

「やろうってのか、よーし、かかってこいや!」


 開き直られると弱い。悔しいがここまでかもしれないと思った、そのタイミングだった。


英命:

「おや、既にご存じの方がいらっしゃるようですが?」

ジン:

「!? ……てんめっ!」


 英命の言葉で改めて周囲を索敵。違和感はすぐに見つかった。面白そうかどうかで判断しているユフィリアが不参加なのは明らかにおかしいのだ。ジンを追いつめるのなんて、真っ先に参加するはずだ。参加してないのはどうしたっておかしい。


シュウト:

「ユフィリアは知ってるんだ?」

ユフィリア:

「うんとー、そんなことは……」


 あるよ、というのだろう。途中で止めているだけで嘘は吐いていない。


シュウト:

「もし僕だけ知ってたら、ずるいっていうよね?」

ユフィリア:

「それは、言う、かな?」えへっ


 かわいい。……じゃなかった。厳しい目つきで睨むようにがんばる。というか、がんばらないと睨むのは難しい相手だ。


ジン:

「わーった。わかったから。ユフィは攻撃すんな」


 勝った。久々のちっちゃな勝利である。


ジン:

「実は、オーバーライドの使いすぎで経験点が……」

シュウト:

「嘘ですよね? これまでだって普通にレベルアップしてたじゃないですか」

ジン:

「いや、だから、それがこの段になってですね?」

シュウト:

「嘘ですよね?」

ジン:

「はい。嘘です。すみません。実は、竜魂呪のデメリットで……」

シュウト:

「それも嘘ですよね? ありそうですけど、その理由だと隠す必要はないじゃないですか」

ジン:

「えっと、ごめん、もう思いつかないの(涙)」

葵:

『うーわっ、だらしねぇ~(笑)』

シュウト:

「で、正解は?」

ジン:

「う~ん、もういっか?」

葵:

『アハハ。親の心 子知らずとはこのことだね』

シュウト:

「えっ? ……もしかして、墓穴ですか?」


 勝利の余韻にひたり、浮かれていた感覚が消し飛ぶ。

 もしかして、やらかしたのだろうか? つつかなくていい藪をつっついたのかもしれない。


ジン:

「人間やめちゃってたっぽくてな。竜の因子だか竜魂呪だかの影響で、仮名『竜亜人』になった。それがもしかすると〈古来種〉かもしんないんだわ」

シュウト:

「はぁ。〈古来種〉ですか?」


 〈古来種〉といわれてもピンとこないけれど、竜の魔力(ドラゴンフォース)などの強すぎる能力の説明だとすると、逆にピンとくるというか。納得感はあった。


葵:

『取得経験点にマイナスの補正、それかレベルアップに必要な経験値増大、もしくはその両方って感じ? それと死亡時の経験点減少も大きくアップしてそうだね』

ジン:

「死ぬ気はないから最後のは別にいいけどな」

英命:

「ユフィリアさんにレベルアップで追い抜かれたのはそうした理由だったのですね?」

葵:

『そっそ』


 気が付かなかったのは少しばかり悔しい。……しかし、それだけだった。葵のようにあらゆる可能性を逃さずに先読みできるとまでは思っていない。


シュウト:

「別にどうってことないと思うんですが?」

ジン:

「そうか?」

シュウト:

「パワーアップはいつものことですし、竜の魔力(ドラゴンフォース)は前から使ってるじゃないですか。……他にもまだ何かあるんですか?」

ジン:

「いや、まだわからん」


 なんとなく言わんとすることがわかった。『まだ』なのだろう。

 種族変更だとすると、変化が継続的に続くことになりそうなのだ。たとえば〈古来種〉的な特技の取得まで可能性が出てきたことも想像が付く。


ユフィリア:

「あれは? ドラゴン用の武器が弱て……」

ジン:

「だー! わー! まてっ、まてって!」

リコ:

