28話
「えへへ、授業サボっちゃったね」
学校の屋上にて、桜が嬉しそうに、かつちょっと罪悪感がある表情で呟く。
俺はその言葉をぼーっと聞き、屋上の柵に背中を預ける。
桜はその隣で、ペタンと座っていた。
俺はとあることを考えていた。
人間としては最悪な考えだ。
桜なら受け入れてくれるんじゃないか?
そう陰が射していた。
それともうひとつ、ある考えが俺にはあった。
「なぁ、桜」
「何?」
「もし市原の命が助からなかったら、俺と付き合わないか?」
シン……。
時間が止まったように桜は固まった。
校庭では体育の授業中のようで、わー!と生徒たちの声を上げながら、ボールを蹴り、追いかけている。どうやらサッカーをしているようだった。
数秒の後、桜は立ち上がり、俺に向き直った。
そして。
バチンッ!
頬に電気が走ったかのような衝撃を受けていた。
ジンジンと痛むほっぺた。
桜が俺に平手打ちをしたと理解するまで、そんなに時間はかからなかった。
ただ、桜の両目には涙が溜まっていた。
「バカ……!私はあの女の代わりなの?勝はそれでいいの!?好きな人が死にそうだから、他に好意を抱いてる子と代わりに付き合う!?本当にそれでいいの!?」
「……」
俺は答えられなかった。
「私は嫌!そんな理由で選ばれるなんて嫌!私は、自分の魅力を勝に知って欲しかった!そうして付き合いたかった!けど、『代わりに付き合って』『はい、いいですよ』そんな人いないよ!?」
「……」
俺はうつむく、最初から分かってはいた。こんな方法で振り向いてくれる子なんていないことぐらい。
「私は勝の力になるとは言った。でも、勝自身がそんな気持ちなら私はもう知らない!」
桜はそう言い、ダッっと走って屋上から出ていった。
バタン!
扉が勢いよく閉じられた。
ありがとう、桜。
桜ならそう言うと思ってたよ。
これで彼女はこの件から降りることになった。
それでいい。
俺は桜をこれ以上巻き込みたくなかったからだ。
もし、落葉がこの件に噛むことになって、もし、辛いことを言い渡されたら?そう思ったからだ。
俺は校庭に目を落とし、授業の様子を見学していた。
先程叩かれた頬を押さえながら。




