表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/456

58.複合型神器

お読みいただきありがとうございます。

 話が戻った。フルードは一気に緊張した顔付きになったアマーリエに微笑みかける。


「私があなたを補佐します。神器を弱らせ、鎮静化するところまではやりますから。今回の神器は事故で暴走しただけに過ぎません。神ご自身や神の御意思を受けたものではないので、聖威師にも手向かいが可能です」


 優しい口調で励ますように言うと、気絶しているシュードンを聖威の結界で囲った。アマーリエは慌てて声をかける。


「は、早く神器を鎮めるための神器を用意しなくては! 他の聖威師も何名か呼び戻した方が……」


 返って来たのはあっさりした返事だった。


「私にはそういった補助神器は不要です。それから、あなたと話しながら他の聖威師に念話し、万一の時のフォローをお願いしておきました。おそらく必要ないですが、念には念を入れてです。それで十分です」


 要するに、自分一人で(こと)()りると言っているのだ。そしておそらく、聖威師たちはその言い分を認めた。だからこそ、この場には誰も来ていない。一人では難しいのであれば、それは無理だと言って他の誰かが駆け付けているはずだ。


『ですが、今から大神官が神器の対処で抜けられるなら、その間のラミルファ様のお相手は……?』


 これはラミルファの前で言うのは(はばか)られたので、念話する。ちらりと視線を向けると、当人は渋い顔をして、従神たちと何事か会話していた。漏れて来る声を聞くと、ミリエーナとダライ、ネイーシャの様子を視ながら、彼らについて話しているようだ。


 なお、フレイムはいつの間にか場所を移し、ラモスとディモスと話していた。こちらはミハロが出てきたことがきっかけだったのか、アマーリエの属国での暮らしについて聞いているようだ。聖獣たちが懸命に、アマーリエがどれだけ家族に馬鹿にされ苦しめられていたか訴えている。


 それぞれの様子を見ていると、フルードの答えが返って来た。


『抜けると言ってもほんの数瞬です。それくらいならば問題ないでしょう。万一何かあれば、他の聖威師が察して即座にカバーしてくれます。それも含めての念には念ですから』

「…………」


 アマーリエは呆然とした。神の力を宿した神器を鎮めるのにたった数瞬で済むはずがない。どう返せばいいのか分からず立ち尽くしていると、フルードは今度は肉声で、おっとりと言う。


「こちらのことは気にせず、あなたは正常化に集中しなさい。大丈夫、焔神様がご加護とお導きを下さいます」


 同時に神器の転送が完了する。出現したのは、巨大な数珠のような神器だった。一粒一粒が、人間の頭ほどの大きさがある。数珠玉が連なった輪の中に、大きな丸玉が二つ浮かんでいる。丸玉の一つは無地、もう一つは精緻な装飾が施されていた。


(な、何よあれ……あんな複雑な神器、見たことがないわ!)


 同時に、神器に気付いたラミルファと従神たちも声を上げた。


『おや……ほぅ、複合型の神器か』

『かなり大きいですな。これほどの物が下賜されるのは珍しい』

『昔は相当に名のある家だったのかもしれません』

『いえいえ、こんな神器大したことはありませんとも。最下級の神器です』

『ふふふ、お前は偽言の神だから嘘ばかり言う』


 主と従の神器が組み合わさり、一つの神器となったものを複合神器という。単一で使用する単独神器よりも効果、範囲、持続力などあらゆる面で遥かに強大だが、その分暴走した時の対応も比較にならないほど厄介だ。


 しかもこの神器は、おそらく主神器も従神器も複数ある。丸玉が主神器。輪になっている数珠玉が従だ。突出して力が大きい代わりに、暴走時の反動が特に激しい部類である。


 しかも、きちんと抑え込まれている状態ならばともかく、抑えもなく暴走しているとなれば――対神器用の神器を用いても危ないのではないだろうか。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