勇者パーティーを結成する
僕はカレンちゃんに、渡されたおにぎりを頬張る。
「えへへ。今日は味がしますね」
「そうだね」
涙の跡は残っているが、カレンちゃんは、ゲームと同様の明るさを見せてくれる。
から元気だとは思う。
それでも沈んでいるよりはいい。
僕がゲームで魔王と話をつけている間、
エレンとカレンちゃんは、焼け跡から、食料をかき集めてくれていた。
僕が早めに消火活動をしたのもあって、相当量残っていた。
当分食べ物には困らないだろう。
それだけはよかった。
天気はいいし、寒くもない。
オークの家はどれもこれも半壊しているので、僕らは外で焚火をたいて、三人で火を囲った。
空には満天の星。
「ずっとお二人と現実でもこんな風に話してみたいと思っていたんです」
ゲームの中では、よくゆっくり話をしていた。
お互い現実のことに触れないように話題を選びながら。
隠し事はもうない。
ようやく自由に話すことができる。
「それにしても、エリックさんが女の人だったなんて、ビックリです」
「僕もだよ」
僕も同意する。
カレンちゃんは見ていると、本物だなぁと思えるが、
エレンは見ていても、目をこすりたくなる。
いつまでたってもなじまない。
「本当の名前はエレンで、私の名前に似ていて、姉妹になった気分です」
カレンちゃんは、嬉しそうだった。
「クランがカレンちゃんと呼ぶたびに、俺も反応しそうだったからな」
何を言っているんだ。
「お前にちゃんなんてつけて呼ぶわけないだろう」
「いいじゃないか。つけてくれても」
気が合う男友達ができたと思っていたのだ。
実は女だったなんてそれはないだろう。
「敬称なんて、一生つけるかよ」
「言ったな。じゃあ敬称つけたら、俺の言うこと一つきいてもらうからな」
「いいだろう」
つけるわけないだろう。
こんな男女。
呼び捨てで十分だ。
「クランさんも勇者だったなんて驚きです」
「ごめんね」
魔族にとっては天敵だろう。
「もうそれはいいっこなしです。それよりもクランさんは勇者ってことは、王女様と結婚するんですか」
そういうことが気になるお年頃。
まあ、みんなで恋愛ゲームをしていたし、気になるだろう。
王族は元は勇者が多いと聞いたことがある。
ただもう僕には関係ない。
なぜなら、
「もう魔王は倒さないし、結婚なんてできないよ」
「王女様と結婚はしたいんですか」
「大会で遠目にしか見てないけど、美人にみえたし、王女の方が僕を好きになってくれるなら、してもいいけどね」
形式だけの結婚ならいらない。
もらえるなら、僕は王位より愛情がほしい。
そもそも王女と結婚なんて有り得ないだろうけど。
「ふーん。そうかよ」
なんだかエレンは僕の回答が不服そうだった。
「僕なんかより、エレンの恋愛感の方が謎なんだけど。エレンは、女だけど、女が好きなのか? ゲームの中で男のキャラ使っていただろう?」
「違うぞ、恋愛ゲームだというから、好みの男を作り上げたら、自分の操作キャラだったというだけだ」
「そんな勘違いもあるのか」
確かにあのゲームは説明が少ない。
ゲームを楽しむためにわざと少なくしているようだが、
そんな勘違いをするのは欠点だろう。
あとで魔王に文句言っておこう。
それはともかく、
「じゃあ、なんで今も男口調なんだよ」
「なんか癖付いちゃって、ほかの奴となら一人称も私だし、もっとおしとやかに話すぞ」
「嘘だろう」
信じられない。
エレンがおしとやかってどんな感じなんだ。
「もう一つ聞きたいんだが、エレンの信仰しているあの神は何の神だ?」
「知らん」
「知らんって、お前、何の神かも知らずに信仰して、啓示まで受けたのか」
「かっこいいだろ?」
信じられない回答だった。
「見た目だけで、信仰を決めるなよ」
操作キャラといい、信仰している神といい、
エレンはごつい奴が好みなのだろうか。
でも東の勇者が好きで、あのパーティーにはいったのではないのだろうか?
