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引き篭もり魔女とコンビニ袋マン

 

 山を降りてから王都まで馬車だと三日掛かる。問題はヤドカリハウスの歩行速度だ。ハッキリ言って人が歩く方が早い。だから王都にたどり着く時間は五倍掛かると思った方がいい。

 だからのんびり王都を目指すことにする。その間ぼくは貝殻ハウスの中で引き篭もっていれば良い。

 いつものことだ。


 しかしその間ヤドカリが魔物や野党に襲われないか当初ぼくは心配した。すると店長がそんじょそこらの魔物や冒険者を寄せつけないほど、このヤドカリさんは強いらしい。

 しかも女神の加護で守られているらしい。一体どんな女神様だろうか……。


 そんなのんびりした道中に事件が起きた。

 いつものようにベッドで寝そべっていると外が騒がしい。怪訝に思ったぼくは窓のカーテンをそっと開けて外を覗いた。すると旅人らしき母と娘らしき家族が野党に襲われていた。


 店長に目立つなと釘を刺されていたけど、ぼくは家族をほっとけない。

 なるべく目立たず助けるか……。

 確かヤドカリさんの動きを止めるにはぼくが『止まれ』と念じると停止してくれるって言ってたな。


 しかし止め方に特長がある。それは声を大にして、


「と、止まれええぇぇぇいいっ!!」


 大きく叫ぶと止まってくれるらしい。しかし久しぶりに大きな声を出したせいで息切れする。

 とはいえ確かにヤドカリさんが止まってくれた。しかし大声出して操作する方法はなんとかならなかったのかな店長さん。


「はっ!」


 もしかして店長はコミ症なぼくを心配してこの操作方法にしたのか?

