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098  素質の発見

 

ニキータ:

「これ……」


 小さな声でのつぶやきに反応して、ジンが振り返る。


ジン:

(しーっ……)


 口の前で指を一本たてて、静かにするように合図を送ってくる。少し慌てて口を閉じ、呼吸も止めてしまう。

 

 ……今や、そこには何もなくなって(、、、、、、、)いた。





ジン:

「うん、呼吸法をやるにはベストなコンディションかもな」


 室内での練習を終え、シブヤの街の外にある、いつもの隠れ練習スポットへとやって来ていた。昨日は夜に軽く小雨が降ったこともあり、朝もまだ軽く曇っていた。霧は出ていないものの、湿度の高さが少しばかり柔らかい空気感を作っている。

 軽く伸びをしているニキータの動きを目が追いかけてしまった。胸元に視線が行き、別に見ようと思ったわけではない、と誰にともなく言い訳を心の中でつぶやく。小声だと本人に聞こえてしまうかもしれない。


シュウト:

「……今日は、呼吸法ですか?」

ジン:

「うんにゃ、『今日から』呼吸法だな」

シュウト:

「どう違うんです?」

ジン:

「まぁ、待て。……呼吸法は、基本的に『理論より実践』の典型的な種目だな。先に説明しておくが、呼吸法は、やれば誰でも身につけることができる。しかし、現実にはほぼ全ての人間が習得できないで終わる。それは何故か?」

シュウト:

「えっと、習慣にできないから、とか?」

ニキータ:

「身にはつけられるけど、習得はできない、でどうですか?」

ユフィリア:

「つまんないの?」

ジン:

「大体、正解。呼吸運動は、心臓の拍動に近い『ずっとやり続ける』系統の運動だからな。習慣化するのは極めて困難。習得したつもりでも、しばらくやらなかったら元に戻る危険性がある上に、練習も大して面白くない。個人の練習としてみても、具体的にちょうどいい区切りがないから、このぐらいでいいかどうか?みたいなものも決めにくい。キリがないんだ」

シュウト:

「なにか、最悪っぽい話に聞こえるんですが?」

ジン:

「一方で、ずっと続ける運動でもあるので、その鍛錬効果は極めて高い」

ユフィリア:

「そっか!」

ジン:

「またまた極限的なレベルの話を先にしてしまうが、呼吸法ができるってことは、イコールで、中心軸や丹田があるってことを意味する。逆にいえば、中心軸や丹田がないと、真の呼吸法はできないんだ。前にも言ったが、中心軸や丹田ってのは、才能そのものだったりする」

シュウト:

「……それって、どうしたらいいんですか? 才能がなかったら出来ないってことじゃ?」

ジン:

「まぁ、アレだね。本気で強くなりたい人は、才能を何か一つ選べるとしたら、真っ先に呼吸法の才能をください、と神様にお願いするべきだね。……生まれてくる前とかに」

シュウト:

「完全に手遅れじゃないですか!」

ジン:

「なんつって、ウソウソ。ここで行き止まりを作っているのは、才能は後天的に高めることなんて出来ないっていう下卑た発想だろ。そこが間違ってんだよ。呼吸法の鍛錬効果は極めて高いから、中心軸や丹田を形成するのは十分に可能だ。そんで、呼吸法が出来るようになったら、みんなして『ああ、俺には才能があったんだ!』って勘違いするって寸法さ」

シュウト:

「なんか、えげつないですね」

ジン:

「世の中、そんなものです」


 ベース1から、ベース3までを習う。

 ベース1は、吸い込んだ息を3割ぐらいに減らしてから、胸と腹とに、何度も上下動させるもの。

 ベース2は、胸に吸い入れた呼気を、腹部に下ろすもの。

 ベース3は、いきなり腹部に吸い入れるものだった。


ジン:

「呼吸法というと、どうしても丹田を鍛えるものってイメージがついて回るものなんだが、基本的に中心軸の方が重要になってくる。息を吸うときは鼻からだと、中心軸を形成し易くなる、とかだな。吐くときは、大半を口から出す。自然な呼吸だと、鼻からもちょっとだけ息が出て行くから、口で!みたいに強く意識する必要はない。楽にやることを心がける」


 ベース1をもう一度おさらい。


ジン:

「息を吸って~。100% そこから吐いて~、3割で止める。残気3。はい、胸に引き上げて、上。腹に下ろして、下。うえ~、した~、うえ~、した~、もういっちょ上~、ハイ、下~。吐ききって、整息ぅ~。

 ……呼吸を整えながら聞いとけ。コイツは内蔵のマッサージ効果もあるから、便秘だのにも効き目がある。上下動させることで、中心軸を刺激する効果も見込める。非常に重要なメソッドだ。特に、上下させる時のポイントは、胸と背をセット、腹と腰とをセットにして、身体前面だけに空気を入れないようにすること。前面だけでも、背面だけでもダメだ。均等を心がけるように」


