第3話 ママたちの怖い話
アカネママと静加ママは夜のお店じゃなくて、マネキンのバイトで知り合ったのだそう。
マネキンって?と首を傾げたら、スーパーの試食や百貨店の特設展なんかに入る派遣バイトだって。
「私が車の免許取りたてで、ドライブついでに話題になってる肝試しに行ってみようってなってね」
アカネママが楽しそうに話し始めた。
「当時はカーナビなんてついてなかったからなんとなくの場所に行くのも楽しくてね」
カーナビがないなら目的地に行けなくない?? あ、スマホのマップがあるよね??
「何とかたどり着いたらほかにも3組先客がいてね。どうせならってはぐれないようについていったわけ」
廃旅館の駐車場には同じ目的の若い人たちがいたのだという。
「男の子たちが大きな声で話しながらね、恐々と二階にいくのについていったわけ。でも壊れた扉や窓、壁に落書きがあるくらいでとくに怖いことも起こらないの」
何も起こらないのはつまらないけど、危ない思いしなくて良かったよね。
「『ちぇー、なんも出ないから帰ろうぜ』って男の子たちが離れていったときに気が付いたの、私たちライトを持ってなくって。真っ暗な中取り残されたらまずいっていっしょに下りようとしたらね……」
アカネママが急に怖い顔で私に顔を近付けてきた。
「静加が急に『あの……みんな下りるみたいだから一緒に戻らないと危ないですよ』って誰もいないところに声を掛けたのよ」
きゃーーー!!
を期待されたんだと思うんだけど、アカネママがオーバーすぎてちょっとノれないかな……
「この子が言うにはね、ネルシャツにキャップを被った二人が座り込んでるって。でね本当に誰もいないのよ」
「…………ネルシャツって何ですか?」
「え!?今ってネルシャツないの?チェック柄の起毛生地みたいな……」
アカネママがガーンって感じでショックを受けてる。
「あっ……なんとなくわかったかも」
言われてみれば古着屋さんとかにあったような、あれかなぁ。
「当時だって流行りは過ぎてたと思うよ。珍しいと思ったし。キャップやジーンズまで色違いのお揃いだったしね」
静加ママがグラスを傾けつつ言う。
「本当にちょっとヤンチャそうな赤いシャツと緑のシャツの男の子が座ってたんだよ。でもほかの子たちも見てないっていうのさ」
「ママって霊感があるんですか??」
私は興味津々で聞いてしまう。私の周りの友達も興味はある方だけど誰も霊感がないの。
「見えないものは見えない方がいいよ」
有るとも無いとも答えてもらえなかった。
外に出ると先にいた三組もママたちも特に会話もなく、ソソクサとそこから去ったらしい。
「それでねぇ、私たち帰り道で事故を起こしちゃってね」
「え!?」
「みんなでお話しながらの運転で注意力散漫だったからだろうけど、肝試しの帰りだったからなんだか怖いと思っちゃってねぇ……おふざけであんな場所にはいかないほうがいいって反省したわよ」
アカネママは神妙な顔でお話を締めくくった。
ネルシャツの男の子たちはその後どうなったのか気になるんだけど……
「その後もね、懲りずに夜のドライブには出かけてさ。夜景を見に山の難所を走ったりしたね」
山の上の夜景を見るためのドライブなんて、友達からも聞かないかな。
「……夜景ドライブって、したことないです。車持ってる友だち、あんまりいなくて」
「ユリカも持ってないの?この街に住み続けるなら持ってた方がいいよ」
アカネママがいうには、この街では子供をもったり親が歳をとったら病院に行くにも買い物に行くにも不便だって。結婚してから取りに行く人も多いらしい。
「ま、私たちも若いうちに取っといた方がいいって言われて、いらないと思いつつとりあえず取ったのよね」
「今となっては酒を飲むからほとんど乗らないけどね」
二人は笑いながら、お酒のお代わりを飲む。
「……はぁ、話をするから呼んじゃうんだよ…………」
「え?」
静加ママがタバコ吸ってくると言いつつ外に出ていった。
「うちは禁煙じゃないのに、たまに外で吸いたいって出て行っちゃうのよね」
アカネママが自分のタバコを取り出すと普通に吸い始めた。
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何が怖いって世代間ギャップが怖い話……
じゃなくて、怖い話にもっていくのが難しくてまだあまり怖くないのが怖いです
もう少し怖くなる予定ですので……




