34話
「神社はもう少しこの坂を登った所だから気をつけるんだよ。はい、これ」
おばあさんは俺たちに1本ずつペットボトルのお茶を渡して見送ってくれた。
ニコニコと手を振ってくれるおばあさんに2度、3度ほどお辞儀をして俺たちは本来の目的地に再び向かう。
ちなみにおじいさんは、グゴー!グゴー!といびきをかいて眠っている。
見知らぬおばあさんのお宅にお世話になって出発したのは、手厚く歓迎してもらった2日後だった。
なぜ?次の日に発たなかった?
桜が二日酔いで倒れていたからだ。
「ごめんね、私が体調崩さなかったらもうちょっと早く出発出来たのに」
「気にするな。むしろここまでついてきてくれて嬉しいくらいだ」
ニカッと我ながらいい笑顔を向けたつもりだった。だが彼女の反応は、ジトーと睨みをきかせていた
「そういうこと、気のない相手に言っちゃダメだよ?」
「なんで?」
「私はまだ勝のこと諦めきれてないの。だから……」
顔を逸らしボソッとつぶやく。
「まだチャンスあるかもって期待しちゃう……」
多分、これはあえて俺に聞こえるように言った。
おそらく、市原以外に優しくするなって意味だと思う。
俺はそれに対し、いい言葉をかけることができなかった。
中途半端に優しくして、こいつを変に期待させてしまうのは悪い気がしたからだ。
それから俺たちは、言葉を交わさず、ざっざと坂を登った。
暑い日差しが俺たちを襲い、木々からはセミの鳴き声が響いていた。
おばあさんから貰ったお茶をたまに飲みながら体感では10分くらいだろうか?俺たちは目指していた場所にたどり着いた。
大きな赤い鳥居をくぐり、館内へ入る。
石段を箒ではいていた巫女さんを見つけ、声をかける。
「あの、久保田茂雄さんという方からの紹介で来たのですが」
巫女さんは大きく目を見開いた。
「はい!今神主を呼んできます!」
箒を投げて手放して、石段を登って行った。
「とりあえず、俺たちも神社の前まで行くか」
「うん……」
まだギクシャクしている俺たち。短いやり取りの後、巫女さんを追うように進んだ。
待つこと5分くらいだろうか?神主さんが出迎えてくれた。
「お主らか!うむ、よく来た!」
その人物を見て俺と桜は同時に叫んだ。
「久保田先生!?」
頭髪は光で反射するほど……いや良い言葉回し思いつかないからストレートに言うが、髪の毛1本もない。けど、お顔はどう見ても俺たちを見送ってくれた久保田先生とそっくりだ。
「ガッハッハッ!その様子だと兄貴はわしのこと何も言っておらんな!」
「ええっと、兄貴ってことは……!?」
「わしらは双子じゃ。あやつが兄、わしが弟」
「双子!?」
「うむ!詳しい話は中で話してやろう!ついてこい!」
そう言われ、俺たちは館内へ入った。