 次はベース2のおさらい。


ジン:

「胸・脇・背中に息を吸い入れる。残気10。そのまま腹・腰に下ろす。しっかり下ろしたら、ゼロになるまで吐ききる。はいて~~~。これをあと3回。最初はおなかに手を当てながらやればいい」


 最後にベース3のおさらい。


ジン:

「何回か自然に呼吸しておいて、いきなり腹・腰に吸い入れる。残気10。いったん止めて……、よし。全部吐ききって~、はいて~~~。これもあと3回」



 9月の上旬とはいえ、雨上がりで曇り空の午前中は暑くはなく、どちらかといえば涼しい日、にも関わらず、額にはうっすらと汗が滲んでいた。


ジン:

「……という訳だ。呼吸の制御を中心軸や丹田で出来るようになるまで、ひたすら繰り返し練習するべし、だ。これ以外にも、上・中・下丹田を個別に形成する呼吸法があったり、呼吸法の目玉ともいうべき、『高密度呼吸法』だとか、気のレベルを根本から改善・向上させる『細胞呼吸法』なんてのもある」

ユフィリア:

「その細胞呼吸法って、どんなの?」

ジン:

「むっ。よくぞ訊いてくれました! 細胞呼吸法ってのはー、全身の細胞との関係を取り持つための呼吸法デース。そもそもな話として、細胞には意識があるんだね、これがね」

シュウト:

「細胞に、意識ですか?」

ジン:

「もっと根っこにはシークレットな話もあるんだけど、まぁ、万物には意識が宿っていると思っていい。人間の考える通常の意識とはちょっと違くって、原子運動みたいな感じの意識というかね。これが生命の最小単位である細胞レベルになってくると、かなりちゃんと意識っぽいものになるんだよ。当然、それでも人間の意識と比べると、まったくの別物だな」

ニキータ:

「ウィルスやアメーバだとか、もっと昆虫みたいな感じですか?」

ジン:

「あの辺りは、プログラムに近いものがあるけど、……まぁ、イメージを固めるのはやめとく方がいいな。想像ではなく、あるがままを受け入れるのだ。問題は、今の俺たちは〈冒険者〉の体を使ってるって部分にある」

シュウト:

「それって、いろいろと影響が出てきそうな話、ですよね?」

ジン:

「もともと、細胞意識の集合が、俺たちの意識を形作ってるわけじゃない、って説があったんだよ。細胞意識を代表していないわけだから、もっと寄生虫的なものではないか?ってな。……実際の寄生虫の方では、宿主の意識を乗っ取る感じの虫もいるって話があるんだがな。

 こういった細胞意識周辺は生命の神秘ってヤツで、厳密な科学的答えは出ていないし、人間が意識を理解するのは、当分の間は厳しいと思うね」

ユフィリア:

「それじゃあ、私たちって〈冒険者〉の体を乗っ取っているの?」

ジン:

「そうなるな。だけどそれは、現実世界で人間をやっていた時も同じだな」

ユフィリア:

「それって、どうすればいいの? 勝手に動かしちゃっていいの?」

ジン:

「いや、〈冒険者〉の体に『俺たち』のような意識はないよ。細胞意識みたいなものはあるだろうけど、『俺たち』の意識がなければ、無機物の、たとえば石とかと、あんまり変わらないだろう。もうちょっと内容があったとしても、木に近いぐらいじゃないかな」

ユフィリア:

「そうなんだ?」ほっ

ジン:

「……まぁ、細胞があるかどうかは分からんけど。もっとナノマシンとかの集合体かもしれないし。物質の最小単位が、原子やら素粒子やらかどうかも不明だ。情報元子ルーンとかって可能性も考えられる」うんうん

石丸:

「ヴァルヴレイヴっスね?」


 かなり踏み込んだ内容になっていると思われた。たとえば、自分の『内なるケモノ』は、ライドと関係があると言っていた。そうなると、ライド法は『〈冒険者〉の意識』を利用する方法論だと予想できる。

 問題は、それならそれで、『わざわざ秘密にしておく必要』があるのは何故かなの?が気になってくる。更にその先にあるはずの、オーバーライドとは一体どんなものなのか。こちらは全く想像もつかない。


シュウト:

(もしかしたら、かなりヤバい話……だったりして(苦笑))


ジン:

「お試しで、ちょっとかじってみようか。

 まず、ゆったりと全身で呼吸を繰り返します。全身が光っているイメージで、気持ちよく、満遍なく,呼吸していきます。だんだんと、呼吸に合わせて光が僅かに強くなったり、逆に弱くなったりを感じるようにしていくんだ。細胞の呼吸を感じるように~、すって~~~」

ユフィリア:

「すぅ~~~」

ジン:

「はいて~~~」

シュウト:

