6話
戸山桜。
俺と同い年の幼なじみで、今は訳あって一緒に暮らしている。
やっぱり気になるよなぁ……。
俺になるってことは、嫌でも桜とは顔を合わせることになる。
隠しても仕方ない、話すか。
俺は気が重く、でも話さなきゃという使命感で、唇を動かし声を発する。
「桜とは幼なじみだ。今は両親不在の俺と一緒に暮らしてもらってる」
「本当に?」
「本当にって何が?」
「ただ一緒に暮らしてるだけ?」
ジィっと市原の瞳が俺の目をはっきり捉える。
「何が聞きたい?」
「戸山さんとは、本当にただ一緒に暮らしてるだけ?」
「そうだよ……!」
何度も問いかけてくる市原。俺はちょっとイラッとして声を荒らげる。
ハッとなった市原は俺に謝ってくる。
申し訳なさそうに眉を下げ、言葉を紡ぐ。
「ごめんなさい。戸山さんは、あなたとただ一緒に暮らしてる気はないように思えたから」
「それってどういう意味だ?」
「これ以上は私の憶測だし、本人がいない今、言うことじゃないわ」
言葉を区切り、ここでその話は終わる。
ほっと俺が胸を撫でるのもつかの間、市原は「ただ」と言って、人差し指をピンとあげる。
「私はしばらく井上くんに。井上くんは、しばらく私になるわけだから、怪しまれないように振る舞いはしてもらうわよ」
「どうしろと?」
たじろぎ、思わず後退る。
嫌な予感がする。
何を言われるんだ?
心臓が緊張と不安で、鼓動を激しくしている。
「簡単な話しよ。朝は4時に起きなさい」
「は!?4時……!?いやいや、早すぎやしないか!?」
「私の両親はこの時間から起きて仕事してるの。朝早く起きて自分含めて、朝ごはん・自分のお弁当の用意をする」
わかった?そう閉めて、ずいっと顔を近づけて来る。
近い近い。体は俺自身だから、ドキドキしないが、それでも怖かった。
「でも、俺料理なんてやったことが……」
今までは幼なじみに頼っていた故、自分で料理ということをやったことがない。
そもそも、高校生で料理しているって方が珍しいのでは?
彼女ははぁっとため息をついた。
眉間にはシワが寄っていて、しょうがないと表情で言っていた。
「私もその時間に起きるからチャットで指示出すわ」
「よろしくお願いします。」
俺はお礼を言って頭を下げた。
明日から4時起きかぁ……。
俺いつもその時間寝てるんだけど……。
起きられるか不安だった。