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戦闘員A(雑魚)、中身は伝説のフィクサー。~洗脳が効かなかったので、無能な幹部を裏から操り、窓際姫を悪の女帝にプロデュースします~  作者: 祝日


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第12話:組織のガンは補給局にあり

 アパートの前に積み上げられた、錆びたナイフのコンテナ。その横で、アルティナ様が今にも泣き出しそうな顔で立ち尽くしていた。


「……嘘。一億アビスの予算が、全部これなの? プロテインは賞味期限切れだし、ナイフは刃こぼれしてる……。これじゃ、みんなのご飯も買えないわ」


 彼女の嘆きは正しい。本部から「支給」されたのは、名目上は一億アビス相当の物資だが、その実態は補給局が長年抱えていた、廃棄にすら金がかかる「不良在庫」の押し付けだ。


「イーッ! イイィィッ!(閣下、ご安心ください! 秘書……ではなく、戦闘員の私に考えがございますッ!)」


 俺は過剰に揉み手をしながら、アルティナ様にだけ聞こえる低い声で付け加えた。


「(……アルティナ様。ゴミは、適切な場所に持っていけば『資源』になります。ドラクマがこれをゴミとして送りつけたのなら、俺たちはこれを『最新兵器の原材料』として売り飛ばして、現金化ロンダリングするまでです)」


 俺は即座に、懐柔済みのモルク査察官に連絡を入れた。通信を繋ぐまでの数分、俺は本部から送られてきた「物資送り状」の不審な点を見抜いていた。品名は「最新鋭侵略兵器」となっているが、経理上の分類コードが「廃棄損」扱いに設定されている。


(……見つけたぜ。ドラクマ、あんた「廃棄費用」を本部から計上させておきながら、その実物は俺たちに押し付けて、浮いた『処分予算』を自分の懐に入れようとしてるな?)


 秘書時代、天下り先の特殊法人でよく見かけた古典的な手口だ。俺は通信がつながるなり、地声で切り出した。


「(モルク様。ドラクマ局長が、第7支部に廃棄品を押し付け、『処分費用』の二重取りを画策している形跡を確認しました。これ、査察官のあんたが調査報告書として上げれば、あの強欲な局長も、今夜は枕を高くして寝られませんよね?)」


『……貴様。そんな瑣末な横領、査察部が動くほどのことではない』


「(ええ。ですが、俺が帳簿をいじって、これが『組織の根幹に関わる重大な備品紛失』にすり替わったらどうします? ドラマクが必死に揉み消そうとする、その『隠蔽工作費』……、俺が協力して、あんたと山分けにしましょうよ)」


 俺は敢えて、モルクに具体的な「分け前」の誘惑を投げた。


「(局長から引き出す口止め料の、実に**『五割』**を、あんたの隠し口座に流し込む。……あんたにとっても、ドラクマの犬でいるより、俺と組んでドラクマを『金蔓』にする方が、よほど刺激的な生活が送れるはずだ)」


 通信の向こうで、モルクが喉を鳴らす音が聞こえた。


『……三十分だ。三十分以内に、こちらで手続きできる『修正帳簿』を送りつけろ』


 交渉成立だ。俺の推測通り、モルクもドラクマの下っ端扱いに不満を抱えていたのだろう。一度甘い汁を吸わせれば、こいつはもう俺の共犯者だ。


 数時間後。俺は第7支部の三人の戦闘員を叩き起こした。


「イーッ! イイーッ!(先輩方! この一万本のナイフ、今すぐ地元の『産業廃棄物買取業者』へ運びますッ! ただし、表向きは『侵略用秘密基地の建設資材』としてログを残せ!)」


「イー、イイーッ!?(……おい、本当に大丈夫かよ、1024号)」


「(……カツ丼どころか、来週は焼肉を腹一杯食わせてやる。……嫌なら本部に、あんたたちが脱獄スマホで掲示板を見てた証拠を提出してもいいんだぜ?)」


 俺の「飴と鞭」に、ゾンビのようだった戦闘員たちがキビキビと動き出す。


 ゴミ同然のナイフは、俺の交渉術と町内会での「善良な業者」というコネクションにより、驚くべき高値の「鉄くず」として現金化された。さらに、ドラクマからは「不祥事の隠蔽工作費」という名目で、モルク経由でさらなる裏金が流れ込んでくる。


 その日の晩。ボロアパートのテーブルには、安物のカップラーメンではなく、近所の肉屋で買った本物の霜降り肉が並んでいた。


「おいしい……。クロウ、あなた本当に魔法使いみたいね」


 頬を緩めるアルティナ様を見ながら、俺はヘルメットの下で冷徹に計算機を叩く。


「(……アルティナ様。これは魔法ではなく、単なる『予算の適切な還流』ですよ。ドラクマがゴミを押し付けて俺たちを黙らせたつもりなら、その傲慢さを利用してやるまでです)」


 ドラクマは「ゴミ」を押し付けて俺たちを黙らせたつもりだろうが、残念だったな。あんたが吐き出した「隠蔽費」が、そのまま俺たちの『軍資金』だ。


 組織のガンである補給局。そこから少しずつ血を吸い上げ、第7支部をアビス内部の「独立採算特区」に作り替える。影の宰相としての快感に、俺は思わず「イーッ!」と、腹の底から満足げな叫びを上げた。

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