「ふぅ~~~」

ジン:

「はい、すって~~~」

ニキータ:

「すぅ~~~」

ジン:

「気持ちよく、はいて~~~」

全員:

「ふぅ~~~~~」


ジン:

「とまぁ、こんな感じで気持ちよ~く呼吸しながら、全身の光をだんだんと細かくしていくんだ。ま、強引に細かくしようとすると上手くいかないけど」

シュウト:

「細胞の光って、気のことですか?」

ジン:

「はて、さて、ほほー」

石丸:

「……もしかすると、バイオフォトンっスか?」

ジン:

「ふふふふ、おもしれーなぁ。しょうがないか、細胞の発光現象であるバイオフォトンの可能性は高いし、それが集まれば気の働きに近い可能性もあるだろう。この世界でいえば、魔法力との関係なんかも問題になるかもな。しかし、それは何の役に立つか?といえば、何の役にも立たない。呼吸法で重要なのは『気持ちいいかどうか?』の方だ。まず実践できるようになれ。考えるのは、その後だ」

石丸:

「了解っス」

シュウト:

「呼吸法は、理論を理解してもダメなんですか?」

ジン:

「いいや、ほとんど全てのものは、理論を理解してもダメさ。……『究極の真実は、全ての想像を超える。』 浅はかな想像など、捨ててしまえ。そんなものは、予想を裏切られてビックリするためだけにある。

 細胞はな、みんな生きてるんだよ。きらきらしてんの。それぞれ役割があって、個性もあるんだよ。フォトンがどうとかつまんねーことは、どうだっていい。強くなれるかどうか?みたいなことも、このレベルだとほとんどオマケだね。まずは共存共栄。お互いの利益になるところから始めなきゃならんのだよ」

ユフィリア:

「うん! がんばるっ!」

シュウト:

「……この場合、あんまりがんばっちゃダメなんじゃないの?」

ユフィリア:

「そうなの?」

ジン:

「〈冒険者〉の体だからな。初心者レベルだと『使いこなし』が重要な問題だけど、もうそのレベルは卒業だ。次の段階は『仲良くすること』だ。このからだは『預かりもの』なんだし、大切にしなきゃな。 そりゃあ、メッチャ強い敵と戦う日もあるわけで、宝石みたいに大事にしまっておくわけにはいかないし、そんなことは出来やしない。けどな、仲良くなってもいないのに、無理に引きずり回しといて、俺TUEEEE!なんてやろうったって、ダメに決まってんだよ」

ニキータ:

「なら、細胞さんと仲良くなるための呼吸法ね」

ユフィリア:

「そっか。うんっ、すごいねっ!」

ジン:

「わかったかな、ヘタレくん。真のイケメンってな、こういうものだ」

石丸:

「努力にも、いろいろなやり方がある訳っスね」

シュウト:

「そっか……」


 レイドも同じだと思った。フルレイドなら24人で挑むものだが、何も厳しくすれば巧くいく、というものではない。23人の仲間との関係が円滑になることで、はじめて連携は上手くいくようになる。

 そこにもう1人、『自分』という仲間を加えなければならなかったのだ。いや、真っ先に、自分自身という最高のパートナーを『仲間』にしなければならないのだ。


ジン:

「ま、生体フォトンの塊みたいなのは、しょっちゅう見てる気がしないでもないがね」

シュウト:

「そう言われてみると……」ちらっ


 きらきらしている人から目を逸らし、そっとため息をつく。つまりは、細胞レベルから美人だってことなのだろう。容赦なく、圧倒的で、無慈悲なまでに徹底的な美人としての才能。それはもはや、暴力的に感じるほどだ。

 当のご本人様といえば、目をつぶり、息を吸ったり吐いたりしていた。まだもっと細胞と仲良くなるつもりらしい。美しさで勝負することにならなくて本当に良かったと思う。しかし、才能や素質の部分で大きな差を、またもや見せつけられてしまった。いい加減、げんなりもしてくる。


シュウト:

「えっと、……そうだ、目玉商品とかいってませんでしたっけ? 高密度……?」

ジン:

「高密度目玉焼き機のご紹介ですね? お安くしておきますよ、お客さーん。……なにが目玉商品じゃ、ボケー。ニワトリさんに土下座で謝罪してこいや!」

シュウト:

「目玉焼きって言ったのはジンさんじゃないですか。どうして僕がニワトリに謝罪しなきゃ……」

アクア:

「ハイハイ、無駄なマンザーイは要らないから、続きを始めて頂戴」

ジン:

「ぬぬっ、ナニヤツ!」

シュウト:

「アクアさん、ですよね?」

アクア:

「……そうよ」

シュウト:

「…………あれっ?」


 周囲を見渡しても、影も形もない。声だけでの参加だった。


アクア:

「今、そっちに歩いていく途中だから。何かしゃべってくれないと、状況が分からないんだけど?」

ジン:

「つーか、その距離から参加してんのかよ。いつから聞いてた?」


 僅かにジンの声が大きくなる。ミニマップで位置を掴んだのだろう。声量は、距離が離れていることで自然と大きくなってしまったらしい。


アクア:

「……バイオフォトンがどうのこうの?」

ジン:

「もはや人間じゃねーな」

アクア:

「……貴方に言われたくないわね」


 一拍遅れて声が届くのは、同じく距離による影響だろう。ぶすっとしたニュアンスも生々しく、目を閉じれば側にいるのと何も変わらない。


ジン:

「へいへい。高密度呼吸法はー、濃厚な酸素を呼吸するとできます。以上、おわり」

シュウト:

「どういう性質のものなんですか?」

アクア:

「……ふざけないで」

ジン:

「へいへい。いわゆるロングブレス、長息呼吸法ってヤツは、1呼吸で5分とか、10分とか、変人にもなると1時間とか?保たせられるって話がある。しかし、安静状態じゃなきゃダメだし、天国からお迎えがくる限界ギリギリ状態だから、死後の世界とかみえちゃって使い物にならない訳ですよ。光がバーっとかなるらしい。俺にゃできないけども」

ユフィリア:

「すごーい」

ジン:

「凄くない。憧れないで、お願いだから。長息呼吸法だと、呼吸能力の改善よりも、代謝の低下で仮死状態に近づく技法が秘法で悲報な感じなんだよ。だから、ショートなブレスでブレスブレスした方が……」

アクア:

「……ふざけないで」

ジン:

「へいへい。呼吸効率を改善すると、スーハースーハーというか、ゼーハーゼーハーしなくても、普通のスピードで呼吸したまま全力で運動できちゃいまーす!な呼吸法デース」

ニキータ:

「ゼーハーゼーハーしたら、ダメなんですか?」

ジン:

「したければドウゾ。ただ、ゼーハーしたところで、ほとんど気休め程度にしかならない。吸い込む息と、吐き出した息との酸素量・二酸化炭素量を測定しても、大きな違いはないんだ。実際、一度吐いた息をもう一度吸っても、十分に呼吸は可能だ」

石丸:

「風船などを使えば、簡単に実験できるっスね」


 口を閉じるなどして息を止めていたら、直ぐに苦しくなるのに?とは思ったが、確かにゼーハーと速い回転で呼吸していたら、一呼吸あたりの酸素摂取量は低そうな気もする。


ジン:

「ってことは、ゼーハーして肺から空気が少なくなってる瞬間は、むしろロスし易いことが言える。呼吸数が増えれば、このロスは増えるわけだ。もう一つ、呼吸の目的は、肺の中で空気を攪拌することだと考えられる」

シュウト:

「血液に酸素を取り込むためには、空気が動いていた方が都合がいいわけですね……」

ジン:

「そういうこと。ここでの真の問題は、90レベルの〈冒険者〉が、簡単にゼーハーしてしまう点だ。いくら走っても呼吸なんて乱れませーん!ぐらいでもいいハズなのに、おかしいだろ? 幾らなんでも」

シュウト:

「ゼーハーしてからが、長いんですよね」

ニキータ:

「運動時の酸素比率みたいなものが、レベルと一緒に上がっていくからでは?」

ジン:

「つまりは、人間より遙かに優秀な肉体性能をしているのに、酸素交換効率は人間基準のままで設定されていて、すぐゼーハーすることになるわけか?」

ニキータ:

「……たぶん」


 おそるおそるといった感じで、自説の主張を続けるニキータだった。


ジン:

「通常時、人間は肺の一部分しか使っていない。約1/3と言われているな。運動時も、実はこの比率はあまり変化しないんだ。小さく・速く呼吸を繰り返すことで、必要なガス交換を行っている。何故かというと、大きく呼吸するのはロスが大きいからだ。呼吸自体に疲れたり、運動の邪魔になったりする」

ユフィリア:

「もったいないね」

シュウト:

「だったら、肺を全体的に使えるようになれば、呼吸能力は劇的に改善する訳ですね?」

ジン:

「問題はそこだ。それは、どうやってやればいい?」

シュウト:

「ええっと、……深呼吸するとか?」

ジン:

「戦闘中に?」

シュウト:

「ダメでしょうか?」

石丸:

「なるほど……。理論と実践の違いっスね」

ジン:

「そういうこと。理屈を考えることはできる。でも、実践の方法は分からない。それじゃダメなんだ。肉体を適切に制御することは、頭で考えてどうにかできるものじゃない。そのために、中心軸を利用する」

アクア:

「……意識はインターフェイス、ね」

ジン:

「その通り」

シュウト:

「お疲れさまです」

ユフィリア:

