184 満月の夜
扉から踏み行った場所は、薄暗いダンジョンなどではなかった。
『一面の銀世界』である。銀世界といえば、雪化粧された世界のことを言うが、ここは何というか……。
葵:
『わーお、なんじゃココ?』
ジン:
「フィールドゾーン、なのか?」
ラトリ:
「いきなり夜になったのも変だけどね~」
ユフィリア:
「でも、けっこう明るいね?」
ニキータ:
「そうね」
不思議な、とても幻想的な景色だった。月明かりが十分な光量を持つ世界。月光が銀色のような、もっと違う色のような気がする。地面の雪の白さと、そこからの反射も併せて、輝く銀色の世界となっていた。まさしくファンタジーだった。(まぁ、ファンタジー系のゲームだけど)
アクア:
「まるで時が止まったかのよう……。ああ、そういうこと?」
葵:
『そそ。たぶんこれが原因』
ジン:
「おーい。せめて分かるように言えよ」
マリー:
「たぶん月齢が止まってる。『満月の、』ゾーン」
マリーが指さした方向には大きな満月があった。見事なものである。標高が高いからなのか、かなり大きい、巨大というべき? ……しかし、1000mだか2000mだか近付いたぐらいで、『こんなに』大きくなったりするだろうか。たいてい、原因は別にあるのがパターンの気もする。
ラトリ:
「ちょっとまってー。吸血鬼相手に、満月で戦うの?」
アクア:
「今更でしょう? ゾーン名を見なかったの?」
葵:
『ま、戦る前から不戦敗するレベルだね』きしし
シュウト:
「あの、ここって、ドコなんですか?」
マリー:
「不明。異次元? 仮想的なフィールド? 別サーバーの可能性も?」
ベアトリクス:
「別のカルパティア山脈。こういうことだったか……」
ジン:
「もう、わっけわかんねーな。んで? 原因ってなんの話だよ?」
アクア:
「今回の事件よ。吸血鬼化が永続している原因。きっと、月齢が『満月で止まっている』せいで、効果も永続化しているのね」
ギヴァ:
「ならばレイドを突破すれば、クエストが閉じて解決する、ということか?」
ヴィルヘルム:
「だが、満月では吸血鬼たちの戦力が異常に増幅される。逆に考えれば、月齢を動かすギミックがあるのかもしれない」
ラトリ:
「なきゃ無理ってことでしょ」
満月のままだと、最悪、倒しても死なないかもしれない。ヴィルヘルムのギミック説に僕も賛成だった。この世界はゲームではなくなったが、ゲーム的な要素がなくなった訳じゃない。
葵:
「ところで、最後に入って来た人って誰? 全員いる?」
アクア:
「なぜ?」
ヴィルヘルム:
「全軍、人数を確認!」
理由を尋ねる前にヴィルヘルムは人数確認を指示した。しかし、状況が動く方が先になる。
ジン:
「……客だな」ズラリ
ニキータ:
「セットアップ!!」
ジンがブロードバスタードソードを引き抜く。同時にニキータが叫んでいた。声に微かな怖れの色が混じり、強敵を確信させる。
捻りあげるように闇が吹き出し、『もこり』と人の形を作る。この段階でみんな一斉にステータスを確認しているだろう。
悪逆の吸血公爵カイン。レベル250……。
シュウト:
(250!?)
レイドボスだったが、それにしたって強すぎる。戦いになってもこれは『負けるイベント』だろう。そんな言い訳が、勝てなくても仕方がない圧倒的な数字の差が、心を蝕んでいた。負けても仕方がない。そんな余りにも安易な安堵が心に広がっていく。
……そんな訳があるか。
それで済むのなら、今回の吸血鬼事件が起きたはずがない。
じっとりと汗ばみ、端から冷や汗に変わっていく。遅ればせながら、自分が威圧感に晒されていたことに気が付く。ジンのものとは違う、足下から寒気が上がってくるような、いつの間にか体が冷え切ってしまうような、『冷たい恐怖』の感覚。
貴公子のような、二十歳前後の青年。僕と同年代にように見える。いや、設定的には向こうは数百歳かもしれないけれど。そんな端正な吸血鬼が言葉を放つ。
吸血公爵カイン:
「下等な〈冒険者〉どもよ。我が主の客として相応しいか、ここで試してやろう。……冥府の闇を存分に味わうがいい!」
まるで気取った悪役のセリフだ。……いや、実際にも悪役か(苦笑)
マントの内側の影が蠢く。マントという枠から漏れ出し、闇が膨れ上がる。膨大な数の化け物が、深淵の向こうからこちらをのぞき見ていた。爪を、牙を、獰猛で禍々しい『命を絶つもの』が解き放たれる。
空間に解けだした闇は瞬く間に広がり、爆発的にモンスターを増やしていった。ただ見ていることしかできなかった。ゆうに数百体はいる。狼のような獣がいた。ゴブリンのような獣がいた。巨大なサソリのようなものが、骸骨のようなものがいた。まるで片っ端から飲み込んだ命を、吐き出しているかのよう。
ジン:
「行くぞ!!」
デュラン:
「おお!」
真っ先にモンスターの大群に突っ込んで行ったのはジンだった。それに黒騎士デュランが続く。2人の〈守護戦士〉が戦端を開いた。
〈シールド・スウィング〉と〈バックハンド・スラッシュ〉で敵を蹴散らすジン。他方では、雷光を纏った巨大な斧で〈オンスロート〉を叩きつけ、素早く大剣に持ち替えて周囲を薙ぎ払っていくデュラン。
シュウト:
「くそっ!」
デュランに遅れを取った自分を情けなく感じる。弓でジンの支援を開始。レイシンとニキータも飛び出している。
シュウト:
(……来るっ!)
