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140  お使いイベント

 

シュウト:

「なんであんなヤツに秘伝を教えたりしたんですか?」

ジン:

「もう教えちまったんだ、しょうがねぇだろ」


 朝練でのタクトの態度に、もうハラワタが煮えくり返っていた。我慢にも限度がある。そしてあろうことか、僕はタクトにではなく、ジンの方に八つ当たりしていた。恐ろしい真似をしたものだが、この時はマズい状況に気が付いていない。


ジン:

「プリプリ怒るなよ。禿げるぞ?」

シュウト:

「別に構いません」

ジン:

「おいおい。イケメンが禿げたら悲劇だろうに。せめて面食いで金遣いの荒い淫乱女を道連れにしてくれよ」

シュウト:

「…………」


 本当は禿げたくないのだが、怒りを収めろと言われても、そう簡単にコントロールできるものでもなかった。


ジン:

「はいはい。どうせアレだろ? あんなヤツに秘伝を教えて、僕には教えてくれませんでしたー、とかのみみっちいことで怒ってんだろ?」

シュウト:

「それは、その。そういうのが無い訳じゃ、ありません、けども」


 あっさり見抜かれた上に、フルボッコに。いっそ殺してもらえないものだろうかと、時たま思ったりもする。


ジン:

「あのな、秘伝は隠し技の一種で、バレたらそこまでなんだよ。対策されちゃうと困るから隠している程度の、ちょっとした工夫とか思いつき程度のもんなの。……俺がお前らに教えてんのは極意だぞ。秘伝より極意の方がエライんだよ。わかった?」

シュウト:

「はぁ、……はい」


 前にも聞いた記憶があるような、ありますです、はい。


ジン:

「よし、メシの前に買い食いに行くぞ。つき合え。おごらせてやる」

シュウト:

「僕が奢るんですか?」

ジン:

「当然だ。ありがたく思え」

シュウト:

「……はい」


 どうにも反論の余地はない。『謝罪を受け入れてやる』という意味なのだろう。さっさと気持ちを立て直してしまわなければならない。

 

おっちゃん:

「おーい。こっち、こっち!」


 アキバの街中に戻り、屋台通りへ。

 ケバブを食べようかと悩んでいたところで、3軒ばかり先の店のおっちゃんに呼ばれる。


ジン:

「んーと、呼んだ?」

おっちゃん:

「おごっちゃるから食っていきなよ」

シュウト:

「いいんですか?」

おっちゃん:

「ああ。いつも世話になってるからね」

シュウト:

「世話……?」


 見たことがない。名前を確認しても、やはり記憶には無かった。

 ジュワジュワと美味しそうな音を立てているステーキ串を選んで、ジンは1本受け取っていた。


ジン:

「ありがとう」

おっちゃん:

「いいっていいって。そっちの人も選びな?」

シュウト:

「すみません」

ジン:

「うっめ!」


 僕も倣ってかぶりつく。熱いのだが、香ばしくて美味しかった。焦げた香辛料の香りをふわりと纏っている。歯を押し返す弾力が気持ちいい。

 僕らがうまそうに食べていたせいか、別の客がやってきた。邪魔にならないように、礼を言い、その場を離れる。タダにしてもらったけれど、サクラの役は果たすことはできたかもしれない。


シュウト:

「今の人って知り合いなんですか?」

ジン:

「いいや、知らん顔だな。たぶん朝の味噌汁屋の常連だろう」

シュウト:

「ああ、そういう……」


 世話になっているの意味が繋がった。


ジン:

「こないだの事件のこともあるし、サービスデイをやんねぇとなぁ」

シュウト:

「いいですよね、そういうの」

ジン:

「ん? ……ああ」


 親切には親切で返すのだろう。こうして善人でいられるのは喜びだ。たぶん、幸運でもある。どんなサービスにするか?といった雑談をしながら、ギルドホームへと歩いた。







 この日の午後は英命先生との打ち合わせが入っていた。夕方からの約束だが、念話が来たのは15時ごろ。待ち合わせ場所は銀葉の大樹なので距離としては2分と掛からない。ゲストとして入室許可を与える作業をして、中へ。人数が多い場合は1~2階のゾーンを解放するのだが、少人数の場合は許可を与えることにしている。


シュウト:

「どうぞ、こちらです」

英命:

「ありがとうございます」


 なめらかな立ち振る舞い。改めて、ダンスの経験者か何かだろうか?と想像しながら案内していた。穏やかな雰囲気の持ち主で、完成度の高さを窺わせる。立派そうな人かどうかは、雰囲気などが作用して決まっているのかもしれない。戦術的な『教える技術』の前に、戦略的な『教える立場』の人、つまり先生っぽい人だった。


葵:

「いらっしゃい。あたしが〈カトレヤ〉のギルマスだよん」

ジン:

「ナリはこんなんだが、中身は……」

葵:

「ハートの中身はミステリー! たったひとつの真実見抜く、見た目は子供、頭脳は大人。その名は、名探偵 葵!」


 初対面でいきなりこれをぶちかます辺りの大人げなさ。どう対応するのか、反応を固唾をのんで見守ることに。


英命:

「コナン君ですね。私も良く見ていました」あっさり

葵:

「あ、そうなん?」

英命:

「塾の生徒に大人気だったので、楽しみでしたね」

ジン:

「じゃあ、ワンピースとかプリキュアとかも?」

英命:

「ええ。ポケモンや妖怪ウォッチ、ガンダム、平成ライダーもある程度は分かります。……趣味と実益を兼ねたリサーチですね」

葵:

「そっかー。じゃあ、日曜の朝とか夕方の人だ」

ジン:

「俺は深夜の人だからそっちは疎かったりするんだが。まぁ、よろしく頼むよ」


 あっさりと心を掴んでしまっていた。ジンにしても葵にしても、常識も良識もあるけれど、それでいてとても気難しい人たちなのだ。オタク文化に理解があると、こうまで違うのかと戦慄に近い感想を覚える。

 エルダーテイルをやっていたから〈大災害〉に巻き込まれているはずだし、ゲームにも当然、理解があるのだろう。


ジン:

「今日呼んだのは、要するに何を準備すればいいのか分からなくてなぁ」

英命:

「……立派な黒板がありますね?」

葵:

「そりゃ、準備したさ。紙や筆記用具は用意できる。教科書はどうしよっか? ウチは出版ギルドのスポンサーをやってるから、作ろうと思えばすぐなんだけど」

英命:

「教科書作りは時間が掛かりますし、すぐには要らないでしょう。繰り返し授業をしてきていますので、内容は頭に入っています」


 プロってそういうことなのだろう。頼もしい限りだった。


ジン:

「じゃあ、後は任せる。必要なものがあったらすぐ相談してくれ」

英命:

「では、今日の夕飯をいただいても?」

葵:

「……なんだったら部屋も用意できるよ。住み込みにする?」

英命:

「それは、……宿代が浮きますね。御厄介になっても?」

ジン:

「そこまでは予想してなかったな。こっちは構わない。……シュウト、咲空と星奈を呼んでくれ」

シュウト:

「はい」


 念話で咲空に星奈と一緒に来てくれと頼む。

 ギルド無所属ということは、ソロプレイヤーかもしれない。いや、下調べは終わっているだろうから、知りたいことがあれば、葵に後で聞けばいいはずだ。


英命:

「先にお伺いしておきたいのですが?」

ジン:

「ん?」

葵:

「なにかにゃ?」

英命:

「貴方なら、どういう風に教えますか?」

ジン:

「そうだなぁ。信頼関係を構築して、生徒の得意や苦手を把握。得意なところをのばしながら、苦手の原因を探りつつフォロー、かな? 勉強だったら、机に座ったりする習慣がないとキツイよなぁ」

葵:

「……そっか。生徒じゃなくて、保護者の問題なんだね?」

英命:

「そうなのです。生徒には『こうして欲しい』という要望はあまりありません。要望をお持ちなのは、常に保護者の方達です。ニーズに応えるには、保護者の要望を知らなければならないのです」

ジン:

「なるほどな。考えておこう」


 そんな話をしていると、咲空と星奈がやってきた。


星奈:

「お呼びでしょーか」

咲空:

「あ、先生ですよね? よろしくお願いします」

ジン:

「ここに住むことになったから。身の回りの世話を頼む」

英命:

「お世話になります」にっこり


 そうしてあっさりと『居候の先生』になってしまっていた。

 夕飯を食べるのは何の目的があるのか?と思っていたのだが、「美味しい」と何度も言って、ただ普通に、一緒に食事をしただけだった。

 先生の登場にそー太やりえ達は警戒していた様子だったが、僕と同じく拍子抜けしたような顔だった。







 貸し切りにされた店内はざわめき、さまざまな話題に興じていた。濃い女たちの香りが漂う。


花乃音:

「画家ギルド?」

ニキータ:

「用があって、どうしても連絡を取りたいの」


 レイドボス撃破の翌日。今夜は11月頭の、マダムの女子会の日だった。天秤祭の熱気を残しているのか、みな気合いが入って感じる。

 ファッションショーで主役級の活躍をしたユフィリアは、女の子に囲まれていて近づくことも難しくなっている。

 私は別行動である。画家ギルドの捜索が難航しており、葵のツテだけではたどり着けないと判断。それぞれの知人に当たることになっていた。


花乃音:

「画家ギルドさんねぇ。うーん、ウチで知ってる人いるかな?」

トモコ:

「何の話?」

花乃音:

「画家ギルドを探してるんだって」

トモコ:

「ああ、看板か何か? エンブレムを作るとか?」

ニキータ:

「もしかして?」

花乃音:

「知ってる感じ?」

トモコ:

「もちろん。『アトリエ・あるまじろ』でしょ? 何度も仕事をお願いしてるけど」

ニキータ:

「よかった! 連絡を取る方法が無くて困ってたの」


 ……と、トモコの顔付きが下心を感じさせる表情に変わる。


トモコ:

