20話
まさか、一ちゃん(かずちゃん)と同じ存在がいたなんてね。
と言ってもあの子は燃えカスのようなもの。何も出来ない。
と言ってもあの子に憑いてる守護霊、あの存在が邪魔だ。
あの子自体はその存在に気づいてないようだけど。
私がこの世界に存在し続けるには現在は一ちゃん(かずちゃん)の命を吸うこと。
そうすることで私の寿命はまた延びる。
そのためには井上勝君とは早くくっついてもらわないと。
けど戸山桜、あの子の存在は邪魔だな。
あの子のせいで一ちゃんは勝くんにアプローチするのを避けている。
さて、どうやって引き離そうか?
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「なぁ、桜」
「何?」
しばらく俺たちは無言で歩いていた。響くのはザッザと靴が地面を蹴る音。
帰りの道中、俺は桜にとある疑問を投げかける。
「どうやって神様の力に勝ったんだ?」
「んー」
桜は天を仰ぎ、しばらく考え込んでいた。
少し間を置いて彼女は答えた。
「わかんない」
ズサ
思わずその場でズッコケる。
「わかんないって、なんじゃそりゃ…」
呆れながらも俺は立ち上がる。
立つ時に桜は自然と俺に手を差し出してくれた。
立ち上がった俺に桜は続ける。
「わかんないけど…」
「けど?」
「声が聞こえたの」
「声?」
「うん、あの子の力に負けないでって」
「あの子?力?」
「たぶんこの子」
そう言って首根っこをむんずと掴んでいた一神様に目を向ける。
神様は未だに「うぇーん」と泣いていた。
俺は歩きながら神様に視線を向ける。
「なぁ、神様」
「ひっく、ひっく…何?」
泣きながら俺の声に答える神様。
「今の話で思いつくことないか?」
「……ううん、何も」
「そっか」
神様にも分からないんじゃあ、お手上げだなぁ。
天を仰ぐ俺に今度は桜が、俺の顔を覗き込んで問いかける。
髪からはいい匂いがした。
「ねぇ、勝」
「うん?」
「今日の夕ご飯どうしようか?」
「うーん、そうだな…。気分的にカレーが食べたい」
「うん、わかった」
笑顔で答える桜。
「じゃあ私このまま買い出し行くね」
「おう」
ちょうど左右での分かれ道だった。
俺の家は右側、一方いつも行っているスーパーは左側だった。
「じゃあまた後で」
「おう」
桜は手をあげ俺に少しの別れを告げた。
俺も手をあげてそれに応じた。
そうしてお下げ髪の少女はスーパーに向けて歩いていった。
神様を掴んだまま。