直後、天が崩れ重くのし掛かってきた。アクアの〈タンブリング・ダウン〉だ。いつにも増して威力が凄まじい。のし掛かる音圧が去るや、活力が漲り、あらゆる能力が上昇していくのを感じた。
リディア:
「いつにも増して、凄い!」
ラトリ:
「各レイドチームに〈コーラス〉持ちを入れたからね。計4枚!」
サブ職〈コーラス〉のメンバーを複数用意し、アクアの援護歌を最大限に高める作戦だろう。レギオンレイドでは『軍神の歌姫』の本領を余さず発揮する条件が整う。
アクア:
「……さぁ、始めるわよ!」
神々しくさえある。圧倒的なオーラを纏った歌姫の降臨だ。
ヴィルヘルム:
「攻撃開始! 蹂躙せよ!!」
〈スイス衛兵隊〉が雄叫びを上げる。
遠隔武器による攻撃と、攻撃魔法・召喚魔法による攻撃とが次々と叩きつけられていく。レギオンレイドの火力はフルレイドのそれとは次元が異なっていた。単純に4倍したよりも上に感じる。
ヴィルヘルムはジンとデュランを後退させ、半ば包囲する陣形を形成。なめらかに前線を上げて押し込み、包囲を縮めて攻撃を集中させていった。石丸のカウントによれば敵の数は600を越えていたようだが、圧倒的な火力が敵の列を執拗に打ち据えていく。
葵:
『いしくん、スペシャルなのいってみようか!』
石丸:
「了解っス。〈フレアテンペスト〉!」
熱と光の嵐が放射状に乱舞する。奥には分身のような怪物達が死んでいく様を平然と眺めている吸血鬼カインがいた。この時間が早く終わることが最大の望みというような、つまらなそうな顔をしている。
葵:
「リコちん! 目標、スカした吸血鬼!」
リコ:
「いっけぇぇえ!〈シューティング・スター〉ぁぁあああ!!」
異界の空でも呪文効果は発生するらしい。動きを止めたままのカインに、巨大な隕石弾がまっすぐに向かっていく。確実すぎるぐらいの激突コース。
吸血公爵カイン:
「くだらん。たかが石ころ」
受け止めたのか、攻撃したのか、隕石は粉々に砕け散り、ダメージを与えることさえ出来ずに終わった。鮮烈なまでの力。余りに高すぎるレベル。それらはたぶん満月の効果によるものだろう。これほどのレイドボスと戦うことを誰が考えられるだろう。……ジン以外に。
キュボッ!
吸血公爵カイン:
「なにっ!?」 ゾンッ!
