三古夙罹《天魔翔吼》の解析 - 戦術記録抄 第伍弐
こんにちは。
今回は災厄の怪物”に関する戦術記録です。
本編とは離れた、いわば「世界観資料」的な読み物になりますが、こういう“戦術的な対処記録”が好きな方には楽しんでいただけるんじゃないかと思ってます。
対象個体:三古ノ夙罹《天魔翔吼》
戦術検証協力:第四領域・幻淵殿《夢繭楼》
再構成機関:第三領域・焔華閣・戦理庵
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一、対象概要
本記録は、夙罹の中でも特異級に分類される古層存在《天魔翔吼》に関し、視霊観測・意識投影・模擬戦を通じて得られた戦術的情報を整理・抄録したものである。
当該個体は「三古ノ夙罹」の一柱とされ、出現時には深度霊障、空間歪曲、精神侵蝕、肉体変質の連鎖的発生が確認された。術式抵抗は複数系統に及び、交戦に際しては特段の術式適応力が要求される。
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二、構造および観測された性質
当該個体は「崩壊飛翔型」の形態を有し、全身に自律的運動を可能とする羽片を展開している。これら羽片は、牙・眼球・骨格などを模した構造を取り、攻撃媒体・感覚攪乱装置として機能する。
双頭構造を有し、一方は猛禽類状の外殻を持ち、咽部から蠕動する舌状器官を突出させる。もう一方は獣面内に裏返しの人面が密着する異様な構造を持ち、視認した感応者に対し、幻視・幻聴・意識浮遊などの強い精神干渉を引き起こすことが報告されている。
胴部は半透明の殻で覆われ、その内部には捕食対象と類似した顔貌が浮かび上がる現象が確認された。この視覚接触は霊汚染の初期段階に相当し、非接触状態においても、術者に対し精神侵蝕の兆候が認められた。
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三、確認された能力構造
《雷翳降臨》
高高度から雷撃を伴う急降下を実行。着地と同時に広域の霊障腐蝕を展開し、空間座標の安定性を喪失させることで、術式行使および術者の空間定位を困難にする。
《喰種錯誕》
捕食対象の霊的性質を羽片に模倣・再構成し、独立飛翔体として自律展開させる。再構成体は元対象の属性傾向を保持し、戦場における多方向・多属性攻撃を実行する。
《共鳴断絶》
異常な鳴動波により、聴覚遮断と精神共鳴阻害を同時に誘発。特に夢界領域下では、共振を契機とする強制的意識帰還が観測された。
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四、模擬戦記録(第四領域 幻淵殿・夢繭楼)
幻淵殿《夢繭楼》所属投影士3名、および焔華閣・戦理庵より派遣された戦術士2名による合同意識投影試験を実施。以下に戦局の推移を記録する。
初動局面
羽片による先制干渉により防衛結界が即座に崩壊。投影士1名が急性精神障害を発症し、交戦離脱。
中間局面
羽片の自律増殖に伴い、夢界構造に複数の裂断現象が発生。局所空間の安定性が著しく低下。
終局局面
戦術士による火霊術の高密度展開が実施されるも、羽片の多重干渉によって術効が大幅に減衰。最終的に対象が《雷翳降臨》を発動し、夢界構造が破綻。全投影者が意識帰還処置を受ける。
幻淵殿の解析によれば、戦闘後の感応者には「自我領域の深度汚染」が確認されており、今後の意識投影試験には更なる制限と防壁強化が推奨される。
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五、暫定戦術案(第三領域 焔華閣・戦理庵 提出)
1. 前段階防壁の多層構築
接触以前に空間膜結界を展開し、霊障および羽片の侵入を遮断。初動時の術者損耗を抑制。
2. 精神・感覚干渉に対する封印対策
聴覚遮断装備および精神保護符の携行を標準化。感覚領域への干渉を複層的に抑止。
3. 属性干渉装備の複合使用
火霊術・雷撃術・浄化系統を併用し、羽片の再構成を断ち切る。同時行使による効果増幅を前提とする。
4. 感応者の制限的運用
幻視・幻聴による混乱を防ぐため、霊感応の高い術者は後方支援に限定、もしくは交戦域より隔離。
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再構成出典
本記録は、十ノ同胞《澄幽綺》による視霊観測筆録を基礎資料とし、異形語および霊写構造を焔華閣・戦理庵が再構成・抄録したものである。模擬戦・意識投影検証については、幻淵殿《夢繭楼》の記録と解析を参照した。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
天魔翔吼はこの世界の中でも“最古級”の存在という設定で、対処もかなり厄介なやつです。
本編のような物語展開とはまた違いますが、こういう記録形式や設定資料っぽい雰囲気が好きな方には刺さってくれたらうれしいです。
反応があれば、今後も別の災厄や存在に関する記録を追加で出していこうと思っています。興味持っていただけた方は、ぜひ評価やブックマークなどで教えてください!