「教えるのはもちろん、いいんだけど……」

ニキータ:

「何が望み?」

トモコ:

「(ニコッ)夕飯にお呼ばれされたいなぁ」

花乃音:

「それは相乗りOK?」

ニキータ:

「了~解。いつがいいか教えて」

トモコ:

「花乃音、いつにする?」

花乃音:

「いつでも開けまふ。予定は開けるためにある! 今、ちょっと激しく忙しいけど、絶対、抜けてくるから!」


 今日も抜けて、今度も抜けてくるつもりらしい。ロデ研はそれで大丈夫なのだろうか。


ニキータ:

「そういえば、エルムさんも忙しいって?」

トモコ:

「珍しくね~。天秤祭はヒマしてた癖に、終わった途端に忙しいフリしたりして、訳わかんない」

花乃音:

「相手をしてもらえなくてサミシーんだ?」

うらら:

「ちょーっと待った! そこで聞き捨てならない発言が!」←早耳

花乃音:

「いつもながら超人的な早耳スキルだね」

うらら:

「んで? なんの話?」

ニキータ:

「みんな忙しいって話よね」

うらら:

「ふーん。なんで忙しいの?」

花乃音:

「出店の準備でワラワラしてる」

トモコ:

「おおわらわ、でしょ。エルムも同じ。『209』が来週ぐらいにオープンするんだって」

ニキータ:

「名前も決まったのね?」

花乃音:

「天の声だって。『209でええやん』とかなんとか」

うらら:

「それ、服屋の話だろ?」

トモコ:

「そ。ビルをまるまる、洋服・小物の販売店にしちゃおうって計画」

花乃音:

「ロデ研からは、〈ピクシーワークス〉の名前でドレスブランドを展開するんで、みなさま一着よろしくお願いしま~す」←ちゃっかり営業

ニキータ:

「よろこんで」

うらら:

「まけてくれんだよね?」

花乃音:

「それは那岐さんの機嫌次第、かな?」


 営業活動を名目に抜けてきたらしい花乃音は、その後もあちこちで『精力的な宣伝活動』とやらをしていた。それが微笑ましくて、みんなでくすくすと笑っていた。







葵:

「シュウくん、オンブせよ」

シュウト:

「僕ですか?」


 ジンさんではなく?のニュアンスを込めてみたつもりだが、笑顔が返って来たので諦めた。オンブしたところからよじ登られてしまう。


シュウト:

「どうして登るんですか?」

葵:

「そこに山があるから」

シュウト:

「肩車ならそう言ってくださいよ」


ジン:

「出かけるぞぉ~」

咲空:

「行ってらっしゃいませ」

シュウト:

「行ってきます」


 咲空にお出かけの挨拶をされる。返事を返すと、笑顔になり、まるで花がほころびたみたいだった。自然とこちらの頬もゆるむ。

 扉を出たところで葵に指摘されてしまった。


葵:

「なかなかだね、シュウくん」

シュウト:

「なにが、でしょうか?」

葵:

「罪作りなことよのぉ。フォフォフォ」

シュウト:

「…………」


 半ば諦めの心境で沈黙した。


 ジン・葵・ユフィリアに僕を加えて、画家ギルドへお出かけだ。まずは〈海洋機構〉のビル前でトモコと待ち合わせ。そこで〈えんたーなう!〉の浜島編集長&フランソワ万里子とも合流。目的地〈アトリエ・あるまじろ〉へ移動する。

 

トモコ:

「それじゃ、行きましょう」

浜島:

「よろしく頼みます」


 素早く合流し、大通りから何本も裏路地へ入っていく。たどり着いた場所は、一応形式だけ看板があった。探しながら歩いても、これでは見つけられないかもしれない。そうしてズカズカと画家ギルドの中へ。話は通してあったのだろう。扉を叩くと、準備は出来ていた様子で中へと案内された。こうしたところの展開が早いのはありがたい。



画家ギルド代表:

「本日は、どのようなご用件でしょう?」


 誰が話すかで顔を見合わせ、肩の上から葵が降り立った。


葵:

「うんしょっ、と。……あたしは葵。〈カトレヤ〉のギルドマスターで、〈シブヤ互助組合〉の総代表よ」

画家ギルド代表:

「ようこそ。『アトリエ・あるまじろ』です」

葵:

「用件は2点。ひとつめ、〈虹硝子のインク瓶〉を購入したい」

画家ギルド代表:

「ああ。あれは少数生産品でして。天秤祭でも人気だったんですよ」

葵:

「そうらしいね。こっちとしては、出版ギルドで使いたいと思っててね」


 〈えんたーなう!〉の浜島とフランソワが軽く会釈していた。


画家ギルド代表:

「そうでしたか。お譲りしたいのはやまやまなんですが……」

葵:

「創るとしたら、出来るのはいつ頃になるかな? 足りない素材があるなら、そっちも相談に乗れると思うんだけど」


 トモコが頷いてみせる。〈海洋機構〉の助けを借りられるのはやはり違う。


画家ギルド代表:

