6.アマーリエの従神
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「神使が正真正銘の神になれる確実な方法は、大きく分けて二つある。一つ目は、神から寵を受けること」
聖威師と同様のパターンだ。かくいうフレイムもこれに当たるのだろう。精霊から火神の神使に抜擢され、さらに寵を得て焔神にまでなったのだから。
「二つ目は、神から箔付けじゃない本当の意味での神格を賜ること。寵を与えなくても、神格だけ授けることもできる。ただそのためには、神にめちゃくちゃ気に入られるか、神に対して相当な貢献をしたり、顕著な功績を上げたりしないといけない」
フレイムの従神たちは二つ目に該当するはずだ。かつて精霊として共に過ごした者たちの一部を自身の使役にし、さらに一部を従神にしたと、以前話してくれた。
そのため、フレイムと従神、使役たちは、皆仲が良く互いの距離も近い。主従ではあるが、精霊時代からの旧友という側面も持っているからだ。
「ちなみに、寵や神格を与えるのはその使役の主神じゃなくても良い」
「他の神でも良いの?」
「ああ。例えば、他の神の使役で俺がめちゃくちゃ気に入ったヤツがいたら、その使役に俺から神格を与えることもできる。けど普通は、寵はともかく神格を与えるのは、大抵主神が行う。主神にアイツいいぜって伝えて、それを受けた主神が神格を授ける場合が多い」
それはそうだろう。いくらお気に召したとしても、主神を差し置いて他の神の使役に干渉するのは褒められたことではない。愛し子や宝玉などを得ることに関しては、全ての神に認められた権利のようなので、また違うかもしれないが。
「特にラモスとディモスに関しては、最高神の使徒だ。主神の同意なく介入するべきじゃない。まずは主たる火神に申し出ることになる」
「じゃあ、もしかして……」
「ラミルファ、泡神様、波神様の要請書がその役割を果たしたってことだな。何柱のどの神から届いたかでも扱いが変わるんだが、三柱以上の高位神からの要請がある場合、その内容は原則承認される」
「そうなの!?」
どうしても応じられない理由があるか、その使役がよほど主神から嫌われていた場合は別だが、そうでなければ基本的に要請が通るそうだ。神々の中でも一握りしかいない色持ちの神の意向は、最高神でも無下にできないほどの力を持つ。
なお、普通の神の使役ならば、高位神一柱からの推薦があれば即座に通る。だが今回の場合は主神が火神であるため、基準が厳しいのだという。
「三柱以上の高位神が厚遇を申し入れた時点で、その神使は正真正銘の意味での神格を与えられる。正式な神として迎え入れることが、神使に対する最大の配慮にして高待遇だからだ」
ラミルファ、フロース、ウェイブ。色持ちの神である三名が要請したことで、滅多にクリアされない条件が満たされた。
なお、今回の件に関しては、フレイムは厚遇の要請書を書けないそうだ。ラモスとディモスはフレイムが直接見出しており、しかも愛し子であるアマーリエの獣だ。肩入れするのは当然だと見なされ、公平性の観点から受け付けてもらえないという。
『私とラモスは正式に神格を賜り、正真正銘の意味で神にしていただけました』
『その際、ディモスと共に、今後どうしたいかを確認されました。火神様の従神になる道もあれば、従神にはならないこともできると。我らは火神様にお仕えする所存であると伝え、叶うならば時折は主と見える位置にいられれば嬉しいと答えました』
すると、火神はこう采配したのだという。
『火神様はこう仰いました。〝ならばそなたらを我が従神とした上で、アマーリエ付きとして出向させよう〟と』
「私付き?」
『はい。ご主人様は高位神ですから、昇天した暁にはご自身の従神と神使を持つことになります。ですので、私とラモスがその第一号となるようにとの仰せでした』
火神とアマーリエ、双方の従神という位置付けになるそうだ。
『火神様が自身の従神を遣わすほど主を気に入っているという証明にもなり、主にとっても悪いことではないだろうと』
火神は義娘となったアマーリエをとても可愛がってくれている。そのことが可視化されるだけでなく、昇天後もラモスとディモスとずっと共にいられる。願ってもない決定だが、当のアマーリエは別のことが気になった。
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