引き篭もり魔女のマイダンジョン
ぼくは極度の人見知り魔女だ。
だから誰とも手を組まずダンジョンに引き篭もって魔法の研究に没頭してきた。そのおかげで誰にも邪魔されず水魔法と雷魔法、風魔法、そして物を動かす念魔法を極めた。
とはいえまだ火魔法、土魔法、回復魔法、召喚魔法と未習得魔法があるが、新たに極めるか未定だ。
それよりもスキルが欲しい。
この世にはスキルコアモンスターと言って、体内にコアを持つ魔物がダンジョンの最深部に自動発生する。倒すとコアだけが残り、それを体内に取り込むとスキルを習得出来る。
とはいえ頻繁に出る価値の低いコアや、滅多にしかお目にかかることのないレアスキルコアが存在する。
低レアの順に説明すると、カッパー、シルバー、ゴールドとなっていて、一番高レアなのがゴールドだ。シルバーはいくつかお目にかかったけど、ゴールドはまだなんだ。
さて、コアを有した魔物が出現するのは、世界にわずかしかないダンジョンだけ。各ダンジョン名は守護する女神の名から名付けられている。
例えばアテナダンジョン、ヴァルキュリアダンジョンと呼ばれている。そのダンジョンで出る高レアスキルは主に守護女神と関連があると呼ばれているな。だからどこも冒険者が殺到し争奪戦が繰り広げられていた。
それでコミ障のぼくがその中に加わるのは土台無理たな。仮に争奪戦に参加したと想像するとぼくは震えた。
さてさて、ぼくの名はピピス・プシー。百年間仲間も友だちも居ないぼっち魔女だ。
しかし百年も生きてたぼくは中学生にしか見えない童顔で身長も低い。だから童話に出るようなシワシワ鷲鼻老婆でなくて良かった。
そんで、髪の毛の色は紫のボブカット。黒のローブを羽織ってトンガリ帽子を被って形だけでも魔女っぽくしてる。が、まだまだ未熟だ。
そんな極度の人見知りするぼくは一人になるべく神々の山と呼ばれる山岳地帯に篭って数年。山の頂上で偶然手付かずのダンジョンを見つけた。
入り口にはこう書かれていた。『アマテラスダンジョン』聞いたことのない女神名だ。
だがそこでぼくはピンとキタ。このダンジョンはまだ誰も足を踏み入れたことのない聖域だと。
だからまだ見ぬレアスキルコアモンスターが現れる可能性があった。
だからぼくは誰も来れないように、念魔法で巨石を運び積んで入り口を隠した。そのおかげで誰一人アマテラスダンジョンに侵入する者はいなかった。
それから三年の月日が経ちぼくは毎日ダンジョンの最深部に通いコツコツとコアモンスターを狩ったが、金のレアスキルコアには一度もお目にかかることがなかった。
まぁ、ダンジョン独り占めしているからまったりやってるけど……。
そんな訳で今日もアマテラスダンジョンの最深部に向かっている最中だ。道の途中で魔物と遭遇するけどぼくの敵ではない。彼らはなす術なくぼくの経験値になるのであった。
□ □ □
アマテラスダンジョン最深部に到着した。エリアは結構広大で人工太陽のおかげで明るく植物が生えている高原のようだ。エリアの中心部には、円柱形の柱が組まれた赤いオブジェのような人工物が建っていた。用途は不明だ。
僕はいつものように赤い人工物の真ん中を潜り抜けると大きな広場に出た。そこでひたすらスキルモンスターが出現するのを待つのであった。
あれからスキルモンスターが現れず時間だけが過ぎていった。まぁやることないから暗くなるまで座って待つのみだ。
しかし眠くなってきたので僕は立ちあがって寝ぐらに帰ろうと背を向けた。
「ん…………!」
天井から光の柱が現れ一体のスキルモンスターが出現した。そいつは全身鉄製形容し難い物で構成されたゴーレムか?
