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29話

コンコンと生徒指導室のドアをノックする。

「どうぞ」

中から久保田先生の声を聞き扉を開く。

「ふむ?今日は1人か?」

「色々ありまして……」

長い髭を指でいじりながら先生の疑問を口にした。

今日も来たいと言っていた桜の姿が見えないからだ。

「ふむ、今日で知の神について詳しく話したかったのだが……」

バツの悪そうな久保田。

「桜がいないと問題でも?」

「問題は無い。ただ、お主らも薄々気づいているかも知れぬがあの子のことを話したかったのだ」

あの子?俺と桜と市原の他に誰が?

ご年配の先生と問答を続けているとコンコンと再び、扉が叩かれた。

「どうぞ」

先程と同じように訪問者を招き入れる。

そこに立っていたのは……。

「おお、来たか」

桜だった。

どうしてだ?

どうして桜が来る!?

「座りなさい」

久保田が俺の隣に桜が座るように促す。

「昨日は、犯罪を犯し始めたところから話したな」

「はい、昨日の続きをお願いします」

彼女が言う。

「うむ、テレパシーで犯罪を犯し始めた市原神社の者を止めようとしたのは紛れもない、知の神じゃ。さて、ここでお主らに聞く。思の神と知の神、普通に争ったらどちらが勝つと思う?」

ご老人の問に俺と桜は顔を合わせる。

じっと彼女の目を見る。なんとなく言いたいことがわかるのは長年一緒にいるおかげだろう。

「知の神って言うくらいだから色んな知識で策を巡らせられる知の神じゃないですか?」

隣の幼なじみも同意見だったようで、こくこくと頷いている。

「残念、勝者は思の神じゃ」

「え!?なんで!?」

「確かに頭の回転、様々な分野での知識量は圧倒的に知の神じゃ。だが、忘れていないか?思の神は相手の考えを読み取れる」

「でもそれって好き勝手に相手の頭の中を覗けるってことじゃないですか!?」

ダンッ!

俺は思わず、机で両手を叩いて立ち上がる。

「それに市原は好き勝手にそこらにいる人の心の中を読んでいなかったじゃないですか!」

「いつから、神が人の子に全ての力を授けていたと言った?」

俺の叫びを静かに一掃された。

「相手は神だ。正直私も彼女がどれだけの力を持っているか全てはわからん。その相手とお主は戦うのだぞ?」

そんな……。そんな強大な相手にどうやって立ち向かえばいい?

正直絶望だ。相手は人の心を読んだり、なんなら相手を自在にワープさせたりできる。

そんな相手にどうやって?

「落葉の力を借りるんですね」

え?

おち…ば……?

その言葉を発したのは桜だった。

「そうじゃ、だが、彼女は実体を失っている。そこで」

「いやいやいや、待ってください!落葉ってもう小さい頃に亡くなっているんですよ!?」

訳が分からない間に話が進みそうで慌てて遮る。

「そうか、お主は知らぬのか」

「落葉こそが知の神なの」

桜から衝撃の事実。

「え?え?えぇぇぇ!?」

「1人ではぁはぁ三兄弟みたいな反応だね」

くすくすと笑う桜。

「実際には落葉は知の神そのものじゃなくて、神様が何百年もかけて転生したのが落葉なの」

「桜、お前それいつから?」

「最初からだよ?」

あっけからんと答える目の前の女の子。

「私があの子と会話出来たのも実は落葉のおかげなの」

「あのー、話が見えないんで、最初から話してくれません?」

うーんと…。

と桜は顎に人差し指を置いて話始めた。

「本当は落葉1人だけが生まれるはずだったの、でも母親のお腹の中で芽吹いた命は2つ。落葉と私」

「ふむふむ」

「知の神、落葉はもうひとつの命、つまり私にその知識を与えた」

「与えたってどうやって?」

「うーん、うまく説明出来ない」

ニコッと笑う桜。

ガタッ。俺はつい体勢を崩してしまった。

「桜がそのこと知ってたってことは、お前たちの両親は知ってたのか?」

そこで桜は暗い影を落としてしまう。

「私の両親は神様に既に操られていたの」

「なっ!?待って、そのこと俺の両親は!?」

「知らないはずだよ。ただ虐待が酷い親って認識だったみたい。私の両親も既に操られてたから」

「え!?じゃあ、お前は神様がお前の姉の仇だって知ってたのか!?知ってて仲良くしてたのか!?」

「そうだよ、全てはあいつの寝首を搔くため……!」

桜の語気が強くなる。

今まで隠していた憎しみを全面に押し出すように。

「でも、寸前で、失敗した……」

「それって俺が市原に力を使わせすぎたせいか?」

「…………」

桜は答えない。

ただ下唇を噛んでいるだけだった。

勝のせい。

そう正直に言ってもらえればどんなに楽だったか。

桜の中ではおそらく俺を庇って言葉が出せないのだろう。

そう思うと心が引き裂かれるかのようだった。

「今必要なのは、自分たちを責めることじゃない」

ハッとして顔を上げる。

久保田先生が俺たちをまっすぐ見据えていた。

「今必要なのは落葉ちゃん、知の神様を現界させることじゃ」

「死人をどうやって?」

「落葉ちゃんも神様じゃ、器が失っても魂までは失っておらん」

「また話が見えないのですが」

俺の言葉に先生はメモ切れを渡した。

「ここに行きなさい。落葉ちゃんをよろしくな」

メモの内容はとある県の住所だった。

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