「アクアさん!」


 現れたアクアに飛びついて、すりすりしているユフィリアだった。アクアは平然と受け止めてすりすりされるのに任せていた。何か、犬と飼い主のような関係に見えた。


ジン:

「中心軸によって呼吸を制御し、呼吸筋を操作。肺の機能を効果的に引き出すこともする。1/3しか使えてなかった肺の全体が、まさに息を吹き返す。両方の肺に空気をたっぷりとまんべんなく送り込み、横隔膜は下がって、肺のサイズ自体が最大に至る。肺胞もフルにその機能を発揮し始める。その能力は、3倍では利かないだろう。4倍や5倍、それ以上の能力が駆使され始めるのだ。

 ……その時、肉体は、意識の力によって『変質』する」


 中心軸を意識しつつ、呼吸を繰り返す。ジンの言葉やイメージを追いかけるように、意識を体の内部に集中させていく。


ジン:

「中心軸全体から呼吸するんだ。上からも、下からも、口は問題ではない。細い中心線の、円柱のあらゆる場所から、直接に吸い込む。酸素や気を吸い込み、同じく中心軸のあらゆる場所から息を吐く」


シュウト:

(ううっ)


 多すぎる空気に溺れそうな気がして、心の中でうめき声を出してしまう。空気が濃くてアップアップする。呼吸するのが逆に苦しく感じるほどだ。


ジン:

「無酸素による息苦しさとは真逆の、酸素が多すぎるような息苦しさを覚えることになる。まるで『高密度の空気』が肺に入りこんでいるかのように」

シュウト:

(それって……)


ジン:

「……とまぁ、そんな具合だな。平常時に使うと、過呼吸症候群になるんじゃないか?とか心配になるものだが、運動時にゆったり普通に呼吸しているだけで動き続けることができる。ただ心臓は血液をバンバン送り出すから大忙しだけどな。だから、呼吸はそれらの動きとはズレていて、ゆったりしているんだ」

アクア:

「オーバーライドの時に使ってるわね」

ジン:

「必須不可欠でもあるが、オーバーライドが使えりゃ、そのぐらい普通だろう」

シュウト:

(なんだか今、出来ていたような……?)


 相応の難易度のものらしいので、そんな簡単にできるとも思えなかったし、『どんな状態になるのか?』『どんな風に感じるか?』という話を聞いていなければ、今のが高密度呼吸法かどうか、判断できないに違いない。第一、『今の息苦しさを利用してやろう!』などとは、なかなか考え付きそうになかった。


ジン:

「んじゃ、細胞呼吸とか高密度呼吸法だとかが使えるように、地道に訓練を続けていくべ」

アクア:

「もっと面白いものってないわけ?」

ジン:

「面白いの? ……んー、面白いかどうかはわからんけど、ニュートラルライン呼吸法というのがあるかな」

レイシン:

「へーっ、どんなの?」

シュウト:

「あれっ、レイシンさんも初耳ですか?」

レイシン:

「みたいだねぇ」

ジン:

「俺の場合はミニマップの補助で利用しているんだけど、気配の察知能力を高める、といえばいいのかな?」

シュウト:

「ああ、……あんまり関係なさそうですね(苦笑)」

ジン:

「かもな。とりあえず難易度はメチャクチャだよ。俺も〈冒険者〉の体じゃなきゃとマトモに使えないぐらいだし。……えっと、日本語では、『気配』ってのはある意味『呼吸意識』のことを指してるんだ。物陰に隠れたりする時に、『息を潜める』っていうだろ?」

アクア:

「面白いわね」

ジン:

「ガイジンさんに言葉の解説をするのは無駄だからやめとくけど、物陰に隠れる場合、視覚的に隠れるだけじゃダメってことなんだ。息、呼吸を隠さなきゃいけないわけだな」

シュウト:

「なるほど」


 ステルス系の特技を使う機会が増えているので、話の内容はストライクだったりした。ヒントになる話がないとも限らない。


ジン:

「達人っていうか、どっちかというと忍者っぽいけど、元々は野生動物ライクな話なんだ。野生動物って、逃げる側も追いかける側も、相手の気配をいち早く察知しなきゃダメだろ? 逃げる方は逃げられなくなるし、追いかける方は食料が確保できなくなる。この手の部分から来ているもののようなんだ。

 亜呼吸空間というものがあると仮定して、そこでは、呼吸の大きさ、荒さが、より伝達しやすいらしいんだな」

レイシン:

「じゃあ、強い動物はみんな呼吸意識が小さいってこと?」

ジン:

「いや、それが集団や社会を形成して、ボス猿になるのがひとつのパターンなんだ。ライオンはメスに狩りをさせるようになるし、クジャクみたいに、生殖のために派手さでアピールする生存戦略もある。目立つ/目立たないという要素の優先度は、どうも低くなっていくらしいんだな」

シュウト:

「まるで、ソロとレイドの違いみたいですね……」

ジン:

