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孤独の勇者ゲームを始める  作者: 名録史郎


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勇者としての戦い

 僕は出陣の準備をしていた。

 鎧を身につけていると

「おい。本当に一人でいくのかよ」 

 エレンが抗議してくる。

「僕を誰と思っているんだ。ドラゴンすら倒せる単騎最強の勇者だぞ」

「しってるよ。でも、あくまで単騎でだろ。相手は軍隊なんだぞ」

 僕もわかっている。

 どんな奴にも負ける気はしないが、

 僕は長期戦にあまり向いてない。

 というより、あまり経験がない。

 憎しみの赴くままに敵を倒すことしかしてこなかったから。

「わかってるよ」

 僕も今回はそれなりに事前に作戦を立てている。

 無策で突っ込むわけではない。

 勝算はある。

「それよりもエレン、東の勇者の説得頼むぞ。さすがに一対一で互角のあいつが一緒に攻めてきたらどうしようもない」

「それは任せろ。大丈夫だ。だが……」

「しつこいな。それに倒すんじゃなくて、この森に侵入しないように、追い払うだけだ」

「だから、そっちの方が難しいだろ」

 確かに広範囲高威力魔法で殺してしまう方が楽だろう。

 僕は人を守る勇者を辞めるつもりはない。

 楽な道をただ進むのが勇者ではない。

 

 僕は同じように出発の準備をしていたカレンちゃんに話しかける。

「魔族のことは、カレンちゃんも頼むよ」

「はい。任せてください」

 カレンちゃんの任務は、他の魔族たちに伝えてできるだけ避難させること。

 森にいるより、できるだけ魔王城に近づいた方が安全だろう。

 カレンちゃんの友達は、僕の友達だ。

 僕は友達の友達もみんな守ってみせる。

「ちゃんとクランさんとエレンさんは、味方だって伝えますね」

「無理しないでよ。カレンちゃんが嫌われない程度でいいから」

 カレンちゃんが、人間の仲間になったと思われて、攻撃されたりしたら意味がない。

「大丈夫です。みんなわかってくれます」

 にっこりいつもの笑顔だ。

 心配だけど、信じるしかない。


「クランは勝手に全部魔王と決めてさ」

 エレンはまだ拗ねている。

「なんだよ。他にいい案があったのか」

「それはないんだが」

「相談しなかったのは悪かったよ。だけど、大地の勇者に勝てるのは僕しかいないし、東の勇者を説得できるのはエレンしかいない、魔族と話をできるのはカレンちゃんしかいないだろ」

 みんなで一人の敵を倒すわけではない。

 そもそも敵を倒すだけならば、僕一人いればいい。

 だけど、勇者を攻略する方法は、なにも倒すことだけではない。

 それぞれがそれぞれの役割をこなす。

 そういうパーティーの形があってもいいだろう。

「頼りにはしてるんだ」

 僕はエレンの目をまっすぐ見てそう言った。

「その言い方は卑怯だろう」

 エレンははーと息をはいた。

「わかった。俺も、クランのこと信じてるからな。絶対死ぬなよ」


「もちろん」 

 僕はうなずいた。


 僕らは、それぞれ自分が向かうべき場所へと向かった。

 僕らはバラバラに行動しても間違いなくパーティーだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 僕は森の前の見晴らしのいい岩の上に座って待っていた。


 大地の勇者を先頭に、軍隊が近づいてくる。

 大将が先陣切ってくるとは、たいした自信だ。

「加勢に来てくれたのか?」

 大地の勇者がそんなことを言う。


 僕は笑った。

「いや、違うよ」 

 僕は、立ち上がって、大地の勇者に対して、剣を抜いて構えた。 


「何のまねだ。西の勇者?」

 そうなるよな。

 本当なら、僕が大地の勇者と戦う理由がない。

「ここから先には行かせない。君たちが危険な目にあうだろうからな」 

 僕は、そういうことにした。

 あくまで敵対したいのではなく、通せんぼ。

 何も言わずに引いてくれることを期待する。

 そんなことにはならないこともわかってはいるけれど。

「何をいっている。君が火竜を倒してくれた。森には、もう弱い魔物しか残っていない」

 そんなことは知っている。

「大地の勇者、君達がオークの村を滅ぼしたんだ。すぐ魔王軍がやってくるだろう」

 僕は、魔王軍が絶対こないことも知っている。

「ほとんど強い魔族は、天空の勇者が引き受けてくれている」

 さすが国の軍隊。

 さすがは、森羅万象勇者。

 勇者間でちゃんと、連携ができている。

 大地の勇者が言うことは正しい。

 それでも、僕は首を振って否定する。

「まだ強い魔族は残っているぞ」

 僕はそんな魔族がいないことも知っている。

「仮にそうだったとして、進軍をやめる理由はない。今は千載一遇の好機だ。わかっているのか」

 わかっている。だから行かせられない。

「君達、四方守護勇者は好きにやらせている。だが軍に楯突くなら、勇者の称号も剥奪だぞ」

 そうきたか。

 もうドラゴンを倒す必要はないからいらないといえばいらないが、僕はようやくこの勇者の称号に愛着持ち始めている。

「なにを言っているんだ。四方守護勇者とは最強の四人という意味だ。剥奪したければ、僕を倒してみせろ」

 剥奪して、次の奴に与えたければ、与えたらいい。

「僕は西を司る四方守護勇者」

 僕は勝手に名乗るだけだ。

 皮肉にも、東に進んでいたはずの僕は、魔族から見て今西側を守っている。

「君達をここから先に行かせるわけにはいかない」

 僕はこの立場を貫く。


「反逆罪だぞ」


 大地の勇者がそんなことをいう。

 罪かどうかを決めるのは僕だ。

 僕は心の赴くままに、行動する。

 これまでも、これからも。 


「むしろ感謝しろ。僕が思い描く未来に」


 人と魔族が共に生きる世界。 


「守ってみせる」


 人も魔族もすべて。


 戦いの火蓋が切って落とされた。

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