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婚約破棄はこちらから

作者:月雅
最終エピソード掲載日:2026/03/16
十五回の婚約破棄。そのすべてで、先に解消を申し立てたのはセレスティナの側だった。

契約書に潜む不正条項を見抜くたび、正当な手続きで婚約を解消した。相続権の隠匿、税の二重取り、禁制品密輸の合法化。指摘した事実は毎回正しく、手続きに瑕疵はなかった。それでも社交界に残ったのは「呪われた令嬢」という名前だけだった。

十六人目の相手は、王都から早馬で十日かかる辺境領の若い領主。届けられた契約書を末尾から読み、解除条項を確認し、不正を探した。見つからなかった。十五件で一度もなかったことが、十六件目で起きている。

辺境領の古い法令には穴がある。住民に不利な条文が放置されている。それを指摘した時、領主は言った。「正しいからです」と。否定されなかったのは、初めてのことだった。彼は自ら茶を淹れ、書庫の鍵を渡し、言葉少なに行動だけを重ねてくる。その不器用な誠実さの正体が、まだ分からない。

だが王都から届いた一通の通達が、この辺境領にまで手を伸ばし始める。十五件目の元婚約者の父は、貴族議会の外交委員会を動かせる侯爵だった。一方、彼女が去った後の王都では、契約書の不正を読み解ける人間がもういない。

正しさを証明してくれる人が現れた場所で、正しさを潰しにくる力が迫っている。
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