「そいつは上手い喩えかもしれないな」

アクア:

「……で、ニュートラル・ラインというのは?」

ジン:

「へいへい。呼吸運動は、吸うと吐くの2要素で出来ている。全く反対方向の運動2種類と、その間に停止が僅かに入るのみだ。これをグラフか何かに書き起こすとする。すると、雑に呼吸するとガジャガジャのグラフになるのが分かるだろ?」

アクア:

「なるほど。滑らに呼吸すると、基準線に近づくのね。だから、ニュートラル・ライン、か」

ジン:

「そういうこった。なんでか分からないけど、目立たない子っていたりするだろ? たぶん、そういう子は生まれつき呼吸が穏やかで、なめらかなのかもしれないわけだ」

アクア:

「それ『黒子のバスケ』でしょ?」

ジン:

「フッ、下手なことを言うと怖いファンに刺されんぞ?」

ニキータ:

「ニュースでみたような記憶が……」

レイシン:

「はっはっは」

ジン:

「……よし、シュウト、やってみろや」

シュウト:

「えっ?」


 石丸の荷物から背もたれのないイスがニョキっと出てきて、地面にすとんと置かれた。自分はイスに座らされた、というよりも、イスの上に置かれた置物になった感じだった。


ジン:

「うっしゃ。目を閉じて自分の呼吸に集中しろ。まず自然に呼吸していけ。やることは単純。滑らかに呼吸するだけだ」

シュウト:

「はい」

ジン:

「ほれ、しばらくは返事もするな」

シュウト:

(こくり)


 ただ黙って、頷くだけにしておいた。





ジン:

「まずは慣らしで呼吸しておけ。酸素が足りなくならないようにため込むつもりでな」


 アクアが挑むような強い視線をシュウトに向けながら、口元だけで笑っている。


ジン:

「俺もコツとかが分かっているわけじゃないんだが、吸う、止める、吐くの3要素を少しずつ混ぜていけばいいらしい」


 アゴを軽く引くようにして、うなずくシュウト。


ジン:

「呼吸を止めないようにしながら、吸うから吐くへ、吐くから吸うへと滑らかに切り替えていくようにする。滑らかな曲線をイメージして」


ニキータ:

(難しい……)


 自分でも試してみるのだが、どうすればいいのか分からなかった。要素を混ぜるというのも、なんだかよく分からない。丁寧に呼吸しているつもりになると、息苦しくなってくる。


ジン:

「口で強く吸わないように~、ハラを膨らませたり、ヘコませたりを利用して~、呼吸を自然~な感じで~、空気にとけ込ませていくように~」


 語尾を伸ばしながらの話法は、どこか催眠術をイメージさせるものだった。


ジン:

「滑らかに呼吸していくと~、やがて俺たちの呼吸が感じられるようになる~。滑らかに呼吸することで~、お前の呼吸意識はだ~んだんと小さくなっていく~」


 少し、シュウトの姿がぼんやりと薄くなって見えた気がした。一瞬、溶けて消えたように見えた。

 

ニキータ:

「これ……」


 小さな声でのつぶやきに反応して、ジンが振り返る。


ジン:

(しーっ……)


 口の前で指を一本たてて、静かにするように合図を送ってくる。少し慌てて口を閉じ、呼吸も止めてしまう。


 揺らめくように薄くなったり、濃くなったりを繰り返し、唐突に見えなくなる。


 ……今や、そこには何もなくなって(、、、、、、、)いた。



ユフィリア:

「んー……?」


 思案顔のユフィリアが、あっさりと近づき、至近距離からじーっと見つめていた。あちこち角度を変えては、じーっと見ていたが、シュウトは完全に消えてしまっているらしい。

 おもむろに真面目な顔をして指を立てる。しゃきーんとかの音が聞こえた気がした。イタズラっ子モードだ。指をそろそろとシュウトに近付けていく。

 やりすぎではないかとジンの反応をうかがってみると、面白そうな顔をしていたのでオーケイらしい。


 ユフィリアは指先に触れる感触がないのか、あちこちをつついていたが、終いに『ていっ』という感じで腕を伸ばして突き刺した……はずが、腕はシュウトがいるはずの位置を、完全に突き抜けていた。


ユフィリア:

(あれっ?)

ニキータ:

(……透明化じゃないってこと?)


 そこに見えているのは、石丸の出したイスのみ。座標的にはその場所にいるはずで、シュウトは目を閉じて呼吸に集中しているはずだった。

 目の端に金属的な光を感じたと思ったら、ジンが音もなく武器を構えていた。


ニキータ:

(えっ?)


