7話
その日の夜。
井上勝くんに入れ替わった市原一姫である私は、井上くん宅の彼の自室のベッドで横になっていた。
一ちゃんのイタズラで今までも何度か男の子と体が入れ替わったことはあった。
大抵は相手の男の子が私に気があるという理由。
今回の入れ替わった理由も、おそらくそうだろうと思っている。
自分で言うと変な風に思われるかもしれないけど、私は結構モテる。
元が整った顔立ちというのもあるだろうし、私自身、美容には手間やお金をかけていて、健康などに気をつけているおかげだろう。
「はぁ……」
一ちゃんのイタズラには毎度の事ながら困るわ。
井上くんのことが気になる。
ちゃんと上手くやってるかしら?
一応私の毎日のルーティンは伝えてある。
予定なら今頃、ジョギングをしているだろう。
まぁ、彼の心配をしていても仕方ない。
今の私は井上勝。彼になりきらないと。
コンコン……。
そんなことを考えていると、部屋の扉が控えめにノックされた。
「はーい」
返事をする。
「勝、入るね」
ガチャっと扉が開き、顔を覗かせているのは件の戸山桜さんだった。
雪のような白い肌。
両の目は、おしとやかそうな性格を表しているかのようなタレ目。
鼻筋は整っており、唇は桜色で綺麗だった。
胸の辺りまで届く髪は、右肩から下ろしていて、ピンク色のシュシュでひとまとめにされていた。
「どうした?」
「ううん、晩御飯できたから呼んできたの」
控えめに話す彼女。
時刻は19時前後。
お腹も、早くなにか胃に入れてくれと言わんばかりにグゥと鳴る。
「わかったわ……。わかった、ありがとう」
思わずいつもの口調で話してしまって慌てて訂正する。
「じゃあ、待ってるね」
ギィっと扉が閉じ、タッタッタッと階段を降りる足音が聞こえた。
久しぶりに私が用意したものじゃないご飯。ちょっと楽しみだった。