引き篭もり魔女と遅れて来た参加者たち
「もう一度言う。ワシに順番譲れ」
「……あ、でも……」
「なにをぶつぶつ言っておる。ワシに声を掛けられるだけで光栄なことじゃ、それにどうせお主では無理じゃ」
「……うう」
何故言い切る。いくらぼくでも試してみないと分からないじゃないか?
それにずいぶんと自意識過剰だ。大魔法使いと会話したってなんとも思わないよ。
「『そうだそうだっ!』」
冒険者たちが大魔法使いライゼルの味方する。益々断り辛くなる。
「さて答えは決まったか?」
「……じゅっ順番は、ま、守った方が……」
「はぁ? 主では無理だと言ったろ? どうせワシで決まりじゃから時間の無駄なんじゃ」
「『そうだそうだっ引っ込めチビッ!』」
ぼくに対して心ないヤジが飛ぶ。
召喚勇者に熱い声援送った口から出た言葉とは思いたくない落差だ。
「でも……」
「はぁ〜話しにならんっ! いいから退けっ!」
「うわっ!」
業を煮やしたライゼルがぼくの肩を押し転倒させた。尻もちをつき呆然としたぼくは目をパチクリさせた。
「……」
「フンッ、そこで見ていろ」
強硬手段に打って出たライゼルがぼくの順番を奪いロッドの前に立った。
「ほ〜うこれが伝説の魔法使い勇者用ロッドじゃな……実に見事な出来でワシにピッタリじゃ」
「それはぼくの……」
「『まだ言うか引っ込め!』」
「く……」
ぼくに向けてヤジが飛ぶ。
完全に周りが敵になった。
「さて……」
ライゼルがロッドに手を伸ばすが今のところ反応なしだ。ぼくですら一瞬光ったと言うのにな。
「んっ……まぁいい」
気にせずライゼルはロッドを握り上に掲げた。
「さあっ力を示せ……んむ……」
ロッドが反応しない。
思わずぼくの目が見開き両手を強く握った。
「チャンス……」
「チッ、伝説のロッドよ! この大魔法使いライゼルが使ってやると言っておるのじゃっ、壊されたくなかったら、ワシを認めるのじゃああっ!」
『…………』
沈黙していたロッドが光り輝いた。
多分ライゼルに脅されたから勇者と認めたのだと、ぼくは思った。
「流石大魔法使いライゼル様だ。最後の勇者試験っ合格です!」
「フンッ当然じゃ騎士団長よ、しかしの〜やはりワシが魔法使い勇者か……」
「『うおおぉぉーーっ! 流石大魔法使いライゼル様だぜっ!!』」
ズルして勝ち取った気がするけど結果が全てだ。これでぼくの勇者の道が断たれた。
冒険者たちの歓声が一番騒がしく聞こえたが、ぼくは耳に入らないほど落ち込んだ。
だけどまだサポート冒険者の枠がある。気を取り戻したぼくは顔をあげた。
「それでは続いてサポート冒険者の選抜試験を行う。定員は5名っ是非難関を実力で勝ち取って欲しい……ん、どうした?」
騎士団長が試験の始まりを告げたが部下が彼女になにかを告げた。すると書類に目を通すと表情が曇った。
「済まぬ皆の者っ今発覚したのだが、試験者五名が会場到着に遅れていることだ」
それを聞いた冒険者たちは皆騒めく。もう5人の勇者は決まってしまったから、試験やり直しは出来ないけど、遅刻者の到着を待つまで試験が中断するのは流石に彼らは待てないと思う。
なにせ冒険者だから中には山賊崩れもいるし暴動一歩前だな。
「なあっ騎士団長さんよぉ」
『ホラキタ』柄の悪い冒険者5人が早速クレーム入れてきた。中心の男なんて頭ツルツルで眉毛まで剃ってイカにもな輩だ。
ぼくが一番関わりになりたくない人種だ。
「ん、どうかしたか?」
「は? どうかしたかじゃねぇよ、なんで俺らが遅刻者が来るまで試験を中断されなきゃいけねえんだ?」
「……ふ〜む、どうせ結果は見えている。だったら君らさっさと試験受けるか?」
「はっ? それはどう言う意味だよ騎士団長さんよう……」
「フッ、分からないのか? 遅刻者が来てから試験を受けても先にやっても結果は同じだ」
