24話
ザアアアアア!
市原との問答後、俺は1人で石段に腰をかけていた。
雨が降っており、傘を持ってきていなかった俺はずぶ濡れになることを構わず、いや濡れてもいいやと言う気持ちだった。
当たり前だが、しっかりと地面も濡れていて尻に水が滲み、冷たくなるのもどうでもよかった。
ただ俺はどうすれば、あの子が素直に生きたいと言わなかったのか、どうすればあの子を助けられるのか、そのことが思考を支配していた。
ザアアアアア!
雨雲が覆う空はまだまだ晴れそうにない。
濡れる帰ろう。
風邪を引いてしまう。
正直どうでも良かった。
俺は市原を助けたい。
だけど彼女はそれを拒む。
どうすればいいのだろう?
ザアアアアア!
不意に俺を襲う水滴の嵐はやんだ。
ただ雨が降る音は消えていない。
なぜ?
そう思い、俯いていた顔を上げた。
「勝、帰ろ?」
桜が俺の頭上に傘を広げていた。
すっかり濡れてしまった髪はポツポツと水が1滴ずつ垂れていた。
しかし俺は動けずにいた。
その場から立ち上がらず、桜に向かって口を開いた。
「桜」
「なに?」
俺が濡れなくなった代わりに、今度は桜に降り注ぐ大量の雨粒が襲う。
それを桜は咎めなかった。
ただ、いじける幼い子を慰めるような優しい表情で俺の言葉を待つ。
「市原を助けたい」
震える声で俺は傘を差し出している女の子に言った。
桜は表情を変えずに答える。
「私は反対」
「そっか」
その答えを聞いて俺は再び俯く。
「けど」
桜が言葉を紡ぐ。
俯いている俺にはその顔は見えないが、声音は優しかった。
「勝が、こんなに悩んで傷ついているのを見るのは嫌。勝は家族だもん。家族のことは応援したいし、微力だけど助けたいと思う」
「桜……!」
正直、勝手にしろと見捨てられると思っていた。
優しい顔は女神に見えた。
「勝。私に言ったよね?家族は支え合うのが当たり前。困ってたら助ける。怖がって夜眠れなかったら安心して眠れるまで一緒にいてあげる。だってもう俺たちは兄妹だって」
その言葉は、桜がまだ俺の家に来て間もない頃だった。
身体中痣だらけだった彼女は、怖がって空き部屋の角で丸くなっていた。
そんな子を放っておけなくて俺が口にしたのだ。
「私は嬉しかった。だからあなたを好きになった。だからずっと一緒にいたいって思った。好きな男の子が私を選ばなくても、ずっと笑顔でいて欲しい。だから勝を手助けしたい」
「ありがとう桜」
その言葉で勇気を貰えた気がする。
胸の中が暖かくなって嬉しいという気持ちで溢れていた。
「とりあえず、お互い風邪引くし今は帰ろ?」
手を差し出す彼女。俺は自分の腕を伸ばし、その手を取った。
身体中濡れているのにすごく暖かく感じた。