正体不明な敵。
敵を知らずに戦いを挑むのは無謀の極み。まずは鑑定スキルで敵の正体を確かめる。ちなみに鑑定スキルは銀スキルコアからゲットした。なかなか便利なスキルだ。ちなみに何個もスキルをモノにすることが可能なんだ。
「鑑定スキル発動っ!」
鑑定スキルで分かることは魔物の名前とレベルと特長の三つだ。万が一レベルが自分より上の場合は逃げた方が良いが、相性がいい場合は勝てる場合がある。
とりあえず調べよう。鑑定結果が出た。
【 カデンゴーレムレベル100 特徴、電気をエネルギー源にする肉弾系戦闘スタイル。魔法は使えない。無毒タイプ。弱点は水と電気】
僕のレベルが80からしてカデンゴーレムは格上の出来らしい。だけど弱点を知って勝てる見込みがあると感じた。そう、敵との相性が良いのだ。
しかし、ここまで親切に弱点を教えてくれるなんて、便利な鑑定スキルだ。弱点である水魔法と雷魔法を上手く使えば勝てるハズだ。
さて問題は、魔法を使う順番であるな。とりあえず水魔法をカデンゴーレムにぶつけてみた。
「ウォーター魔法っ!」
周囲にある真水を集め敵に浴びせる攻撃魔法だ。しかしカデンゴーレムは微動だにしない。この魔法は飲み水を調達する時に凄く重宝するのだが、中々敵に対しては有効ではない。
「水がダメならライトニングッ!」
今度は雷の魔法をカデンゴーレムに浴びせた。すると水に濡れた全身がわずかにろう電したが、それだけだった。
「これもダメか……硬い装甲で守られている奴をろう電させるには内部からか……」
とはいえどうやって内部に傷をつける? そこで僕は考えた。その間カデンゴーレムが鋼鉄の拳で僕を殴りにくるから、避けながら答えを導き出す。
するとカデンゴーレムが岩を砕いて破片が装甲に当たった。
それを見て『ピン』とキタ!
そう、僕の念魔法で石を宙に浮かして、鳥飛ぶ速度で飛ばしてカデンゴーレムの関節部分に打つける。
思い立ったら早速やってみるのが僕なんだ。
「念動魔法っ石を浮かすんだ!」
大きめの石を一個浮かして、カデンゴーレムの右足関節に当てることに成功した。すると傷がついて機械内部が剥き出しになった。
そこで次の工程。水魔法の一つ塩水をカデンゴーレムに浴びせ、続けて雷魔ライトニングを放った。
『…………』
するとカデンゴーレムの破損した右ひざ関節がスパークし、片ひざ突いて動きを止めた。だけどこれでは倒せない。そこでトドメの特大念魔法発動。
僕の全魔力つぎ込んでカデンゴーレムよりデカい岩を持ちあげ叩き潰した。
すると僕のレベルが80から90にあがり、オマケに見たことのない虹色でメタリックなスキルコアがドロップした。
この虹色のスキルコアを見たら興奮が鳴り止まない。だって見たないし、金より上に見えたから超レアなスキルコアに違いない。
早速僕は手に取って体内に虹色スキルコアを取り込んだ。
ピコン!
『コンビニ召喚スキルレベル1を習得しました』
「 !! 」
『コンビニ召喚スキルってなんぞ?』そもそもコンビニとは一体どう言う意味なんだろう……。
レアスキルかと思って期待したのだが、正直言ってガッカリした。
とはいえ一度試しにコンビニ召喚スキルを使ってみよう。
「コンビニ召喚なのだ!」
とりあえず適当に呼んでみた。
すると目の前に、見たことのない四角い一階建ての建物が現れた。
「なんだこの建物は……」
前面ガラス張りで明るい室内の様子が確認出来た。中には棚が並び。なにやら見たことのない商品が陳列されていた。
「……と、とりあえず中に入ってみるか……」
僕は建物の入り口らしき場所に敷いたカーペットを踏むと、なんと透明のドアが自動で開いた。
魔法かなにかは知らないけど驚いた僕は、恐る恐る入り口に顔を出すと店内を覗いた。