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27.私のフレイム 前編

お読みいただきありがとうございます。

 ◆◆◆


「ああ、クタクタだわ……」


 大饗宴が終わった後。フレイムの神域に戻ったアマーリエは、だだっ広いベッドに腰掛けていた。体が埋まってしまいそうなほど柔らかなベッドは、一体何名分なのかと思うほど大きい。室内の所々に、炎を象った装飾品が置かれている。


『今日は色々あったからな』


 当然のように同じ部屋にいるフレイム。ここは彼の私室の一つだ。


「大樹たちはもう寝たかしら」

『だと思うぜ。アイツらも相当疲れてたろ』


 天馬の暴走が落着し、ちびっ子たちの元に戻ると、アマーリエを案じて泣きじゃくっていた美種とアンディに両側からしがみ付かれた。ミンディと大樹、高芽も顔色が悪く、彼らの主神たちからも一様に心配そうな眼差しを向けられた。


 なかなか泣きやまない年下二人をぶら下げたアマーリエは、誰も怪我なく収まったので大丈夫だと何度も説明し、美種が天馬のことも気にしていたのでそちらも重罰はないと言い聞かせた。


 宥めすかした末、ようやく落ち着いた美種とアンディはそのまま寝入ってしまい、桃神と水晶神の領域へ連れて行かれた。大樹たちも、拝謁から宴、馬の暴走と有事が立て続いたことで疲労の影が濃かったため、宴の席には帰らず主神の元で休ませることになった。


 アマーリエは宴に戻り、リーリアやランドルフたちに情報共有をした後で会場を回り、神々と談笑しながらお開きの時間まで残っていた。

 情報共有では、天馬の暴走の件以外にも、例の意味不明な交信――天の神々に自分を愛し子にして欲しいと手当たり次第売り込んでいる神官がいるらしい――について伝えると、氷点下の笑顔でキレたランドルフがその場で主任神官に念話し、対応を要請していた。両親の美貌を均等に受け継いだランドルフだが、笑いながらブチ切れる怒り方は確実に父親譲りだろう。


『ところで、本当に俺の部屋に滞在するので良いのか? もちろん俺は嬉しいが、一人でゆっくり休みたいんじゃねえか?』

「そんなことないわ。むしろフレイムと一緒にいたいの。夫婦なのだし、フレイムが迷惑でなければ同じ部屋にいられれば良いと思って」

『迷惑なわけないだろ。大歓迎なんだぜ。ユフィー用の神殿も用意してるから、誰もいねえトコで考え事したい時とかはそっち使って良いからな』

「ありがとう」


 隣に腰掛けたフレイムに甘えるように体を寄せると、長い指がそっと髪をすいた。湯浴みを済ませたばかりの体から、ふわりと石鹸の香りが漂う。従神や精霊は下がらせているため、今のここは自分たちだけの空間だ。


「ラモスとディモスはどうだった?」

『母神の従神たちにたっぷり可愛がられてたぜ』

「そう。良かったわ」


 アマーリエが入浴している間、フレイムは火神の領域に参じていた。馬の暴走の件を報告するためだ。フレイムが真の神格を表出させた気配は、火神も察知していただろう。何かが起こったことは悟られていたはずなので、どのみち報告は必要だった。



 ――被害に遭った当事者のユフィーが同席してたら、逆に母神が熱くなっちまうかもしれねえ。俺がさらっと話して来る



 そう言って出かけたフレイムは、火神の元に滞在している聖獣たちの様子も見てきてくれた。早くも主神の神域にすっかり馴染み、皆によしよしされてゴロゴロと喉を鳴らしていたという。アマーリエが危うく神罰牢に落ちかけたと聞いた時は二頭そろって跳ね起き、誰にも怪我はないとフレイムが強調したことで胸を撫で下ろしていたそうだ。


(ラモスとディモスにも心配をかけてしまったわ)


 今度会った時には元気な姿を見せようと決めるアマーリエの耳に、続きがの言葉滑り込んだ。


『肝心の母神は、義娘(ユフィー)義息子(セイン)があわやになったってことでかなり怒ってて、どうなるかと思ったけどな。お前たちがどっちも無事だったから何とか収まったぜ』

「そ、そう……」


 サラリと付け足された情報に、声が引き攣る。火神は情に篤く包容力があるが、その反面烈火の気性の持ち主だ。そんな母神の性情を色濃く受け継いだのが長姉のブレイズだという。普段はとても懐が深く面倒見が良いが、一度怒らせると燃えまくって大変なことになるそうだ。

ありがとうございました。

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