 剣先でつついたり、何度も体の上を往復させるが、まるで反応がない。

 一拍おいて、特技の光が剣に宿った。まさかの〈竜破斬〉かと思ったが、少し様子が違う。別の特技を使おうとしているようだ。そして、透明になったシュウトを、ためらいもなく叩き斬ったように見えた。

 ……しかし、命中の反応が何も起こらなかった。血も出なかったし、斬られたシュウトが声を出したり、痛そうにする反応もない。


 剣をしまうと、ユフィリアに向けて、なにやらジンは口パクで要求している。ユフィリアが取り出したのは、手鏡だった。角度を調整して手鏡をのぞきこみ、シュウトが見えないのを確認したのか、ジンが口を開いて言葉をかけていた。


ジン:

「よーし、集中したまま~、ゆーっくりと目を開けてみるんだ」


 シュウトの前には手鏡を掲げたジンが立っている。手鏡にはシュウトが映って『いない』はずだ。


ジン:

「この手鏡が見えるか? ……意味がわからんか。んじゃ、自分の手足を確認してみな?」

シュウト:

「あれっ!? 手が……? あれっ?」


 パッと姿が見えるようになった。どうやら呼吸が乱れたらしい。

 事情をひとり理解していないシュウトに、こちらもどう反応していいのか分からなかった。ジンが近づいていくと腕を振り上げる。



 ごちん。



シュウト:

「あいたっ…………えっ、なんです?」


 頭にゲンコツを落とされたシュウトが、よく分からないという様子で狼狽えていた。さもありなん。


アクア:

「フフフフ、アハハハハハ!!」

シュウト:

「えっ? なんなんですか、一体?」

ジン:

「……褒めてやろう。見事だった」


 大爆笑のアクア、不機嫌なジンを前に、どうすればいいか分からないままシュウトは呆然としていた。


ユフィリア:

「今ね、透明になってたんだよ! それに、さわっても、さわれなかったんだよ!」

シュウト:

「透明に? ……なんで?」

石丸:

「ニュートラル・ライン呼吸法で、透明になれるものっスか?」

ジン:

「いや、俺にはそういう効果は出なかった。……一部のステルス化はミニマップを無効化してくるから、呼吸意識を察知するのを利用して、シュウトの位置を特定するのに使っていたんだ。まさか体ごと消えるとは思わなかった」

石丸:

「ということは?」

ジン:

「シュウト個人の特殊能力、もしくは〈暗殺者〉だから付与された能力ってところか。たぶん、後者だろう」

シュウト:

「ちょっと待ってください。僕は、今、消えてたんですか?」

ユフィリア:

「うん、うん」

ジン:

「〈オーラセイバー〉で殴ってみたが、効果は無かった。つまり非実体化ですらないってことだ。ほぼ完全に居なくなっていた」

シュウト:

「そんな実験までしてたんですか……」

ジン:

「そんなことはどうでもいい」

シュウト:

「いや、良くないですよ! 当たってたら痛いじゃないですか!」

ジン:

「愚か者。どうでもいいんだよ」

シュウト:

「は、はぁ」

ジン:

「わからんか? お前は最低で卑劣な悪党だってことだ、もげろ」

シュウト:

「なんなんですか? さっきから殴られたり、罵られたり、ぜんぜん訳がわからないんですケド」

ジン:

「このドぐされヘタレド外道めが。……お前には、『ある』んだよ」

シュウト:

「なにが、でしょう?」

ジン:

「鍛錬を志す万人が得られないもの。……呼吸法に対する『特別な才能』がだ。 マジかよ、クソッタレ! 何が手遅れだ、間に合ってんじゃねーか!」

シュウト:

「ええと…………、はい」


 理解したのかしていないのか、シュウトの反応が止まる。きっと、この真実は、シュウト自身が想像していたものを超えていたのだろう。……だから、私はただ、今すべきことをしようと思った。


ニキータ:

「シュウト?」

シュウト:

「……うん」

ニキータ:

「おめでとう」

シュウト:

「ありが、とう」


ユフィリア:

「ズルいなー。シュウトばっかりズルい! けど、うん! 良かったねっ!」

レイシン:

「本当に凄いよ。……でも、だからだったんだね? 〈陰の技〉も、〈殺しの呼吸〉も、呼吸法の才能から生まれたものだったんじゃない?」

ジン:

「たぶん、そうだろうな」

石丸:

「……大丈夫っスか?」

シュウト:

「はい…………いえ、ちょっと、ダメかも」


 頬を伝う滴を手で拭うのだが、次々と落ちてくるために、隠しきることは出来ないようだった。小さく抑えられた嗚咽(おえつ)から意識を逸らした。

 一体、どれほどの喜びだったろう。ジンやアクアのような圧倒的な実力者を前にすれば、嫌でも自分の弱さを自覚せずにはいられない。シュウトもまた、自分の無力を痛いほどに味わっていたはずだ。

 一体、どれほどの安堵だったろう。これで高く飛び立つことができる。その後は、私が独りで取り残されることになると分かってはいたが、今は素直な気持ちでシュウトのことを祝福する気持ちがあった。自分のことのように嬉しかった。そんな自分が誇らしくもあった。



