エレベーターダッシュ
以前一緒に仕事をしていた富川さん(男性)の話。
富川さんは小学五、六年の頃、何人かの友達と“エレベーターダッシュ”という遊びにはまっていた。
エレベーターダッシュとは、エレベーターの扉が閉まって動きだすと同時に、そばに併設されている階段を駆け昇るか駆け降りるかして、どちらが先に着くか、という遊びだった。
もちろんそんな遊びをしているとよく大人に叱られたが、住んでいた団地のエレベーターが階段と調度向かい合う様についていたので、そこでよくやっていたという。
ある日エレベーターには友達が乗り、富川さんが五階まで駆け昇る番だった。
「じゃ、行くぞ!」
友達がエレベーターの中でボタンを押し、扉が閉まりだした。
その友達の後ろにはにこにこと笑っているおばさんが立っていた。
また叱られるかと思ったが、おばさんはただにこにことしていた。
富川さんは階段を駆け上がり、五階についた。
エレベーターはまだ着いていなかった。
「やったぁ!」
と言っていたらエレベーターが着き、扉が開いた。
中には友達がいた。
しかしその後ろには…あのおばさんはいなかった。
エレベーターが途中で止まると扉の開閉音が聞こえるのでわかるのだが、そんな音は聞こえなかった。
しかし自分が気がつかなかっただけで、やっぱり途中の階で止まったのかな、と思い
「一緒にいたおばちゃんは?」
と聞くと、友達は
「え?」
とおかしな顔をした。
乗っていたのは自分だけだったと友達は言った。
「その時だけじゃなくて、他の時も何回かあったよ。一緒に乗ってた人がいなくなってるのとか、乗ってなかったのに人が増えてるのとか」
と富川さんは言っていた。




