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一人百物語 2

エレベーターダッシュ

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/07/20


以前一緒に仕事をしていた富川さん(男性)の話。

富川さんは小学五、六年の頃、何人かの友達と“エレベーターダッシュ”という遊びにはまっていた。

エレベーターダッシュとは、エレベーターの扉が閉まって動きだすと同時に、そばに併設されている階段を駆け昇るか駆け降りるかして、どちらが先に着くか、という遊びだった。

もちろんそんな遊びをしているとよく大人に叱られたが、住んでいた団地のエレベーターが階段と調度向かい合う様についていたので、そこでよくやっていたという。


ある日エレベーターには友達が乗り、富川さんが五階まで駆け昇る番だった。

「じゃ、行くぞ!」

友達がエレベーターの中でボタンを押し、扉が閉まりだした。

その友達の後ろにはにこにこと笑っているおばさんが立っていた。

また叱られるかと思ったが、おばさんはただにこにことしていた。

富川さんは階段を駆け上がり、五階についた。

エレベーターはまだ着いていなかった。

「やったぁ!」

と言っていたらエレベーターが着き、扉が開いた。

中には友達がいた。

しかしその後ろには…あのおばさんはいなかった。

エレベーターが途中で止まると扉の開閉音が聞こえるのでわかるのだが、そんな音は聞こえなかった。

しかし自分が気がつかなかっただけで、やっぱり途中の階で止まったのかな、と思い

「一緒にいたおばちゃんは?」

と聞くと、友達は

「え?」

とおかしな顔をした。

乗っていたのは自分だけだったと友達は言った。


「その時だけじゃなくて、他の時も何回かあったよ。一緒に乗ってた人がいなくなってるのとか、乗ってなかったのに人が増えてるのとか」

と富川さんは言っていた。



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