引き篭もり魔女と二人の若者
王都に入るのに流石にヤドカリハウスは目立つので、コンビニ店長に相談することにした。
それで外に出たぼくは早速コンビニを召喚した。
「おいでまし〜」
「早速だが店長っ相談がある」
「おや、ヤドカリハウスについでですか?」
「おっ、おおう……」
流石店長すでにぼくの悩みを知っている。しかし彼女の他人の心を読む能力凄すぎる。
プライベート守りたいから、ちょっとやめて欲しいな。
「今から王都に入るのだが、流石にこのヤドカリハウスで入るのは目立つのでなんとかならないか?」
「確かに目立たんといて……せやったらポケットに入るサイズに変えたらええんや」
「そんなこと出来るのか?」
「それじゃやり方お見せする」
そう言って店長は外に出た。疑問に思っていたけど彼女普通にコンビニの外に出れるんだな。
それならいつも一緒にいて欲しいが、店長だから無理なのかな。
さてぼくも外に出ると店長がヤドカリハウスの横に立ち手招きしていた。
呼ばれて側に寄ると店長がドア付近を指差し小窓を開けた。
それにはビックリ。まさかの隠し小窓だ。小窓の中にはボタン一つあった。それを店長は押すとヤドカリハウスがたちまち7センチサイズに縮んだ。
これでポケットに入るけど、逆に大きくするにはどうする? 確か前にもらった時に店長がヤドカリ投げて大きくしたけどもしそのやり方なら、ポケットに入れたまま間違って転んでヤドカリが巨大化したら惨事だ。
下手するとヤドカリに潰されて死ぬな。
「その心配はあらへんにほら、小さくなっても小窓の中のスイッチは健在やに、上手く開けてもう一度スイッチを押すと戻るで、そしたら投げればサイズアップする」
「おおっ、なるほど」
早速実践してスイッチ押してから投げたら元の巨大サイズに戻った。
まぁ、小と大どちらが元のサイズか不明だけどね。
ぼくはもう一度ヤドカリを小サイズに戻して手に取った。小さくなったヤドカリは人形みたいに動かなくなった。
死んでるかと思って店長に聞いたら違うらしい。そう言う機能らしく、巨大サイズになると動き出すらしい。
まぁ、ポケットに入れてワサワサ動かれるよりはフィギュアみたいに固まってくれた方がマシだ。
こうして店長と別れたぼくは王都を囲む壁正門入り口に向かった。
正門入り口入国審査室の前では、入場検査待ちの人たちが長蛇の列を作っていた。
ざっと見て50人位並んでいるみたいだ。ぼくも最後尾に並んで我慢強く待った。
一時間ほど並んでやっとぼくの番がきた。門番の兵士から手渡された紙に出身地と名前、性別、職業それと王都に来た目的を書いて提出。そのあと入管と対面していくつか質問されて、問題がなければ入国出来る。
ぼくは紙に書いて提出して入管と対面まで行けた。あとは面接してクリアすれば晴れて入国だ。
ドアの前で待っていると、中からぼくの名を呼ばれ緊張しながら中に入った。
すると待っていたのは顔にシワを刻んだ鋭い目つきの入管職員。
ぼくは彼に書類を渡した。
「ピピス・プシー年齢十六歳の魔法使い。出身はアルミーア地方か……そこは確か伝説の魔女アルケミーが住んでいた地だな……」
入管職員は書類に目を通すと鋭い目で睨んだ。出身地に関しては嘘は言っていない。一ついや二つだけ嘘を言った。
それは年齢と職業の不詳だ。でも正直に言ったら連行されて死刑だ。だから生きるために嘘をつく。
「伝説の魔女の地出身の魔法使いか……ところで王都にはなんの目的で?」
「……それはギルド登録しに」
「なに、魔法使いしといてまだギルド未登録か?」
入管職員の語尾が強くなる。やはり疑ぐっているのか、でも十六からギルド登録は珍しくないと思うけど……嘘なのにぼくはすでに十六歳気分だ。
命を賭けた自己暗示すごい……。
「あ、あのっ、十六歳からならふ、普通だと思う」
「なんだと? 確かにそうだが……しかしその装備は中々しっかりした魔法使いの格好じゃないか? アルミーア出身ならなおさら無名なのが解せん」
この男はぼくを疑ぐっている様子だ。
すると男は職員の男性を呼んだ。
「う〜む……お前が本当にアルミーア出身の魔法使いならこの王都にも出身者がいるハズだ。早急に探し出して確認を取れ」
男に命令された職員はすぐ出で行こうとした。で、ぼくは結果が出るまで待機しろと言われ大ピンチだ。今逃げても逃げなくても結果捕まる。
確かにアルミーア出身だけど、百年も前だからぼくを知っている人間はこの世にいない。
だから結果は判りきっている。つまりぼくの人生終わったのです。
「なぁ、この子は別に怪しとは思えないんだけど」
すると入国審査室に若い男女の二人組みが入って来て、入管職員に声を掛けた。
すると入管職員が慌てて立ちあがって態度が弱腰に急変した。ぼくとはえらい違いだな。
「これはコレは鷹城さまっいいところに来てくださいました。この者はアルミーア出身の魔法使いと言ってますが、どうにも怪しいと私は睨んでるのですわ……」
「怪しい? ごく普通の魔法使いの少女にしか見えないが?」
「あっ、そっそうですよね。私もそう思ってたのですが〜、少しは厳しくせんと思いましてね」
「いいから入国させてやれよ。なぁ弓美もそう思うだろ?」
鷹城とか言う黒髪の男が連れの黒髪ロングの女に意見を求めた。
すると彼女は目を瞑ってうなづく。
「そうね、わたしの真実を見る目を通しても別に怪し点はないわね」
「だろ、だから通してやれよ」
「あっハイ! わ、分かりましたっ、では通って良し!」
二人のおかげで急に態度を変えた入管職員がぼくを慌てて通した。
無事王都城下街に足を踏み入れると、先ほどぼくを助けてくれた男女が入管審査所から出で来て手を振った。
ぼくは礼を言うため彼らの側に近寄った。
「助かりました。ありがとうございます」
「いいってことよ。それより君も王様に呼ばれて来たのか?」
「え……」
「ちょっと真人っ! この子入管審査受けてたでしょう。王様に呼ばれるわけないでしょ?」
「あっ、そうか、そうだったね。変なこと聞いてごめんな」
鷹城は彼女に指摘されて照れ隠しにうしろ頭を掻いた。なんだか仲がいいカップルか……ぼくには無縁だな……。
とりあえず自己紹介しよう。
「あっ、あのっ、ぼくはこの王都で冒険者ギルド登録しに来たピピス・プシー十六歳魔法使いです」
「へー俺らと同い年じゃん。おっと俺の名は鷹城真人十六歳。職業は剣士」
「ではわたしの名は小桜弓美十六歳っ真人君と同じ日本から召喚されて来た異世界冒険者です」
「なぬっ! 異世界冒険者?」
噂なら聞いたことがある。
魔王軍に対抗するため各国の王たちが異世界から人を召喚して勇者にするべく動いていること。
通りで見たことのない格好にこの世界では珍しい黒髪なんだ。
なるほどこの若者は期待の勇者候補なんだ。ボッチで地味なぼくとは正反対だ……。