アクア:

「確かに素晴らしいわ。けど、一体どういうことになるのかしら?」

ジン:

「ふむ、ブーストでもないし、何かの特技を応用しているわけでもなさそうだな」

石丸:

「既存スキルではあり得ない挙動っスね」

ジン:

「察するに、システムを仲介させず〈冒険者〉の肉体を使って、全く新しい特技を発動させたって辺りだな。オーバーライドでもないし、オーバースキルってところか?」

アクア:

「既存のスキルを超越してるわけじゃないんでしょう? 全く新しい特技なら、オーバースキルとはいえないわ」

ジン:

「へいへい。……ふむ。仮にシステムを介在させないことで、技後硬直や再使用規制なんかが無かったりしたら、完全特技ってことになるのか、面白しれぇな」



アクア:

「シュウト、聞いてる?」

シュウト:

「スミマセン、ええと、何でしょうか?」ごしごし

アクア:

「良かったわね、勝ち筋が見つかったじゃない。貴方、この男に勝てるわよ」

シュウト:

「えっ?」

ジン:

「チッ……」

レイシン:

「あの技を使えば、確かに勝てるかもしれないね」

ジン:

「ケッ。簡単に言ってるけど、実戦で使えると思うのかよ?」

ニキータ:

「どうなの?」

シュウト:

「とてもじゃないけど、あの状態を維持したまま戦うことなんて不可能だと思います。かなり集中してないと……」

ユフィリア:

「いっぱい練習すればいいんじゃないの?」

シュウト:

「それでも、ダメだと思う。戦闘中、ほんの少しでも呼吸が乱れたら失敗するだろうから」

ユフィリア:

「ああ、そっかぁ~」

石丸:

「そうっスね……」


 少し驚いたという程度の呼吸の乱れすら、影響がありそうなのだ。戦闘で利用できる水準に高めたとしても、激しく動き回って息が上がってしまえば元も子もない。

 だが、自分の中では何かが引っかかっていた。


ユフィリア:

「どうにかならないかな?」

シュウト:

「まぁ、偵察でジッとしているぐらいなら、使えるようになるかもしれないし。ありがとう」

ニキータ:

「……もしかしたら、行けるかも」

ユフィリア:

「ニナ?」

ニキータ:

「組み合わせればいいんじゃない? 高密度呼吸法なら呼吸は乱れないはず。その上で、ニュートラル・ラインで『あの技』を発動できれば……」


 思わず、みんなでジンに確認しようと視線を送ってしまう。


ジン:

「そんなの、普通にやってたら10年、15年とか軽く掛かるぞ?」

シュウト:

「そんなに、ですか?」

ユフィリア:

「10倍がんばれば、1年で大丈夫だよ! ねっ? そこから更に4倍がんばったら、3ヶ月ぐらいでなんとかなるなる!」

ジン:

「それじゃ40倍じゃねーか。無理だろ。……それこそ、『呼吸法に特別な才能』でもない限りは、な」


 いじわるな態度を取っていたジンの表情が、ふっとゆるむ。


シュウト:

「それじゃ……」

ユフィリア:

「ほら! ジンさんも大丈夫だって!」

シュウト:

「いや、だけど絶対、簡単じゃないんだ」

ジン:

「そうだ。大丈夫だなんて一言も言ってないぞ」

ニキータ:

「大丈夫じゃないかもしれないけど、……ね?」


アクア:

「シュウト! グズグズしない! 男なら、自分だけの武器を持ちなさい!」

ジン:

「ま、地獄への道だな。モタモタしてたら、使えずに終わる可能性すらあるぞ。覚悟は決めとけ」


 しっかりと頷くシュウトだった。


シュウト:

「あの、ジンさんにお願いがあるんですが……」

ジン:

「まだなんかあんのかよ? ン、言ってみろ」

シュウト:

「『あの技』じゃ不便なので、名前を、付けて欲しいんですが」

ジン:

「フン。俺にネーミングセンスを期待するとは、愚か者の仕儀よな。いいだろう。じゃあ、じゃあ、ラビットなんとかがいいかな?」

ユフィリア:

「いじわる! 真似できないのにそういう名前付けちゃダメ!ぜったいダメなんだからね!」

ジン:

「冗~談、冗談っスよ~。シャレが通じないんだから、もぅ~。

 ……冗談はおいといて、一つしか思いつかねーな。〈消失〉と書いて『ロスト』と読む、ってのはどうだい?」

シュウト:

〈消失〉(ロスト)……。そうします!」

ジン:

「気合い入れて練習しろ。そんでもって、俺の探知から消失してみせろ」

シュウト:

「はい!」

 


呼吸法は引用元書いたほうが絶対いいんですけど、どこから引用しているのか調べなおしたりしないといけなくて、その作業も重かったり。

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