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第5章 「試験対策講座の模擬面接」

 こうして敬愛する幹部将校の御二方に活を入れて頂いた私は、その日の勤務内容を順調にこなしていったんだ。

 地下射撃場でのレーザーライフルを用いた射撃訓練に近接格闘術の訓練、そしてパソコン端末を用いたデスクワーク。

 歳末特別警戒の期間中とは言えども、この辺りに関しては普段の勤務日と似たりよったりだったの。

 普段の勤務日とちょっとだけ違うのは、昼休み明けに履修した昇級試験の対策講座だったね。

 年明けに行われる少佐への昇級試験の受験希望者を対象とした対策講座は、堺県第二支局の会議室や小教室で開講されているんだ。

 一コマの所要時間は一時間半だから、体感的には一般的な大学の講義に近いかな。

 教導隊の御姉様方が講師を担当される対策講座は好きなのを受講して良いから、自分のペースに合ったカリキュラムを組めて助かるよね。

 この辺の融通が利く所も、大学の講義や自動車教習所の授業に近いかな。

 講義内容は多岐に渡っていて、筆記試験対策の座学や模試もあれば、本番さながらの模擬面接だって開講されているの。

 中でも模擬面接は、本番の面接試験で面接官を担当される幹部将校の方にも御越し頂いているから、空気感に至るまで事前に体感出来るのが有り難いよね。

 この模擬面接の終了後には長所や改善点等を個別に指摘して頂けるから、回数をこなす毎に着実に合格へと近づいていく実感が得られるんだよ。

 それに他の受講生の子達の模擬面接も、見ていて参考になるよね。


 さっきは便宜的に「受講生の子達」とは言ったけど、私と同年代の中高生ばかりとは限らないんだ。

 入隊時期やキャリアの積み重ね具合なんかは人それぞれだし、下士官である特命機動隊から地道にキャリアを積み重ねられた方に至っては普通に成人年齢を越えているからね。

 脳松果体の肥大発達によって特殊能力サイフォースを発現した私達は特命遊撃士として直ちに士官になれるけど、そうじゃない志願入隊の子達は特命機動隊でキャリアを重ねていく事になるんだ。

 訓練課程を終えて三曹の階級を頂いたら、分隊に配属されて軍事作戦への参加が出来るようになるの。

 大きなトラブルもなく順調に昇級していけば、下士官の最上位である准尉までは大抵昇級出来るんだよ。

 そうして准尉にまで昇級した特命機動隊の子達が少尉への昇級条件を満たしたら、特命遊撃士ではなくて特命教導隊へ配属される事になるんだ。

 これらの事情から、教導服を御召しでありながら佐官の証である金色の飾緒を御着けでない方は、豊富な実戦経験と長い軍隊生活で皆から一目置かれているんだ。

 捧げ銃や敬礼といった基本教練の礼式だって、私達とは比べ物にならない程に洗練されているんだから。

 私としても、ああいう洗練された敬礼が出来るようになりたい所だね。


 勿論、私と同年代の准佐の子達の模擬面接だって大いに参考になったよ。

 特に堺県立御子柴高校一年A組のクラスメイトの子達の回なんかは、我が事のように食い入って見ちゃったなぁ。

 模擬面接の見学で特に面白かったのは、意外な人の意外な一面を見る事が出来た点だね。

 エネルギーランサーを個人兵装に選んだフレイア・ブリュンヒルデ准佐なんかは、その点が特に顕著だったよ。

 フィンランドの名門貴族であるブリュンヒルデ公爵家の御嬢様という肩書を持つフレイアちゃんは、普段はとっても自信満々で気位の高い性格なんだけど、模擬面接では様子が違っちゃってたんだ。

『それでは、貴官の氏名と階級と所属を伝えて下さい。』

『はっ!承知致しました、大沢実花大佐!自分は人類防衛機構極東支部近畿ブロック堺県第二支局所属特命遊撃士、フレイア・ブリュンヒルデ准佐で御座いますわ!あっ…』

 こんな感じなんだよね。

 フレイアちゃんったら面接の自己紹介にも関わらず、普段の言葉遣いがポロッと出ちゃったんだよ。

 これが丁寧な御嬢様口調だからまだマシだったけど、そこはやっぱり「であります。」で締め括った方が様になるよね。

 フレイアちゃん自身も、自分のやらかしに気付いたんだろうな。

 ほんの一瞬だったけど、フランス人形みたいな美貌を強張らせて、ヘアバンドで束ねたセミロングの金髪もビクッと震わせていたからね。

 幸いにして間髪入れずに保ち直したものの、内心では相当に動揺していたと思うよ。

 そんなフレイアちゃんと対照的だったのは、その次に模擬面接を行った神楽岡葵ちゃんだったね。

 普段のホワホワした明朗快活な雰囲気は何処へやら。

 入退室から受け答えに至るまで、至って生真面目にこなしていたんだ。

 腰まで伸ばしたピンク色のストレートヘアを僅かに揺らして退室する姿勢なんかは、何とも颯爽としていたね。

 そのせいで、フレイアちゃんの些細な失敗が余計に目立っちゃっていたの。

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― 新着の感想 ―
[一言] フレイアちゃん(;゜Д゜) いやでもクセってのはなかなか抜けないもんよなぁ(;゜Д゜)
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