「あー、竜亜人だから」

ケイトリン:

「ドラゴンと同じ弱点か」クククッ


 ユフィリアにすれば善意だったんだろう。ともかく情報には感謝しておこう。ジンは辛うじて崩れ落ちるのは堪えたらしい。ちょっぴり気の毒な気がしたけれど、自業自得的な話の気もした(うんうん)。

 どちらにしても一撃死をくらう相手だし、そう考えれば弱点が増えたことは大きくプラスになる気がする。


ユフィリア:

「えっとー、ごめんなさい?」

リディア:

「どうして疑問形」

ジン:

「もういいけど、ダンジョンでする話じゃないぞ。敵がどこで聞いているか分からないんだからな?」

ユフィリア:

「そっか、ごめんなさい」


 女の子相手だとそんなに強く怒れないのだろう。執拗な責めを負わせることはあるけれど、痛い系じゃなくて、エッチな攻撃とかの方だ。


ジン:

「おいタクト。おまえ、手首痛めたろ?」

タクト:

「え、……はい」

ジン:

「もう3回目ぐらいだろ? しばらくフック禁止な」

リコ:

「ジンさーん、うちのタクトに八つ当たりやめてくださいねー?」

ジン:

「八つ当たりでも、憂さ晴らしでもねーよ」

タクト:

「でも、こんなのすぐ治りますし」

ジン:

「俺が教えてんだぞ? くだらない言い訳するぐらいなら、しっかり練習すりゃいいだろ」

タクト:

「でも、引き出しが足りなくなるんですが」

ジン:

「バーロー。技数で引き出しとか言ってんじゃねぇ。ストレートとアッパーに、ローキックがあれば十分だ。全部の組み合わせは試したのか?」

タクト:

「いえ」

ジン:

「やってみて使えないと思っても、シチュエーションが変われば使える場合もあるだろ」

レイシン:

「空中とかね。敵によっても有効な攻撃は変わるしね」

タクト:

「そうですよね、なるほど……」

ジン:

「安易に技数に逃げるな。少ない技で工夫するから、引き出しが増えるんだ。頭の中のクリエイティブなスイッチを入れておけ!」

タクト:

「わかりました」

葵:

『それと、フックの練習もね?』

タクト:

「ウッス」


 憂さ晴らしどころか、叱咤からの激励でやる気を引き出すことまでしていた。技数に囚われるなというアドバイスは僕の身にも沁みる。単調になっていないかチェックしたり、工夫したりするべきだろう。


ジン:

「…………」


 ジンに頭を撫でられる。それは、無言の謝意だった。少なくともそう感じた。謝られたことに動揺する。今度のことはちょっと違うらしいと気が付いた。


シュウト:

(そうか、僕は……)


 どうなるかの予想は容易だった。これまでの自分であれば、〈古来種〉なんだから仕方がないとか簡単に諦めたりしただろう。そうした態度はこの人を傷つけるかもしれないのだ。

 一方でジンを傷つけたい気持ちもあるし、傷付けられたい気持ちもあった。『お前じゃ勝てないんだから、さっさと諦めろ』とか言われれば、コナクソ!とやる気が出る部分もあるのだ。だいたいこの人を傷つけないように大事にしていて、勝てるとも思えない。それにこの程度のことで諦めるヤツだと思われたくはない。まだ侮られているような悔しさも感じる。


 『後継者として相応しい態度』ということもある。ならば、この件に関して、弱音を吐かないことにしよう。そう決めることにした。

 その代わりではないが、考え方はもっと広げようと思った。ジンが〈古来種〉なら、僕だって〈古来種〉になればいい。それどころか、もっと強い種族に変わったっていいってことなのだ。もう何でもアリのつもりでいるべきだ。

 

ヴィルヘルム:

「休憩は終わりだ。これから、最下層へ向かう」

 

 それは僕らにとっても次のステージの始まりだった。

 


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