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コミ症ひきこもり魔女の底辺飯  作者: 大空司あゆむ


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15/20

引き篭もり魔女と二人の合格者

 

 集まった冒険者たちは皆パーティーを組んでいて楽しそうだ。それに比べてぼくだけ一人で凄く居心地悪い。

 そう、ぼくは人混みが苦手ですぐ体調崩す。


「むぅぅ……」


『ホラキタ!』食道から胃酸が登って来る感じ。たまらずぼくは手で口を押さえた。離脱したいがもう少し頑張ろう。


 会場が騒つく。

 どうやら王様と大臣たちが姿を見せたらしい。


 まだ五十代位の精悍な顔立ちの王様が無言で参加者を見渡し、用意された玉座に腰をおろした。

 そして左横に立つ口髭をピンとカールさせた大臣と目配せした。


「皆の者っ! 良くぞ勇者候補採用試験に参られたっ!」


 大臣右手をあげずいぶん仰々(ぎょうぎょう)しい態度だ。まぁ参加者のやる気を引き出す良い演出だな。


「知っての通り魔王の勢力が我々人類の地を蹂躙しつつある。だが基本は失ってはせん! それは300年前大賢者ザウレスが死ぬ間際に遺した予言っ、ザウレスはこう言った! これから300年以内に魔王を倒す小さき勇者が現れるだろうと!」

「『おっ、おお〜ーーっ!!』」


 大臣のスピーチにぼく以外大盛りあがりだ。しかし小さき勇者ってのが引っ掛かるな。

 もしかして子供の頃から勇者に覚醒するのか? まぁ魔女のぼくには関係なさそうだ。


 今度は大臣に代わって騎士団長のリーザが中央に立った。年の功は二十代と団長にしては異例の若さだ。見掛けも金髪ロングに前髪姫カットに全身銀の鎧姿の凛々しい美女だ。

 髪型は店長に似ているが、目つきが全然違う。騎士団長は鋭い目つきに対して、店長は優しい目つきだ。オマケに美人で明るく優しいと完全に店長の勝ちだな。


「これより勇者候補採用試験を始める。試験内容は勇者にしか装備出来ない伝説の武器と防具5点用意した。もちろん本物だが、これらを見事使いこなせた者を勇者認定する」


 騎士団長の発表に参加者たちが騒つく。そのわけはこの参加者たちに紛れて4人の異世界召喚者がいるからだ。彼らは元から勇者に限りなく近いとされ、難なく試験をパスする可能性大だからだ。

 しかし召喚者は4人で1人分空きがあるからまだチャンスがある。

 出来れば空きは魔法使い枠であって欲しいな。


「ふむ、皆の者っ例え一次試験の勇者に選ばれなくとも落胆するのはまだ早い。勇者一行をサポートする冒険者数名採用するつもりだから、二次試験に希望を託し挑んでくれたまえ」