「ちょっと、仲間と相談させてください」


 そういうと、数人の仲間と奥でなにやら相談を始めてしまった。……もめてる、もめてる。



ジン:

「ふむ。」


画家ギルド代表:

「おまたせしました。すぐにお譲りできますが、ひとつ、条件がありまして」

葵:

「言ってみて?」

画家ギルド代表:

「どうしても欲しいアイテムがあるんです。その、交換というのでどうでしょう?」

葵:

「んで? 何と交換したいの?」

画家ギルド代表:

「その、………………ドラゴンの血、なんですが」

ジン:

「ブッ!」


 ジンが思わず吹き出した。その気持ちは分かる。お使いクエストでいえば、必要アイテムを渡すだけの状態だ。


画家ギルド代表:

「すみません! 無茶なのはわかっているんです。最近ドラゴン系の素材が流通するようになってるみたいでして。ドラゴンの血って画材に使えるんで買いたかったんですが、ちょっと高くて手が届かないというか、すぐ売れちゃって手に入らないというか……」


 視線が定まらない。どうやら彼は『かなり無理なお願い』をしているつもりらしい。かといって、〈虹硝子のインク瓶〉を『どうしても渡したくない』という事ではなさそうだ。


ジン:

「なるほど。〈海洋機構〉はずいぶん儲けているみたいだな?」

トモコ:

「お陰様でーす」にっこり

葵:

「どのぐらいの量あればいい?」

画家ギルド代表:

「一瓶あれば、はい」

ジン:

「シュウト」

シュウト:

「行ってきます」


 ダッシュでギルドの倉庫へ。ドラゴンの血は消耗品アイテムになるので大量に保管している。多めに持って、5分と掛からずに戻った。


シュウト:

「このぐらいあればいいですか?」

画家ギルド代表:

「おおおお!? じゅ、十分です! どうやって?」

葵:

「べつに。ウチが〈海洋機構〉に卸してるだけだよ」


 用件1つめ終了。〈虹硝子のインク瓶〉をゲット。


フランソワ万里子:

「これこれ! あざーっす」

葵:

「用件の、ふたつめ。『アキバ通信』って雑誌の、表紙の絵を描ける人を探してんの。 誰かいない? 買い取りでお願いしたいんだけど?」

画家ギルド代表:

「そういうことですか。我々でお役に立てるといいのですが」


 ドラゴンの血でテンションが上がっているらしい。


葵:

「いま、人、揃ってる? ちょっと描いてみてもらえるかな?」

画家ギルド代表:

「ええと、表紙には何を?」


 目深にかぶったフードを引き上げるユフィリア。打ち合わせ通り。

 葵がくいっと彼女の方を示した。


ユフィリア:

「こんにちは☆」どどん



 全滅である。


 毎度のことながらえらい騒ぎになり、ずうずうしくも握手しようと迫ってきた相手を「握手会じゃねぇ!」とジンが追い払ったりしつつ、画家ギルド全員でユフィリアをモデルにスケッチを始めた。その結果も全滅だったりした。


ジン:

「うーむ。表紙っていうには、いまいちピンとこないな」

ユフィリア:

「私にも見せて! うわぁ、みんな上手ぅ!」

浜島:

「巧いのは巧いんだがな」

シュウト:

「なんで筋肉……?」

フランソワ万里子:

「独創的だねぇ、トロイメライくん」


 半裸マッチョなユフィリアの絵を見せられて笑いそうになる。


ジン:

「……なぁ、この中から選ばなきゃダメか?」

画家ギルド代表:

「なんだか申し訳ない」

葵:

「これで全員? 他に誰か心当たりない?」

ギルメンA:

「リシディアさんはいつ戻ってくるか分かんないし」

ギルメンB:

「ひよ子さんはBL専門だから、そっちの彼なら」

シュウト:

「えっ? 僕ですか?」

画家ギルド代表:

「そうなると……」


 画風の問題もあるらしいが、そもそもユフィリアの魅力を絵で表現する際の難易度の問題が大きいそうだ。

 次は画家ギルドの推薦で、『贋作師のニック』を探すことになった。彼らの話では、美人画では一番の適任とのこと。イケメンの酒好き、女好き。この情報の段階で既に友達になりたくなくない相手だ。


 ニックは夜、どこかの酒場に現れるという。網を張って捕まえようという話に決まった。僕らは一度、ギルドに戻って夕食の後で探しにでることになった。







ニキータ:

「どこへ行くの?」

シュウト:

「ちょっと、人と会う約束が……」


 自然と、申し訳ないような顔になっていたようだ。ニキータは誰との約束なのかピンと来た模様。いや、事情は彼女にも伝えてあるのだが。

 今晩の約束の相手は〈シルバーソード〉を辞めて行方不明のケイトリン。別段、念話のつながらない場所にいる訳ではないので、行方不明というのとは少し違う気もする。

 ジンの命令で、仕方なく、渋々、レイドメンバーに誘ってこなければならなくなっていた。会う約束を取り付けるところまでは無難にこなすことができた。あとは向こうから断ってくれるのを祈るばかりなのだが、基本的に天の邪鬼な人なのだ。こちらが断って欲しそうな態度を見せようものなら、嫌がらせで参加するタイプ。そういう難しい人だった。


