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30.衝撃の念話

お読みいただきありがとうございます。

《あら……ルルアージュちゃん?》

《はい。私とお兄様、当利様と祐奈様、そしてリーリア神官長も、たった今、毒花の神器による襲撃を受けました》

「ええっ!?」

(ちょっと待って、天界にいる聖威師が全員襲われたの!?)


 アマーリエも目を瞠って腰を浮かせる。場にいる神々の視線がこちらに集中した。


《お父様からの念話で奇襲の報告と顛末をお知らせいただいた時、私たち兄妹は当利様と祐奈様、リーリア神官長と合流していましたの。そして念話が終わった直後、空間が割れて襲われましたのよ》


 やはり、奥からはエアニーヌと慧音の気配がしたという。


(今度はランドルフ君たちが一斉に狙われた……まさか聖威師を無差別に標的にしているの?)


 だが、一体何のために。


《怪我はなかったの?》


 ルルアージュの落ち着いた声から察するに、大事には至らなかったように思う。主神が共にいたのだから当然だが。そう思いながらも、念のために確認する。


《大丈夫ですよー。主神様の御力を借りなくても、僕たちだけで対処できましたしー。でも、当利大神官が良い加減にしろってキレちゃって、穴を切り裂いて二人を引っ張り出そうとしたところで閉じちゃって、逃げられたんです》

《当利大神官がかなり頭に来ておられて、今にもイデナウアー様の領域に乗り込みそうですのよ》

《そろそろ我慢の限界が近付いているわよね……少し待って、フレイムたちにも伝えるわ》


 アマーリエはそう言い置き、フレイム、フルード、ラミルファ、そして狼神に今の内容を話した。皆、念話が来たことを察していたのだろう。黙して待ってくれていた。


『ランドルフたちも被害に遭ったのか。レシスの関係か? だがリーリアに当真と祐奈も襲われてるしな』

『たまたまランドルフたちと共にいたから巻き込まれたか、あるいはレシスは無関係で、聖威師を標的にしているのかもしれないよ』


 フレイムの呟きにラミルファが反応した。フルードは眉根を寄せ、狼神は表情を変えず泰然としている。山吹色の目が思案げに細まった。


『……そういえば狼神様。変な襲撃があったせいで途中のままになってますけど。セインとアリステルを襲った神威の主は誰なんで――』


 だが、またしても最後まで言い切ることはできなかった。ランドルフたちの念話を強引にねじ切り、いきなり脳裏に声が響いたのだ。


《天界にいる聖威師とその主神に告ぎます》

『あん?』


 まだ幼さを残す声。フレイムが胡乱げに視線を揺らす。アマーリエは愕然とした。


「この声――エアニーヌだわ!」

『おや、連絡があったのかい? 反応を見るにフレイムにも聴こえているようだが』

『ああ、聖威師と主神を対象に念話網を張ってるっぽい。聖威師に関しては、天界にいるってわざわざ限定してたから、地上番をしてるチビたちは対象外みたいだけどな』

『へぇ。酷いなぁ、僕と狼神様はさっきからずっと仲間外れだ。これでも協力しているのだから、混ぜて欲しいな。強引に念話網に加わるか、こっそり念話経路に侵入して盗聴してしまおうかな〜』

『お前はただ面白そうなことに首突っ込んで引っかき回したいだけだろ! ……だが、まぁ何やかやで手を貸してくれてはいるからな』


 不承不承といった様子で認めたフレイムが、アマーリエを一瞥した。


『ユフィー、コイツと狼神様、セインにも聴いてもらって良いか。俺たち主神も念話網に入ってる以上、この念話の内容は聖威師だけの内輪話にはできねえだろう。俺が口を噤んでも、どのみち他の主神から神々に伝わっちまう。なら今聴いてもらっても同じことだ』

「そうね……分かったわ」


 アマーリエは振り絞るような声で頷いた。せめて主神を抜いて大神官と神官長だけに念話してくれていたら、まずいことを口走っても内々に処理できたかもしれないのに。


 その間にも、愉悦を帯びたエアニーヌの言葉は続く。姿が見えずとも、勝ち誇っていることが分かる声だ。


《私は帝国神官エアニーヌ・スージー・アウスト。皇国神官の楷園(かいえん)慧音も共におります》


 聞いているだけで、脳裏に警鐘がガンガン鳴り響く。これは絶対にろくなことにならない。探し人たちは確実に何かしでかす。

 一方のフレイムは、彼も彼で話を進めている。


『すまんな。ユフィー。……っつーことだラミルファ。お前と狼神様、セインも念話網に入れる。だが、口を挟まずこっそり聞くだけにしてくれ』

『傍聴者だね、良いよ良いよ。良い子の邪神君は素直に言うことを聞いてあげよう』


 双眸を三日月型に細めて快諾したラミルファに小さく舌打ちとひと睨みを送ったフレイムは、狼神とフルードにも目を向けた。両者から頷きが返るのを確認し、念話網に三神を追加する。静観するという約束の通り、誰も思念を発さない。


 三神が密かに念話に入り込んだ直後、得意満面の顔が浮かぶような念話相手から、衝撃の台詞が紡がれる。


《これより後、中央本府の長はこの私エアニーヌと慧音が引き継ぎます。現職の皆様は全員、今すぐ完全昇天して下さい》

ありがとうございました。

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