石丸・リコの攻撃に注意を集めている間に、ジンが最接近を掛ける即興の連携行動だった。振り下ろされる〈竜破斬〉。直前で気付いたカインが回避行動を起こすも、間に合わずに右腕が肘から切り落とされる。
フェイスガードを下ろしたジンが、最強クラスの吸血鬼へ迫っていく。
ジン:
「死ねよ、吸血鬼!」
吸血公爵カイン:
「なめるな、ニンゲン!!」
切られて落ちた右腕は、大きな熊の化け物に変じていく。レイシン・ニキータがそちらの相手をするべく攻撃を仕掛ける。カインは素早く右腕を復元させると、ジンとの打ち合いを演じていた。凄まじい速度・威力の手刀、もしくは爪。のし掛かるように、またリズミカルにジンに襲いかかる。
激しく力がぶつかり合う。ジンの体に掛けられた反応起動回復の光が立て続けに3つ光った。さすがのジンも、250レベルのレイドボス相手では劣勢なのか。しかし、ジンの〈竜破斬〉も相手の体に届いていた。さながら、殴り合いの状況のよう。レイドボス故に、膨大なHPをもつ吸血公爵カインは、ノーガードの乱打戦を選択していた。ただの人間相手であれば合理的な戦法だ。
ジン:
「うはははは!!」
ジンを『ただの人間』と呼べるかどうかは、僕でも考えてしまうところだ。不敵に笑い始めたかと思えば、〈竜破斬〉の回転が上がっていた。つまり、パワーアップである。
敵が強ければ強いほど、ジンの意識は深く・濃く、強まる。従って、集まってくる気の質・量ともに高まり、それらがまとめてレベルに反映される仕組みだ。
〈竜破斬〉にかかる時間は2秒毎だったものが、1秒半を下回っていた。カインの攻撃もろとも切り捨て、一方的にダメージを与えていく。乱打戦を選んだ相手に対して、ジンは攻撃と防御を一緒くたにした。激しい攻防の合間を縫うように、一拍ごとに敵を圧倒する攻撃を繰り出していく。これで超再生がダメージの蓄積を上回るようになった。これなら負けない道理だ。
吸血公爵カイン:
「チィッ」
カインの意思を受け取ったのか、ジンの背後からモンスターが襲いかかる。だがそれはさすがにこちらも読んでいた。ウヅキ・ケイトリンが素早くバックアップに入る。
ウヅキ:
「ケッ、こんなもんかよ?」
ケイトリン:
「吸血鬼ふぜいの考えそうなことだ」クックック
全体の戦闘も終結に向かっていた。デュランが大剣を振り回して敵を屠り、ベアトリクスが圧倒的な速度でヒットアンドアウェイを繰り返し、シーンの鞭が次々と敵に命中して味方を援護している。〈スイス衛兵隊〉の連携レベルは高く、どこにも問題はありはしない。戦闘開始時にジンとデュランが突っ込んだことで、不利になるタイミングすら無かった。
さすがにカインはレイドボスだけあり、タイマン戦闘で削り倒すには高いHPを備えている。少なくともモルヅァートの2倍の4億程度はあるだろう。これをジン1人で削り切るのはあまりにも無謀だ。時間がかかりすぎる。だが雑魚を倒せば、全ての戦力をカインに向けられる。
ゲームならば、我々の全滅、もしくは呼び出した魔物を全て倒した段階で撤退しそうな展開だ。しかし、本当にそうなるという確証は既に失われている。戦闘を続行するかどうかは、カインの性格に大きく依存するような気がするのだ。
もし、ジンがこのまま単独でカインと戦い続けたとしたら? この吸血鬼の性格で、撤退なんてはたして選べるのだろうか?
吸血公爵カイン:
「私を侮ったことを後悔させてやるっ!」
ジン:
「ナメてんのはどっちだ? 技のひとつも出してみろ!」
ジンの斬撃が立て続けにヒット。最後に〈竜破斬〉で切り抜けるコンビネーション。最後の〈竜破斬〉のみ、黒い霧に姿を変じた上で体を分割し、ダメージを回避した。〈竜破斬〉は霧だろうと削り取るのを理解しているらしき動きだ。こうしたちょっとしたところに現れる相手の知性見逃したり、侮ったりしてはいけない。
吸血公爵カイン:
「已むを得ん。グオオオオオ!!」
周囲の化け物やその死骸が、黒い霧となってカインの元へと戻っていく。存在が『濃く』なっていく。
葵:
『なぁる。必殺技を出さなかったんじゃなくて、出せなかったのか』
必殺技を『使っていた』状態なのかもしれない。ともかく、ジンと戦うために最大戦闘力の状態に引き戻したことになる。喩えるなら、控えのピッチャーを打ち崩し、いよいよ敵エースの登場、といったところか。
人型に戻るや黒い霧を伸ばし固めて、武器として使い始めた。これがなかなかに厄介だった。防ごうにも気体状になって貫通し、避けても液状になって動きを変えてくる。さらにバリア状に展開させ、〈竜破斬〉のダメージを相殺してくる。