 今回は『ちょっとしつこい感じでお願いしつつ、面倒だと向こうに思ってもらおう作戦』である。最大のネックは自分の演技力。暑苦しい感じを上手く出せるかどうか。


 贋作師ニック探しは向こうにお任せである。僕は集中してこの重要ミッションに挑まなければならない。間違っても仲間になって欲しくない。


シュウト:

(実力的には申し分ないんだけどなぁ……)


 戦闘能力だけで考えれば、めったにお目にかかれない逸材クラスだ。在野に放置なんてありえない。ただ、ギルドメンバーとしてみると、混乱をもたらす要因なので仕方がない。


 街の外はすっかり暗くなっていたが、月明かりと暗視で十分に周囲の状況が見てとれる。約束のアキバの北のゾーンへと急いだ。



シュウト:

(人の気配?)


 呼吸の、音か気配。誰かがいる。それも複数だ。僕も相手も明かりを使っていない。PKかもしれないが、ケイトリンとの待ち合わせ場所がこの辺りなのでどうしたものかと思う。


シュウト:

(放っておくか……)


 困るのは、拘束系の状態異常、麻痺、睡眠などだけ。魔法詠唱は声でわかるはずだし、武器攻撃系の特技は攻撃されそうになれば気配やエフェクトの光、相手の動きなどで避けるのは難しくない。

 戦闘系ギルドが相手ならともかく、PKなんてしてるようなプレイヤーの小集団なら、油断しなければなんとでもなる。


 その時、明かりが灯った。


サブリナ:

「うーっ、凄いイケメン。美味しそ~」


 相手のステータスを確認。サブリナ、〈武士〉、レベル90。男性。無所属。……記憶にない相手だった。動きは硬く、問題外だと判断する。


シュウト:

「ケイトリンに会いに来たんですが?」

サブリナ:

「話は聞いてる。ボスはこっちだ」

シュウト:

(ボス、ね……)


 案内役らしい。その後をついていく。こういう部下を簡単に見繕ってしまうところが彼女らしい。偉そうに、手下に案内なんかさせてないで自分で顔を見せればいいだろ!などと心の中で悪態をついておく。客観性を保つためのちょっとしたテクニックだ。

 案内させることで自分を偉く見せる効果があるのだろう。交渉前から交渉で有利になるように運ぼうとしている。


シュウト:

(……逆かな。後ろ盾がないから不安とか?)


 ケイトリンは立場の弱さを自覚している可能性がある。〈シルバーソード〉を出た直後は、僕もかなり不安を覚えたものだった。


ケイトリン:

「久しぶりだね、シュウト」

シュウト:

「…………」


 案内された先では、ソファに優雅に座ったままのケイトリンが挨拶してきた。僕も偉くなったものだと思う。完璧な出迎えだ。

 

 周囲を見回す。廃墟の一角を根城にしているのか、今回だけここに準備したのかはわからなかった。生活感は感じない。

 ここらはウエノ盗賊城趾が近い。ウエノは、ゲーム時代〈大地人〉の盗賊モンスターが出現した場所だ。あの盗賊達は無限にリポップするモンスターになったのだろうか。それともリアルな死を迎える一般の〈大地人〉と同じになったのだろうか。〈大災害〉でどうなったのか微妙な問題だと思う。ちょっと殺して調べるのも心理的な抵抗を感じるのが困ったところだ。いや、もうとっくに征伐されているのかもしれない。


ケイトリン:

「どうした? アタシに用があるんだろう……?」


 仄かに香水の香り。濃厚な女の熱気。女性の性を利用する気、満々だ。苦手すぎる。思わず顔をそらしかけ、その時に僕は見てしまった。そして気がついてしまった。


シュウト:

( Y 字 だ し)


 先日のジンの大人授業の通りだとすると、寄せて・あげていることになる。たぶん、まりよりもサイズ的に小さいのではなかろうか。りえと同じぐらいのサイズかもしれない。それなのに、見た目はかなり大きい。やはり盛り上げて、作って見せているのだ。

 これで困ったのは、ツッコミを我慢しなければならなかったことだ。指摘したい。かなり指摘したい。寄せてあげてる癖に!とツッコミを入れたいのだが、我慢しなければならなかった。黙っているのはけっこうな苦痛だったりした。


 もう11月初旬の真夜中だ。少し寒いだろうに、谷間を見せつけるファッションで頑張っている。そう思うと相手のことが少し可愛らしく思えてきた。ジンの授業は下らなくても侮れない。


シュウト:

「レイドをやってるんで、腕の立つメンバーが欲しいんだ。ジンさんに一応、誘って来いって言われたから」

ケイトリン:

「あたしを……?」


 驚いたような姿に『素の表情』を見た気がした。それよりも、素っ気ない言い方になってしまって、予定していた流れと違ってしまったのが問題だ。 ……いや、問題なのか?