「『おっ、おおーーっ!!』」

「…………おおう」


 皆んな騒いでノリノリだな。それに比べてぼくは会場の隅で蚊が鳴くようなか細い掛け声出した。


「それでは早速勇者装備クレリックの盾とロッドの適合者試験を開始する。前もって参加登録票に職業を書いたと思うが、僧侶系の者だけ前に出よ」


 盾とロッドが一つとカウントか。

 坊主頭の僧侶系やクレリック系の聖女たちが集まった。数はやや少なく狙い目か……だけどぼくが書いた職業は魔法使いだから見るだけだな。


 試験が始まった。エントリー順づつ皆装備に触れ適合するか試すも、うんともすんとも変化せず皆あきらめ退場する。

 しばらく試験が続き残り数名のところに、異国の制服着た少女の出番が回ってきた。

 茶色のロングヘアに美人で温和顔立ちの少女。あと着ている制服が、先ほど出会った弓美の制服に似ているな。

 恐らく彼女も召喚者だな。


「ふむ、君は確か異世界召喚者の1人……」

「はい騎士様、私は日本と言う国から召喚されて来た白鳥優奈しらとりゆうなです」


 白鳥は目を瞑って手を握った。勝手に連れて来られたのに良く祈れるな。まぁクレリックの装備は彼女で決まりだろう。


「私はただ、この世界を護りたいだけですの」

「うむ、良き心掛けだ。だが勇者の武器と防具がお前に応えるかは別な話しだ」

「ええ、分かっております。私はただ、願うのみです……」


 そう言って白鳥がロッドと盾に触れると眩ゆい光に包まれた。


「こっ、コレはっ……!」

「えっ……みなぎります。私に聖なる武器の力がみなぎりますわ」


 完全にハイになっている白鳥が盾を左腕に装備し、ロッドを握って空に掲げる。

 すると先端から白い稲妻がほと走り、たまたま枯れ木に直撃してなんと新芽が出て葉っぱが展開して蘇った。


「ううむ、これはまごうことなきクレリック勇者のかっ! 判定っ白鳥殿の合格とする!」

「『おおっーー!!』」


 最初の合格者に参加者のほとんどが自分のことのように喜んだ。ぼくは職業違えど合格者は羨ましい。だから皆のように祝福するのは無理かな……。


「では次は勇者戦士の斧と盾の適合試験だ。挑戦者の戦士たちよ、並ぶが良い」


 騎士団長に招集された戦士たちの数はざっと百人位で、職業の中で一番多い気がする。

 しかし順番づつ試すとなると時間が掛かるな。


 案の定40人目で一時間過ぎ、41人目の冒険者の出番が周ってきた。しかし痩せた冴えない男の戦士で身体の基礎も出来てない。

 これは結果が見えていて、やるだけ無駄な気がする。


「あの〜っ、不適合者たちが順番通り試しても無駄だと思うので〜、アタシに譲ってもらえますか〜?」


 赤毛のウェーブ掛かったワイルドロングヘアの制服着た少女が手をあげた。身長は170センチ位で胸が大きいバツグンのスタイルの美人だ。

 それはそうと、彼女の発言が残りの参加者全員を敵に回した。しかし敵意の視線を気にせず彼女は髪を指でいじった。


「ん、君は確か……100番目の……」

「そうっす、寄りによってケツ番目とはだり〜アタシは異世界召喚者なんで合格間違いっしょ? だから順番なんとか出来ないすかね……」


 片目を瞑った彼女がかったるそうに頭を掻きむしり、騎士団長に擦り寄る。


「なるほど、君も白鳥殿と同じ……」

「学校は違うっすけど元女子高生」

「元女子高生……」

「そうっすよ〜アタシの名は獅島輝(しじまあきら)っ女子高生だったすけど……異世界召喚から数年経って、もう青春時代には戻れないっす」


 良く分からないけど、獅島にはそんな事情があったのか……巻き込まれてちょっと気の毒。

 で、彼女はやる気がないのと、サバサバした性格に見える。だけどもっと厄介な攻撃性を獅島に感じるな。

 しかも獅の苗字とはこの世界で伝説の猛獣を表す。姉御な雰囲気の彼女にピッタリだ。


「んじゃあ〜……アタシに順番譲ってくんない?」

「な、なにを言ってやがる。お、大人しく順番を守れよ」


 41番痩せ戦士が獅島に反発した。男の癖に女の子に及び腰で情けない。あと結果は分かっている。無理に強がって怪我するよりは、彼女に譲った方が身のためだな。


「あ〜〜ん……オッサン無理っしょ?」

「なにっ! さっきから大人に対し、態度悪いんだよっガキッ!」


 弱気だった細身の冒険者が逆襲して獅島に殴り掛かった。しかし彼女は小指で耳をほじくりアクビし、余裕を見せる。


「ふぁ〜かったりぃ」

「ガキが舐めんなっ!」

「む、さっきからガキ餓鬼ってうるさいんだよオッサン?」

「なんだとゆっ、許さん。お、大人を怒らせるな」


 ついに細身の冒険者が鞘から剣を引き抜いた。まさかの殺し合いかと悲鳴があがると思った。


「おうっいいぞヤレヤレ〜♬」

「オッサンやめとけ無理すんな!」


 と、皆ノリノリで二人を煽った。


「皆マジになって引くわ〜武器もないし……」

「はっ? 戦士の癖して武器もねえのかよっ」

「ウッザ……アタシの腕力だとすぐに武器が壊れてねぇ……丁度手ぶらだったしょっ……でも流石に素手で武器持ったキチ……と戦うのは避けるっしょだからぁ」


 獅島が突然戦士勇者の斧と盾を手に取って装備した。すると武器が光って彼女の全身を包んだ。


「ばっ、馬鹿なっ!」

「おうっ、びびったかオッサン。アタシが戦士勇者に選ばれて?」

「くっ、ま、負けたよっ」


 細身の冒険者は戦わずして両手を地につけ負けを認めた。


「戦ってもしね〜のに、痛いの怖いから白旗振るオッサンダッサ……」

「ひいいんっ」


 相当侮辱を受けても怒りより恐怖が先行して、なにもしないで敗北した細身の冒険者が、泣きながら出て行った。

 しかしこれで……。


「へへ〜ん、戦士勇者枠はアタシで間違いないっしょ騎士団長先輩っ?」

「ムウッ、先輩は余計だ。し、しかしご、合格だ」


 性格は難ありそうだけど、二人目の勇者が決まった。あとは真勇者とパラディン勇者と魔法使い勇者の三枠か……。

 もちろんぼくは魔法使い枠狙いだ。


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