12話
(どういうことか説明してもらうぞ)
(いいわ)
その日の午後の授業中、俺と市原授業に参加しつつ、脳内で2人で会話していた。
休み時間や放課後と思ったのだが、桜が俺(今は市原)にベッタリでなかなか2人で落ち着いて話す時間が取れなかった。
今の授業は数学。
担当の教師が、この公式がこうだからと、数式の解き方を教えている。
周りからはカリカリとノートにペンを滑らせる音が聞こえてくる。
(まず、何故市原はこうしてテレパシーを送れるんだ?)
(それは、一ちゃんの力を借りてるからよ。一ちゃんが人の心を読めるのは知ってるわよね?)
(ああ、それは聞いた)
(私は一ちゃんの力を借りて脳に直接話しかけることができるの)
(それは俺にはできないのか?)
何度か試したことはある。だが、俺には出来なかったことから察するに俺には出来ないということはわかっていた。
ただ、今は市原の体を借りているんだ。神様に頼めばできないだろうか?
(無理ね)
(なんで?)
(私は魂で一ちゃんと契約してるの。肉体はただの器。中身の魂が私じゃないとできないわ)
(急に話が難しくなったな)
(つまり、体が私でも肝心な私という魂が別の体にある場合、私の体だけじゃあできないってことよ)
諸君、理解できただろうか?
要は俺にはできない。以上!
(じゃああのワープは?あれも神様の力か?)
(そこに関してはノーコメントとさせて貰うわ)
(ノーコメントって……)
(……。仮に教えたとしてその力をあてにされるのが嫌なだけよ。例えば学校に遅刻しそうだからワープさせてくれとかね)
(え?ダメなの?)
(……。ええ、ダメ)
さっきから1拍答えが遅れている。一瞬だが何かを考えてるように感じる。
(あれは緊急時にしか使わないって決めてるの)
(なんで?)
(そんなことより、顔をあげた方がいいわ)
(え?)
「市原!聞いているのか!?」
意識が授業に戻る。
担当の教師が俺の前で仁王立ちで腕を組み、怒りと困惑の表情で立っていた。
「いつも真面目に授業を聞いているお前が、そっぽを向くとはどうした!?」
やべ、どうしよう!?
(考え事をしてました)
脳内から指示が届く。
「考え事をしてました」
そう答えると教師は、ちょっと心配そうな表情になった。
「そうか、授業に集中できないほどか?」
「はい」
「誰かに話したか?」
「いいえ」
「悩むほどなら誰かに相談しなさい。俺でも、誰でもいい」
「ありがとうございます」
「よし、授業に戻るぞ」
パンと両手を叩き、教室中の生徒たちに説教から授業へと切り替えをさせる。
こうして、市原との交信は終わり、ひとまず授業に集中することにした