シュウト:

(参ってるな、相当……)


 〈シルバーソード〉を抜けて、ここでこうしているのが強がりに見えてしまい、少しばかり同情してしまっていた。どんなに強そうに見えても女性なのだと意識してしまう。というか、200%はた迷惑なケイトリンじゃないと、どうも調子が狂ってしかたない。


ケイトリン:

「ジンって、あの男だろ?」

シュウト:

「あれ、ジンさんに会ってるの?」

ケイトリン:

「『あの人』がさらわれた夜に。隠れて待ち伏せして〈黒曜鳥〉を襲ったけど、あたしじゃ届かなかった。その時、死神みたいな剣士が『あの人』をあっという間に奪い返していった。……アレが、銀剣を抜けた理由なんだろ?」

シュウト:

「…………(こくり)」


 嘘やごまかしをする理由もない。


ケイトリン:

「レイドの件は、考えておく」

シュウト:

「わかった。今月中に終わらせる予定だから」


 これでたぶん、話は終わったのだと思う。


ケイトリン:

「なぁ、シュウト」

シュウト:

「なに?」

ケイトリン:

「場慣れしたな。……童貞、捨てたのか?」

シュウト:

「捨ててない」


 なんて質問だ。やっぱりケイトリンはケイトリンだった。


ケイトリン:

「そうじゃないな。…………『あの人』はなんて言ってる?」


 どうしようもないことに、照れ隠しで前振りだったらしい。照れ隠しで余計なことを訊かないで欲しいものだ。


シュウト:

「特に、何も」

ケイトリン:

「そうか」


 その場を後にした。……完敗だった。

 弱々しいケイトリンだなんて、反則だろう。昔の仲間に言ったって、誰も信じないぞ。いつも威張ってて、上から目線で、だるそうで、女の子をはべらせてて。


シュウト:

「あーあ、参ったな」


 してやられた。今回も、いつも、ケイトリンが勝つのだ。仲間にしたくなかった。なのに、仲間にしたいと思わされた。絶対、後で後悔するって分かってるのに。なのに僕は、また負けた。







 出かけたシュウトの代わりを務めるべく、半歩だけ前に。


ニキータ:

「どういう作戦で行きますか?」

葵:

「ノンベエはノンベエに探させよう」

ジン:

「それがいい」


 忙しいだろうエルムに念話し、飲み友達にニックを見つけてもらうように手配した。待つこと30分。あっさりと網に掛かる。


ジン:

「よし、行くぞ」

葵:

「ん、任した」


 河岸を変える前に、目的の酒場に急行することに。早足で移動しながら質問しておくのを忘れない。


ニキータ:

「酒場ですけど、大丈夫ですか?」

ジン:

「空気だけで酔ったりはしないが、機嫌が悪くなったら逃げろ」

ニキータ:

「了解です」


 遠慮なく逃げさせてもらうつもりだ。

 店内に入ったところで、目立ちすぎるユフィリアはレイシンに預け、ジンと2人で目標と接触。私もフードはかぶったままだ。


ジン:

「贋作師ニックだな?」

ニック:

「……そうだけど、貴方は?」


 第一印象はセクシーな伊達男。すばらしくオシャレ。洗練された印象で華やかだった。シュウトやタクト、レイシンとも違った形でのイケメンだった。女の子の腰に自然な感じで手を回している。


ジン:

「絵を描けるヤツを探している」

ニック:

「そう? でも、絵を描けるヤツなんて幾らでもいる」

ジン:

「そうかもな。画家ギルドの連中が推薦した」

ニック:

「僕を御指名? ……それはずいぶん買われたものだ」


 ジンとの交渉を楽しんでいる。軽薄なチャラ男だろう。けれど、底知れない部分に魅力が潜んでいる。いわゆる危険なタイプ。

 本格的な交渉になると踏んだのか、はべらせていた女の子と別れた。


ニック:

「席へどうぞ。飲みながら話をしましょう」

ジン:

「冷たいミルクをジョッキで」

ニック:

「そちらのお嬢さんも席へどうぞ? それと飲み物も」

ジン:

「いいえ、ここで結構よ。……私も同じものを」

ウェイトレス:

「ミルクをジョッキでふたつですか?」


 ニックに確認しつつ、ウェイトレスはオーダーを伝えに戻った。

 後ろから1名、素早く接近してくる。


エルム:

「ええと、これは間に合ったんでしょうか? 交渉は破談になる前? それとも後?」

ジン:

「前だ」


 どちらにしても破談になると言いたいらしい。エルムの登場にホッとしていた。


ニック:

「エルム。まさかあなたの知り合い?」

エルム:

「そうなんですよ。重要なクライアントというヤツでしてね」


 運ばれてきたジョッキミルクを見て、エルムが喝采をあげた。


エルム:

「これはこれは! 私もミルクを頼まなきゃいけない流れのようですね。おねーさん! 私にもミルクをひとつ!」


 「夢か? エルムの野郎、酒場(ここ)でミルクを頼んだぞ!」「明日は槍が降るな!」「こりゃ酒が美味い!乾杯しよう!」……盛り上がるのなんの。立ち上がってミルクで乾杯するエルム。店中が唱和し、容器を掲げた。みんな大笑いだ。