ジンのブースト〈竜破斬〉は、衛兵の多重魔法障壁すら透過してダメージを与える技だ。その高いダメージ値は疑似的な質量として計算されるらしく、巨人の振り回す巨大な大鉈だろうと、巨大な竜の一撃だろうと易々と相殺してのける。そうして防御的に使った場合はともかく、攻撃的に使った場合、物理的な防御も困難なものになる。敵が相殺しようにも、相殺しきれないダメージが1万点を越えて発生してしまう。その結果、相殺しようとした相手の攻撃ごと叩き切るような、絶対質量攻撃みたいな状況になった。
そんな無敵技〈竜破斬〉でも、相手のHPに当たる前に、別のものにダメージを与えてしまえば防ぐことができる。そうした、あまり考えつかない方法による防御法だった。極端な話、自分がダメージをもらう前に、別の誰かを差し出せばいいといった意味で、真似するにも難しい。カインの場合、黒い霧ならダメージで削られても平気なようだ。
ラトリ:
「アンデッドだから? もし次があったら、敵の死骸も焼き尽くすことにしよう」
黒い霧がカインの全身から吹き出す。必殺技のモーションらしい。接近を阻まれ、ジンが後退する。
ジン:
「ユフィ、下がれ。デカいのに巻き込まれるぞ!」
ユフィリア:
「やだ」
ジン:
「やだじゃねーよ(苦笑)」
スパイラルメイスの先端に花が咲いている。呪文を増幅中のようだ。仕方なさそうにバックステップを入れ、ユフィリアのガードに向かうジンだった。
ユフィリア:
「〈シールドパクト〉!」
エフェクトが派手になった〈シールドパクト〉がジンに付与される。花の具合からすると、20秒程度は増幅していたようだ。従って世界最高の〈シールドパクト〉である。
ジン:
「〈ステディブルワーク〉!」
半球状の、光バリア風のドームが形成されるのと、カインの必殺攻撃が発動するのとは、ほとんど同時だった。巨大な闇の翼が広がっていく。
ジン:
「ちゃんとくっつけ。顔、出すなよ?」
ユフィリア:
「うん!」
ジン:
「竜の魔力!」
ドラゴンフォースによるバリア・ドームの強化だった。黄金の魔力でドームが覆われていく。一方、カインの必殺攻撃は、闇の翼を刃とした広範囲・斬撃属性攻撃のようだ。黒刃の嵐が吹き荒れた。もし効果範囲内でぼうっとしていたら、きっとスムージーみたいにされただろう。
翼が分裂しているのか、早すぎて分身して見えるのか、ともかく両翼合わせて十数回、それ以上の攻撃がバリア・ドームのジン達を襲った。10回死んで『おつり』がくるような攻撃を、ジンは大したダメージもなく、涼風同然にいなしている。
吸血公爵カイン:
「そこの娘。いいところだ、邪魔してくれるなよ」
ユフィリア:
「でも、そっちだって1人じゃないでしょ?」
シュウト:
(えっ、そうなの?)
ユフィリアは変に直感的なところがある。さっきまで展開していた闇の魔獣たちのことかもしれない。
吸血公爵カイン:
「フン。手助けでもなんでも好きにするがいい。元より1対1などというつもりはない。何人だろうとかかって来るがいい」
しかし、ただジンの邪魔をすることしか出来ないのだ。戦いの次元が高すぎて、足手まといにしかなれない。カインはそれを理解して発言していたのだ。魔法攻撃をしようにも、ジンに当たるかもしれない。外部からのバフによる補助ぐらいしかやりようがないのだ。しかし、既にアクアの永続式援護歌が作用している。だがら、これ以上の手出しもやりようがなくなっていた。
吸血公爵カイン:
「だが、なぜ私が1人ではないと思った?」
ユフィリア:
「んー、なんとなく?」
吸血公爵カイン:
「……面白い。その男を倒したら、お前の血は私が頂こう」
ユフィリア:
「けっこうです」
ジン:
「てか、やらせるかよ」
吸血公爵カイン:
「私の宣言は絶対だ。必ず、そうなるだろう」
ユフィリア:
「大丈夫。だって、勝つのはジンさんだから!」
ジン:
「おっ。たまには良いこと言うじゃねーの?」
超常戦闘の場に紛れ込み、死闘の殺気すら生ぬるくしてのける。ある意味、これがユフィリアの凄さかもしれない。ジン以外、この戦場に立つことすら出来ないのだ。今は成り行きを見守るべき時だった。
ジンとぶつかりあうカイン。正々堂々と言いたくなるような、正面戦闘のようなものをやり始めていた。
タクト:
「ジンさんが、また強くなったような?」
葵:
『ユフィちゃんのナイスアシストだね。……人は、守るものがある方が強くなれる!ってパターンだ(笑)』
シュウト:
「って、どこまで本気ですか? 守って強くなる、なんて本当にありますか?」
葵のセリフは冗談なのか本気なのか時々わからなくなる。
レイシン:
「普通はそんなことあるわけないよね(苦笑)」
タクト:
「やっぱり!」
シュウト:
「ですよね!」
ウヅキ:
「だよな!」
