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戦闘員A(雑魚)、中身は伝説のフィクサー。~洗脳が効かなかったので、無能な幹部を裏から操り、窓際姫を悪の女帝にプロデュースします~  作者: 祝日


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第13話:査察官、ダブルエージェントになる

 深夜。支部のボロアパートの一室で、俺は再びモルクと秘匿回線をつないでいた。画面越しのモルクは、昼間に提示した「五割の利権」という劇薬に当てられたのか、瞳にどす黒い野心を宿している。


『……1024号。昼間の話だが、本当に可能なんだろうな。ドラクマ局長を欺き、その金をこちらへ流し込むなど……』


 俺はヘルメットを脱ぎ、ボイスチェンジャーをオフにした本来の冷徹な地声で、淡々と答えた。


「(可能です。……モルク様、あなたが握っている査察部の権限は、組織内の金の流れを『監査』の名の下に一時的に止めることができる。……違いますか?)」


『……ああ。不備が見つかれば、再調査のために口座を凍結する権限はある』


「(ならば話は早い。局長が管理しているダミー口座に、俺が『偽の不正証拠』をいくつか仕込みます。あなたはそれを理由に口座を一時凍結させ、精査と称して『洗浄用の別口座』……つまり、あなたのプライベート口座へ資金を避難させる手続きをとる。……局長には、査察部の上層部(さらに上の奴ら)にバレないための緊急措置だと言い訳すればいい)」


 モルクがゴクリと唾を飲み込んだ。ドラクマが最も恐れるのは、自身の横領が組織全体に露見することだ。査察官であるモルクが「守るために隠した」と言えば、ドラクマは従わざるを得ない。


「(そして、その避難させた資金の五割を、活動経費の名目で俺たちの口座に。残りの五割は、あなたの『隠し資産』として永遠に闇に葬る。……これが共犯の条件です)」


『……フッ、面白い。だが、ドラクマが黙っているはずがない。あの男は執念深いぞ』


「(だからこそ、弱みを握るんです。ドラクマ局長が最近、補給局の備品を横流ししている現場……心当たりはありませんか? そこに、査察用の偽装を施した『俺の自作デバイス』を仕込んでください。映像と音声さえ押さえれば、あの男は一生、あなたの『集金マシーン』だ)」


 モルクはしばらく無言で画面を見つめていたが、やがて、口角を吊り上げて不気味に笑った。


『よかろう、1024号。……いや、クロウと言ったか。……この『特別査察』、私が責任を持って完遂させてやろう』


 通信が切れた。俺は安物の椅子に深く腰掛け、暗い天井を見上げる。


(よし……これで本部の『目』をこちらの『味方』に変えた。次は、横領された予算で苦しんでいる現場の不満を焚きつける番だ)


 アビスの巨大利権という城壁に、一つ目の楔を打ち込んだ。さて、次はどの派閥を切り崩しにかかるか。

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