25話
あれから数日が経った。
今は昼休みで皆思い思いに過ごしていた。
俺はと言うと、一人自席で頬杖をつき、悶々と考え込んでいた。
市原は学校に来ていない。なんでも体調不良だそうだ。
神様の力を使うと命を落とす。
それはどれほど辛いのだろう?
進む道はどんどん狭くなり、次第にそれは消える恐怖だろうか?
救いはなく希望もない。
そんな感じだろうか?
今までどれほど力を使ったんだ?
俺と入れ替わった時のことしかわからないが、きっと今までだって使ってきたんだろう。
少なくとも俺は市原に1度命を救われている。
桜が暴走した時だ。
あの時市原が力を使わなかったら、俺は死んでいた。
そういう意味でも恩人なのだ。
だから俺もあいつを救いたい。
(それだけで十分だよ)
えっ?
不意に頭に声が響いた。
ばっと辺りを見渡す。視界にはクラスメイト達が談笑している姿しか見えない。
どこから声がかかったのだろう?
市原がテレパシーを送るのとは少し違う気がした。
誰の声か分からない。けど、少し懐かしい気がした。
その声はとても幼く。けど、とても優しい声だった。
(その反応、ようやく私の声が届いたんだね)
ようやく?
今までも俺に声をかけていたのか?
(そうだよ。今まで気づいて貰えなかったけど。だけど、やっと届いた。市原一姫を救いたいなら私の言うことを聞いて)
どうすればいい?
こんな得体の知れない相手普通なら信用しないだろう。
だが、俺はその存在をすんなり受け入れていた。
理由?
俺には分からない。
が、悪い奴ではない。
俺の直感が言っていた。
根拠?
それもない。
何となく桜と話している時の安心感に似ていた。
家族。
俺には両親と桜しか家族はいないはずだが、何故かこの括りに入れたくなる。そんな存在だ。
よく分からない?
俺もこの声の正体については予想はしているが確証は無い。
たぶん、落……。
(いいから私の言うことを聞いて!)
少し怒ったような声調が響いた。
は、はい!思わず姿勢を正す。
(久保田茂雄という人に会って。その人が市原一姫を救う方法を知ってる)
久保田茂雄?どこかで聞いたような名前だな。
「あっ!」
閃いてつい、声に出してしまった。
クラスメイト達が一斉に俺を見る。
何事かと問い詰めたくなる。そんな目を向けられていた。
「ごめん、ちょっと用事思い出した」
ガタッ。そう誤魔化し、席から立ち上がり教室を出る。
ガラっ。
教室のドアを開け廊下へ出る。
そのまま俺は歩き出した。
向かうは生活指導室。
だって。
久保田茂雄ってうちの生活指導の先生じゃねぇか!




