引き篭もり魔女と冒険者ギルド登録
異世界から来た二人に冒険者ギルドの場所を教えてもらい向かった。
大通りを歩いて5分のところにギルドを見つけた。さすが本部だけあって三階建ての建物で大きい。
ぼくは入り口のドアを開けそっと中を覗いた。
すると中から賑やかな男たちの談笑する声が聞こえてきた。コミ症なぼくは思わずドアを閉めた。
ぼくが苦手とする荒くれ者が集まる場所だ。もしも怖いお兄さんに絡まれたらどうしよう。
しばらくドアの前で入るか悩んでいると、背後から人の気配がした。
「おいっ邪魔だっ退けっ!」
「!!」
スキンヘッドのいかにも荒くれ冒険者の男がぼくに対して邪険に声を掛けた。それでビックリしちゃって思わずギルド内に入った。
『う〜んこれは……』入るキッカケを作ってくれたコワモテお兄さんに感謝だ。
とりあえずカウンターに向かって受付のお姉さんと目が合った。栗毛色の長い髪の優しそうな美人さんだ。しかもぼくと違って胸が大きいからきっと男性冒険者から好かれてるな。
「こんにちは、今日はどんなご用件で」
「…………えっと、あの……まぁ……」
「ん?」
他人との会話が慣れてないので聞かれても返答に詰まってしまう。そんなぼくを見た受付のお姉さんは不思議そうな顔して、小首をかしげた。
「もしかして冒険者登録でしょうか?」
鋭いっ正解だよお姉さん。
「おっ、おおう」
「ではこの書類の欄に必要事項を書いて提出してください」
笑顔のお姉さんが書類をぼくに手渡した。とりあえず目を通す。必要事項は入管の時に書いた個人情報とほぼ一緒だ。
ぼくはササッと書いてお姉さんに書類を渡した。
「ありがとうございます。では最後に指紋登録しますのでこちらへどうぞ」
「おおう」
お姉さんにオーブ型指紋登録装置の前へと案内された。
「この水晶に手をかざしてください」
「おおう……」
『右か左かどっちだ?』曖昧に言わずハッキリ言って欲しいな。まぁ指定しないから、どっちでもいいんだろ。だから利き手の右手をかざした。
するとオーブが一瞬光った。
「おっ!」
「ご苦労様です。指紋登録終了です。あとは冒険者カードを発行いたしますので、しばらくお待ちください」
「お、おおう……」
あとは待つだけか……意外とすんなり終わったな。さて待つ間募集クエスト見に掲示板行くか。
ぼくは賑わっていた掲示板が空くのを見計らってから見に行った。
掲示板には依頼書がいくつか貼ってあったが、人が掃けたあとなんで、すでに虫食い状態だった。
残っていた案件は報酬が低いか、報酬が良いが高難易度のクエスト位だな。
ギルドカードもらったら当然ぼくは高難易度を狙う。
そう考えていたら受付のお姉さんに呼ばれた。
「お待たせしました。はいっこれがピピスさまの冒険者ギルドカードです」
「おお……」
渡されたカードは鉄で出来たトランプサイズの冒険者ギルドカードだ。ランクは一番下のアイアンランク。
ぼくはこの位の知識はある。
冒険者ランクは下からアイアン、カッパー、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリル、そして最上位のオリハルコンだ。
プラチナだと上級者、ミスリルだと達人級で最上位オリハルコンは英雄か勇者位しか持ってないんじゃないかな。それだけに高みに行くのは並大抵の努力じゃ到達出来ない。
生まれ持った才能とか関係してくるな。だからダンジョンに引き篭もっていたぼくには無縁だ。
「これで依頼されたクエストを受けることが出来ますよ」
「……じゃあこれ……」
「えっ……」
ぼくは前もって掲示板から取ってきた依頼書をお姉さんに渡した。すると依頼書に目を通した彼女が困惑した目でぼくの顔を見た。
「し、失礼ですが、ピピスさまのランクではドラゴン退治の高難易度クエストはオススメしません。いやだめですっ死にますよっ!」
「おっ、おおう……」
ぼくのことを本気で心配してくれるとはこのお姉さんはいい人だ。でも大丈夫。討伐依頼の砂漠に棲むサンドドラゴンなら、ぼくが何度か狩ったことのある格好の獲物だ。
「いや大丈夫だ。サンドドラゴンなら何度も狩ったことある」
「し、しかし……」
ぼくの言うことにお姉さんは半信半疑な様子。ギルド登録したばかりでそれは仕方ないにしても、依頼料金貨10枚は手堅い。
是非とも依頼を受けたい。
「おいっ! 素人がサンドドラゴン退治なんて無理に決まってるだろ。その依頼俺に譲れ」
入り口で絡んできたスキンヘッドの冒険者が背後から言ってきた。
なにかとぼくに絡んできてウザい男だ。この程度の輩は火球魔法で一発だが、まだ目立つ行動は避けたい。
「……」
だから黙った。
「おいっ、黙ってねーでその依頼っ俺に譲れ」
「……嫌だ」
「なんだとっガキッ! こっちが下手に出てりゃあ調子に乗りやがって」
要求を拒んだら案の定脅してきた。苦手な人種だが、実力はたかが知れている。まだぼくが相手してきた魔物の方が強いよ。
杖を握り締めたぼくの鼻息が荒くなる。コイツのおかげで少々他人との会話が慣れてきた。
「でしたらこの依頼お二人で受けてみたらどうでしょうか?」
気を使ったお姉さんがぼくらに程度してきた。
「このガキと? 協力なんか足手まといだからごめんだが、俺が先にサンドドラゴンを退治すればいいんだな?」
「はい、ご自由に……」
「おうっじゃあ貰っとくぜ」
スキンヘッドの冒険者はお姉さんの手から依頼書をもぎ取り、ギルドをあとにした。
「ごめんなさいね。ここで決闘されても困りますので……」
「別に構わない」
「ちょっとお待ちください」
お姉さんはカウンターうしろにある棚から予備の依頼書をぼくに手渡した。
「依頼者にはあとから私が連絡しておきますので、すぐにサンドドラゴン討伐に出掛けてもオッケーです。ですが、充分お気をつけてくださいね」
「お、おおう、任せろ」
受付のお姉さんに見送られたぼくは早速、サンドドラゴンがいる西の熱砂の砂漠へと向かった。