 私も受け取ったままにしていたミルクに軽く口を付ける。おいしい。


ニック:

「エルム。あなたはやっぱり最高だ! で、どうして欲しいって?」

エルム:

「アキバ通信という雑誌の表紙に、絵を描ける人材を探している、のですよね?」

ジン:

「そうだ。腕を見たい」

ニック:

「なんで僕を? 画家ギルドにも上手い連中はいただろ」

ジン:

「悪くはなかったが、良くもなかった」

エルム:

「頼むよ、ニック。この人達とだったら、悪い結果にはならないから」

ニック:

「……ふうん。随分と買ってるんだね?」

エルム:

「そうさ。そうなんだよ」


 ジンのこめかみ付近から青筋が消えていく気がした。とぼけた態度のニック相手に爆発しないで済んだらしい。エルムが来てくれて助かった。 ……この店的な意味でも。


ニック:

「つまり、女の子の絵を描いて欲しいって訳だ?」

エルム:

「そうです」

ニック:

「そちらのお嬢さんの絵? フードを下ろして貰えないかな? ここは店内なんだけど」

ニキータ:

「いいえ、結構よ」

エルム:

「クックック。これは、フラれましたね」

ニック:

「まぁ、いいさ。正直なところを言うと、美人画には少々飽きててね。題材が良ければ考えなくもないんだけど」

ジン:

「題材なら自信がある」

ニック:

「じゃあ、レイネシア姫を連れて来てよ?」

エルム:

「それは……」

ニック:

「ダメかな?」

ジン:

「ツテはないな」

ニック:

「じゃあ、『裏アキバの天使』はどう?」

ジン:

「裏アキバ?」

ニキータ:

「天使?」


 誰のことを言っているのかすら分からなかった。


エルム:

「スラングですよ。〈円卓会議〉参加ギルドの者達を意味するのが『表アキバ』です。アキバに住まう〈冒険者〉の大半はこちらに含まれていることになります」

ジン:

「つまり、〈円卓〉に不参加のギルド、残りの半分弱が『裏アキバ』ってことだな」

ニキータ:

「その、天使というは?」

ニック:

「聞いたことがないかな。『半妖精』の異名で語られる女の子のことなんだけど。あの人こそ、天使だ」

ジン:

「ブッ!」


 天使には心当たりがないけれど、半妖精になら心当たりがあった。入口の方に向かって合図を送る。レイシンと一緒にユフィリアがやってくる。さっとジンの隣に座ると、ミルクを奪ってくぴくぴと飲んだ。


ジン:

「おい、俺のだぞ?」

ユフィリア:

「うん。これで仲間って感じだよね」

エルム:

「いらしてたんですね?」

ユフィリア:

「こんばんは、エルムさん。……それとニックさん? 初めまして」

ニック:

「……まさか。……本当に?」

エルム:

「ええ。本当です」

ジン:

「描いて欲しいのは、天使だか妖精だかの絵なんでね」


 そしてフードをおろしたユフィリアをみて、ニックの瞳が驚愕で見開かれた。私はそれを愉快な気持ちで見ていた。







 翌朝。もうこれ以上は柔らかくならないんじゃないか?と思うまで、じっくりとゆるに取り組み、その後に再び画家ギルドへ向かった。贋作師ニックとはアトリエで描く約束になったと聞いている。

 長髪をうしろで纏めたニックがユフィリアを描いていく。下書きのようだが、素晴らしく速い。10分ほどで描き上がり、絵を床に投げ捨てると一心不乱に2枚目、3枚目と取り組んでいた。

 待つしかできないので待った。1時間ほど経過して、ニックの手が止まった。


ジン:

「もういいのか?」

ニック:

「ああ」

ジン:

「なるほどな……」

ニック:

「正直な感想を聞かせてよ」

ジン:

「……これは、ゴミだな」

ニック:

「だろうね」


 寂しげな笑いでジンのコメントを肯定した。

 一気に描き上げた5枚もの絵をみる。画風を変えつつ、1時間で5枚だ。ひとつひとつの完成度が高い。デッサンの力などが秀でているのだろう。


シュウト:

「かなり上手なんじゃ?」

ユフィリア:

「私にもみせて! すごーい!」


ニック:

「ありがとう。でも、それじゃダメなんだよ」

葵:

「どういうこった、ジンぷー?」

ジン:

「原因はユフィなんだ。画家ギルド(ここ)の連中と同じ失敗をしているっぽいぞ。ニック(こいつ)の方がハッキリ描けているから分かりやすいな。『春の女神』と『氷の女王』を同時に1枚に描こうとすると、中途半端な感じになるらしい」

葵:

「ああ。情報量が大きすぎたんだ?」

ジン:

「特殊で矛盾する性質同士だからな。綺麗、且つ、可愛く、描こうとして、どっちつかずの絵になって平凡になるような感じだな。……ホレ、これなんか半々に描こうとして失敗してる」

