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引き篭もり魔女とコンビニ召喚スキル

 

 謎の四角い建物はとても小綺麗で横に並んだ棚に見たことのない商品が陳列されていた。しかもどうやらほとんどが透明な袋や紙に入った食べ物みたいだ。

 そこまでやらなくてもいいのに、過剰な包装だ。しかしこの包装の仕方は清潔でとても良いのは認める。僕らの世界では過剰包装過ぎて高級品位しかやらないけどね。それが全ての商品に施されているのには驚いた。


 さてやはりここにある物は硬貨で購入出来るモノなのか……ちょっと不安になったぼくは硬貨を入れた小袋をポケットから取り出した。


 とりあえず隅々まで見て手に取ってみよう。


 まずは気になったのが壁側に配置された棚。手を入れるとひんやりして食品を冷蔵する役割だと分かった。で、この中で食べれそうな食品がないか探した。

 すると具をパンで挟んだ食品を見つけた。パンなら僕の世界にもあるから安心だ。試しに触ってみると驚くほど柔らかい。ぼくの世界のパンは黒くて石みたいに硬いパンしかないので、この柔らかさは驚愕だ。

しかも薄く白いパンで具を挟む料理なんて聞いたことがない。

 だけどそれが存在するから現実だ。とりあえずぼくは卵らしき具が挟んだパンを手に取り、あとは飲み物を探すことにした。


 飲み物らしき物をパンを見つけた棚の離れた場所で見つけた。子供でも手に取れる中断の位置に紙パックに入った飲み物を手に取った。

 容器が紙製なのに振っても中身が溢れないのに驚いた。味は全く分からないけどパン同様清潔そうなので飲んでみることにしよう。


 しかし正体不明で不安なのは確かだ。だからとりあえずこの2点を持って店から出ようとした。

 さっき入った透明自動ドアの前に立った。するとピーッと警告音と取れる音が鳴り、ビックリして後退りした。


 どうやらタダで商品を持ち出すことが禁止されているみたいだ。ぼくのスキルで呼び出した店なのに理不尽と思いつつ、まぁ武器屋も道具屋も黙って商品持ち出したら罪になるな。


 妙に納得したぼくはカウンターを探した。すると前方にカウンターらしき台を見つけ向かった。

 カウンターには店主が誰も居なくて無人だった。しかし台にも見たことのない商品が置かれていて新鮮な光景が目に映った。


 しかし困った。

 店主がいたら支払い方法を聞こうかと思ったが、誰も居ない。かと言って無駄で持ち出すことが出来ずこの店に閉じ込められた状態が続く。


「う〜ん……困ったのだ」


 とりあえずカウンターに商品を載せると『卵サンド一個銀貨一枚、ヨーグル一個銀貨一枚デス。必要硬貨を投入口に入れてクダサイ』カタコトの音声が流れて驚いた。


 それで投入口を探したら、音声がしたカウンターの付近に点滅する箱を見つけた。その箱を注意深く観察すると、投入口らしき箇所を見つけ言われた通り銀貨二枚を入れた。


 するとピコンと鳴って『お買いあげいただきありがとうございました。ポイントお貯めしますか?』と礼を言われたけど、ポイントってのが良く分からなかった。それでポイントは要らないと口に出すと『またのご来店お待ちしております』と呼ばれ、気づいたら外に出ていた。


『ハッ!』としてうしろを振り向いたが、すでに四角い店が忽然(こつぜん)と消えていた。

 あまりにも不思議な出来事にこれは夢かと思いほっぺたを捻った。すると痛い。

 両手で持ったパンと飲み物を確認し、これは現実だと理解した。


「コンビニ召喚スキル……あのヘンテコな建物がコンビニと言うのだな……なんか知らないけどこのスキルは当たりなのだ!」


 上機嫌になったぼくは軽い足取りで寝ぐらに戻った。ぼくの寝ぐらはダンジョンの最深部に魔法の力で建てた簡素な平家だ。

 まぁ寝床があれば問題はない。問題は食べ物の確保だ。今まではダンジョン内で野菜を栽培したり、海老を養殖したりして自炊してきたが、今日からコンビニのおかげでより楽に食料が確保出来るな。


 さて、ぼくはお昼はベッドの上に座って買って来たサンドイッチを手に取った。初めて見る透明な包みをどうやって剥がすか迷ったけど、開け方がイラストで描かれていたので見ながら剥がした。

 初めて触った真っ白くふかふかなパン。いつも食べている硬い黒パンとは大違いだ。しかも細かく刻んだ茹で卵が挟んである。全てが初めてのパンだけど、迷わず一口食べてみた。


「もぐもぐ…………ムウッ!」


 ふんわりしたパンを噛んでから卵の酸みのある味がして、そのあと濃厚な味が口に広がった。

 一体どうやったら茹で卵がこんな味になるのか分からない。塩味は分かるけど、酸味は分からずだ。


「これはうまいのだ……パクッもぐもぐ」


 とりあえず美味ければ良い。

 僕は夢中になって一枚食べた。二枚目に手を伸ばそうとしたけど一旦落ち着かせた。食事はゆっくり味わうべきだ。

 それで次は、一緒に買っておいた紙パックに入った飲み物ヨーグルを手に取った。これがまた初めて見る用器なんで、開け方が分からない。

 それで容器を念入りに調べると、裏面に開け方を絵で描かれていたので一安心。しかしそれがなんだか難しくて悪戦苦闘しながら紙容器の端っこを開けることに成功した。

 なんだか口を開いた鳥みたいな形だな。


 とりあえず一口。


「ムッ!」


 また酸味だ。

 とはいえ濃厚な卵サンドの酸味と違ってヨーグルの方は爽やかな酸味だ。しかもちょっと濃厚で一度飲んだら止まらない。


「ごくごく…………プハー……うんまい!」


 一口でヨーグルを半分飲んでしまった。まぁまだ半分あるから気にしない。で、口を湿らせたら二枚目の卵サンドを手にした。


「パクッ……もぐもぐ……美味っ」


 半分食ってヨーグルを飲んでまたパクつく。それを繰り返して三枚目の卵サンドを完食してヨーグルを飲み干した。


「ふう〜……これは美味かった」


 全くの未知の味だったが美味かった。それでぼくはまたコンビニ召喚して別な味を味わいたくなったので、コインを握りしめて外に出た。


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