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孤独の勇者ゲームを始める  作者: 名録史郎


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18/37

勇者オークの村に着く

 

 あの日も同じように村が燃えていた。

 夜だというのに、昼間のように明るくて、

 目につくものがすべて燃えていた。

 建物だけではなく、人という人が燃えていた。


 上空を飛んでいるのは、ドラゴンだった。

 虹のような七色の鱗を持つ竜種。

 美しさとは裏腹に、極悪なドラゴンブレスを無尽蔵にまき散らしていた。

 

 ドラゴンは明らかに意思を持って、町を襲っていた。

 人々はドラゴンの灼熱で焼かれた。

 ドラゴンは執拗に人を追い回し、戦う意思のないものも焼き殺していく。

  

 空を舞うドラゴンと目が合ったように感じた。

 次の瞬間、ドラゴンは僕の目の前に降り立つと

 僕に向かって大きく口を開いた。

 僕はとっさに左側を前に向けて……。


「クラン!」

 僕はエレンに声をかけられて我に返った。

 少し熱気に当てられた。

 走馬灯のように、思い出したのは、一瞬の出来事。

「クラン、急ごう」

「ああ、そうだな」

 諦めるのはまだ早い。

 僕にはあの日使用した奥の手がある。

 僕とエレンは、村に向かって、全速力で疾走した。 


 オークの村につくと、王国の兵士たちで溢れていた。

 兵士達は村をを覆うように、取り囲んでいた。

 オークは一匹も逃がさない。

 そんな気概が感じられる。

 ほとんどの兵士が火矢を手に携えていた。

 ただ、もうオークの村にむかって矢を放ったりしていない。

 明らかに、戦いは終わった後だった。

「遅かったのか……」

 エレンが嘆く。

 間違いなく遅かった。

 僕は奥の手の使用を決めるが、

 エレンはともかく、他の兵士たちに、見られるわけにはいかない。 


 僕らの目の前に、男並みの鎧を着た金髪の美女が馬に乗って現れた。

「ほう。これは珍しい。西の勇者が仲間をつれているとはな。加勢にでもきたのか。だが一足遅かったなもう終わってしまったぞ」

「大地の勇者か」

 大地の勇者、通称ヴァルキリー。

 勇者の中で唯一の女性勇者であり、王国騎士団長である。

 パーティーというには、あまりに多い100人もの部下を引き連れている。

 軍にしては、少ないが、全員精鋭。

 全員が神聖魔法の使い手ときく。

 オークの村を滅ぼすためには、過剰戦力だ。

 大地の勇者鎧はまだらに朱に染まり、槍には肉片が所々にこびりついている。

 大柄な馬の蹄からは、血がしたたり落ちている。

「よくもお前がカレンを」

 殴りかかろうとするエレンをすんでのところで剣で制した。

「何するクラン」

「落ち着け、勇者と達人100人を相手にするつもりか」

 小声でエレンを諭す。

 エレンは確かに実力者だ。

 だが、相手は勇者である。

 それに達人級の部下100人もいる。

 無策で突っ込んで、エレンが勝てるとは思えない。

「なんだどうした?」

 大地の勇者は、エレンがなぜ怒っているのかわかっていない。

 普通そうだろう。

 大地の勇者は勇者として、しっかり魔族を倒しただけなのだから。

「すまない。こいつは同じ女性の実力者をみると手合わせしたくなるたちでね。ちょっと血気盛んなところがあるんだ」

 僕は、とっさにそういった。

「ほう。なんだそういうことなら、早く言ってくれ。仕事中でなければいつでも手合わせしよう」

 エレンは怒りが収まらないようだが、僕達は復讐をしにきた訳ではない。

 カレンちゃんを助けに来たのだ。

 戦っている場合ではない。

「すまないな。引き留めてしまって、手合わせはまた別の機会にお願いしてもいいだろうか」

「それは構わない」

「たすかる」

「それにしても、私と手合わせしようとするとは」

 大地の勇者は、あらためてエレンの顔を確認し、

「ん? 君はどこかで見たことが……」

 そんなことを言った。

 エレンはとっさに僕の影に隠れた。

「女格闘士の知り合いでもいたか」

 僕がエレンの代わりに、大地の勇者に質問する。

「いや? 気のせいか。まあいい」

 エレンが誰かに似ていたのだろうか?