人を守りながら戦うとは、要するにハンデありってことだろう。それで強くなるってことに納得がいかない。
レイシン:
「でも、カレの場合は、意識が増えればなんでもいいわけだから(苦笑)」
シュウト:
「ああー」
確かにあの人は例外中の例外だ。なんでもいいのだ。どうやっても強くなれる。石ころひとつでも十分すぎるぐらいだ。ただでさえ強いのに、なにをやってくるのかわからないと来ている。倒そうと思ったら最悪に近い。いいや、最悪だ(涙)
葵:
『あの吸血鬼くんと因縁もなんもないからね(苦笑) 絶対に勝つ!とか思う必然がないっしょ。……てか、ココで全滅とか喰らって、コンチキショウ!で因縁を感じるイベントっていうか?』
リコ:
「そこであの子がプライドを賭けた戦いの景品になった、と」
葵:
『なんかユフィちゃんなりの理想があるっぽいんだよね』
ニキータ:
「ですね」
英命:
「たぶんですが、化け物の世界に行ったらダメ、ということでしょう」
シュウト&タクト:
「おおー」
ユフィリアの言いそうなセリフだった。さすが英命先生とは思ったが、最初の問いに戻ってしまう。
シュウト:
「でも、弱い方が強い、なんてことあるんでしょうか?」
葵:
『ぜんぜんあるよ』
レイシン:
「だね。パワー負けしてたら負けになる?」
シュウト:
「いえ、そんなことは」
レイシン:
「じゃあ、スピード負けしてたら?」
シュウト:
「厳しいですけど、負けるかどうかまでは……」
英命:
「つまり、実戦闘はパラメーター対決ではない、ということですね」
葵:
『そっそ。さすがにあそこまで行くと、レベル対決になっちゃいそーだけど(苦笑)』
シュウト:
「そうか。レベル負けしたからって、即、負けになる訳じゃない」
強さという概念を、単一のパラメーター勝負みたいに考えてはダメということなのだろう。相手の強み・弱みと、自分の強み・弱みとで対決すべき条件や状況が変わる。力で負けていれば速度で、速度で負けていれば技で、技で負けていたら力で、といった具合に勝てる要素を抽出し、戦闘をデザインすることも大切なのだ。
ヴィルヘルム:
「自身の弱さを、強さに加えることができるかどうかだな」
戦いの趨勢を見守るべく、ヴィルヘルム達が近くまで来ていたようだ。
ジンならば、弱さすら、強みに変えられるのかもしれない。
レイドボス相手の無謀極まりないタイマンバトルに、ひとつの決着が付こうとしていた。
ユフィリア:
「……中心軸勝負?」
僕らよりもずっと前で見守っているユフィリアのつぶやきが聞こえた。
ジンたちは、正面戦闘という言葉しか見つからないような、真正面、ド正面からの打ち合いを演じていた。その結果として、劣勢なのはカインの側だった。
シュウト:
(あれ? 僕もどこかで……? アレってやりづらいんだよなー……)
僕もどこかで体験していた。素早く記憶を探っていく。ぺしゃんこにされた特別な日でのことだった。レイシンがあの戦法を使って来たことを思い出す。ひたすら中心へ、中心へと入ってこようとする戦い方。
シュウト:
「あの戦法って、レイシンさんの?」
レイシン:
「まさか。全部カレのだよ。教えてもらって、真似しただけ」
吸血公爵カイン:
「ウオオオオオ!!」
ジン:
「ラァァアアア!」
背から出した黒翼が3対。6枚の羽根による同時突き刺し攻撃。
ド真ん中を抜くように躱すと、体幹部の中心の、さらに中心部の心臓付近の、さらに中央の中心軸の、さらに中心、『真芯』めがけて、そこを正確に貫くように突き刺していた。青く輝く剣がカインの真芯を深々と貫く。〈竜破斬〉ジ・エンド。……否。体を貫いた刀身が燃ゆるように青く光り、そのまま爆発した。ファイナル・エンドだ。
葵:
『あっちゃー。突き技禁止って言ったのに』
体の中心付近に大きく穴が開いたものの、カインに大したダメージはなかった。心臓もろとも、すぐに再生が始まる。
爆発の隙に、ジンは次の剣をマジックバッグから抜きはなっていた。多少のダメージと引き替えに、剣を一本使い潰したのかと言えば、そんなことはなかった。
レイシン:
「勝負あったね」
シュウト:
「えっ?」
ジンの存在感が大きく増していた。カインから余裕が失われ、どこか取り繕うような必死さがにじみ出ている。ここからはジンの優勢が長く続いた。
英命:
「これは……、『格付けが済んだ』ということでしょうか?」
レイシン:
「似てるけど、ちょっと違うかな(苦笑)」
シュウト:
「中心軸勝負で、ジンさんが勝ったんですよね?」
レイシン:
「そう。そんな感じ。あの吸血鬼は、人型でいる限り、カレにはもう勝てないと思うよ」