 だとするとありがた迷惑だな。別に声の大きさは低いままでいいよ。


 さて外に出て野党をボコって家族を救うか……とはいえ目立つのは避けたい。そこでぼくはある物を使って顔を隠すことにした。


 まぁ家族二人に対し野党は六人と女子供相手に数でイキるとは恥ずかしい奴らだ。

 だから人数が多くても関係ない。ぼくの魔法一発で蹴散らすのみだ。


「おいっ抵抗すると殺すぜ」

「ひっ! ど、どうか娘の命だけはお助けを」

「ひひ、娘の方は高く売れそうだからなぁ傷はつけないぜ。だけどよ母親の方は少々価値がさがる。だが十分いける」


 ナイフを持った野党の一人が親子に近づき、娘の手首を掴んで引っ張っり、引き離そうとする。

 そして母親にも手を出そうと野党たちが囲んだ。これはもう放っておけない。

 ヤドカリハウスから飛び出したぼくは、背中を向ける野党を炎の魔法で狙い撃ちした。


「ファイヤーショット!」

「うぎゃっあっ!?」


 炎魔法が直撃された野党が火だるまになってのたうち回った。ちょっとやり過ぎたかな……まぁ手加減するのが難しいのだ。


「なんだぁっ魔法だとうっ誰だっ仲間をやったのはっ……おっ!」


 振り向いた野党の一人がぼくに気づいた。いよいよ出番だな。身元がバレないように顔をある物で隠してあるから大丈夫だ。

 野党たちがぼくの方に向かって来た。


「おいっ! 仲間を火だるまにしたのはお前か?」

「そうだ」

「なにぃぃ……俺ら相手に正直に言いやがる。それになんだてめぇが被ってる袋は?」

「ああ、コレか、コレはコンビニのビニール袋。それを被って悪を懲らしめる。その名はコンビニ袋マンただ今参上だ」


 コンビニ袋に目の位置に二つ穴開けて被っただけの即席ヒーローだ。ちょっと息苦しいが我慢だ。


「なんだぁ〜コンビニィ? なんだよコンビニマンって名はっ、ふざけやがってテメーその出立ち魔法使いか? 腕力で俺らに勝てると思ってんのか殺すぞこらぁっ!」

「……」


 なんて粗暴な連中だ。コミ症なぼくとは真逆な性格でハッキリ言って苦手だ。

 だから正直逃げたい……だけど家族を救うためピピス頑張るよ。

 ぼくは杖の先を野党に向けた。


「だったらやれよ」

「なにっ!もう一度言ってみろ!」

「だから殺すなら早くやってみろよ」

「テッ、テメエ……許さねえっ」


『おっ!』丁度野党5人が集まって来た。被害者家族と離れたし、これならまとめて倒せるな。

 ぼくはロッドを構えた。


「ウォーターナックル!」


 杖の先に大気中の水分を集め大きな塊にしさらに、巨大な水の拳を作り出す。


「なっ! なんだっみっ、水の拳っ?」


 奴らは水拳を見て驚いてる。いい調子だしかし、これでは水浴びさせるだけだからひと工夫必要だ。


「水拳を凍らせろっアイススチームッ!」


 杖の先から出るマイナス10度の冷気が水拳を包み、カチカチの氷の拳にしてやった。

 あとは野党たちに向かってブッ放つだけだ。


「なっなんだアレはっ!」

「怯えてももう遅いっ、喰らえ攻撃魔法っアイスナックルをっ」

「『ぎゃああっ!?』」


 野党たちをまとめて氷の拳でぶっ飛ばした。殺しはしないが全員伸びている。しばらくは悪事は働けないだろ。

 さてぼくは抱き合って怯えている家族の元に駆け寄った。


「大丈夫か?」

「あっ、は、はいっ大丈夫ですコ、コンビニマンさん……」

「……いや違う。正しくはコンビニ袋マンだ」

「あ、あ、はあ……」


 ぼくは名前の間違いを訂正させる癖がある。おかげで母親は口をポカンと開け引いてたな。


「ところでお前たちはこれからど、どこに行く気だった……?」

「あっはいっ助けてくれてありがとございます。私どもは王都に向かうところでした」

「なるほど、ぼくも丁度王都に行く途中だった。だからついでにお前ら良かったら、このヤドカリハウスに乗ってけ」

「えっず、ずいぶんと大きなヤドカリですね……」


 やはり乗れと言ってもお化けヤドカリにビビっているよなぁ……ほっとくわけにもいかないし、どうしよう……。


「お母さんっコンビニ袋マンはアタシたちを野党から守ってくれたし大丈夫だよっ!」

「えっ、でも……」


 おう、子供良く言った。コミ症なぼくはこれ以上限界だから、母親への説得は任せた。


「分かったよ。また野党に襲われるかも知れないし、危険な道を歩いて王都に向かうよりは安全そうね。ではよろしくお願いします」

「お、おおう……」


 ぼくの方に振り返った母親がお辞儀した。しかし礼されるのは初めてなんでテンパって、返事返せなかった。まぁいいか……。


 ぼくは家族をヤドカリハウスの中に入れた。

 さて、もてなしするための惣菜買いにコンビニ召喚するか。


 いつものようにコンビニ召喚して入店した。すると店長がニコニコしながら待っていてくれた。

 ぼくは店内を見回した。相変わらず客は一人もいない。ぼくが来るのを待っていたと思うと、意外とヒマな人だな。


「見ていましたに、お客様の人助け」

「なぬっ!?」


 やはり様子を見てたのかしかしどうやって……店長は一体何者なんだろ?

 すると店長笑いながらぼくに向けて手を振った。


「そうフクロウみたいに目え丸うして、驚かんといてや」

「お、おおうっ……」

「とにかくお客様の人助けを確認したで、報酬として人助けポイント1000が加算されるでささっ、ポイントカードを出しておくんない」

「なんと!」


 初めて知った事実。

 人助けすると1000ポイントも貰えてしまうのか、これで合計1100ポイントか確か……。

 ぼくは指折り数えた。


 確かコンビニ召喚スキルレベル2にするのに必要なポイントが1000だったよな……もう十分ポイント貯まっている。

 今からなにに使おうか、む、胸がドキドキする。しかし良いことすると報酬がちゃんと自分に返って来るのは分かった。

 これからも困った人がいたら助けよう。


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