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69.怒涛の展開

お読みいただきありがとうございます。

 したり顔でのたまったラミルファが、つと灰緑の眼差しを改める。


『5年前に特別降臨して以降、尊重派と帰還派が入り混じる天界で、僕とフレイムはどうすればこの問題を解決できるか考えた。結果、滞留継続の可否という表面的な問題ではなく、根幹にある天の怒りをどうにかしなければ収まらないと悟ったのだよ』

『んで、今回の一時昇天が最大のチャンスだと思った。普段ならほぼ確実に神罰牢行きのやらかしをした精霊たちが、お前たちの帰天が慶事だって理由でどんどん恩赦になるんだ。普通はこんなことない。それだけ神々が喜んでる証だ。今この時を逃さなければイケるかもしれないと感じたぜ』


 続きを引き取ったフレイムが眦を下げ、口元をほろ苦く綻ばせた。


『神の同胞への愛がどれだけ絶対的で不変で不動かは、俺が身をもって体感したからな』


 かつて精霊たちに注いでいた揺るぎない想いすら、神々という同胞を得た瞬間、業火の中に飛び込んだ粉雪のごとく溶け消えてしまった。この世界における神々の絆は、この上なく強く大きい。


『御二方から協力して欲しいと相談を受けた際は仰天しましたぞ。焔神様は煉神様に、骸邪神様は葬邪神様と疫神様にも助力を打診し、快諾した三神の支援も受けながら奔走しておられたのです。全ては聖威師のために。尊重派の鑑ですなぁ』


 ルファリオンに戦神、闘神、魔神と言った聖威師側の神々も、俺たちに任せとけとばかりに最古神の知識や情報網を駆使して援護してくれたという。

 フレイムとラミルファを一瞥した狼神が、口の中で呟いた。


『煉神様、葬邪神様、そして疫神様も驚嘆なされただろう。あの御三方も似たようなことをなさろうとしていた。だが、まさか同じことを若神が思い付くとは。……やはり煉神様と葬邪神様の後継は、焔神様と骸邪神様になるか』


 だが、その声はあまりに小さく、神の聴力をもってしても聞き取れなかった。

 ラミルファがアマーリエたちを見回す。


『今後についてだが。僕とフレイムが尊重派の、狼神様が帰還派の代表として、聖威師の滞留継続について決定する高次会議で、追加の要望書を出す』

「追加の要望書……どのような内容ですの?」


 話が核心に迫って来た気配を察したか、幾分か緊張した様子のリーリアが尋ねた。


『まだ概要だから、今後変更があるかもしれないが――』


 そう前置きし、ラミルファが語った内容は以下のものだった。


 帰還派は、〝尊重派が多数になり滞留が継続されたとしても、期限を決めて欲しい。いくら特例を制定したとはいえ、いつまでもこの状態を引き延ばすことは承服しかねる〟

 尊重派は、〝帰還派が多数になり滞留が廃止されたとしても、猶予を設けてやって欲しい。廃止が決まってすぐに問答無用で帰天させるのではなく、準備期間を与えて欲しい〟


『一部とはいえ主だった帰還派と尊重派、高位神には根回しが済んでるから、要望は通るぜ。帰還派が提示する期限と、尊重派が提案する猶予は、どっちも500年だ』

『つまり、どちらが勝とうとも、聖威師は500年後には滞留できなくなる。それ以降は、寵を得れば即時昇天か、猶予を与えられるとしても数日から一年ほどになるだろう。だが、根幹の理由となっている神の怒りが消えるのだから、滞留できなくなっても問題はない』


 その瞳に深い意思を宿すフレイムとラミルファは、若神とはいえれっきとした高位神だ。


『先にも言ったが、このまま対症療法でズルズルと現状維持を続けても、いつかは限界が来る。今回は尊重派の票が勝って凌げたとしても、帰還派は何度でも同じ議題を神会議に諮り続けるだろう。泥沼になるよりは、期限を決めてでもここで問題を根源から断ち切り、終幕への道筋を付けるべきだ。――もう終わらせよう』

『後は、まだ交渉してない神々とも話を付けるだけだ。ややこしい奴らは全部クリア済みだから、問題ないだろう。……で、ユフィーたちからも、一回帰還派に話をして欲しい。ちゃんと還る、自分たちの家は天界だって。そしたら皆安心するだろうぜ』

「分かったわ」


 怒涛の展開に気圧されながらも、アマーリエは頷いた。隣ではリーリアも小刻みに首を縦に振っている。ランドルフたちはさすがというべきか、動揺を見せていない。だが、三千年以上もの間、膠着していた状況が一気に動いたことに、瞳が輝いている。


『神の怒りが消えれば、天威師はお役御免で全員超天に還られるだろう。元々、神怒が無くなるまでの期間限定の降臨という立場だからな』

『だが、まだ問題が残ってる。滞留廃止になれば、聖威師が太古からやって来た神器鎮静と強大な猛威への対応ができなくなる』

(そうよ、それはどうするのかしら)


 アマーリエがずっと気になっていたことに、フレイムが触れてくれた。

ありがとうございました。

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