この騎士団長中々の皮肉屋だ。一方言われた荒くれたちはまだ理解してないみたい。
「だから結果ってなんだよっ!?」
「しょうがない人たちだなぁ〜……仕方ない。まぁ君たち試験受けても不採用だよ」
「なんだとっ! 騎士団長だからって俺らをコケにしやがる。許さねえっ! おめえらやっちまえ!」
「『おおっ!』」
逆上した荒くれ冒険者5人が寄りによって騎士団長を取り囲んだ。実力差は歴然5人が束になっても彼女に触れることも叶わないだろう。
「ふ〜う、本当に君らはどうしようもないな……」
「『騎士団長の言う通りっお前らでは勝てない』」
「誰だっ!?」
呆れる騎士団長に同意する複数の声がした。言われた輩たちは周囲を見渡すが見つかるハズがない。なにせまた声は上空からした。すると輩の一人が気づき空に向かって指を差した。
「おいっうっ、上だっ!」
「なにっ、おっ、だっ誰だおめえらっ?」
スキンヘッドのリーダーも気づいた。しかしおめえらってことは複数で空中に5人の男子が浮かんでいた。服装は見たことないお洒落な格好で冒険者らしくない。しかも全員若くて美形だった。
5人が着地した。
「まぁ落ちつけってハゲボウス」
「なんだとっ!?」
中心にいる黒髪短髪の美形がスキンヘッドを挑発し、ジャケットのポケットに両手を入れた。
「てめえ、舐めやがって殺すぞ!」
スキンヘッドが彼に詰め寄り顔近づける。そのため余計顔面格差が分かりやすく見える。
この時点で輩側の負けだな。
「なあっ騎士団長っ僕ら冒険者の先輩方に喧嘩売られてるんすけど〜、このままだと怪我すんで〜正当防衛していいすか?」
「なにってめえっ!」
「まぁ落ちつけって、キレる前に騎士団長さんの意見を聞きましょうや」
「ぬぐぐ……分かった。結果次第ソッコーぶっ殺す……」
「おお怖っ……やだねーまだ自分らの立場分かってないみたいだね」
「なんだとっ! もっ、もう許さねえっ!」
スキンヘッドが騎士団長の答えを待てずに鞘から剣を抜き、両手で剣を構え続けて仲間たちも剣を抜いた。
「なんだ、5人共剣士か……それじゃ合格しても1名限定だぞ」
「なんでだよっ!?」
「は、もうまだ俺に説明させる気? しょうがないね。あのねっ、勇者様にサポート役がつくことになっている。しかも戦士には戦士を、魔法使いには魔法使いのサポートをつけるのが決まりだ。だから君たち5人剣士は要らないんだよ」
『なるほど』職業に合わせたサポート役が一人つくやり方か。だから5人限定でサポート役も狭き門だな。だけど今度は負けないよ。
「てめえらっ言うじゃねぇか気に要らねぇ……」
「ふう〜これだけ言ってもまだ僕らに歯向かう気ですか?」
中心の美形がそう言って肩をすくめた。
「テメエッ! もう許さねえ……」
「ふうっ、言っても無駄でしたか……なら仕方ないですね。いくよ皆んな」
リーダー? の問い掛けに他の4人がうなづきそれぞれの武器を構えた。
赤毛の顎ヒゲの美形は斧、青髪眼鏡の美形はロングソード、幼い顔立ちの緑髪は緑色のロッド、黒髪ロングの美形は赤色ロッド、そして中心の黒髪短髪の美形はソードを握る。
見事に5人勇者の職業と被りサポート役にもっとも適している。
それだとまた……。
「『うぎゃあっ!?』」
案の定輩5人が美形5人に一瞬で倒された。全く見掛け倒しで、時間稼ぎにもならない雑魚だった。
すると騎士団長が彼らに向かって拍手した。
「流石だなぁ、君たちも異世界召喚者だろ?」
「ええ、もちろんっ俺たち異世界から来た。狙った可愛い女の子のハートは必ず狙い撃つよっ、僕たちっ超人気アイドルグループガールズハントさ」
5人全員騎士団長にウインクして指鉄砲を撃つ仕草をした。
「なんだ君たち……」
ドン引きする騎士団長。見ていたぼくも背筋がブルブル震えた。しかしとんでもないライバルがまた現れた。