 エレンみたいな女が他にいるとは思えないが。

 そんなことを考えていると、

 兵士たちが、統制のとれた動きで、撤収し始めた。

 相手が帰ってくれるなら好都合だ。

「では、私達は引き上げるとしよう」

 大地の勇者の軍団は、颯爽と帰って行った。

 


 僕は大地の勇者が見えなくなってから、ウィンディーネを使役し、町の火を消し始めた。

「くそう」

 エレンが拳を大地に叩きつけた。

「なんでクランは、そんなに冷静なんだ」

「冷静なわけないだろう」

 正直、はらわたが煮えくり返りそうだった。

「じゃあ、なんで止めたんだよ」

「別に僕は、大地の勇者がやったことが悪いことだとは思っていないし、僕は復讐をしにここに来たわけではない。それに、大地の勇者を相手している時間がない」

「時間がないって、何を言ってるんだ」

「僕らは、カレンちゃんを助けに来た。そうだろう?」

「それはそうだが」

「なら急ぐぞ。カレンちゃんを探そう」

「なに言っているんだ。大地の勇者が殲滅をおこなって生き残りがいるわけないだろう。手遅れに決まっている」

「それでも行くんだよ。僕は回復魔法をすべてマスターしているんだ」

「だからなんだって言うんだよ」

「蘇生魔法だって覚えている」

 僕の回答に、エレンは呆けた顔をした。

「はあ? 蘇生魔法ってなんだよ。そんな魔法、神聖魔法にもないだろう」

「蘇生魔法は神聖魔法じゃない。精霊魔法だ」

「なんだそれ」

 知らないのも無理はない。

 他の人間が使っているのを見たことはないし、僕も一度しか使ったことがない。

「ただ手軽に使える魔法ではない、蘇生魔法は条件がかなり多い」

「どんな条件なんだ?」

「周りに死者が多いこと。死んでから1日以内であること。体が原形をとどめていること」

「確かに死者は多いし、まだ一日以内だと思うが……原形をとどめている? それはいけるのか?」

「そっちは神聖魔法の方でどうにかする」

 回復特化型のサンダルフォンなら、どうとでもなる。

 僕はこのためにサンダルフォンを信仰しているのだから。

「ならいけるじゃないか」

「もう一つ条件がある。僕の実力では生き返すことができるのは1日一人だけだ」

「それなら、カレンちゃんだけなら生き返すことができるじゃないか」

 カレンちゃんの心の安寧のためには、他のオークを生き返らせてあげたい気持ちも少しはある。

 救えてもカレンちゃんただ一人で余計つらい思いをさせるかもしれない。

 だけど、問題はそこではなくて、

「僕らはカレンちゃんの本当の姿を知らない」

「あっ……」

 そうなのだ。

 僕らは、ゲームの中のカレンちゃんしか知らない。

 僕とエレンですらついさっきまで、お互いの本当の姿を知らなかったのだ。

 あんなに毎日遊んでいたのに。

 僕はオークの男か女かの区別もつかない。

 だけど、唯一わかっていることがある。

「同じゲームで遊んでいたんだ。きっとカレンのそばにあのゲームの石盤があるはず」

「そっか、そうだよな。石盤を探そう」

 僕らは頷きあうと、手分けしてカレンちゃんと手掛かりになる石盤を探し始めた。


 むせかえるような血の臭いと獣の焼ける臭い。

 おびたたしい量の死体だ。

 今までであれば、オークの死体を見てもなんとも思わなかったが、

 カレンと一緒の村人だと思うといたたまれなくなり、胸が痛くなってくる。

 死体は心臓を一突きされているか首をはねているものが多い。

 神聖魔法でどうにかするといったものの、首が離れてしまった死体や、ぐしゃぐしゃの死体は、復元すら無理かもしれない。

 どうかましであってほしいと願いながら、僕は作業を進めた。

 

 作業を開始して数時間。

「おい。クラン来てくれ」

 僕は、エレンに呼ばれて、一番奥の少し大きな家に入った。 

 エレンが邪魔な大きな瓦礫を軽々とよけてくれる。

 その奥に、オークが一人横たわっていた。

「カレンちゃん……だよな」

「きっとそうだ」

 胸から血を流しているオークは


 とても大事そうにゲームの石盤を抱えていた。

 

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