ニック:

「春の女神 、氷の女王……」


ユフィリア:

「ニックさん、なんだか、ごめんなさい」


 憔悴したような顔をしていたニックだったが、ユフィリアが謝っていると、なぜか驚いたような顔をしていた。ぽかんとしていた顔が、目覚めていくかのようで、まるで天啓を授かったようにみえる。


ニック:

「……待ってくれ。あと30分だけくれないか?」

ジン:

「まだ何かあるのか」

ニック:

「雑誌の表紙っていってただろう?」

葵:

「そうだけど……?」


 今度はユフィリアに座る位置、顔の角度、目線まで指定して取りかかった。ジンがニックの後ろに回って描く様子を観察する。


ニック:

「そのまま動かないで。直ぐに済ませるから」

ユフィリア:

「わかりました」

ジン:

「ふぅん。ユフィ、『氷の女王』だ」

ユフィリア:

「えっ? うん」


 室内の温度が下がっていく。刃物に現れる刃文のような、冷たく淡い輝き。静かな表情をしているユフィリアは本当にとても美しくて、幻想的で、全てを拒絶した最果ての景色を思わせた。


ニック:

「よし! もう一枚。次は、目線だけこっちに」

ジン:

「今度は『春の女神』だ」

ユフィリア:

「こんな感じ?」


 室内が柔らかい暖かさに包まれていく。顔付きは同じはずなのに、薄く笑って感じる。無尽蔵の愛を惜しみなく与える、慈母の女神のようだった。


ニック:

「美しい。なんて素晴らしい……」


 そう言いながらもスケッチの手は動き続ける。途中、右手でピースサインを頼んでいたが、それも含めて、あっという間に完成してしまった。


ニック:

「これでいい。……お疲れ様、ユフィリアさん。ありがとう」

葵:

「満足できた?」

ニック:

「正直に言えば、自信あるよ」


 出来映えを見せてもらうことに。


シュウト:

「えっと、……どういうことなんですか?」

ニック:

「そのままじゃなくて、2枚の絵を重ねて、めくってみてくれ」

ユフィリア:

「めくってみて、シュウト?」


 冷たい印象のユフィリアの絵をめくると、ほぼ同じ構図で目線がこっちを向いている笑顔のユフィリア、しかもピースしている絵が出てきた。確かに愛嬌のあるような可愛い感じだ。


シュウト:

「これ、凄い。……凄いですよ!」


 1枚では感じられない不可思議な威力があった。1枚の絵ではあり得ない効果が生まれている。元に戻り、めくる。また戻して、めくる。ずっと見ていたいような魔力があった。けれど、どちらか1枚だとこの魔力のような魅力は生まれないのだ。それぞれはただ綺麗なだけの絵と、可愛らしい笑顔の絵でしかない。しかし、2枚が合わさるとドキッとする効果が生まれていた。落ち着くような、高揚するような。体に直接、光が入ってくるような感じとでもいえばいいのか。


葵:

「ウーム。ユフィちゃんの魅力にかなり迫ってんね」

ユフィリア:

「私ってこうなの?」

シュウト:

「うん。かなり近い感覚だと思う」


ジン:

「見事な仕事だ。しかし、こいつは……」

ニック:

「まだ、何か問題があるか?」

ジン:

「いやいや。買い取りを頼んだが、デキが良いから悩むなぁ。歩合にすべきかもしれない気がしてきた」

葵:

「それかぁ。でもアキバ通信の販売部数ってそんな多くないんだよね。1000部刷って、5%支払い、単価を値上げして400ぐらいにしても」

石丸:

「金貨2万枚っスね」

シュウト:

「というか、表紙にしちゃうんですよね?」

ジン:

「それが?」

シュウト:

「文字とかが入っちゃうの、勿体ないかなって」

ジン:

「……そうか。2枚組でブロマイドみたいにして売ればいいのか」

葵:

「ああ、そういう考え方もあるねぇ」


 色を付けて完成する3~4日後に「また話をしよう」という約束になった。贋作師ニックは、良い絵を生み出せたことで高い満足感を得られたと言っていた。こうやってとんとん拍子で物事が転がっていくのはありがたい。修行とレイドに集中したかったので具合が良い。


ユフィリア:

「じゃあ、帰ろっ!」

ジン:

「だな」


 ギルドホームに戻ろうと歩き始める。


シュウト:

「なんだかいろいろ、纏めて解決しましたね」

ジン:

「いや、まだ血抜きの引率が決まって…………ん?」


刃柴:

「……え?」

シュウト:

「あ、あなたは」


 自称・刃物のプロ、刃柴という料理人のプレイヤーだった。以前に喧嘩というか、勝負になったことがあり、20キロのブロック肉を巻き上げたのだ(ジンさんが)


ジン:

「これで決まったな、引率も」にやり

刃柴:

「な、なんだなんだ?」

 

 がしっと刃柴の肩を掴むジンだった。もう逃げられないだろう。

 こうして、まとめて処理してしまったのだった。



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