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30話

気がつくと私は石段に腰を下ろしていた。

陽の光が差し込む。雲ひとつない青空が広がっているが、不思議と太陽の温かさは感じない。

木々は緑色に染まっている。

ただ、風が吹き抜けてもいないし、小鳥のさえずりと虫の鳴き声は聞こえない。

石畳は凸凹としているが、道としては形になっていた。

その脇に木々が背高くそびえている。

この風景には覚えがあった。

すごく端的な説明をすると、(いち)ちゃんの精神世界だ。

私がここにいるということは私は生かされているのだ。

なんのために?

それは一ちゃんしか知りえない。

石畳を歩いてみてもいいが、そこに広がる景色はどこまで歩を進めても変わらない。

進むとやがて三途の川が見えて、私の命がそこで尽きる。ということもない。

ただ灰色と緑色の景色が続くだけ。

ここに私が存在しているということは、一ちゃんは私になにか用があるということ。

いずれ一ちゃんは現れる。

それを待とう。

私は石段に腰を下ろす。

これまでのことを考えていた。

私の人生は、私の命は一ちゃんに捧げるためにある。

そう本人から聞かされたのは、まだ小学生に上がる前。

毎日保育園と家、時たまスーパーなどのお店に連れて行って貰うだけの狭い世界。

ただ、これから成長してもっと広い世界を知れる。

そんなワクワクに満ちた時だった。

あの子が現れたのは。

「君の命は私のモノ」

最初にこの世界で聞かされた時は「ぽかーん」となった。

命はその人自身の物じゃないの?

幼いながらそう問いつめる。

彼女は「君は生贄、私がさらに長い時間を生きるための」

生贄?生贄ってなぁに?

「君の命を貰うってこと」

そう無邪気な笑みを浮かべられた。

嫌だ!私は死にたくない!

その叫びに対し、出された答えはこうだった。

「すぐには貰わないよ。君が生贄になる代わりに、力を与えてあげる」

力って?

「人の心が読めたり、声に出さなくても会話ができたり」

すごい!

「ただ、力を使う度にちょっとずつ命は減っていくけどね」

どうしたら命が減らずに済むの?

「力を使わないこと」

力を使わなかったら命は減らないの?

「うん!ただそんなことはさせないけどね」

うんと返事した後のことはぼそっとしててよく聞こえなかった。

ただ当時の私は、だったら力は使わない!と高らかに宣言したことを覚えている。

いま思うと私の人生はこの神様に弄ばれていた。

そう気づいたことには遅かった。何もかも。

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