中心をめぐる攻防で、ジンを防げないと確定したのだろう。言語化するのは難しいが、たぶんカインは『中心をとられた』状態なのだ。中心・縦系・ストレート系の攻撃を出しても勝てない。そうして『内』に対して苦手意識を持つと、自然とフックや振り回すような『外』の攻撃を選択してしまう。外系の攻撃に心が逃げてしまうのだ。
二足歩行する人型生命体における中心軸の重要性を考えれば、致命的と言ってよい。こうして中心軸で決定的に負けたのなら、その後も不利な状態が続くのだろう。(金銭的な意味で)大切な剣を一本使い潰してでも、ここで『決めた』のだ。恐ろしいまでの戦闘センス。逆にいえば、ジンがそうする必要があったと判断するほどの強敵ということだ。
こうした話の『真の問題』とは、概念が存在していないことにあるのだろう。本来、『中心軸戦闘』といった名前が必要になるはずだった。しかし、名前がない。だから概念として確立していない。当然、感覚として共有もされない。概念的にステルスな攻撃。こうした手段で攻撃されれば、自覚できないまま、不利益を被ることになる。知らない間に苦手意識を刷り込まれてしまう。ステータス異常と表示されないバッドステータスのようなものだ。気が付かないものに対策の取りようなどあるわけもない。ワカラン殺しされるに決まっている。
シュウト:
(ジンさんのシステム……)
その静かすぎる脅威に、1人静かにゾッとしていた。
勝負は半ば決まったものの、それだけで倒しきれるものでもない。ジンがソロで戦い続ける場合、少なく見積もってもここからあと3時間半は必要だ。必殺攻撃を全部みせた訳でもないし、HPが減ると攻撃パターンも変化する。なにより満月で倒し切れるという確証もない。
そうして状況が膠着してきたと思ったところだった。唐突にジンが関係ない方向にダッシュした。
ジン:
「チィッ!」
ジンのいた場所、そして回避した先にも毒色の魔法エフェクトの爆発が発生した。4度の爆発でカインとジンの距離が離れる。気が付いた時には、既にそこにいた。
吸血公爵カイン:
「なぜ邪魔をした!?」
邪聖母タルペイア:
「フフフ。飽きたの。だから終わらせてあげたわ」
徒花の邪聖母タルペイア。同じくレイドボス。レベル238。
カインに比べて僅かにレベルが低いとはいえ、2体揃えばもうどうにもならない。ジンが片方を押さえたとしても、もう一方に好き放題に蹂躙される。……いや、2体で済むとは限らないではないか。
邪聖母タルペイア:
「様子見はこのぐらいで十分でしょう」
吸血公爵カイン:
「だとしても、なぜ貴様がそれを決める?」
邪聖母タルペイア:
「貴方の忠誠は誰のものなの?」
吸血公爵カイン:
「チ……主のものに決まっている」
黒い霧をマントのように纏うカイン。どうやら戦闘は終わりのようだ。
吸血公爵カイン:
「戦士よ、名は何という?」
ジン:
「む?」
ユフィリア:
「ジンさんは、ジンさんっていうんだよ!」きゅぴーん
ジン:
「って、うおーい!」
アクア:
「神殺しのジン、よ」ずずいっ
ジン:
「ちょっとまてー! ……なんでお前らが言っちゃうの? てか、なに勝手に話 進めてんの?」
……たいへん締まりの悪い展開に。これどうするの?
吸血公爵カイン:
「神殺しだと? ククク。まさか神の逆徒が敵とはな。なんだ? 仲良くしてほしかったのか?」
ジン:
「バカ言ってんじゃねぇや。……てか、なにさりげなく逃げようとしてんだよ。もう終わり~? まぁ、このままやっても結果は分かりきってんだけどさぁ~」←タウンティング会話
邪聖母タルペイア:
「まぁ。なんて分かり易い挑発」
ジン:
「ぐぬぬっ」
残念ながら、名乗りに失敗しておちゃらけた展開であり、いまいち迫力が足りない。
ふわりと舞い上がるレイドボスたち。
吸血公爵カイン:
「ジン、神の逆徒よ。また戦おう」
邪聖母タルペイア:
「また逢いましょう。貴方たちには期待していてよ?」
エフェクトは異なるが、共に空に溶けるように消えた。戦闘終了。
『次』に向けて動き始めることになる。
ヴィルヘルム:
「損害を確認しろ!」
ジン:
「大損害だ。剣1本無駄になったかも」
ラトリ:
「おつかれ~(笑)」
シュウト:
「お疲れさまでした」
ジン:
「今回のは、正直、助かったぜ」
シュウト:
「えっ? 珍しいですね」
まるで弱気な発言だった。びっくりして目をぱちくりさせてしまう。
ジン:
「今回のは流石にヤバかった。少人数で進入調査なんてしてたら」
葵:
『あの連中のエサにされてたかもね(笑)』
レギオンレイドだと分かって、レイドを組むまでに時間があった。暇なので、ちょっと先に入って調査してくる、なんてコトになっててもおかしくなかったのだ。
