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サリアのアルバイト

 放課後、一人繁華街を繰り歩くヨータ。


(そういえばサリアってどこで働いているんだろうか)


 次期大天使として修業のために人間界に来た彼女。サリアはそんな修行の一環として人間界で働いたり、なんかいろいろと行っている。

 ちょっと気になる…というか、メアがあんなのだし心配だなぁ…と言った心情から、サリアの働いている店をついつい探してしまうヨータ。

 すると、意外と早く彼女は見つかった。


「いらっしゃいませ~!」


 サリアは元気に店の前で呼び込みを行っていた。






「中華料理店か…」


 店に入り、サリアに案内されるがままに座席へと着くヨータ。


「そうです。ほら、見てくださいこの制服! すっごくかわいいんですよ!」


 サリアはそう言いながら、ヨータの目の前でひらりと一回転する。

 制服は、真っ赤なチャイナドレスをより動きやすくしたような感じの服装だ。


「うん、いいんじゃない? とりあえず俺もなんか頼まないと…」


 そう言いながらメニューに手を伸ばすヨータ。


「ちょっとサリアちゃ~ん! こっちの注文も取ってほしいんだけど~」


 ニコニコとヨータの一挙一動を眺めるサリアに、他のテーブルの客から声がかかる。


「あ、はい! すぐ行きます!」


 トテトテとサリアは声の主の方向へと向かっていった。


(…にしても、大盛況だな)


 ヨータが知る限り、商店街で大繁盛している中華料理店なんてものは存在しなかったように思えたが…。


「サリアちゃ~ん! 麻婆豆腐を頼めるかな」


「デュフ…サリアちゃん、拙者にはラーメンをお願いしたいでござる…」


「サリアちゃん担々麺お願い~!」


 なるほどどうして。ヨータには、こじんまりとしたこの中華店が常に満席になる程の人気を博しているのかが分かったような気がした。


(これサリア目当てで来てる人がほどんど?)


 暫く観察を続けていると、やはりサリアを一心不乱に眺める男性(稀に女性も居るが)の割合がほとんどを占めていた。サリアの観察に夢中になって麻婆豆腐を間違えて鼻から摂取している人も居たくらいである。


(これ、サリア犯罪に巻き込まれたりしないかな…)


 あまりにも熱狂的な視線をその身に受ける姿を見てしまえば、サリアが天使であると言うことを加味しても少しは心配になってしまうのが人間というもの。


 なーんて不穏なコトをヨータが考えていると、待ってましたと言わんばかりに怪しげな眼鏡の男性が入店してくる。


「いらっしゃいませ~、申し訳ないのですが満席でして…」


「…いや、今日は料理を食べに来たんじゃなくて…キミに会いに来たんだよ!」


 唾を飛ばしながら喋り、サリアとの距離を詰める眼鏡の男性。


「え、えーっと、お客様?」


「サリアちゃん! 今日こそ僕の気持ちを伝えるよ! 僕、君のことが好きなんだ! だから、今から僕とデートに――」


「ごめんなさい、無理です」


「え」


(スッゴイバッサリいくなぁ…)


 割と何の慈悲もなくそう切り捨てるサリア。


「なんで!? 僕はこんなにも君のことを思っているのに!」


(凄い模範的なセリフだなぁ…)


 そう言いながら、サリアの腕を眼鏡の男性は強い力で掴む。


「お願いだから! 一緒に来てくれ! 僕の言うことを聞いてくれ!」


「や、やめ…やめてください!」


(これは止めないとダメかな)


 流石に不味いのではとその重い腰を上げようとしたヨータ…しかし、それよりも行動が早い人間達が居た。


「テメー、俺たちのサリアちゃんに手を出そうって言うのか?」


 そう言いながら、眼鏡の男の腕を横から掴む一人の男。


「…ここは食事の場ですよ。皆が不快になる行動は慎んでいただけますか?」


 更に横からもまた眼鏡の男の腕を掴む男が現れる。


「デュ、デュフ…拙者、気持ち悪い人には帰ってほしいでござるな」


「おい! サリアちゃんが嫌がってるだろ! 手を放せよ!」


 いつしか眼鏡の男を店内中の客が取り囲み、サリアから引き離す。


「お前達、やめろォォォ! 僕は今からサリアちゃんに最高の思い出をプレゼントしてあげようと…」


「どこが最高だ! サリアちゃんに乱暴しようとしやがってよくそんな口が叩けるな!」


「こういう輩は一度痛い目に合わないと分かりません。山に裸で捨てていくのが賢明かと」


「デュフ…拙者のアニメを見て練習したデススタースラッシュの餌食にしてあげるでござる!」


「殴るぞゴラァ!」


 罵詈雑言に次ぐ犯罪級の脅し連発。


(…よく分かんないけど、まあこの店なら心配ないかな。ほんのちょっとだけ血気盛んだとは思うけど)


 店内中の客の協力によって、怪しげな眼鏡の男事件はすぐさま終息を迎えた。






「あはは…天使が人間さん達に助けられちゃうなんて、おかしな話ですよね…」


 暫くすると、サリアが俺の方に向かってきてそう話しかけてきた。


「いや、いいんじゃない? その分サリアも皆の助けになってると思うから」


「ほ、本当ですか?」


「おう。とりあえずチンジャオロース頼める?」


「あ、はい! かしこまりました!」


 ちょっと不穏な事件もあったものの、サリアが楽しそうに働けているのを見て安心するヨータであった。

 ちなみにヨータが後から聞いた話によると、眼鏡の男は現場に居合わせた客全員に唐辛子などを粉末状にしたものを体の穴という穴にぶち込まれて絶叫していたらしい。

 普通に危ないし犯罪では…?

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― 新着の感想 ―
[一言] サリアちゃんのファン(?)の民度が大変よろしい
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