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17話

「ふんふふんふーん♪」

「随分とご機嫌だな」

「今日という日をずっと待っていたのよ」

  翌日、俺と市原は近所の商店街へと来ていた。

 ちなみに桜はと言うとまた神様が取り憑いたのか、ダーッと走ってどこかへと行っていた。

 俺はと言うと内心ドキドキしていた。

 だって好きな女の子と2人きりでデートだぜ!?

 いま俺はその好きな女の子そのものになっている訳だが、心は男子。それも思春期真っ只中の高校生だ。心が舞い上がらないわけが無い。

「ところでどこに向かってるんだ?」

 心臓の隣を歩いている想い人に聞こえないかといらない心配をしつつ、市原に問う。

「模型屋」

「は?」

「模型屋」

「はい?」

 思わず2度も聞いてしまった。

 いや、今のこいつは男なわけだから模型屋に行きたいと行っても不自然ではない。

 ただ初めてのデートが模型屋って……。

 俺の心境を知ってか知らずか、市原は続ける。

「私の財布は持ってきたわよね?」

「はい」

「貸しなさい」

 ポケットから花柄の長財布を取り出し、渡す。

 財布を開け1枚のレシートがあることを確認する。

「よし、ちゃんとあるわね」

  満足そうに仕舞い俺に返す。

「なんだよ、これ」

「見ていいわよ」

 承諾を貰い、もう一度財布を開け紙を確認する。

「MGガンダ……」

 ???

 カタカナばかりでわからん。

「今日発売のプラモよ」

「女子がプラモって……」

「偏見で人の趣味に文句言うのやめてもらえるかしら?今どきプラモ女子は珍しくないわよ」

 イラッとしたのか、怒気をはらんで訴えてくる。

「ごめんなさい」

 頭を下げ謝る。

「けど、いまプラモ手に入れるの難しいって聞くぞ」

「今向かってるお店の店長さんとは昔からの知り合いなの。だから私のような常連には贔屓してくれるのよ」「へぇー」

 会話しながら歩いていると市原が足を止めた。

「ここよ」

  模型屋 熊谷(くまがい)

 そう看板には書かれていた。

 なんの躊躇もなく彼女は店内へと入る。

 店の中は棚中にプラモデルの箱が並べられていた。

 ロボットに飛行機に戦車。

 色々な模型の箱が積み重ねられていた。

「いらっしゃ……。おー!一姫ちゃん!」

 店の奥から店長らしき人が俺の姿を認め、気さくに話しかけてきた。

 体型は小太り。

 お店の名前が書かれている黒いTシャツを着ているが、さらけ出されている腕は腕毛がもうもうと生えていた。

 ただ不思議と不潔とは思わなかった。

「はは……。どうも……」

 俺は1歩後ずさる。

 このタイミングを待ってましたと言わんばかりに市原が1歩前へ出る。

「クマさん、今あなたが話しかけてるのは私じゃないわ。私と彼は今入れ替わってるの」

 は!?

 いやそれ言う!?

 こんな非科学的で現実的じゃないこと信じて貰えないだろ!?

 ところがどっこいクマさんと呼ばれた男性は俺の予想とは逆だった。

「おー!そうか!坊主!そいつは大変だな!」

 ガッハッハッと笑い俺の肩を叩いてくる。

 痛い。

 ぽかんとしている俺に市原は答えた。

「私とクマさんは1度入れ替わってるのよ」

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