〈スイス衛兵隊〉の全員が楽しみにしていたから、先に入らなかったという意味もあるにはあるけれど、もっと直接の原因は……。
ジン:
「ヴィルヘルムのセリフが無かったら……。危ないところだったぜ」
人数を分割するほど追いつめられていない。そのセリフのお陰だ。ほんの少しの幸運を掴むことができたようだ。
デュラン:
「更に強くなったな、ジン」
ジン:
「よぉ、……黒騎士ごっこはもう終わりか?」
デュランがその兜を外し始めた。西洋人ひとりひとりの顔の区別が付くとは思えないが、流石に彼の顔は分かる。特徴的なハンサムは、赤き暴風レオンその人だった。
デュラン→レオン:
「ここまでくれば同じだろう。名を隠す意味がもう無い。それに、まずはこのレイドをどうにかしなければ」
ジン:
「ちげーねー」
空中で腕相撲するみたいに、がっちりと腕を組む2人だった。かつての敵が味方になる展開。ベタだとしてもワクワクしてしまう。
ベアトリクス:
「あれが、赤き暴風レオン……」
シーン:
「スーパースター揃い踏みだ。アンタもだけどね」
ベアトリクス:
「うむ。〈緑の庭園〉に恥じぬ働きをしなければ」
アクア:
「これで現在までに判明しているオーバーライド能力者が全員揃ったわね」
ジン、アクア、レオン、マリー、そしてベアトリクス。
レオンがデュランを止めたのならば、たぶん本気が見られるのだろう。
レオン:
「だとしても、クリアは覚束ないだろう」
ラトリ:
「だねー。強すぎるよ」
ギヴァ:
「まず、あの満月をどうにかしなければな」
全員が頷く。異次元ゾーンの満月をどうにかするのが、取り合えずの目標になりそうだった。
葵:
『うーん。なんでかなー?』
アクア:
「どうかした、葵?」
葵:
『なーんで引き上げたんだろ。2人いれば全滅も狙えたっしょ』
シュウト:
「様子見して引っ込むゲームイベントだからでは?」
自分でもかなり希望的な観測に頼った発言だった。もうゲームではなくなっている。そう分かっていても、敵が撤退したことに違和感はない。それはゲームだったらそんなことは普通だからだ。
葵:
『普通に考えたらそうなんだけどねー(苦笑)』
ジン:
「〈冒険者〉は殺しても死なないからじゃねぇのか?」
葵:
『このゾーンから撤退させたきゃ、ここで全滅さして心を折るべきじゃん。むしろあの動き方だと、帰られたら困るって感じだった。あの2人の会話、去り際のセリフも違和感だなぁ』
ヴィルヘルム:
「カインは我々の実力を試しに現れた。これはどう説明する?」
葵:
『だよね。なんとなくだけど、弱いと奥まで来られないから、とか?』
レオン:
「だとしても、行かない訳にも行くまい」
このゾーンの外側の、『世界』を人質にとられた形だ。なんとしてもクエストを突破しなければならない。
ゾーン内部の調査が始まった。
その間にもう一件問題が発生。第1レイドの取りまとめを受け持つ女性リーダー、〈パラディン〉のスタナが文句を言い始めたのだった。僕らと同じ第1レイド部隊なので、組んだ時に挨拶はしていた。僕らと〈スイス衛兵隊〉との間を取り持つような、中間管理職みたいな位置関係の人になる。
スタナ:
「ジン、貴方が強いのは分かったわ。だけど、勝手な行動を取らないで! レイドの連携がメチャクチャだわ!」
ジン:
「なんだ、お前?」
シュウト:
「第1レイドの責任者ですよ、挨拶したじゃないですか?」
ジン:
「そうだっけ? んで、なにが問題だ?」
スタナ:
「貴方が1人で突っ込んで行くから!」
ジン:
「連携がメチャクチャなんだろ? それは分かった。それのなにが問題だ? どこの部分で困ってる?」
スタナ:
「ヒールワークもなにも、全部よ。レイドのコンビネーションがメチャクチャだわ!」
ヴィルヘルム以下、〈スイス衛兵隊〉の幹部は成り行きを見守ることにしたようだ。大人的放置だろう(苦笑)
ジン:
「別にヒール足りてたけど? ユフィがいるし、センコーもいる。アクアの援護歌もあるから、滅多なことじゃ死なないんだが?」
スタナ:
「貴方がいくら強くても、それ以上の敵が出てきたら、ヒールは必要でしょう!? 現に、出てきたじゃない、2人も! 滅多なことがあったばかりじゃないの」
イラッとしたのか、瞬間的に怒気が込められ、スタナの勢いが萎む。
ジン:
「あのな、いいか? 戦闘、特に交戦では『敵の動きに対処』しなきゃならない。これは逆もあって、敵が、俺たちの行動に対処する必要もあるってことだ」
スタナ:
「それが、何?」
ジン:
「『兵は拙速を尊ぶ』といって、先に動くことで『敵に対処させる』ことが重要なんだ」
レオン:
「状況を作る、動かすという意味だな?」
ジン:
