16話
(ねぇねぇ)
風呂上がり、やたらスキンシップを計ってくる桜を押し退けつつキッチンの冷蔵庫から牛乳をお気に入りの星のマグカップで飲んでいると頭に声が響いた。
この感じは覚えがある。
いつも市原が俺に秘密に話しかける時のあれだ。
ただ、妙に子供っぽいあどけなさの声だ。
「もしかして神様か?」
(そうそう、正解♪)
楽しそうな声が響き、俺の目の前にいきなりパッと現れたのは、俺たちの身体を入れ替えた元凶、神様。
「どうやって現れたんだ……」
(えへへ、ワープってやつ?それより声出さなくていいよ。一ちゃん(かずちゃん)に聞かれたくないし)
(市原に内緒か?)
声を出すなとことなので、心の声で会話する。
(うん、一ちゃんとデートして欲しいの)
ブーーーーーーーーーーーーーー!
勢いよく口に含んでいた牛乳を吹き出してしまった。
床は牛乳まみれ。
口と鼻からは体の中に残った牛の乳がタラタラと垂れている。
(びっくりした?)
そう質問を投げかけ、目の前でぷかぷか浮きながらケラケラと腹を抱えて笑っている。
(そりゃあ、まぁ)
仮にも市原のことは好意を抱いているから、いつかはしたいと思っていたが、心の準備をしていない段階でそう提案されても……。
(そもそも、なんで急に?)
(うーん、君たちがあまりに進展しないから痺れをきらせて)
グサッ……。
確かに入れ替わってから俺たちの仲は大して進展していない。
(それに一ちゃんには……)
(うん?)
(ううん、なんでもない!)
珍しく焦る神様。
デートはいいんだけど、まずは桜をどうにかしなければ。
あいつがいたんじゃあ、落ち着いて2人で出かけることなんてできるか?
(桜ちゃんのことは任せて)
ぽん。
実際には音は出ていないが、胸に手を当て自信満々に答える神様。
(どうするんだ?)
(ちょっと待ってて)
そう答えて神様は消えてしまった。
次の瞬間、桜がダッと現れた。
「お外行ってくるね!」
「は!?」
いや、急にどうした!?
外行くって言ったって、もう太陽は完全に沈み、夜という闇が支配している時間帯だ。
そもそもあいつ髪乾かしてないし!
「ちょっとま……」
バタン!
俺の制止を聞かずにダーっと走って出かけてしまった。
「一ちゃん(いちちゃん)の仕業ね」
一部始終を眺めていた市原が現れた。
「そうなのか?」
「だって不自然でしょ?」
ごもっとも。
「一ちゃんが乗り移って戸山さんを遠ざけた。無理やり遠ざけたってことは何かあるんじゃない?」
うっ……。
勘のいいやつ……。
「あー、あのだな……」
どう切り出せばいいんだ……!?
そもそもデートってどこ行くんだ?
遊園地か?動物園か?映画か?
頭の中で混乱していると市原が口を開いた。
「ちょうどいいわ。行きたい場所があるの」
「へ!?」
「あなたの身体ならむしろ自然に行ける場所がね」
にやりと笑みを浮かべた市原だった。




