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23話

 コンコン。

「市原、いるか?」

 市原宅についた俺は彼女の部屋の前にいた。

 ダッシュで学校から神社まで行き、敷地内を掃除していた坊さんに声をかけ、神主である市原の父さんを呼んでもらい、お見舞いに来たと伝えると彼女の部屋の前まで案内してくれた。

「入っていいわよ」

  部屋に入る許可を貰い、ドアノブに手をかける。

 そういえば俺は女の子の部屋に入ったのって桜以外でいないんだよな。

 女子、しかも好きな子の部屋、入れ替わりで部屋の中を見ているとはいえ、想い人と2人きりだと緊張する。

「すぅー、はぁー」

 バクバクと鼓動が激しい心臓を落ち着かせるため、深呼吸をしてガチャっと部屋のドアを開ける。

 部屋の真ん中辺りに布団を敷いて、布団に入っていたのか、毛布は盛り上がり、洞窟の入口のように口を開いていた。

 当の本人はと言うと、起き上がり、部屋中の棚という棚に飾ってあるプラモデルを手にしていた。

「どうしたの?わざわざ来てくれるなんて」

 彼女はそう言い俺に歩み寄る。

 その足取りはフラフラと安定していない。

 オマケに顔が赤いのを見ると、まだ体調は万全では無いように見えた。

「起き上がって大丈夫なのか?」

「言ったでしょ?私はもう死ぬの。一ちゃんの力を使いすぎた代償でね。だから今のうちに遺品整理」

 ニコッと笑顔を作る市原。ただ、その笑顔はぎこちなく、無理をしているように見えた。

「生きたくないのか?」

「私は元々生贄として産まれた。こうなることは運命なのよ」

「生贄って…そんな簡単に受け入れていいのか!?」

 我慢できず俺は叫ぶ。

「…………」

 本人は答えない。

 数秒の沈黙は何分にも何時間でも感じた。

 市原の表情は諦めにも似た顔をしていた。

 ただ唇はガチガチと震え、瞳は涙が滲んでいた。

 まだ死にたくない、まだ生きていたい。

 そう口にすることを俺は期待していた。

 しかし涙を貯めた女の子は俺の心を裏切った。

「私のことを思うなら、もう私を放っておいて」

 ザク。胸元から刀で切り裂かれたかのような衝撃だった。

「なんでだよ……?なんで受け入れてるんだよ……!?」

 俺は必死で声を搾った。

「あなたには戸山さんがいる。あの人と幸せになって」

「目の前の女の子1人救えないで幸せになれるかよ!?」

「じゃあ、あなたに何ができるの!?何も知らないで、私の事情に突っ込まないで!」

「好きな相手が困ってて救えないんじゃあ男が廃るだろ!?」

「カッコつけないで!あなたの気持ちは迷惑なの!」

 俺たちは怒鳴り合う。

 これに意味は無いことは分かってる。ただ、俺はもがきたい。俺は確かに何も知らない。何も出来ないかもしれない。でもただ一言、彼女から助けてって言葉を言って欲しくて。

 俺のエゴだってことはわかってる。

 だけど彼女は俺を拒否することを選んだ。

「もういいわ、私は勝手にしてもらうから!」

 どん!

 俺を両手で吹き飛ばされた。

 勢いが強く、尻もちを床についた隙に部屋のドアはドンと閉められた。

「早く帰って。でないと警察を呼ぶわよ」

 市原の脅しが俺を襲う。

「俺は諦めないから」

 そう言い残し、彼女の部屋を後にした。

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