2話
ガヤガヤと騒がしい朝の学校。
俺はガラッと扉を開けて教室に入る。
教室ではクラスメイト達が自分の席の周りや、ほかの生徒の席を占拠したりして何組かのグループに別れて談笑をしていた。
キャッキャと騒ぐ女子グループ。
その少し後ろでは数人の男子グループが、女子達に視線を送りながらも推しがどうこう話している。
チラッチラッと女子グループに送られている視線は残念ながら彼女たちには届いていない様子だった。
哀れ、恋する男子生徒よ。
ゲーム機を持ち寄ってゲームをしているグループ。
「端に追い込んだぞ!」
「よし、あとは任せな!」
1人で静かに窓から外を眺めているやつ。
朝の眩しい日差しに目を細めていた。
机に突っ伏して朝から寝ているやつ。
「グゴー、グゴー」
朝からいびきをかいて寝ていた。
昨日何時まで起きてたんだよ。
みんなそれぞれ朝の教室で過ごしている。
俺はと言うと、慣れないスカートでソワソワしつつちょうど真ん中らへんの、市原の席で座っていた。
「市原さんおはよう」
「オ、オハヨウ…」
何人かの女子生徒が話しかけてきた。
市原は美人で、人当たりがよく、鼻にかけない性格ゆえ男女問わず人気があった。
俺は今は市原なんだと意識しつつ、挨拶を返す。
ソワソワ、ギクシャクとしてなんだか落ち着かない。
普段俺はコミュニケーションを取るのが苦手ゆえ、あまり話したことの無い相手と話すのは変に緊張してしまう。
「どうしたの?」
変に思われたのか相手は俺を心配そうに顔を覗き込む。
「な、なんでもないよっ」
ブンブンと両手を降って、なんでもない、私は今日も元気だよアピール。
「そっか、無理しないでね」
「あ、ありがとう…」
心配そうな顔は崩さず、声をかけて、パタパタ足音を響かせてと去っていく。
「はぁ…」
安心してどうにかバレずに済んだと安堵のため息をつく。
ニマニマ。
学校までついてきた神様は、人の様子を楽しそうに笑みを浮かべていた。
早く俺よ、来い。
おそらく今の俺の体は、市原のはずだ。
市原と情報共有をするのが最優先。それからこの神様を説得して、体を元に戻して貰って。
頭の中での流れは完璧。あとはことが俺の思い通りに行くだろうか?
神様の説得。この状況を作った神様は楽しそうな笑みを絶やしそうにない。
うーん、思わず声に出してしまいそうなほど、頭の中であれやこれやと考え込んでいるとガラッと教室の前の扉が開かれ1人の男子生徒がぬっと入室した。
俺だ!
俺が来た!