「そうだ。自分の戦術や思惑通りにするためだし、消極的には相手の思惑通りにならないようにする意味がある。次の段階が敵の動きに対処すること。後手だが、対処しないよりはマシだからな」
スタナ:
「だから、それが何よ?」
ジン:
「先んじて動いて状況を作りに行くでもなく、敵の動きに対処するでもなく、レイドのコンビネーションに合わせろだ? つまり、俺たちの動きが早すぎて、ついてこれなかったんだろ。違うか?」
スタナ:
「……ッ!」
ジン:
「お前らのいう『レイド』は言い訳用の言葉なのなー? 自分の無能を隠すために、とりあえず文句いってみましたってか。いるいる。謝ったら負けってタイプだろ? 勢いよく怒鳴っときゃ、日本人ならゴメンナサイするとでも思ったのか。引っ込め、似非エリート」
小物、つまらない人物として見下される。そんな経験などしたことがないのかもしれない。屈辱に震えて、深く傷ついているように見えた。ジンは断固とした態度であり、譲る気は1ミリもない。
〈スイス衛兵隊〉のメンバーは、沈黙を守っていた。スタナの味方をしないのは、まだ常識があるからだろう。
ユフィリア:
「ジンさん! 女の人にそんな言い方したら可哀想!」
ジン:
「男も女も関係あるか」
ユフィリア:
「でも、ふつうの人じゃ私たちに付いて来られるわけないでしょ?」
ジン:
「フッ。……お前もけっこー、ヒデーよな?(苦笑)」
ユフィリア:
「そう?」
当のスタナはというと、ヴィルヘルムに泣きつくことにしたらしい。男勝りなようでいても、こういう状況では女を使う。うんざりするような気分だった。
スタナ:
「ヴィルヘルム、私には務まりません。自信がない」
ヴィルヘルム:
「スタナ、君は間違っていない。……しかし、ジン君の方が正しい」
スタナ:
「……!?」
ギヴァ:
「スタナ、レイドを言い訳に使うな!」
ラトリ:
「いろいろ分かるけど、そこだけは、それだけはやっちゃダメでしょ~」
少しだけホッとした。レイドを軽んじているチームと組んでも意味があるとは思えない。西欧最強のギルドがその程度だとしたら、けっこうショックなポイントだったろう。
ネイサン:
「ちょっと待って。スタナは優秀だ。もう一度チャンスを与えてくれないかな?」
新しい人物が登場した。男性〈ドルイド〉のネイサン。がっしりとした体格の、穏やかそうな人物だった。筋肉質というよりかはふくよかが近いか。しかし、太っているのとも違う。
ネイサンはジンの方に小走りで近づいていった。遠慮はなさそうだった。ジンの側は嫌そうな顔をしている。ネイサンは全力で馴れ馴れしいというか(苦笑)
ネイサン:
「ジン、寛大になってくれないか?」
ジン:
「知るかよ」
ネイサン:
「スタナは、セブンヒルの戦いに参加してなかったんだ。だから、君のことも、その実力も知らなかったんだよ」
ジン:
「だとして、それがなんだ」
ネイサン:
「スタナは優秀だ。チャンスがあれば、きっと巧くやる。いや、本当だよ」
ジン:
「プッ。わはははは! あんた、いいヤツだな」
ネイサン:
「そうかな? 時々、そう言われるけど」
ジン:
「……弱いのはある意味、仕方ない。だから無能は許そう。しかし、愚か者はダメだ。まず上から目線を改めろ。お前らは足手まといだ」
スタナ:
「…………」
ネイサン:
「分かった。改めよう」
ジン:
「後は好きにしな」
それだけ言うと、ジンはその場を後にした。どこへいくつもりなのか気になったが、先に質問しておくことにする。
シュウト:
「無能と愚か者の違いって、なんですか?」
アクア:
「どちらも役立たずね」
葵:
『あとは、足を引っ張るかどうかの違いってことでしょ』
シュウト:
「……なるほど」
正直、無能を許す段階がかなり寛容だ。しかし、スタナは無能を人のせいにしようとした。ただ、ある意味では僕らのせいかもしれない。これまでは通用した。僕らと一緒では通用しなかった。そこでジンのせいにしようとしたのは間違いだろう。少なくとも、そんな調子で今回のレイドを突破できるハズがない。そう思えば、ジンが怒るのも当然なのだと思う。ちゃんと理由があった。
レギオンレイドでは〈スイス衛兵隊〉の方が上だろうと思っていたが、実力では僕らの方が上だった。こちらをレギオンレイド初心者だと舐めてかかり、逆にガツンと喰らったということだろう。
ネイサン:
「愚か者だと道化・ピエロの意味になっちゃうけど、この場合はハンス・フォン・ゼークトの言った『無能な働き者』に近いかも」
にこにこしているネイサンを見て、ちょっと変わっているけど、面白い人だなと思った。
とりあえず、さっきの戦闘の結果、レベル98に到達。なんというか、間が悪い。