東の勇者は、もちろん屈強な体だとは思うが、大男というほどでもない。
「エレンは東の勇者のこと好きなんだろう」
「好きだぞ」
「どのくらい好きなんだ?」
「大好きだ」
迷いのない即答。
体の良さもだが、顔も大事ということだろう。
「別に、俺のことはいいだろう。もっと楽しい話しようぜ」
「どんなだよ」
「もちろんゲームの話だ」
さすがに野宿でゲームに入るわけにはいかない。
「じゃあ、やってみたい他のゲームの話をするか。あれだけ技術力があれば、魔王はいろんなゲーム作れると思うんだ」
「それなら、現実がゲームっぽい世界だったらさ。面白いと思わないか」
「現実がゲームぽい?」
いまいちイメージができない。
「例えば、体力ゲージとかあると面白くないか」
「なんか新しいな」
「だろ! 現実だったら、急所にあたるかどうかが重要だろ。そのゲームでは体力ゲージがゼロになったらやっつけられるようにするんだよ」
なるほど。
目に見えて強さが把握できるというのは面白いかもしれない。
「そうだなぁ。それなら、攻撃力とか防御力とか魔力量とかも数値で見れると面白くなりそうだな」
「熟練度みたいなのも、あるといいかも知れません。敵を倒すと、経験値みたいなのがもらえて、強くなっていくとか」
「そんなのがありなら、魔法とかスキルは一覧から選ぶだけとかどう?」
「いいねぇ」
想像が膨らむ。
「あとはステータスとか戦う前に見えたりするんだよ」
「いいなぁ。そんな世界は、確実に勝てる敵だけ戦っていけるじゃないか」
「試しに自分達のステータス書いてみようぜ。クランはこんな感じかな」
エレンは、枝を握ると、地面にステータスを書いていく。
クラン レベル100
称号 西の勇者
魔法 精霊魔法
神聖魔法 サンダルフォン
「レベルってなんだ?」
「強さの指針かな。ゲームの中でちらっと見たことがある」
「100ってことは最大か」
「そうなるな」
「伸びしろが欲しいから90ぐらいにしてくれ」
「わかった。レベルは90な。なんか特技はないのか」
「なんだろう。釣りかな」
「もっと戦闘につかうようなやつだよ」
「僕は魔法使いだから」
「クラン、その見た目で魔法使いはないだろう」
「攻撃力はどうするよ」
「基準はどうする?」
「普通の大人の男が100で」
「なら、僕のドラゴン討伐用の剣の重さが普通の剣の十倍ぐらいだから、1000で」
「強すぎだろ。さっき、自分のこと魔法使い言ってなかったか」
エレンは文句を言いながら、書き直していく
クラン レベル90
称号 西の勇者
ジョブ 魔法使い
攻撃力 1000
魔法 精霊魔法
神聖魔法 サンダルフォン
特技 釣り
一応、釣りも書いてくれたらしい。
「なんかゲームっぽいな」
「いい感じですね」
カレンちゃんも絶賛している。
「じゃあ次はエレンか」
今度は僕が、枝を握り、地面に書いていく
エレン レベル10
「低すぎるだろ」
エレンから早速苦情が来た。
「僕との実力差からこれくらいかと思って」
「クランが強いだけだろ75ぐらいにしてくれ」
「わかったよ」
エレン レベル75
称号 東の勇者の従者
ジョブ 格闘士
攻撃力 100000
「なんでだよ。今度はゼロがおおいって」
「地面たたき割ってたし」
「500ぐらいにしよう」
「仕方ないな」
僕はもう一度書き直した。
エレン レベル75
東の勇者の従者
ジョブ 格闘士
攻撃力 500
魔法 神聖魔法 トール
「特技はどうする?」
「じゃあ、料理と裁縫で」
「急に家庭的なところアピールするなよ。さっき自分で戦闘につかうやつだって言ってただろう。なんにたいしてアピールしてるんだよ」
「うるさいな」
エレン レベル75
東の勇者の従者
ジョブ 格闘士
攻撃力 500
魔法 神聖魔法 トール
特技 料理 裁縫
書いてはみたものの
「なんか嘘っぽいな」
「そう……ですね」
「カレンちゃんもひどいな。これでいいんだよ」
エレンが抗議する。
「普段の言動はそんなんなのに、ステータスだけ女性らしさをだそうとするなよ」
「うるさいな」
エレンはぶつぶつ文句を言っている。
「最後はカレンちゃんだね」
僕はそのままカレンちゃんのステータスを書こうとした。
「でも、私は魔法もたいして使えませんし、誇れる特技もありません」
カレンちゃんが悲しそうに、目を伏せる。
「そんなことはない」
エレンが僕から枝を奪って書き始めた。
カレン レベル20
種族 オーク
攻撃力 可愛い
特技 メロメロ 最強の勇者を言うことを聞かせる能力
「よし、これでいいだろう」
エレンが書き上げたステータスはカレンちゃんらしいものだった。
「クラン、ちゃんとカレンちゃんの言うこと聞けよ」
「任せておけ」
「つまり、私が最強ですね」
カレンちゃんも気に入ってくれたらしい。
「カレンちゃん、今ならクランなんでもしてくれるぞ」
「クランさんになにしてもらおっかなぁ」
「ちょっと、カレンちゃんお手柔らかに頼むよ」
「どうしよっかなぁ」
カレンちゃんが本気で考えだしたので僕は、ドキドキした。
しばらくしてから、カレンちゃんが言った。
「私をクランさんのパーティーに加入させてください」
思ってもいなかったことを言われて、僕は呆然としてしまった。
勇者になってから、そんなことを言われたのは初めてだったから。
うれしくて泣きそうだった。
「ダメですか?」
上目遣いで心配そうに僕を見てくるカレンちゃん。
くるりとした目が本当に可愛い。
「もちろんいいよ」
僕は、慌ててそういうと、
カレンちゃんのステータスに書き加えた。
カレン レベル20
種族 オーク
西の勇者のパーティーメンバー
攻撃力 可愛い
特技 メロメロ 最強の勇者を言うことを聞かせる能力
エレンが手を上げた。
「じゃあ、俺も入れてくれ!」
「エレンは東の勇者のパーティーだろう」
「兼任だ!」
「それありかよ」
僕はいいことを思いついた。
「そうだな。仲間外れも可哀想だし、エレンもパーティーメンバーに入れよう」
僕はエレンのステータスを書きなおす。
エレン レベル75
東の勇者の従者 兼 西の勇者のパーティーメンバー
ジョブ 格闘士
攻撃力 500
魔法 神聖魔法 トール
特技 料理 裁縫
でもって、カレンちゃんのステータスも書き直した。
カレン レベル20
種族 オーク
西の勇者のパーティー幹部
攻撃力 可愛い
特技 メロメロ 最強の勇者を言うことを聞かせる能力
「でも下っ端な。幹部であるカレンちゃんの言うことを聞くように」
「いきなり出世しました!」
「カレンちゃん、今ならエレンがなんでもしてくれるぞ」
「エレンさんになにしてもらおうかなぁ」
「そりゃないよ」
僕ら三人は笑いあった。
星空の下楽しい夜は更けていく。
僕らはゲームの中と同じように眠くなるまで、語り合った。
すぐそこに迫っている試練を少しでも忘れられるように。




