10話
(井上くん、聞こえる?)
ダッダッダと地を蹴りながら猛ダッシュしていると、俺の声、もとい今は市原の声が頭に響いた。
(昨日桜と、どんな話をしたんだ?)
(好きな人の話になって私って答えたの)
やっぱりか……。
正直桜が俺に好意を抱いているのは知っていた。
だが、俺がほかの人が好きだと分かれば、昔から嫉妬してその相手をこの世から消そうとする。
実際命を狙われた子は親の都合という名目上、引越しを余儀なくされていた。
昔からそうだ。だから俺は桜とは家以外では、極力距離を取っていた。
今回のターゲットは俺もとい市原だ。
正直、市原の体で俺が死んだらどうなるんだろう?
市原の体は彼女本人に一生帰ってこない。
つまり市原は俺として生きることになる。
上手く説明出来ないが、そんなのダメだ。自分の体じゃないと。
なんて考えていると市原が心に話しかけてきた。
(どうすれば、止められる?)
(1番早いのは俺が桜に好きだって言うしかない)
(その役目は今は私ってことね。考えがあるわ。学校まで誘導できる?)
(学校のどこだ?)
パッと思いついたのは、学校で騒ぎを聞きつけた人達が桜を抑えて、市原が桜に好きだって伝える。
でもそれだと、周りの人が最悪、怪我をしないとは言いきれない。
(学校内ならどこでもいいわ)
どこでもいい?いったい何を考えてるんだ?
(ごめんなさい。ただ、今は私を信じて欲しい)
(……。わかった。何を考えてるかは知らないが、市原を信じる)
(ありがとう)
それだけいい。市原からの交信はなくなった。
とりあえず、学校まで行く。そうすればあとは市原がなんとかしてくれる……。
ぜぇ、はぁ……!
くっそ、疲れて走る速度が……!
学校まであとこの坂を上れば……だってのにもう走る気力が……。
「その首もらったああああああああ!」
桜が殺人鬼のような形相で俺にカッターナイフを突きつけてくる。
ああ、俺死んだわ。
全てを諦めかけたその時、体が青白い光に包まれた




