ポッキーゲーム・いちご味
「紗香さん、ポッキーゲームしない?」
「しないよ」
「なんでさ」
「だって、みちるの口のポッキー」
「うん」
「チョコ側を咥えてるじゃん」
「うん」
「私、チョコ少なくて損した気分じゃん」
「なんてケチくさい発想!」
「その感覚がダメなのさ。いい、みちる? ハサミを人に渡す時、刃のほうを人に向けないでしょ?」
「危ないから」
「それと同じ。これは気遣いだよ。相手のことを思う気持ちが重要」
「うーん。でもさ、ハサミって刃が主役でしょ。ポッキーはチョコ。ならチョコ側を私に向けるのが自然では」
「なんだと……あと……チョコが溶けて唇についたら、唇が重なった時に汚そうで……」
「誰もキスなんて言ってないけど」
「ぐぬぬ」
「あと、紗香さんの鞄の中から見えてるよ、いちごポッキー。なんで」
「え……ファーストキスはいちごの味がするもの……だから??」
「ぬふふ。じゃあいちご味をあげる。だけどキスじゃないよ。これはポッキーゲーム。はいスタート」
「痛っ!? がつって音したし、クラッカー味しかしないよ?」
「私は大変なものを盗んでいきました」
「いちご?」
「あなたの心です」
上手く返せなくて私の声は小さくなる。
「私はいま、事件の現場に来ています。」