21話
桜が神様を視認できるようになって数日が経った。
今のあの二人はと言うと。
「相手のダウン取ったよ、そっちは!?」
「格闘入れられてるー」
「あのコンボはカットできないわね。でも着地に合わせて…!」
「ナーイス着地狩り!」
仲良くなっていた。
いや、ていうか神様ゲームできるのか。
しかもやけに上手いし。
「一ちゃん(いちちゃん)は私とゲームやってたから上手いわよ」
「人の心読まないでもらえます?」
「しょうがないじゃない、聞こえちゃうんだから」
神様と桜がゲームやっている間、俺たちはと言うと、夕食の食器を洗っていた。
ジャーという水が流れる音が気にならなくなるくらい俺は2人の様子を眺めていた。
にしても仲がいい。
2人で時に騒いで、時に黙ったかと思うとテレビを凝視しつつ指先はコントローラーを素早く動かしていた。
俺はと言うと内心ドキドキしていた。
だって、好きな人と一緒に並んで、食器洗ってるんだぜ?
なんか、新婚になった気分だ。
結婚ってこんな感じなのかな?
我が子の遊ぶ姿を見つつ家事をする。
入れ替わって想い人と急接近できたんだから、神様には感謝だな。
「気持ち悪いこと考えてないで手動かしてくれないかしら?」
侮蔑と苛立ちを混ぜたような声で、市原は俺に声をかける。
「ところで」
「何?」
俺は、あの時から気になっていたことを市原に問う。
「どうして桜は神様を認識できるんだ?」
「んー」
何かを迷っているのか、彼女は自身の唇に人差し指を添えた。
「たぶんだけど、戸山さんは私と同じ、もしくは似たような存在なのかも」
「同じ?似た?」
まったくわけがわからん。
「そもそもお前は何者なんだ?」
同じ人間に問うことでは無いはずだが、俺は気づいたらそれをこぼしていた。
数秒の沈黙。
市原の表情は、神妙な面持ちになっていた。
「その問いに答える前に、少し時間をくれない?」
「時間?」
「ええ、戸山さんについて調べて見るわ」
「調べるって本人に訊けば早くないか?」
「納得のいく答えが得られなかったから私に聞いてるんでしょ?」
「うっ……」
図星だった。
「私も気になってたのよ、戸山さんが。だからいい機会ね」
「調べるったってどうやって?」
「1度家に戻って」
「家でできるのか?」
「ええ、実家であなたの姿でいるの両親が疲れると思うから、1度体を返して貰うわ」
「ああ、それは構わないけど……は!?」
「何よ、大声出して」
「いや、サラッと体返してって言うから……」
戸惑う俺に市原は答えた。
「てへぺりんこ」
「イラッときたーーーーーー!」
「勝、うるさい」
「うるさいなー」
ゲームやってる2人に注意された。
「いや、だって戻れるの!?」
「ええ」
「なら、最初からやれぇぇえええええ!」
「嫌よ、すごく力使うのよ、あれ」
「いやできるなら今までの苦労はなんだったんだよ!?」
「あなたの困る姿を見るため?」
「なんのために!?」
「私にもわからん」
こ、こいつ……!
ぐぐぐ、と歯を強く噛む俺に市原は続ける。
「真面目に答えると戻ったあとが大変なのよ」
「どうなるんだ?」
「強い倦怠感、発熱、頭痛に襲われるわ」
ウイルスのワクチンを打った後のような症状だった。
「納得いってないようだから、これだけは話しておくわ」
急に真面目なトーンになった。
「死ぬの、私。一ちゃん(いちちゃん)の力を使いすぎると」
「……は……!?」




